目指せ!映画批評家

時たまネタバレしながら、メジャーな作品からマイナーな作品まで色んな映画を色んな視点で楽しむ力を育みます★

サイレン ★★★

2006-02-20 14:37:11 | ★★★
「サイレンが鳴ったら決して外に出てはならない!」
ネタバレするかもしれないのでお気を付けてお読みください!

こういう伏線の回収の仕方はちょいと反則かなあ。

そんな予感はしていましたが、鉄塔でのココリコ田中の言葉で座席からのけ反りました。

それにしても終盤までちゃんと楽しめました。


観客へのミスリードはほとんど完璧でした。実は途中で大胆にヒントがあったりするのですがサイレンの存在が大きすぎて目くらましにあいました。

サイレンというのは警報のサイレンですが、人魚伝説で有名なセイレーンと絡ませて物語を構成しています。

伏線は大体は回収するのですが、いくつか疑問が残ってしまいました。

犬のエピソードや阿部寛は何だったのか?

あの赤い服の女は何だったのか?

どこからどこまでが主人公のみた錯覚だったのか?

もちろんミスリードに導く過程でいくつかは回収していましたが、どうも腑に落ちない終わり方だったように思います。

まあ、ああいうオチではどうでもいい瑣末な出来事とも言えてしまえますが…。

島民の集団失踪の話と人魚伝説をうまく絡めた話の持って行き方はとても興味を持たされるものでしたがやはり広げた割に回収の仕方がイマイチかと。

ちょっとイベントの起こり方がゲームみたいだなあ、と思っていたらこの作品はゲームの関連作品だそうで…。

ゲームのテイストをそのまま映画にしてもあんまり面白くはないんだなあ、と感じました。

映画なら映画なりにアレンジを効かせて欲しかったですね。

サイレンの音の迫力はなかなかのモンでした。このあたりはサウンド・サイコ・スリラーを自称するだけのことはあるように思います。

森本レオはなかなかよかったですよ。文字通り怪演!

ココリコ田中は配役ミスですね。ココリコミラクルタイプをよく見ている人にとっては彼が出てくる度に笑いの嵐が吹き荒れたことでしょう(笑)

フライトプラン ★★★

2006-02-20 14:33:46 | ★★★
ジョディ・フォスター主演の巨大旅客機を舞台にした密室劇。

夫を亡くし、心身ともに疲れきった母娘は住んでいた場所を離れ、アメリカへ向かう。旅客機機内でしばらく寝ている間に、娘が忽然と姿を消しその姿を誰も見ていないという。機内をくまなく探し回るも見つかるん気配がない。旅客機の構造を知り尽くした設計者である母はくまなく探し始める。機内の機長や公安はこの母親に娘の存在自体を疑い始めるが…。

サスペンスになるんでしょうかね。強き母をしっかり描いた作品であり娘を見つけようと必死に捜す母親役を演じるジョディ・フォスターの熱演はかなり魅せられるものがありました。あまり難しいミスリードはないので中盤で展開はある程度予想出来てしまうわけですが、そもそもそういう部分でのどんでん返しを期待せずに見に行ったためにそれなりに楽しめました。

見所は旅客機の機内を忠実に再現したセットですね。ああ、こういう仕組みになってるんだあ、というのは一般人にはわからないため勉強にはなります。
アクションやサスペンス要素は大して高くないので物語を通したカタルシスは得られにくいですね。

何よりアラブ系の男の扱いはあまりに不憫でなりませんでした。

この旅客機と主演女性の関係をそのまま世界とアメリカの構図の縮図と考えれば、自ずと母親がアラブ系男性に謝罪しなかったことも理解出来ますが。

そう考えるとある種の社会派映画とも考えられるから面白いかもしれません。

平均点的な映画でした。

CASSHERN ★★

2006-02-12 22:34:57 | ★★
加筆修正
2006年2月12日

(前回投稿日2005年1月13日)

エンタメ装っておきながらテーマが重過ぎると思いました。
劇場予告や、宣伝ではアクション巨編のように広報していながら
実際に映画本編を見るとどちらかというと派手なアクションはなりを潜め、
場面を変え、品を変え、様々なテーマを押し付けられているように感じてしまいました。

監督は宇多田ヒカルのPVでおなじみ紀里谷和明監督。
この人は監督をやるよりも、美術監督なんかをやってほしかったですね。
背景美術や映像表現、CGの色彩感覚は日本でも非凡なレベルに達していて
そこは高く評価すべき点です。
しかし、物語の方向や展開はテーマ重視です。

