
2017年発行/小学館文庫
神田川病院に勤務する33歳の医師・早坂ルミ子は末期のがん患者を診ているが、「患者の気持ちがわからない女医」というレッテルを貼られ、悩んでいる。ある日、ルミ子は病院の中庭で不思議な聴診器を拾う。その聴診器を胸に当てると、患者の心の声が聞こえてくるのだ。
第1章、千木良小都子(33歳)の場合は大女優の母に猛反対されて諦めた芸能界デビューをしたかった後悔である。
第2章、日向慶一(37歳)の場合は、俺はもうすぐ死ぬというのに、見舞いに来る妻はその都度自分の死後の金の話ばかりする……。
第3章、雪村千登勢(76歳)は娘の結婚に反対したので娘は46歳の今も独り身でおまけに頑固な父の世話をしている……。娘の幸せを奪ったことを後悔し死んでも死にきれないと思っている。
第4章の八重樫光司(45歳)の場合、中三の時、爽子という美少女がいた。彼女の家は貧乏である日彼女は教師の財布から金を盗む。それを目撃した自分と親友。なんと親友が彼女の罪をかぶってしまった。以後親友が没落していった。俺が罪をかぶるべきだった、という後悔。
以上のような症例にルミ子は患者の胸に聴診器を当てて本音を聴くとともに、そのとき選べなかった別の人生を垣間見せてやる。
第3章、雪村千登勢(76歳)は娘の結婚に反対したので娘は46歳の今も独り身でおまけに頑固な父の世話をしている……。娘の幸せを奪ったことを後悔し死んでも死にきれないと思っている。
第4章の八重樫光司(45歳)の場合、中三の時、爽子という美少女がいた。彼女の家は貧乏である日彼女は教師の財布から金を盗む。それを目撃した自分と親友。なんと親友が彼女の罪をかぶってしまった。以後親友が没落していった。俺が罪をかぶるべきだった、という後悔。
以上のような症例にルミ子は患者の胸に聴診器を当てて本音を聴くとともに、そのとき選べなかった別の人生を垣間見せてやる。
女優にならなかった小都子はならなかった人生に納得し母に感謝するが、ほかの症例は反応がさまざま。
第4章の八重樫光司は親友と再会して美少女と彼女の母について、将棋でいう「感想戦」みたいなやりとりをする。それは美少女の麗しくない内面に切り込むことになるが、それで吹っ切れる。
あの時ああしていればよかった、という心理をついて後悔を起点に展開した物語は意表をついていておもしろい。
4例ともハッピーエンドであることが救いである。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます