立秋から処暑白露と暦は進むものの、8月はひたすら猛暑が続くばかりだった。
本稿も9月は涼しげな話題にしたいので、エアコン頼りの室内なれどもせめて秋の彩りを並べるのだ。
秋気を感じさせる古籠を納戸から出し、花屋と我が荒庭で秋の花や草を集めて来よう。
ーーー秋の野の明るさ老いの身の軽さーーー
(山越篭 幕末〜明治時代 織部マグカップ アロンサイス作)
秋野の草花には竹編みの花籠が良く似合う。
より一層野趣を高めるには洗練された作家物より魚篭や山仕事に使った古籠を使えば、眼裏に昔の野山の景まで浮んでくるだろう。
珈琲の器も秋らしい色に変え、冷えた室内で秋の気配を満喫するのだ。
夕食前にはお馴染みの和歌の女神、衣通姫に秋野菜の御供えだ。
(衣通姫絵姿 室町時代 山女魚籠 大正頃 八角燭台 李朝時代)
野菜は鎌倉産の白茄子赤茄子。
使い古した魚籠に蒲の穂、女郎花、吾亦紅、竜胆、雑草の穂などをゴチャっと投入れて、秋の野の豊饒さを出したい。
花と秋野菜の賑やかな彩りで姫神様に喜んでもえるだろう。
過去世で悲しき恋のヒロインだった衣通姫には、我が夢幻界では楽しく暮して頂こう。
ーーー暗き世に明るき歌を望まれし 我が歌神の教へ難しーーー
今回使った古式写真機はこれ。
(ライカDⅡ ヘクトール7.3cm f1.9 ドイツ1931年製)
ライカの歴史を築いた伝説のアーティファクトで、ユニバーサルファインダー他の付属品を集めるのにも苦労した。
ヘクトールの絞り開放で、銅鏡の内面反射による自然な空間色が生まれる。
現代レンズと全く違う、絵画的な色調が隠者好みだ。
©️甲士三郎