本来ヒーローモノであったはずの肝心のキャシャーンその人は
八割方やられるシーンで展開します。弱すぎないでしょうか?
ヒーローたるもの、やるときはガンガンやって欲しいです。
フラストレーションが結構溜まりまくりました。

カタキ役の唐沢さんはいいですね。とてもいい。
この人は日本の役者でも指折りのケレン味たっぷりの俳優だな、と思います。
重厚感あるドラマを演じさせると右に出るものがいない、って感じです。

ただ、せっかくのいい演技も脚本が悪ければ台なし!です。
なんだか前半のキャシャーン誕生までを丁寧に描きすぎていて、
後半も重い展開で一番面白いのが中盤のキャシャーンと唐沢さんの対峙シーン、
というのは映画の見せ方としてはうまくないんじゃないでしょうか。
前半導入部は魅力あるエピソードか派手なアクションで
観客を映画の世界に引き込んでくほしかったように思います。
戦争映画ならともかく「キャシャーン」という題材で
これではエンタメとしては大失敗でしょう。
肝心要のアクションシーンも早過ぎて
わかりにくいシーンがちらほら…観客が求めていたのは
中盤の展開だと思ったんですが…

なんだか綺麗な紀里谷監督の映像美と重たい空気が互いを潰しあって観客に届きません、宇多田のPVはとても好きでクリップDVDまで買った私としてはかなり残念な映画でした。彼を美術監督に採用して映画を撮れば間違いなくいい作品は撮れそうですがね…次回作は総監督はぜひともやめていただきたい。才能あるなら使い方を誤って欲しくないですね。
更にこの映画、題材がキャシャーンである必要性がゼロです。
そういう意味でも失敗かなーと思います。
キューティー・ハニーもスパイダーマンもスーパーマンもバットマンもそうですが、
主人公がそのヒーローであるからこそ展開する物語やエピソードが
あってしかるべきなんですが、
(例えばスパイダーマンでの能力が使えなくなったりする場面やビルを蜘蛛の糸で飛び回るシーンはスパイダーマンならではの描写ですし、キューティー・ハニーの変幻自在の描写も話の場面展開にうまく機能しています。)
キャシャーンには彼特有の能力が特に見当たらず、描写もイマイチです。
(ハルクは単に怪力なだけの能力ですがその体躯と迫力でうまく描写されていますよね)
キャシャーンを観て思うことはまだまだありますが、このくらいにしとこうと思います。



追記
コメント欄にもあるようにもう一度内容を検証する、ということで
テレビ地上波初登場をいい機会として、この作品を論じてみようかと思います。

Gagaのサイトより引用した文にはこうあります。
「50年もの長き大戦の果てに、世界の大半を支配下とした大亜細亜連邦共和国。だが勝利がもたらしたのは、戦乱の後遺症に苦しむ人々と荒廃した大地だった。反乱勢力とのゲリラ戦が活発化する中、軍部は細胞学の権威・東教授が提唱する「新造細胞」理論に注目する。人体のあらゆる部位を自在に造り出すこの理論が完成すれば、共和国の未来に再建の道が拓かれる。一方の東教授は、難病に冒された妻・ミドリを救うために研究の実用化を急いでいた。そんな折、志願兵として戦地に赴いていた東教授の息子・鉄也の訃報が届く…。
1973年にTV放映された竜の子プロの傑作アニメ「新造人間キャシャーン」を気鋭のクリエイターたちが実写化。宇多田ヒカルのPVで注目された紀里谷和明監督を筆頭に、CG界のカリスマ・庄野晴彦、『ガメラ』の樋口真嗣ら、デジタル世代の技術と情熱を結集した映像叙事詩が誕生した。出演は主人公キャシャーンに伊勢谷友介、ヒロインに麻生久美子、敵役ブライに唐沢寿明。脇役にも豪華な顔ぶれが揃い、それぞれキャラ立ちのいい演技を見せている。
作品の主題は「戦争」。人はなぜ争うのか? この今日的な命題に対し、紀里谷監督はシェイクスピアの「ハムレット」を引用し、人間の本質を見出そうと試みる。メッセージが前面に出過ぎて娯楽性が減退した感もあるが、日本映画の範疇を超えた劇的な世界観は、メリエス以来のフィクション史に一つの達成を告げている。」


