鎌倉の隠者

日本画家、詩人、鎌倉の鬼門守護職、甲士三郎の隠者生活

48 海辺の叙事詩

2018-08-02 13:49:20 | 日記

(アルキノウスのイコノグラム 紀元前3〜2世紀 探神院蔵)
ホメロスのオデュッセイアに出てくるアルキノウスの庭は、一年中花と果物が絶えない楽園だ。
上の写真は中央がアルキノオスの庭園で、回りを双顔の貴婦人、妖精、薔薇、斧、獅子が囲むミスティカ(神智学)によるイコノグラム。
私が組んだので多少怪しいが、楽園を希求するアーティファクト(聖遺物)である。
鎌倉は水仙が年末に咲く程で冬が短かく、何かしらの花が一年中咲いているところはアルキノウスの楽園に近いが、近年の温暖化の影響で 夏が前後におよそ2週間づつ長くなった分、処暑の方策を増やさないと身が持たなくなった。

夏と言えば海だ。
隠者には湘南ビーチの雰囲気は似合わないと思って敬遠して来たのだが、南仏のジャン コクトーやカリブ海のヘミングウェイのイメージで、ビーチのカフェで読書や原稿書きなら出来るのではないか、と閃いた。
渚で読書ならそれこそオデュッセイアなど地中海の英雄叙事詩がぴったりだ。
長いストーリー自体はあまり重要ではなく、気に入った詩句一節の崇高さ(格好良さ)こそ味わうべきだろう。
ただし日本語の翻訳本は詩文の体をなしていないので、原典の品格を脳内補正して読もう。
BGMは古風で勇壮なヴァン ヘイレンのジャンプあたりが夏向きで良い。
ワーグナーやドイツ的なクラシック音楽は夏の海にはあまり似合わない。
古代の英雄達と共にこんな私にもあった栄光の日々を懐かしみつつ、若い世代の活躍を見守るのが隠者の晩夏にはふさわしい。
---燃え尽きる夕焼(ゆやけ)の赫に身を染めつ 老いの呟く英雄叙事詩---

(夏のビーチは撮影禁止らしく、写真は誰もいない早朝か夕刻に)
スナフキンのような帽子で変装し、浜辺に赴いたのだが………。
隠者の風貌は叙事詩の英雄と言うより、歌舞伎の俊寛のような流人に見える気がする。
---星辰が座に着く夕べ時は満ち 渚に出会ふ猫と咎人---

©︎甲士三郎