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目指せ!映画批評家

時たまネタバレしながら、メジャーな作品からマイナーな作品まで色んな映画を色んな視点で楽しむ力を育みます★

僕の彼女はサイボーグ ★★★★

2008-05-31 15:05:04 | ★★★★
あまり観る気がなかったのですが、某映画記事にて
「驚愕の展開」と書いてあり気になって鑑賞しました。

むう、後半の解説をしたくてしかたがないのですが、
してもいいでしょうか。

以下ネタバレ注意。










綾瀬はるか演じるサイボーグ彼女を未来の僕が送り込んできた、
というあらすじのオタクの妄想漫画チックな展開の映画ですが、
とにもかくにもその最初の初期設定からして苦笑い。
一応、送り込まれた目的は「現在の「僕」が不幸に遭わないため」
なんですけど、物語のごく序盤でその不幸からは
逃れることに成功します。

未来の自分が過去の自分を救うために、
サイボーグ(もしくは未来人)を送り込んでくる、
というあらすじはまさにハリウッド超大作
「ターミネーター」シリーズのプロットをそのまま
頂戴したものですが、ごくごく序盤でその危険を回避してしまうので
普通なら目的達成して未来からきたサイボーグも帰ってもよさそうなものですが、
未来の自分というのは物凄く欲張りだったらしく、
延々とサイボーグ彼女を現在の自分の傍にいるようにインプットしてあります。
故郷へ行ったり、自分以外の不幸な人間を救うようにインプットしてあったり・・・。
もうこの辺りで正直ぶっ飛んだプロットに
嫌な汗をかくはずなのですが、展開に違和感を感じさせることなく
物語が展開するために(この辺りの監督の手法はある意味見事であり、
評価できる)映画を観ていてもさほど違和感を感じさせることがありません。

冒頭~後半の展開はなんとなーく予想していましたが、
(特に冒頭のフックは結構わかりやすい)
中盤~後半へのあまりの急展開には突っ込む暇もなかったです。

まず、最初から既にぶっ飛んだ物語であり、
サイボーグ彼女が不道徳な軽犯罪をあっさり重ねすぎる時点で
(またそれを注意しない「僕」然り)これはファンタジーなんやなあ、
とは思いながらは観ていましたが普通の筋立てでは考えにくい
急展開を用意してあるために椅子から転げ落ちそうになります。

まあ、ネタバレ注意と言ってあるので書いちゃいますが、
「東京大地震」が起こるんですね。伏線も何もなく。
これってちょっと反則展開だよなあ。。
しかも東京の崩壊っぷりはあまりに激しく、
「日本沈没」とか「ドラゴンヘッド」を彷彿させる
都庁などの高層ビル群の崩落っぷり。
主人公は間一髪で彼女に助けられますが、
そこからの展開も正直言って観客は置いてけぼりです。

泣けない!

泣けないんですよ!

彼女が身を挺して「僕」を守ろうとする感動的なシーンなんですけど、

泣けない・・・。

このシーンに至るまでに、

①主人公が彼女にキス

②彼女、何も感じない

③主人公、すねて他の女に手を出そうとする。

④他の女に主人公が殴られる

⑤彼女、他の女をぶっとばす

⑥主人公、彼女の理不尽さと自分を好きになってくれないジレンマに

怒って、顔も見たくない、と伝える

⑦彼女、姿を消す

そんでもって、地震があって、彼女が主人公を助けるために
帰ってくるんですけど、結局、このサイボーグ彼女は
最後までサイボーグ彼女なんですよね。。。
だから彼女が力尽きても泣けない。
そして、主人公が冒頭の展開どおり、彼女を作り上げるんですけど
そこでも泣けない。むしろ気持ち悪い。。。
何十年もかけてサイボーグを復活させて看取られて亡くなる。。。

泣けない。。。

「アンドリューNDR114」という超名作ハリウッド映画では、
主人公のサイボーグ、というかロボットが亡くなるシーンで
めちゃくちゃ泣けるんですけど、この映画のここまでの展開では、
まるで泣けないのはやっぱり
「サイボーグ彼女が徐々に(ありえないんだけど)自我に芽生える」という
描写をどこにも挿入しなかったからでしょうね。
どこまでいっても主人公が送り込んできたサイボーグでしかない彼女に対して
主人公が生涯を捧げるというプロットでは、
ある意味破綻してしまっているんですよね。

つじつまあわせをするためなのか、
それとも最初からこういう筋を考えていたのかは謎ですが、
映画は主人公が年老いて亡くなるシーンで終わりません。

なんと、遥か未来でそのサイボーグ彼女を博物館で
偶然見かけたサイボーグ彼女そっくりの未来人(綾瀬はるか2役)が
彼女を競売で競り落とし、その記憶チップを追体験することで
サイボーグ彼女の記憶に自己を同一化させてしまうんですね。
この辺りのくだりになると、もはや、ぼーっと映画を観に来た
平凡なカップルには「?」マークが浮かびまくると思われます。
そして、未来人の彼女は序盤のシーンに登場してくるわけなんですが、
そこでお別れならば、まだ映画としては切ない恋の物語になるんですけど、
さらにもう一回大地震のシーンに戻って、
サイボーグ彼女が壊れて泣いている主人公の元へ
未来人の生身の人間の彼女がやってくる、ここで映画は終わります。