かなり的を得た宣伝文句なわけですが。
確かに娯楽性がかなり犠牲になりつつ、戦争を描いた作品になっているといえますね。
「ハムレット」的な要素といいうのは創造者たる博士とブライの関係などに言えるのかもしれませんが、テーマ自体が数多くちりばめられているために、鑑賞後にそういった印象を受けにくいかもしれません。あくまでファクターの一つというか。

まず、やはり目に付くのは映像の美しさ。
質感については他の邦画はもとより、洋画すらも圧倒しかねない映像の美しさには
やはり目を奪われます。戦闘シーンはやはり躍動感があって、アニメ的な映像であるにせよ、その動きは素晴らしいと感じます。
また、独特の世界観とその設定にも目がいきます。
人間のエゴであるとか、新造人間の悲しみであるとか。
音楽も結構いい感じです。



残念な点は細かい設定や世界観を用意してあるはずなのに、説明不足な点もあること。
ロボットの軍団であるとか、稲妻の謎であるとか。
物語自体が新造人間vs人間の構図のはずが攻撃の主力戦力はロボットである点などは
納得いかなかったりしますね。(まあ、そういう風に様々なファクターを取りいれることで戦争を描きたかったのかもしれません。兵器という側面では。ただ、新造人間自体も兵器として描かれているようなのでやっぱりロボットはビジュアル的な必要性から描かれたのかなあ、と思います)
 また、キャシャーンなのに特徴的なヘルメットは少しだけ
お目見えするにとどまり、フレンダーという犬型ロボも登場せず。原作ファンには残念な内容となっていることからも、この作品がキャシャーンという題材を借りた監督の
言いたいメッセージを伝えるために作られた作品であることはわかります。(まあ、元来、映画はそういうものですが)
さらにいえることは作劇上、不必要と思われるシーンが長すぎるように思えることです。
「なぜ人は戦うのかなあ」
「殺されたから殺して、傷つけられたから傷つけて」
「我々の真の敵とは」


とにかく語ろうとするテーマや論点は多いわけですが、結局のところ
戦争や人と人との争いについて、様々な監督の伝えたいことが溢れ出していて、
そして、それらが断片的にだったり、連続的にかなり不器用に
抽出されているために観客のスムーズな理解を妨げているように感じました。
編集でもっと、すっきりと楽しめる快作にもなりえた、
非常に「惜しい」作品ではありました。
不器用ながらも、そういうものに真摯に向き合おうとする作品が
こういった系統の作品には少ないのでその点では評価できます。
若年層にも戦争の意味や、人の命の重みや、
戦うことの空虚さを感じさせるような作品というのは昨今多いようで少ないと思うので。

ただ、「きっかけ」としてこういった作品に感動するのは悪くはありませんが、
このテーマに影響されすぎることもまた少し
立ち止まって考えてほしいことではあります。

確かに戦争はよくないことです。
人殺しは空虚なものです。
生きる意味というのは人それぞれ、もって生まれたものがあって然るべきだと思います。
しかし戦争の意味や生きることや死ぬことの意味を一義的に捉えるのではなく、
様々な意見を取り入れながら生きていくことこそ大切なことなのであり、
そこを間違えてほしくないなあ、と思いました。思考停止は危険だと思います。

ラヂオの時間 ★★★

2006-02-05 02:06:38 | ★★★
テレビで見ちゃいました。

見れなかった人はぜひともDVDでどうぞ!

三谷監督脚本作品。

ラジオの生番組の裏側を描いた作品。

三谷さんは裏側を描くのが好きなんですねえ。
出演陣はみんな熱演。
三谷監督作品にはしょうもない役者が出てこないのが
いい。そこが一番のミソなんかもしれませんね。
演技だけでも見ごたえがあるし、十分2時間持たせられます。
もちろんこの作品は三谷節が随所で効いています。
効果音の出し方、が一番楽しかったですね。
こういう発想の転換みたいなものは見ていて勉強になります。

限られた空間、時間、縛りが多いほど力を発揮するあたりが
三谷さんが劇作家なんだな、ということを改めて感じさせましたね。

あと、ここでもやはり「プロ」って何なんだろうな、ということを
考えさせられました。

仕事を楽しむ人、好きなことを仕事にしてる人、嫌だけど仕方なく仕事してる人、
腰巾着に終始して自分を持つことすら放棄している人。

世の中には多種多様な人がいて、みんな仕事をやってるけど
ほんとの意味での「プロ意識」を忘れないで仕事に取り組める人が
一番輝いてるし、人に感銘を与えるんじゃないかな、という
ある種のメッセージを感じました。

