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「もともと目や耳は、意地悪で疑い深い感覚なのです」
そんな抽象的な話題も主治医は好んだ。「何故かというと、目は敵をいち早く見つけること、耳も外的の音をいち早く聞きつけることが主な役割だったからです。嗅覚や触覚、味覚は、そこへいくと、猜疑心はぐっと低くなって、むしろ仲間やパートナーを探しあてたり、愛を確かめあったり、身体を養ったりする穏和な感覚出すよ。平たく言えば、視覚と聴覚はいつもビクビクしている。戦々兢々としている。そんなところへ、安らかさを与えると、視覚と聴覚は心底ほっとする。何よりの慰みになります」
主治医の話は、まんざら荒唐無稽にも思えず、ユゲットは傾聴する姿勢になった。
「だからこそ、美術や音楽が成立しているんです。猜疑心の強い、いつもびくびくしている目と耳に、美しい形や色、音を提示するのは、ちょうど狩人に追われ、手傷を負ったウサギを保護し、治療してやるようなものです」
帚木蓬生 『受精』より 角川文庫
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今回は、いささか満足度に欠けるものがあった。
途中までが、なんか冗漫なのだ。
しかし、五分の一の分量にあたる後半のサスペンス仕立てはさすが。
一本の小説を仕上げるのに、厚さ10~15㎝のファイルを用意するという蓬生さん。
いわば、趣味の猛勉をするわけだ。
後半の展開を裏付けするためにその努力が駆使されるわけだが、意味の深い結末へ向けての段取りがくどく感じられてしまった、、、。
そんな中で、徳さんが注目したのは、主人公の一人であるツムラ産婦人科医の恋人マリアの、自らサンバりながらの踊りの説明。
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「カーニバルは、一年間使わずに眠っていた筋肉を喜ばす時なの。少しぐらい動かしただけでは喜んではくれないわ。動きがすべての筋肉に伝わるには時間がかかる」
「わたしたちが獣であったときは、その筋肉全部を使っていたのに。カーニバルは、わたしたちが獣に還る日」
「ほら無心で踊っていると、どこの筋肉が動きたがっているか分かるでしょう」
「そうそう。日頃していない動きをするためには、日頃していない姿勢をしなければいけない。何故って、運動は姿勢の連続的な変化だから」
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他のところで、エアロビクスなんかはつまらない。
軍隊の行進と同じ。
ワンツースリーフォー、ワンツースリーフォー。
と、揶揄されているのが面白い。
確かに、エアロビクスに魂は入ってない。
本日のおまけ
ブラジル人のよう陽気さと、リズム感の良さが伝わってくる。
サンバダンサー
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