目指せ!映画批評家

時たまネタバレしながら、メジャーな作品からマイナーな作品まで色んな映画を色んな視点で楽しむ力を育みます★

シャーロック・ホームズ シャドウゲーム ★★★★

2012-03-13 20:58:12 | ★★★★
シャーロック・ホームズ シャドウゲーム

名古屋のミッドランドシネマで鑑賞。あそこはゆったりしてて、少しプレミアスクリーンっぽいから好き。名駅前アクセス最高だしね。

珍しく、一作目を観ずに続編から鑑賞しました。なーんとなく、この作品は一作目とははっきりと話が分かれてると確信してましたので。と思ったら今週末に一作目が地上波で放映されるんですね!知ってたらなあ…失敗した…。

ガイ・リッチー監督って2009年に公開された前作が最大のヒット作なんですね。二作目も大ヒットしており、ヒットメーカーの仲間入りですかね。彼の固定ファンも多いそうです。
ホームズを演じるロバート・ダウニーJr.は誰が言わずともアイアンマンでの飄々とした演技で一躍スターダムの仲間入り、その後もコメディやアクションなどでヒット作に恵まれてます。
ジュード・ロウも演技派で知られてますが私はガタカの彼が大好きです。

普通、シャーロック・ホームズを題材にすると推理ものになるのが常ですが、そのみんなの常識を思い切り覆し、19世紀末を舞台としたアクション大作にまとめたのは成功したポイントなのでしょう。別段、作品のノリとしてはバディムービーなので、ホームズである必要はないのですが、19世紀末という世相を最大限に活かした舞台設定、小道具、背景、などなどには目を見張るものがあります。世界大戦前夜にモーリアティ教授が暗躍するのをなんとかホームズが彼を止めようとするお話なのですが、これが非常に面白い。

ホームズとワトソンは潤沢な資金と周到な準備による度重なるモーリアティの妨害をかいくぐりながら、真相に迫っていくわけですが、随所で繰り広げられるアクションが非常に観ていて楽しい。ホームズはお茶目で、腕っぷしも強い。周りを振り回す変人なのですが、それに飽きれながらも巻き込まれて行く助手のワトソンという構図はバディモノとしてはよくできています。ホームズの部屋でワトソンに対していたずらを仕掛けるシーンも笑えるし、汽車でワトソン夫婦を助けにやってくるホームズの描写も笑える。笑いが随所に挟まれながら巧みな伏線を張り巡らして、巧妙かつ、並外れた洞察力をアクションに活かしていくホームズがある種、新境地なわけですが、これが楽しいんですよね。この軽妙なロバート・ダウニーJr.というのは、シネマハスラーでも以前言われていたようにアイアンマンでの「発明」ではあるのですが、彼はギャグもこなせる三枚目、という立ち位置を確立しましたねえ。(実際には超イケメンですが)日本で言うと大泉洋あたりのボジションなんですかね。まあ、ダウニーJr.の方がよほどの大物ではあるのですが。

シャドウゲームというのは、ダブルミーニングになっていまして、モーリアティが仕掛けた陰謀、そして、国際会議でホームズが仕掛けたチェスからの頭脳戦の両方をかけてるのだなあ、ということを映画終盤に感じました。ホームズの類稀な洞察力を表現するのに僅かな情報から周りの事象を推測する能力の描写は慣れないとちょっと嫌味なのですが、今作の終盤戦は本当によかったですね。やはり、戦いというのは圧勝よりも多少苦戦した方が面白いですね。

クライマックスから映画終盤の展開は私は良かったなあと思います。このキャストならもう一作くらい観たいなあ、とおもいます。

週末のデートムービーとしてはそこそこオススメです。

神様のカルテ ★★★★

2012-03-07 22:38:08 | ★★★★
フィリピンからの帰りの飛行機で鑑賞。
すっかりレビューが遅くなってしまいました。

(以下あらすじ)
主人公・栗原一止(くりはらいちと)は、信州松本にある本庄病院に勤務する内科医である。彼が勤務している病院は、地域医療の一端を担うそれなりに規模の大きい病院。24時間365日などという看板を出しているせいで、3日寝ないことも日常茶飯事。自分が専門でない範囲の診療まで行うのも普通。そんな病院に勤める一止には最近、大学病院の医局から熱心な誘いがある。医局行きを勧める腐れ縁の友人・砂山次郎。自分も先端医療に興味がないわけではない。医局に行くか行かないかで一止の心は大きく揺れる。
そんな中、兼ねてから入院していた安曇さんという癌患者がいた。優しいおばあちゃんという感じで、看護師たちには人気者だが、彼女は「手遅れ」の患者だった。「手遅れ」の患者を拒否する大学病院。「手遅れ」であったとしても患者と向き合う地方病院。彼女の思いがけない贈り物により、一止は答えを出す。
(以上 wikipediaより)