劇場に来ていた周囲の女子高生やおばちゃんは皆、
「え!どういうこと!?」という反応をしていました。
私もこの記事書きながら思いますが、映画観てない人にうまく伝える自信がありません。


一応解説しておくとこれはタイムパラドックス(時間的矛盾)なんですね。
タイムマシンというものが存在すること自体が
既にタイムパラドックスなんですけどそれではお話が始まりません。

本来の歴史
①2007年、謎の彼女が僕のもとを訪れる。
②2008年、誕生日に僕が銃撃事件に遭い、不自由な身体となってしまい、不幸になりつつも猛勉強してサイボーグ彼女を作り上げることを決意する。
③20××年、未来の僕がサイボーグ彼女を完成させて過去を改変するために過去へ送り込む。


劇中
①2007年、未来人の彼女、僕のもとに訪れる。
②2008年、僕の元に去年来た彼女そっくりのサイボーグがやってくる。
③200×年、大地震によって彼女が壊れる。
④20××年、僕、サイボーグ彼女を復元。
⑤21××年、未来人の彼女、復元されたサイボーグ彼女を発見して競り落とし、
記憶を追体験、過去へ向かう決意をし、2007年に向かう。
⑥未来人の彼女、③のシーンへ向かい、過去で暮らしていく決意をする。

ここで劇中で説明されませんでしたが、多分、⑤のシーンからは更にもうひとつの枝分かれした未来へと突入していると思われますから、将来、主人公がサイボーグ彼女を復元するかどうかによって時間的矛盾が発生する可能性があります。つまり、サイボーグ彼女を復元すれば、問題ないのですが、復元しなかった場合、未来人の彼女が博物館でサイボーグ彼女を発見することもなく、その場合、未来人の彼女が過去にいる根拠がなくなってしまうのです。ここまで考える人はあんまりいないでしょうが、この時間的矛盾が作劇に存在すると、言いようのない違和感が発生します。



確かに、この映画、冷静に観ててもこのラストに至るくだりは
ぶっ飛びすぎてます。
そこまでしてハッピーエンドに持ち込もうとするなんて。。。
強引すぎる上にそれを完全に映像化できてしまっているものだから
タチが悪い。。。
スピルバーグの「A.I,」のラストでも結構ぶっ飛びまくる展開ですけど、
この映画はそのラストでさえも余裕で超える超展開です。

ただ、この超展開によって、主人公の僕は生身の、感情のある、
サイボーグじゃない彼女と出会うことになります。
未来人の彼女はサイボーグ彼女の記憶を追体験していますから、
主人公のことをきっと愛していくのでしょう。
きっと彼女との幸せな生活が待っていることでしょう。
とはいえ、映画のドラマチック性であるとか悲劇性であるとか、
そういう部分ではあまりに時間軸とハッピーエンドへの辻褄合わせに
奔走したためにスポイルされてしまっています。
この映画で泣ける人はある意味でサイボーグかもしれません。。。

この超展開に、劇場ですすり泣く声など聞こえるはずもなく、
皆呆然としながらMISIAの主題歌を聴くしかありませんでした。
(MISIAの曲はいい曲でした、、
しかし、彼女の楽曲もなかなかいいタイアップに恵まれませんねえ。
実力は日本歌唱界でもトップクラスなのに。。。)

とはいえ、この映画、面白くないか、と聞かれると割と面白い。
印象には残る。トラウマになりそうなくらい、印象に残ります。
サイボーグ彼女を演じきった綾瀬はるかは抜群に綺麗に撮影されていますし、
小出恵介演じる主人公も「僕の彼女を紹介します」などの韓国映画に
出演していた主演俳優を彷彿とさせるほどのダメ男っぷり。
脇役も悪くないし、音楽や映像のクオリティはむしろ日本映画でも
トップクラスでしょう。更にいえば、昨今の予定調和映画の多い邦画界にあって、
この超展開は日本人監督では完成できなかったでしょう。
そういう意味では、私はこの映画をオススメしたい。
破綻したドラマではあるのだけど、力強く勢いを感じるトンデモ映画です。
観終わった後に盛り上がれること必至。
少なくとも「隠し砦の三悪人」以上には面白かったです。


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3 コメント

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Unknown (Unknown)
2014-09-28 01:10:05
伏線は初めにありましたよ。
次元を無理やり歪めたから元へと戻そうとするってね。
あなたの言う通り劇中で描かれてない第3の世界があるはずですが、それがあるとその世界の未来ではアヤセのロボを作らないので、そもそもアヤセは存在しないことになり矛盾が生じますね。
これは酷い矛盾です。
話自体は良かったんですけど矛盾がありすぎて監督の脳みその足らなさを感じました。
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この映画好き ()
2016-04-04 00:24:25
いや、普通にすごくロマンチックな映画だと思う。ファンタジーだし。
サイボーグの記憶を人間がバーチャル体験して、主人公の魅力に恋するって話でしょ。
で、主人公も初めてあった彼女に恋する。

人間だって、遺伝子である程度プログラミングされてるんだし、サイボーグとあまり変わりない。
恋愛もプログラミングのひとつ。
だから恋愛はせつないって話だと思う。
それ理解出来ない感受性のひとに映画評論できるんか。
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Unknown (Unknown)
2020-01-14 12:15:06
内容の良しあしはともかく(私は非常に楽しめました)、綾瀬はるかが神懸かり的に美しくかわいかったので120点です。
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