天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

墓穴を掘る静けさや胡桃拾ふ

2019-11-19 10:15:49 | 身辺雑記
11月14日、天竜川に注ぐ三峰川(高遠付近)

今年はわが人生のなかで特異な年であった。
3月に浅川で人が採ってくれた胡桃を大量にいただいた。それは湯船半分ほどの量でありほぼ毎日妻と食べて9月中旬まで持った。
以後自分で胡桃探しをはじめ、多摩川や浅川で拾った。11月14日、15日は伊那を旅して18キロ採取して持ち帰った。幼少のころ父が川端で胡桃を拾っていた光景を思い出しそれを辿っている自分に驚いた。
「野生果実ハンター」を自称してきた自分にとって新参者の胡桃が桑の実や柿を押しのけて王者の位に就いたのである。

 11月3日、日野市浅川付近


山風にくるくる落つる胡桃かな
まほろばや一歩一歩に胡桃踏み
散らかるや誰のものでもない胡桃
手に取りて息かけ胡桃われの物
墓穴を掘る静けさや胡桃拾ふ


 11月14日、伊那市高遠

地に胡桃腐らせる国南無阿弥陀
亡国の誰も拾はぬ胡桃かな
愛国の徒なり胡桃に平伏して
心身にしんしんと沁み胡桃の香
草深く黒く静もる胡桃かな


 11月15日、伊那市西箕輪


木に擦るや胡桃拾ひしか黒き手
四つ這ひに胡桃拾へば暮れにけり
老人と胡桃に時間あふれをり
ごつごつの手の握りたる胡桃かな


 活躍する自転車、我輩の移動・運搬手段

 

 上は採ったばかりの胡桃、下は洗浄した胡桃

かまはれぬ老人穿る胡桃かな
黒々と腐る孤高の胡桃なり
胡桃割るそのことのほか何やある
精魂の籠りし胡桃叩き割る


 三日に一回はやっとこと金槌を持つ


胡桃は歳時記では秋であるがそれを採る活動はオールシーズンである。彼らの厚い殻が中身を長い時間保存する。その意味で胡桃は米、南瓜、馬鈴薯、人参、牛蒡などのような保存食である。保存期間は米より劣るがほかのものより勝るかもしれない優れもの。
食べるまでに手間がかかるがかえってそれは暇をもてあます老人にとって福音ではなかろうか。
問題は手間をかける生活を好むか厭うかだ。ぼくは手を使う手間のかかる生活にこれからも邁進するだろう。ここには発見があり未来がある、そして詩があると思うのである。
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