目指せ!映画批評家

時たまネタバレしながら、メジャーな作品からマイナーな作品まで色んな映画を色んな視点で楽しむ力を育みます★

朱花の月 ★★★

2011-09-04 12:49:08 | ★★★
渋谷のユーロスペースで鑑賞。



(以下あらすじ)
奈良県飛鳥地方。朱花という色に魅せられた染色家の加夜子は、地元のPR誌編集者の恋人・哲也と長年一緒に暮らしている。数年前に移り住んできた木工作家の拓未は、古い民家を改築して新しい生活を始めた。そんな時、かつて同級生だった加夜子と再会、いつしか二人は愛し合うようになる。幸せで穏やかな時間を過ごす二人だったが、やがて加夜子が身ごもった事をきっかけに、平穏な生活に変化が訪れる事に…。
(以上、goo映画より)



河瀬監督の映画は「七夜待ち」「もがりの森」を鑑賞したことがあります。毎回相方に連れられて観に行っております。私の専門外ではあるのですが、こういう映画も観ることで色んなものの見方が出来るようになるのではないかなあ、と思って映画は観るようにしています。それでも観ない映画もあるわけですが・・・苦笑。





奈良県飛鳥地方に監督は御住まいだそうですが、本当に美しい風景の数々を見事に切り取っていて、冒頭から画面の美しさには見惚れます。タイトルにもあるように月の映像とか、この映画のために撮影したのでしょうが、それにしても綺麗な月を撮るものだな、とぼーっと観続けておりました。





映画撮影方法をトークショーで聞いてきた相方の言によると、どうやら河瀬監督は詳細な脚本やト書きは用意しないタイプの監督だそうで、大まかに筋立てがあって、後は撮影中の役者や自然の成り行きに結構任せている部分が多い監督だそうです。そういう話を聴くと、一番に思い浮かべる映画監督は北野武監督なのですが、北野監督ほどではないにせよ、この河瀬監督にも映画のカラーとでも呼べるようなものが感じられるように思います。色彩感覚とか、かなり非凡なものを持っておられるのではないかな、と。朱染めの染物の色合いとか。映画を穿った見方をしてしまう私からすると、終盤の「アレ」をやりたくて、朱染めを生業としているのかなーと邪推しないでもないですが、とにかく、美しい色彩。




それにしても穏やかな映画でした。穏やかさの中にも激しい一面もあるのですが、それもセリフや音楽よりも、自然で表現しており、これぞ、ハリウッド映画のドタバタ映画の対極に位置する映画だな、とも感じます。静かな穏やかさの中に鋭いナイフのような、鈍い鈍器で殴られたかのような重たいリビドーの発露が終盤見え隠れしたりして、見所のある作品にはなっているかと。

ただ、河瀬監督の作品は良くも悪くも美しく、静かで穏やかなので、お話それ自体を語る人、というよりは、お話の語り方、物事の切り取り方、視点、そういったものが非凡な監督であり、そういう意味では他の巨匠とはまた一線を画しているなあ、と思いました。日本には豊かな自然や伝承が数多く息づいており、そういう歴史の上に、現在があり、そういう日本をこうやって、切り取って私たちの元に、そして世界中に届けている、という意味では、この監督は非常に評価されてしかるべきかと思います。

他の日本の商業映画がダメすぎる、ということでもあるのですが。ハリウッドの真似ではなく、日本でしか出来ないことをこの河瀬監督はやっている。そういう映画を応援していく土壌が日本人にも根付いていけばいいな、とそう感じます。

綺麗な映画です。恋人と観に行くにはちょっとアレかもしれませんが、オススメします。

奈良県に住みたくなる映画でもありました。


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