月刊 きのこ人

【ゲッカン・キノコビト】キノコ栽培しながらキノコ撮影を趣味とする、きのこ人のキノコな日常

『きのこの絵本』

2009-08-13 21:45:04 | キノコ本
きのこの絵本 小林路子 文・絵

きのこ画の第一人者(と言えるほどキノコ画家おらんけど)によるキノコ絵本。

絵本とはいえ、ストーリーなどが特にあるわけではなく、体裁はキノコ図鑑そのもの。小林さんのイラスト以外の装飾はいっさい省き、清潔感のあるすっきりとした構成は、丹念に描かれたキノコ画を最大限、生かすためのものだ。
28×21センチの大判なので、キノコをほぼ原寸大で載せられる。それでいてなお余白が十分に取れるのだから、伸びやかで開放的な水彩画をゆったりと眺められる。ウサギやクマなどの動物のイラストが子どもたちの目を引きつけるだろう。うーん、それにしてもかわいらしい。メルヘン万歳。

ただ、私のようなキノコ人は、少々複雑な気持ちでこの絵本を眺めなければならない。今まで幾多のキノコ現場に繰り出してきたが、こんなメルヘンチックなキノコに出会ったことって一度でもあるか?まあ百歩譲ってそれがあったとして、そこでメルヘンチックな気分に浸ることができたか?

否!

キノコの現場ってちっともメルヘンチックじゃないぞ。なんだかジメジメしてて服がまとわりついてくるし、呼びもせんのに蚊だかハエだかが集まってくるし、地味すぎたり腐ってたり干からびたりで清潔で美しいキノコなんてほとんどないし。

ああ、こんなキノコ見られたら死んでもいい!……この絵本はキノコ人の、かくあってほしいという夢願望を具現化したバーチャル・キノコワールドと申せましょう。

……くだらんケチつけて申し訳ありません。ステキな本です。ステキ過ぎます。