天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

2月上旬の藤田湘子を読む

2023-02-08 07:41:16 | 俳句



藤田湘子が60歳のとき(1986年)上梓した句集『去來の花』。「一日十句」を継続していた時期にして発表句にすべて日にちが記されている。それをよすがに湘子の2月上旬の作品を楽しみたい。

2月1日
わが臓腑やしなひたまへ寒蜆
伝統的な養生法を丁寧な命令調で展開して見せた。
侘助を汚(を)と見し蜘蛛の下りきたる
「侘助を汚(を)と見し」は作者の思い。えらく主情的な作。

2月2日
ふるさとの海は鳴る海蓬餅
小田原の海、太平洋である。「鳴る海」と端的に言って愛着が出た。季語は意表をつく付け方。
病む母が妻に甘える日永かな
嫁姑関係の一端を情濃くとらえた。

2月3日
ゴムホース寒鯉に泡ふるまへり
泡を鯉が喜ぶのか。大人の悪戯ではないのか。
オリオンは冬帝に侍し吾に聳ゆ
「侍し」と「聳ゆ」のコントラストが冴え気高い一句に。

2月4日
蕗の薹子育ての悔いさゝかは
たしか娘さんが二人いたはず。「いさゝかは」くらいなら上出来では。

2月5日
岬端のこの青空を寒波行く
空の青さは寒さをより感じさせる。寒風を寒波といったのがおもしろい。

2月6日
風花は海のひかりとかゝはらず
下敷きに「白雲と冬木と終にかかはらず 虚子」があったか。誰もが先達の世話になっている。
あまり寒し花を買はむと妻誘ふ
寒いとき妻を誘って花を買うとは不思議な趣味。

2月7日
我よりも妻の強情下萌ゆる
具体的にはどういうことか。まあ先生にずっと連れ添うのだから強情でないと務まりません。

2月8日
鍼供養月の小溝のかなでそむ
妙な付け合わせ。「かなでそむ」というほど清らかな流れなのか。

2月9日
三つ買ひぬ掌に載る春の花鉢を
6日も花を買った。今日また三つも買った。先生はかように花好きだったのか。
春寒の肘の膏薬かぶれかな
これは花のない内容。万年筆の使い過ぎなのか。

2月10日
刻々とわが香失せゆく干蒲団
それを寂しがっているようなところがおもしろい。そこまで自分に固執するのか。

写真:多摩湖の丘陵
コメント
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