香港、警察の実弾射撃で中高生が重傷 政府は一斉弾圧の恐怖あおりデモ潰しを画策
2019.10.06(liverty web)
写真:PaulWong / Shutterstock.com
《本記事のポイント》
- 香港デモに参加した少年が、警察の実弾射撃を受け重傷
- 「緊急条例」の発動で、立法手続きなしに法律をつくれる"なんでもあり"の状況に
- 「第二の天安門事件」が起きる可能性もあり、日本政府にとっても他人事ではない
香港政府が、いよいよデモ隊を一斉弾圧しかねない雰囲気だ。
4日夜に行われた香港政府への抗議デモで、私服警察官が実弾を発砲。デモに参加していた14歳の少年の左太ももに命中した。中国建国70年を迎えた1日にも、18歳の男子高校生が警察に左胸を撃たれており、4日間ですでに2人の少年が被弾している。
警察側は発砲を「合法だ」と主張しているものの、中高生に銃口を向けた警察に対し、香港市民の怒りが強まっている。
14歳の少年が被弾した4日の抗議デモは、香港政府が施行を宣言した「覆面禁止法」に抗議するためのもの。デモ活動などの参加者にマスクで顔を隠すことを禁じ、違反者は2万5千香港ドル(約34万円)以下の罰金や1年以下の禁錮刑に処すことができる同法律に対し、香港各地で抗議デモが起こった。
覆面禁止法の制定は、「一斉検挙」の可能性を意味している。同法律によって、マスクを着用してデモに参加するだけで「犯罪者」となるため、警察は手当たり次第にデモ隊を逮捕することができる。
警察が容赦なく刺激性の催涙ガスを発射してくるデモの前線において、ガスマスクは必須。それだけでなく、デモ参加者にとってマスクは身元特定を避ける命綱だ。マスクを外せば監視カメラなどで個人を特定されやすくなり、家族や友人・知人にも累が及びかねない。
「マスクを着用すれば、一斉検挙されるかもしれない」「マスクを外せば、個人を特定され突然逮捕されるかもしれない」
デモ隊の恐怖心をあおり、一日でも早くデモを潰したい政府の考えが見てとれる。
「第二の天安門」の可能性
「覆面禁止法」以上に怖いのが、「緊急状況規則条例(緊急条例)」だ。
キャリー・ラム行政長官は4日、立法会(議会)の審議を経ずに行政長官の権限であらゆる規則を適用できるようになる「緊急条例」を発動。その場で、覆面禁止法の制定を宣言した。
立法手続きを踏むことなく行政長官の命令一つで法律をつくれるため、民主主義の精神に反するような悪法がまかり通ってしまう危険性がある。ラム氏がその気になれば、私有財産の差し押さえや報道規制も可能になり、「法の支配」そのものが揺らぎかねない。「第二の天安門」という言葉がよぎるほど、緊迫した状況だ。
香港には約2万5000人の邦人が滞在しており、日本政府にとっても他人事ではない。無差別な一斉弾圧が始まれば、日本人が被害に合う可能性も高い。日本政府は、香港にいる邦人保護の名目で、香港沖に自衛隊の艦船を送ることも検討するべきだろう。それが結果として、アメリカや旧宗主国のイギリスを巻き込み、香港の自由を守るきっかけにもなり得る。
中高生に実弾を発砲するような隣国の状況に対して、少なくとも日本人として異議の声を上げる必要があるはずだ。外国での出来事だからといって、他人事でいていいわけはない。
(片岡眞有子)
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