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死んでしまえばそれでわしらはおしまいだが、死ぬまでがたいへんだけんな。おいそれとすっと死なせてもらえんかもしれんもんな。ただありがたいことにわしらにはなにもなか、み一つだけん、ほかの人たちよりも安心して死んでいかれるたい。この世にはなんでもありすぎてこまったり、えらすぎてこまったり、死んでも死にきれん人たちもおらすけんな。せめてなにもなかというのがわしらのよかところかもわからんたい。
高木 譲 『人夫考』より 未来社
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33年前に出版された本だ。
第二次世界大戦敗戦後から日本が繁栄の道を辿るようになるまでの時代の人夫世界を内側から描いたものだ。
欲も反抗心もさほど持っていない、ただその日を生きることにひたすらな人々の生態が浮き彫りにされている。
今現在の目から見れば、なにやら奇怪で、滑稽な面もある。
でも、そんな彼らの素朴な生きる哲学が、またその人情が羨ましく感じるのも事実だ。
今で言えば、ホームレス、第何次下請け下の労働者、条件の悪い派遣労働者・アルバイトに当てはまるのだろうが、現在のそれは、無機質であり、殺伐としている、、、。
成熟した日本社会と人は言うが、売り渡したものが大き過ぎはしませんか?
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