《ニュース》

総選挙真っただ中のイギリスですが、6月に発表された推計で、富裕層の国外脱出数が中国に次いで世界2位となる見込みであることが分かりました。

 

《詳細》

この推計は、英コンサルタント会社のヘンリー・アンド・パートナーズ社が毎年発表している統計で、投資可能資産が100万ドル(約1億5000万円)以上の「ミリオネア」の流入・流出数を予測しています。2024年の予測値は1位の中国が1万5200人であるのに次いで、2位のイギリスは9500人で、23年の4200人から2倍以上、22年の1600人からは約6倍と急増中です。

 

その大きな原因は、イギリスにおける外国人居住者の、海外での所得への課税を免除する制度「Non-dom税制」が廃止されることにあるようです。

 

労働党はかねてよりこの税制の廃止を主張しており、昨年秋の党大会で、次期総選挙の公約にすることを明言。さらに労働党は、投資ファンドや私立学校の学費への課税も追加しようとしており、海外資産に対する相続税免除の撤廃など、富裕層をターゲットとした増税を目指しています。

 

すると、与党・保守党のスナク政権も3月、Non-dom税制を廃止すると発表。すでに1月に、年金や失業保険の財源である国民保険料を賃金の12%から10%に引き下げていましたが、Non-dom税制の廃止による増収でさらに2%下げるとしています。加えて、児童手当の対象を拡大し、酒税の減免や低所得世帯の支援を延長するとし、そのためにエネルギー企業の追加課税の1年延長、電子タバコやたばこの増税、エコノミークラス以外の航空券の増税も行う方向です。

 

こうして総選挙の結果にかかわらず富裕層への増税が既定路線となったために、外国人非永住者の脱出が始まりました。ロンドンの法律事務所には問い合わせが殺到しているといい、富裕層への税制優遇措置が充実するスイスやイタリア、モナコ、ドバイなどへの流出が加速しているといいます(6月6日付ブルームバーグ電子版)。

 

その結果、イギリスの国内総生産(GDP)は確実に減少することになるでしょう。