松本市は仕事でよく行きますので、なかなかに親しみが持てる風景がロケ地に選ばれていて、観ていて楽しかったです。この作品の面白いところはやはり、主人公栗原一止のキャラクターとその彼が暮らしている御嶽荘とその面々とのやりとりでしょう。一止は夏目漱石ファンということで、夏目漱石の小説に出てくるような物言い。小説よりも映画で観るとこの感じは面白い。実際にいると、夏目しゃべりというのはうっとうしいんだなーというのがよくわかる。でも、こういうキャラ、嫌いじゃないなあ。
それにしても、奥さんの山岳写真家のハルとの掛け合いやゆったりとした、二人の生活は観ていて心が洗われるような思いでした。奇しくも「ツレがウツになりまして」の奥さんもハルなわけですが、同じ名前で同じ役者が演じていても本当にキャラクタは正反対ですよね。公開時期も似通っていたので、なかなかにこれは面白いですよね。

お話自体も心が温まるものでした。結構おすすめです。

ツレがウツになりまして ★★★★

2012-03-07 22:34:09 | ★★★★
フィリピンに向かう機内で鑑賞。

宮崎あおいと堺雅人の「篤姫」コンビが送る原作は漫画の映画化。
原作漫画は未読です。

生真面目な性格の会社員だったツレ(堺雅人)がある日突然鬱になってしまい、それを支えていく妻のハルを宮崎あおいが好演しています。

それにしても宮崎あおいは出演作のチョイスが上手です。嫌な言い方になるかもしれませんが、彼女のセルフブランディングの上手さには舌を巻く思いです。芸能界という生き馬の目を抜くような入れ替わりの激しい業界できちんと自分の立ち位置を確保し、その時点で最善と言える選択を積み重ねて流行に乗りすぎず、ちょうどいいバランスで映画やCMに出ているように思います。誤解を恐れずに言えば、この作品でのハルというキャラもともすれば、家事の苦手なズボラな奥さん、というキャラになりかねないところをそう映らないように演じています。ほぼ同時期に神様のカルテが公開されてしまったのはちょっと残念だったかもしれませんが…。

堺雅人は毎回色んな映画で色んな役を上手にこなすなあ、と感心しますが、今回の役どころはどちらかというと、彼向きな役柄かもしれません。芸達者な彼の本領が発揮されたように思います。

それにしても、鬱という症状もしくは状態が世の中にここまで氾濫してしまっていても、やはりいまだに鬱への偏見というものは存在しますし、自分の肉親がそういう状態に追い込まれてしまった時にどこまで理解のあるサポートをできるか、というのは本当に悩ましいところです。単なる怠け者だ、と見なしてしまいがちだし、鬱は恥ずかしいことだと言って人に言えない、だなんて、こともよくありそうに思います。

レビューからは話題が逸れますが、鬱は比較的身近な話題です。私自身がそうだというわけではないのですが。そういう意味ではこの映画は非常に気付きや発見があったように思います。どう接することが、ダメなことで、どう接することが良いことなのか、というとはわかっていてもできていないものです。自分のこと、肉親のことなら尚更です。つい、きつく言ってしまったり、ほんの軽い気持ちで言った一言が命を断ちたくなるほど絶望に追いやることもある、ということ。そういう意味では現代病と言うカテゴリの中でもまだまだ、わからないことの多い病気なのだな、と思わされます。なんせ、頭や心の中の動きが、身体に変調を来すまでになってしまうわけですから。こればかりは本人でなければ辛さはわからないし、周りからは問題なさそうに見えるだけに怠けてるだけに見えてしまうというのも悩ましい問題だなあ、と感じるわけです。周囲の家族や職場の同僚の理解が必要だなあ、と痛感させられます。

そういう意味では追い詰められた生真面目なツレを更に追い詰めなかったハルはとても理想的な対応をした、と思います。現実には共働きでなければああいうツレが治療に専念出来る環境を用意してあげる対応は難しかったわけで、そこはやはり実際に同じことをしようと思っても難しい部分もあるかとは思いますが…。

病めるときも健やかなるときもこれを愛し、いたわり…という結婚式でよくある宣誓の言葉。パートナーがこういう深刻な病気にかかってしまうような時ほど、思い出して相手を支えてあげないといけないんだなあ、と思い知らされます。現実には難しいことかもしれませんが、相手の全てを受け入れ、お互いを尊重しあえれば、困難な局面も二人で乗り越えられるよね、となんだか、妙に納得させられるお話でした。

