川崎大師
きのう鷹同人7名が川崎吟行句会を行った。川崎の1人が幹事で多摩勢3名と小田原勢3名を集めた。川崎駅に9時半集合はとても無理で小生は句会場へ句会開始に間に合うように行くことで許してもらった。女6名は飯島晴子が嫌った団体行動をとったらしい。それに参加しなかったことで小生は後の句会で役に立った。
昨日は誤算続きであった。まず、賃労働を終えて出ようとしたときカメラが光っていることに気づいた。ずっとオンになっていてバッテリーを失っていて以後1枚も写真を撮れなかった。写真はすべて借り物である。
昨日は句を作るより写真に没頭しようと思っていた。川崎大師が吟行の目玉らしいが神社仏閣で句を書きたくない。それで行く前にそうとう作った。邪道であるが水原秋桜子の「桑の葉の照るに堪へゆく帰省かな」は帰省する前にできてしまったという。気合が入れば行く前に句はできて不思議ではない。
川崎吟行と聞いたときすぐ、そこはは南武線の終点、ゆっくり眠れるなあ、南武線で5句くらいできるなあ、と思った。
その1句、
起されて終着駅や遠霞
に1点入った。採った人が「こういう句も吟行にあるのですね」とコメントしたとき、やったと思った。たぶん川崎へ着いてからが吟行と思い込んでいる正直者や肩に力が入っている人がいるはず。電車に乗ったときから吟行は始まっているし俳句はむつかしいことを考えずに書く方がいい、というメッセージを込めた。「囀や終着駅は始発駅」も思い浮かんだがあまりに馬鹿らしく句会には出さなかった。
南武線ひたすら南下うららけし
4点も入った。多摩勢2人のほか小田原勢2人が採ったから普遍性がありそう。この句は言葉遊び。「なんぶせん」という響きがきわめて地方を鄙を感じさせる。。都会的、洗練といったイメージの対極にある。「なんぶせん」に「なんか」をつけたら語感はきわめてうららかであろう。「ひたすら南下」は嘘で、実際には南東へ進む。けれど「ひたすら南下」で自他ともに納得する。俳句はまやかしである。
風光る犬の飛びつくフリスビー
これも行く前に作った。川崎は川の崎、多摩川の町である。府中の河川敷に犬と遊ぶ人がいるなら河口周辺に犬と遊ぶ人はいるだろう。吟行句として変ではあるまい、と考えた。
きのう雨もよいだったので「風光るですか」と笑った人もいたが「春陰にしなさい」と誰も野暮なことは言わない。さすが鷹同人である。
寺より多摩川に興味があった。川へ出て歩いたのはいいが駅へ戻ろうしたらずっと塀やフェンスが続く。向こうは工場らしきたたずまい。1キロ以上迂回しないと線路に出られない。朝から1万7000歩ほど歩き汗をかいた。これが第二の誤算。川崎へトレッキングに来たのではなかったが……。
たんぽぽや海近うして川ゆたに
は以前、鷹に出した句である。イメージは大河こ河口でありちょうど川崎の多摩川である。まさに句の通り。水は右へ流れているのか左へ流れているのか、流れていない感じさえする。水は永遠に俳句の素材になる、と感じた。
川中の洲に鳥遊ぶ彼岸かな
これは現地で作った。川は湖のようで夏なら泳ぎたいほど静か。中州に鳥がいて俺もそこへ上陸したくなった。この句を2人ほど採ってくれたがどのように褒められたかわからない。補聴器を忘れて聞き取れかった。
多摩川、河口から4kmあたり
句評は歯に衣をきせず行った。
「〇〇や駅の楽譜に声が出る」という句を2人が採ったが小生は異議を唱えた。「駅の楽譜」とはなんぞや。それはそれを見た人しかわからないことでありこの表現では普遍性を有していない。これが団体行動で吟行することの弊害なのである。半端な句を雰囲気のみで認めてしまう。奥坂まやに吟行における普遍性について叩き込まれてよかった。
6名のうち5名は小生と面識があり小生が何の遠慮もなく句の良し悪しを言う奴ということはわかっている。小田原から来たはるみさんは初対面。ずばずば言って嫌われたくないという思惑がちらっとあったが句会が始まるとそんなことは忘れた。
たまたま採った句が彼女の句であった。川崎大師の参道は長く店がきらびやか。いちばん目につくのが達磨である。ものすごい量が店頭に並んでいる。これを誰かが見て句を書くだろうと思った。小生は達磨を句にできなかった。
これをはるみさんはしかと句にしていた。季語「春興」はいい季語だったので褒めると少女のように顔を輝かせて喜ぶ。自作「歓びを知る人に摘む苺かな」を思ってこちらも嬉しくなった。
自分の句を採ったのが1人だけ、けれどその人の講評がほれぼれするほどよい。これは句会のひとつの醍醐味であろう。はるみさんとはいい出会いであった。
川崎大師参道の商店街
きのうは結構褒めた。褒める句が多かった。6人の句を褒めることができてよかった。褒めるときはうんと褒めるのがいい。それで気分よくなれば今日はいい日だったと思える。雨になったが小生を含めて全員が実りある1日だと感じたのではなかろうか。
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