目指せ!映画批評家

時たまネタバレしながら、メジャーな作品からマイナーな作品まで色んな映画を色んな視点で楽しむ力を育みます★

カンフーパンダ2 ★★★★

2011-09-28 22:01:36 | ★★★★
ドイツに向かう飛行機の中で鑑賞。

(あらすじ)
前作でカンフーをマスターして「龍の戦士」となったパンダのポーが、カンフーを抹殺して中国の支配を目論むシェン大老を相手にマスター・ファイブと共に戦う。強敵を倒すのには、ポーの誕生の秘密が関係していた。
(以上wikipediaより)



何気に夏の映画では一番安定感あって面白かったのでは?一作目を観ていないので、暫定的評価にはなってしまいますが、この映画はかなり面白い。随所に見られるカンフー映画へのリスペクトもそうですが、やはりCGアニメーションのテンポの良さと描き方の秀逸さ。もはや、日本発のCG映画は追いつけないところまで来てると思います。最初の伏線の張り方から、回収の仕方までシナリオに全く破綻がなく、脚本にもキャラ一人一人の描き方にも余念がなく、スマート。アクションシークエンスのテンポの良さと質感の高さ、パンチ一つ、掌底一つとっても、重さがしっかり描かれている。ここまでCGでやられてしまうと、実写のカンフーアクションスター顔負けですよね。ストーリーも結構ベタなはずなのに、感動してしまいました。 子どもに見せてもよいアニメーション映画ですよね、ほんと。

岳 ★★★★

2011-09-28 21:56:55 | ★★★★
全く期待せずにドイツ行きの飛行機の中で観ました。



(あらすじ)
世界の名峰を制覇した後、日本へ戻り山岳救助ボランティアとして活動していた島崎三歩のもとに、椎名久美が北部警察署山岳遭難救助隊の新人としてやって来る。三歩の指導を受けて訓練をこなしていた久美だが、実際の現場で遭難者を救うことが出来ずに自信を失っていた。そんなある日、猛吹雪の雪山で多重遭難が発生する。久美は仲間と共に現場へ向かうが、そこには想像を絶する雪山の脅威が待ち受けていた。
(以上 wikipediaより)



大好きな長澤まさみは最近、あんまり可愛いと感じなくなってきたし、別に小栗旬の映画だから観たいとも思わないし、要は海猿の山版、山猿でしょっ?て思って劇場スルーしましたが、観てみると海猿とはまた違った良さがありました。ちょっと劇場で観た方が良かったかなあ、と後悔してしまいました。

一つの失敗が命取りという意味では山も海と同じくらい危険、取り扱ってる題材は極限状況に陥る人を助ける人を描いてるわけで、海猿と同じような題材なんですが、三歩というキャラ自体が中々に良かった。海猿の仙崎も映画一作目ではトップガン的展開でバディを失うわけで、そんな彼の成長が海猿の一作目の肝になってるわけですが、岳の場合は三歩がすでにそういった悲しみを経験しており、長澤まさみ演じるヒロイン久美もまた、同じ様に父親を亡くしており、ヒロイン久美の成長を通じて一つの映画を構成しています。そういう意味ではさんぽはあくまで、主人公に気付きを与える存在であり、主人公ではなく、久美が主人公と言えるのでしょう。

山のマナーだとか、豆知識だとかを織り交ぜながら、久美が成長していきます。 というか、此の手の親を亡くした話だったり、人が亡くなる話って悲しいんですが、難病モノと違って、山や海の事故って、突然訪れる死なのが悲しみを増幅させますよね。いつかはやってくるかもしれないし、来ないかもしれないのが、死なのだとしても、悔いなく生きることの難しさを痛感します。久美のお父さんのテープのシーンや亡くなってしまう男の子の父親の生き様や、終盤の娘の結婚式のために生き抜く決意をする父親など、たくさんの父親像が描かれていきます。そして、山に捨ててはいけないもの、それはゴミと何?というさんぽの問いかけがとても、深く響くわけです。


それにしても三歩のチート感は凄い。


クレバスに飛び込むシーンもそうですが、彼の驚異的な運動能力の描かれ方には驚きます。恐らくモデルもいるんだとは思いますが、あそこまで雪山で自由自在に動けるものなのかな、と。この辺りは映画的誇張もあるとは思いますが、それにしても中々に面白かったですね。

ただ、佐々木蔵之助演じる隊長以下、山岳救助隊の皆さんはやや三歩に頼りすぎだとは思いました。いくら二次災害防ぐためとはいえ、ボランティアに一任って。。。



結構この映画は良かったなあ、と思います。悔いなく生きること、突然の死を目の前にした時、最愛の人を思って死ななければいけないひとの無念に思い至るとともに自分も日々をきちんと生きていこうと思わされました。