脇を固めるキャストも実力派が揃っており、安心して観られる良作だと、感じました。オススメです。

TIME ★★★

2012-03-07 22:16:39 | ★★★
渋谷のtohoシネマズで鑑賞。

(あらすじ)
そう遠くない未来、遺伝子操作で年を取らなくなることが可能になった。人口過剰を防ぐため、時間が通貨となり、人々は自分の時間で日常品から贅沢品まで支払うこととなった。裕福な人、すなわち時間を十分に持っている人たちは永遠に生きることができるのだ。他の人は不死のために時間を得るために働き、時間銀行から利子付きで時間を借り、人によっては他の人から時間を奪い、生活していくのであった。左腕に光る時間表示が0になるとき、人は命を落とす。一秒一秒が無駄にできなくなった世界で、ある貧乏な男がひょんな事から117年もの時間を手に入れる。
(以上 wikipediaより)

私、この映画の監督のアンドリュー・ニコルは大好きでして、特にガタカは生涯ベスト級の作品なので、毎回毎回楽しみなんですよね。この人の関わっている作品って、錚々たる作品でして、ガタカ、トゥルーマン・ショー、シモーヌ、ターミナル、ロード・オブ・ウォー、などなど。シモーヌはやや際物色が強いですが、それでもガタカ、トゥルーマン・ショー、ターミナル、の3作品に関わっているというだけでもこの監督が非凡な才能を持って生まれた監督であることは疑いの余地がないのではないでしょうか。この監督、シモーヌの主演のレイチェル・ロバーツと結婚しているんですね・・・知らなかった。イヤー、本当にすごい人。私は好きな監督であり、映画人なわけです。

そんな彼が監督するわけなので、TIMEも期待しないわけがない!ということで観てきましたが、結果は・・まあ、どっちかというとシモーヌ寄りな作品だったかなあ。と。無念。ストーリーは好きな部類のSF設定だったのですが、いかんせん、このSF設定がちょっと大味すぎる。緻密な設定があってこそ、初めてSFってときめくのですが、このSF設定が曖昧だったりすると非常になんでもありになってしまって、つまらないものになってしまうんですよね。今回の作品でいうと、時間がお金の代わりになるという設定がSF設定になるわけですが、この時間がお金の代わりになる、という点がいろいろと取引や奪い合いの部分でいい加減な描写が目立ってしまい残念な結果になっていました。この監督の色彩感覚や映像表現も結構すきなんですけどね。スラムを赤茶けた色で表現しつつ、金持ちの住むタイムゾーンを青白く描いたり、とか。

ただ、やはり映画では物語が非常に重要でして、この物語がガタガタだと、受け入れられなくなってしまうわけです。いやー、こういう大味なSFも好きなんですけどね。。。




ステキな金縛り ★★★★

2012-03-07 21:25:07 | ★★★★
香港からの帰りの飛行機で鑑賞しました。
あー、どうしてこの映画は映画館で観なかったんだろう。
とても楽しい映画でした。どうも私は三谷幸喜の映画に甘い点数をつける傾向にあるようです。
だって、楽しいんだもん。こういう演劇っぽいギャグの狙い方、私は大好きなんですよね。だから、前作の「ザ・マジックアワー」もとても楽しめたし、その前の「有頂天ホテル」も好きな映画です。大傑作、心に残る名作!とは言いませんが、クスリと笑える、そんなハッピーな時間を提供してくれる素敵な映画だなー、と感じました。

(あらすじ)
妻殺しの容疑で逮捕された矢部 五郎の弁護を担当する宝生エミは、将来性ゼロの三流弁護士。勝てる見込みのない裁判に矢部は「旅館で金縛りにあった」とアリバイを証言し無罪を主張する。矢部が泊まった旅館に赴いたエミは、矢部に金縛りをかけたという落ち武者・更科六兵衛を法廷につれて、矢部の無罪を証言してもらうことに。しかし、対する検事・小佐野徹はオカルトを真っ向から否定して、六兵衛の証言は法的に無効であると主張する。更には殺された鈴子の愛人、日野勉が陰陽師を雇って六兵衛を除霊しようとしていた。
(以上 wikipediaより)

今回はネタバレしますのでお気をつけ下さい!




