・・・こんちわ~
ブローカーだろう、50代のガタイの良いオヤジがダブルのスーツを着込んでしわがれた大声でやってきた。
・・・土地の売買とか、やっておられますかね?
山で拾ってきた型の良い鹿の角をゴシゴシ研いでるとこだった。
・・・地上げが商売だが?・・・角の尖った先をそいつに向けて擦りながら答えてやった。
時代遅れのガラの悪いオヤジは、いつでも山に登れる姿で、もっとガラの悪い日焼けした白髪角刈りオヤジに睨まれると、急に視線を落として・・・両国に良い土地があるんですが、ちょっと遠いですよね・・・と、そそくさと退散していった。
朝から、笑わせやがる。
長く子供らを育ててきてると、われわれの世代から下の世代の骨や筋については、あちこちで喋ってることだけんども、いまの人間は筋肉ばかりつけて外見は勇ましい肉体になってはおっても、それを纏っている骨や筋が退化して、年中あちこちでポキポキ骨折を繰り返している様は、笑ってしまうことではある。
俺の育てた子供らはみなスポーツをずっとやっておるけんども、一度も骨折などしたこともない。
大きな衝撃を身体に受けても、関節を傷めるくらいに骨は強い。
それがこの頃の子供らになるともっと弱くなってる。
相変わらず俺の育ててるガキは強いまんまだが、まわりではポキポキよく折れている。
なにが違うのか? カルシウムか? いやいや生まれたら山や海で遊んで連れ回してるだけのことだ。
一番小さいガキなんて5歳で悪天候の谷川岳に登っている。
10歳では太平洋の荒波の中で1時間は遠泳できるようになってる。
みな生まれてから延々と、大自然の中で遊び連れ歩いて見せてやって、叩き込んできてる。
怒鳴っては抱き締めて、怒鳴っては抱き締めて、その繰り返しだ。
俺がなんでも出来るからこそ、子供らは安心して集中できる。
そういう大人が少なくなってしまっては、育つ子供らは哀れなもんさ。
ガタイだけは大きくなっても、ポキポキ折れてばかりじゃ~、ハリボテの虎だ。
10歳までだぜ、心や身体の基礎をつくりあげるのは・・・。