探偵はBARにいる ★★★★

2011-09-28 21:53:02 | ★★★★
上大岡TOHOシネマズで鑑賞。大泉洋主演の同名シリーズ小説の二作目の映画化。



(あらすじ)
札幌・ススキノ。この街の裏も表も知り尽くした探偵(大泉洋)は、いつものように行きつけのBARで相棒兼運転手の高田(松田龍平)と酒を飲み、オセロに興じていた。そこへ“コンドウキョウコ”と名乗る女から電話が……。職業柄、危険の匂いには敏感なはずが、簡単な依頼だと思い引き受け、翌日実行。だがその直後に拉致され、雪に埋められ、半殺しの目に遭ってしまう。怒りが収まらぬ探偵の元に、再び“コンドウキョウコ”から電話が入る。その依頼を渋々こなし、自力での報復に動き出した探偵と高田は、知らず知らずのうちに事態の核心に触れていく。その過程で浮かび上がる沙織(小雪)という謎の美女と大物実業家・霧島(西田敏行)の存在。そして、探偵は4つの殺人事件にぶつかる……。果たして“コンドウキョウコ”は何を目論んでいるのか。事件と事件のつながりは何なのか……。
(以上goo映画より)


テイストから規模感から本当に二時間TVドラマに近いノリなのに、結構面白かったわけです。ススキノの空撮シーンなどは本当に映画っぽくない、TVのスペシャルドラマっぽい。北海道のススキノを舞台に、バーを事務所代わりに使っている「俺」の活躍を描いてるわけですが、大泉洋を起用したことは私は正解だと思ってます。二枚目過ぎず三枚目過ぎず、決める時はサクッと決める、人情にも脆い、女にも弱い、逃げる時は逃げる。人間臭さが大泉洋からはしっかりと伝わる。松田龍平演じる相棒もいい味を出してます。ちゃんと格闘技が強いという特徴を持ったいい相棒像ですね。困ったときは助けてくれる、という。「運動会は今日はナシだよ」などなど、いい皮肉の効いたセリフも多くてよかった。


音楽も軽妙な探偵モノや刑事モノのテイストがしっかり出ている。案外と、実写で最近こういうベタな探偵モノって観てなかった気がします。二時間ドラマを除いて。二時間ドラマの探偵はあんまりスマートな描かれ方しないじゃないですか。この映画の二時間ドラマとの大きな違いはそこです。他は案外と古臭い。携帯電話も持ってないし、足で情報を集める探偵なわけでして、本当に昔ながら。 でも、これが段々と泣かせる方向にいくんですよね。後半は実は大体展開が読めてしまうのにそのベタな話に涙が出てくるんですよね。
大泉洋演じる探偵の「スピード上げてくれー!!!」のセリフで涙腺崩壊してしまいました。小雪はこういう役させると本当にハマりますよね。終盤にかけて本当によかった。

期待してませんでしたが、これは本当に面白かった。シリーズの小説、読み耽ってみようと思わせるに足る作品でした。続編製作決定したそうですが、大いに期待してます。

世界侵略:ロサンゼルス決戦 ★★★

2011-09-28 21:50:16 | ★★★
名古屋のミッドランドシネマで鑑賞。ほんとどこに行っても映画を観てる。



(あらすじ)
1942年2月25日。ロサンゼルス上空に日本海軍機と思われる未確認飛行物体が出現、アメリカ軍が応戦し死傷者を出す騒ぎとなった。後に「ロサンゼルスの戦い」と呼ばれたこの騒動は、その後日本海軍機による攻撃でないことは確認されたものの、実態がわからないまま収束されることとなった。その後、同様の飛行物体が1965年にブエノスアイレス、1983年にソウル、1991年にロンドンで確認されるも、その実態は分からないままであった。

2011年。再び現れた飛行物体は、相次いで地上に衝突。中から現れた侵略者たちは世界中の都市に一斉攻撃を開始した。各主要都市が次々と壊滅状態に追いやられる中、ロサンゼルスもまた例外ではなかった。ロサンゼルス近郊にあるアメリカ海兵隊基地所属のナンツ二等軍曹(アーロン・エッカート)の小隊もロサンゼルスの防衛に投入されることとなる。侵略者の急襲で圧倒的に不利な戦況の中、ナンツ二等軍曹の所属する海兵隊第2大隊エコー中隊第1小隊は、激戦区サンタモニカの警察署へ向かうよう指示されるが……
(以上 wikipediaより)




結論から言うと、コンセプトも公開時期も似通ってる、スカイライン 征服よりは面白かった。スカイラインはスカイラインで結構面白かったんですけどね。低予算モノとして。この映画は仮想戦記モノとして、FPS型映画として、楽しめる。最近、此の手のFPS型映画が作られる傾向は強くなってきてる。映画のゲーム化、ゲームの映画化とでも言えばいいのであろうか。



戦う相手が異星人やUFOってだけで、あとは本当に米軍の仮想戦闘を観てる感じ。実際の戦争でもアメリカ人の若い兵士たちにとって、言語でコミュニケーションが取れない中東の人達など誰がテロリストで誰が善良な一般市民かもわからなかったのは、ハートロッカーなどを観れば一目瞭然。そういう意味では相手が異星人というだけで、殆どテロとの戦いが米国で展開されてるのを観てるのに近い感じだと思いました。