まず、深津絵里はもうそろそろ40歳を迎えるのですが、まだ新人弁護士っぽさを演出するのに何の問題もない、というのが驚きですよね。この人って、老けないなー、とつくづく感心します。声のハリツヤとか変わって来てしまうような気がしますが、まだまだ大丈夫!って感じですよね。前作に続いて素敵な演技を披露してくれています。特に更科さんのまねをして、話すシーンや警察官に疑われないように一人芝居をするシーンなんかは最高です。

落ち武者の亡霊を演じた西田敏行もまた、今回もいいコメディアンっぷりでした。それにしても、落ち武者の役ってこれだけの大御所の西田さんにさせるというのもすごいし、引き受けるほうも引き受けるほう。まあ、釣りバカ日誌で鍛えられた西田さんには何の苦労もないのでしょうけど笑。

二人で歌っているエンディングテーマもなかなかに素晴らしいできでした。三谷幸喜映画で歌うのは深津絵里は二回目ですが、本当にこの人は歌手として活動してもおかしくないくらいステキな歌声の持ち主です。西田敏行もまた、素晴らしいバリトンを響かせています。

今作は脇役もまたことごとく豪華でして、阿部寛に小日向文世、中井貴一、竹内結子に山本耕史、浅野忠信、草なぎ剛、戸田恵子や生瀬勝久、深田恭子、篠原涼子、唐沢寿明、挙げればきりがないほどの豪華キャスト。まあ、キャストが豪華だからいい映画ということはなくて、いちいち豪華なキャストに少々、気が散るのですが苦笑。出来れば、そこまで豪華キャストで固めてほしくはなかったなあ、というのが正直なところ。なぜなら、この映画、結構本筋に絡めつつ、深津絵里のお父さんのお話を絡めてくるのですが、ここのところが本当に私にはツボでした。なので、そういうお話に集中させてくれたらよかったなあ、と本当に思ったのでした。どうも、

私は早くに母を亡くしているので、この深津絵里の演じるエミの父への気持ち、つまり「お父さんは、見守ってくれてなんかいやしない」という気持ちが痛いほどよくわかります。後半でエミは仕事を達成させてしまうことで、お父さんと直接出会うことは出来なくなってしまいますが、ハーモニカの音でお父さんと会話することに成功します。ここは結構涙なくして観られないくらいの展開なのですが・・。ただ、二度と出会えなくなってしまう悲哀を描くわけなので、本当であれば、もう少し阿部寛の扱いを考えてほしかったようにも思いますが・・・。

まあ、お涙ちょうだいもほどほどにコメディ色強いエンドロールを持ってくるあたりに喜劇作家としての三谷幸喜の面目躍如というところが出ているのかなあ、と。

楽しい映画でした。賛否両論ある監督ですが、私は大好きです。これからも映画も作っていってくれるといいなあ。

J・エドガー ★★★

2012-03-07 21:14:05 | ★★★
香港へ向かう飛行機の中で鑑賞しました。
うーん、じっくり見ていましたが、傑作!とは思いませんでしたね・・。

(以下あらすじ)
1960年代。黒人公民権運動の盛り上がりを苦々しく思っていたFBI長官のジョン・エドガー・フーヴァーは、キング牧師宅の盗聴を命じると共に、自身の伝記をスミス捜査官に口述タイプさせる。
1919年。アメリカでは、ソビエト連邦の建国を受け、共産主義者や労働運動家の過激派によるテロが活発化しており、ついにはパーマー司法長官自宅が爆破される事態となった。これを受けて司法省は、過激派を逮捕し、国外追放する特別捜査チームを編成、24歳のフーヴァーがその責任者となる。無力な父親と支配的な母親のもとに育ち、吃音の内気な青年であるフーヴァーは、司法省の新人秘書ヘレン・ギャンディを国会図書館のデートに誘い、プロポーズするが断られてしまう。しかし、彼女を個人的な秘書にすることには成功した。
国会図書館の蔵書をインデックス化し、検索時間を飛躍的に向上させた経験から、フーヴァーは全国民の指紋などの個人データを集約し、犯罪捜査に利用する構想を持っていた。ただし、彼にとっては、彼の考える国家の道徳秩序を破壊し、破壊しようとする者もまた犯罪者であった。 わずか数人のフーヴァーのチームは、過激派のアジトを急襲、大勢の過激派を逮捕することに成功する。
(以上 wikipediaより。)


ディカプリオは今回はフーヴァーを演じたわけですが、日本人にはまず、フーヴァー長官があまりなじみがないですよね。アメリカでは有名人だと思いますが。なじみが無いから面白くない、とは言わないのですが、どうもフーヴァー自身、感情移入を拒むようなタイプの共感しづらい人生を生きているために、どうしてもお話にも感情移入がしづらかったように思います。ディカプリオ自身の演技は素晴らしく、若いときも年老いた後も素晴らしい役を演じているように感じましたが、それ以上のものは感じられなかったように思います。