うん、素敵な作品でした。
個人的には「笑の大学」や「みんなのいえ」よりも見所の多い作品だったように
思います。

亀は意外と速く泳ぐ ★★★

2006-02-04 19:43:00 | ★★★
ユルユル。

まさにこの言葉がよく似合う上野樹里主演映画。

私はこういうスローな邦画はあんまり見ないんです。

眠くなるからなんですけどね。

でも好きな俳優が出てたり、好きな批評家が絶賛していると見たくなってしまいます。

この作品の場合、好きな映画批評家であるまつさんがかなり褒めてたのも

あってDVDを借りてみました。

この作品はあんまり深いことは追求せずにユルユルと日常が進んでいきます。

基本的に上野樹里のモノローグで進みます。

こういう語りの入る映画は基本受け付けないのだけど、

テンポの良い演出とエピソードの挿入で不快感や停滞感を感じずに済みました。

蒼井優という女優がノーマークだったんだけど、

そこそこに良い演技をしていたように思います。

収録されているメイキングはかなり面白かったです。

要潤がとある爆笑な役で出ていたり、スパイ夫婦がユルユルすぎて

かなり個性を感じました。

爆笑、というよりはクスクス笑うような映画ですけどね。

上野樹里はこういう役、とても向いているなあ、と思います。

いたずらっ子っぽいというか。

正統派とはちょっと違う役がとても似合います。

変な子っていうか、でも普通なんですよね。

あと、監督の非凡な才能を感じました。

これから、注目株なのかもしれません。

みんなのいえ ★★★

2006-02-01 15:25:49 | ★★★
三谷幸喜脚本・監督作品。

さてさて、この話はある若夫婦が自分の家を建てるために設計は若手のデザイナーに、建築は奥さんの父親である大工の棟梁に頼んだところから話がややこしくなっていくことに・・・。ことあるごとにデザイナーと大工が衝突するんだけど、家の工期は限られてるわけで・・・。
一番の見所は家作りの裏側をしっかり描いていることですかね。

唐沢寿明演じるデザイナーの一言
「便利で安いものはすぐ、手に入る。だから、みんな型にはまったものになる。
型にはまった生活、型にはまった家、俺はそれが嫌なだけです。
俺は何も特別なものを望んでるわけじゃない。当たり前のものがほしいだけです。
当たり前のものがこの国にはなさすぎる。
便利なことってそんなにいいことなんですかね。手間をかけるってことはそんなに無駄なことなんだろうか。」
「古い家具は古いから価値があるわけじゃない。機能的で使いやすいから価値があるんです」

田中邦衛演じる大工の棟梁
「世の中思い通りになることの方が少ないんだ!」

途中で風水を気にする旦那さんのお母さんが登場したりして意見がぶつかることで
変に間取りが変わったりして面白いわけですけど・・・。
家を建てるというのは大変なことなんだな、と実感をもって知りましたね。
プロの仕事って何なんだろうか、ってね。
三谷監督の自分の経験を映画にかなり活かした、とのことで
かなり実話も混じっているんじゃないかなーと思いながらこの映画を見ました。

東大寺の南大門のエピソードはかなり象徴的に「職人」を描いているように思います。

家を建てること、というのは幸せを守る礎を築く、ということ。
生活基盤である家を建てる、ということ。
そこには設計をする人がいて、大工がいて、登記する人がいて、
依頼主である住む人がいる。そういう人々の集まりが家を作り上げていく。
家は建てたらお仕舞いじゃなくて、そこには住む人がいるから
建てる人はしっかりと責任を持って丈夫な家を作ろうとする。
その姿勢が「職人」というものの中でも大きく占めているように思います。


映画終盤、奥さんが縁側に座っている父に座敷からお礼を言うシーンなんかは
結局のところ、住む人にとっては座敷が広かろうが狭かろうがそう変わりはないのかもしれないな、と思わされました。


まあ、映画としては展開が後半やや冗長なわけですが、結構面白い方ではあると思います。この映画の反省はかなり、「有頂天唐~」に活かされてますね。



次は「ラヂオの時間」を見たいな、と思います。