相手が異星人でも中東の人達でも米国兵士のノリはきっとたいして変わらないんだろうな、ということを思わせるのには充分、というか。これがリアルな反応だよなあ、と。リアルな戦闘というのをここまで描けるのに敢えて相手を異星人にしたのはエンタメ要素以上の意図を感じますがね。

あと、公開時期が4月から9月に延期されたわけですが、これは正解ですね。凄惨な映像はすぐに3.11を想起させる映像でした。というか、この架空戦闘の映画で3.11の凄まじさを改めて確認することになってしまいました。3.11が起こる前にこの映画の製作は完了していたはずですから、侵略シーンの大規模破壊シーンなどは殆ど3.11の時に我々は実際に起こったこととして、しかも自然の猛威としてのそれを確認済みなわけです。3.11のテレビの向こう側で起こったこととしてでも映画のそれをはるかに上回っているわけですよ。正直、現実の映像をyoutubeで見たとしても映像体験としては「現実に起こったこととして」映画を上回っている。そういう意味では、3.11後の大規模破壊映画は恐らくさらにスケールアップする必要が出て来るんだと思います。もしくは、そういうジャンルの映画はしばらくは作られないか、のいずれかだと思いました。

朱花の月 ★★★

2011-09-04 12:49:08 | ★★★
渋谷のユーロスペースで鑑賞。



(以下あらすじ)
奈良県飛鳥地方。朱花という色に魅せられた染色家の加夜子は、地元のPR誌編集者の恋人・哲也と長年一緒に暮らしている。数年前に移り住んできた木工作家の拓未は、古い民家を改築して新しい生活を始めた。そんな時、かつて同級生だった加夜子と再会、いつしか二人は愛し合うようになる。幸せで穏やかな時間を過ごす二人だったが、やがて加夜子が身ごもった事をきっかけに、平穏な生活に変化が訪れる事に…。
(以上、goo映画より)



河瀬監督の映画は「七夜待ち」「もがりの森」を鑑賞したことがあります。毎回相方に連れられて観に行っております。私の専門外ではあるのですが、こういう映画も観ることで色んなものの見方が出来るようになるのではないかなあ、と思って映画は観るようにしています。それでも観ない映画もあるわけですが・・・苦笑。





奈良県飛鳥地方に監督は御住まいだそうですが、本当に美しい風景の数々を見事に切り取っていて、冒頭から画面の美しさには見惚れます。タイトルにもあるように月の映像とか、この映画のために撮影したのでしょうが、それにしても綺麗な月を撮るものだな、とぼーっと観続けておりました。





映画撮影方法をトークショーで聞いてきた相方の言によると、どうやら河瀬監督は詳細な脚本やト書きは用意しないタイプの監督だそうで、大まかに筋立てがあって、後は撮影中の役者や自然の成り行きに結構任せている部分が多い監督だそうです。そういう話を聴くと、一番に思い浮かべる映画監督は北野武監督なのですが、北野監督ほどではないにせよ、この河瀬監督にも映画のカラーとでも呼べるようなものが感じられるように思います。色彩感覚とか、かなり非凡なものを持っておられるのではないかな、と。朱染めの染物の色合いとか。映画を穿った見方をしてしまう私からすると、終盤の「アレ」をやりたくて、朱染めを生業としているのかなーと邪推しないでもないですが、とにかく、美しい色彩。




それにしても穏やかな映画でした。穏やかさの中にも激しい一面もあるのですが、それもセリフや音楽よりも、自然で表現しており、これぞ、ハリウッド映画のドタバタ映画の対極に位置する映画だな、とも感じます。静かな穏やかさの中に鋭いナイフのような、鈍い鈍器で殴られたかのような重たいリビドーの発露が終盤見え隠れしたりして、見所のある作品にはなっているかと。

ただ、河瀬監督の作品は良くも悪くも美しく、静かで穏やかなので、お話それ自体を語る人、というよりは、お話の語り方、物事の切り取り方、視点、そういったものが非凡な監督であり、そういう意味では他の巨匠とはまた一線を画しているなあ、と思いました。日本には豊かな自然や伝承が数多く息づいており、そういう歴史の上に、現在があり、そういう日本をこうやって、切り取って私たちの元に、そして世界中に届けている、という意味では、この監督は非常に評価されてしかるべきかと思います。

他の日本の商業映画がダメすぎる、ということでもあるのですが。ハリウッドの真似ではなく、日本でしか出来ないことをこの河瀬監督はやっている。そういう映画を応援していく土壌が日本人にも根付いていけばいいな、とそう感じます。

綺麗な映画です。恋人と観に行くにはちょっとアレかもしれませんが、オススメします。

奈良県に住みたくなる映画でもありました。