目指せ!映画批評家

時たまネタバレしながら、メジャーな作品からマイナーな作品まで色んな映画を色んな視点で楽しむ力を育みます★

オールド・ボーイ ★★★

2005-05-30 17:34:33 | ★★★
 絶賛の声も結構聞きます、カンヌで賞取った映画ですね。タランティーノは絶賛だったそうな。韓国映画ですが、原作は日本の漫画らしいです。

主人公がいきなりわけもわからず15年も監禁されてから釈放されるわけですが…。家族も生活も失い、人生すらも狂わされた男は復讐のために、理由を知るために走りだします。真相はいかに…。

 序盤から中盤は非常に面白いですね。理由もわからずに監禁され、生かされるわけですがこの15年の重みがすごい。主演の役者は素晴らしい演技。15年監禁されて人格が変わってしまうという恐ろしい描写は役者にとってはかなり難しい役柄だと思いますが見事にはちゃめちゃで、素晴らしくリアリティがありました。

詳しくは下記にネタバレで追記しますが後半の展開はあとひとつですかね。残念ながら絶賛するほどまではうまくないなーっていうか。ネタバレしないとこの映画についてはあんまり書けないのですが、とりあえず今から見る人に言っておきたいのは「この映画は見る人を選ぶ傾向にある」ということです。かなり新しい描き方も見られ、カメラワークや主人公の描き方、謎の展開は気になりますし、見る人によってはとても面白い映画だと思います。






以下ガンガンネタバレします。



 さて、何が肌に合わない部分かと言うとやはりオチでしょうか。主人公のせいで「文字通り」最愛の姉を亡くした男の手の込んだ復讐劇なわけですが、その動機もアレですが、まず方法がまわりくどいですね。そこに自分が納得出来なかったのが残念ではあります。


 主人公が△△とは知らずに○○と××という復讐方法は確かに衝撃です。その方法を取るには確かに15年はかかるわけですが…。一家皆殺しではダメだったんでしょうね。主人公の精神に与える影響は計り知れないわけですが…作劇としてリアリティは必要ないので、こういう復讐劇にしたのはむしろ素晴らしいのですよ。そこはわかるのです。だから私が単に近親相姦という部分がダメだったのでしょう。あと主人公に復讐する男がかなり早い段階で顔バレしちゃったのも残念。まあ謎は終盤まで引っ張りますが…。
 主人公の復讐劇かと思わせておいて実は主人公が復讐されていた!というのはなかなか目から鱗。こういう映画なら日本でも出来るんじゃないかなあ。テーマは重いけど…。

「口は災いの元」

「因果応報」

「近親相姦」

「復讐」

などがこの映画のテーマであるように感じました。
とにかく明るいハッピーエンドにはなりえないストーリーは壮絶!としか言えないとは思います。

機動戦士Zガンダム 星を継ぐ者 ★★★★

2005-05-29 18:05:37 | ★★★★
 え?アニメ?しかもガンダム?すいません、今日は趣味に走った記事ですのでお肌に合わない方は読み飛ばしてください。次の記事にご期待ください。
 ちなみに★4つ評価も一般人向け評価ではなく、ファン向けの評価です。特に興味のない方は行くこともない映画でしょうから。一般向けに考えた場合、評価は★1つくらいの映画だとは思います。SFロボットアニメですし。

 昨今、ガンダム人気が再燃しているわけですがその波に乗ってかついに10数年前のアニメ作品「機動戦士Zガンダム」の劇場版3部作の1作目が公開されました。公開日に見てきましたよ。まあ、とある映画館ではすごいオタクな方々がたくさんいらっしゃったそうですが・・・意外にも私が見に行った劇場では家族連れがたくさんいらっしゃいました。時代がかわったてきたのでしょうか。子どもたちが生まれてくるもうずっと前の作品のはずなんですが・・・。子どもにはわかりにくいだろうこの作品・・・。

 この映画は非常に特殊な作られ方をしています。詳しくは総監督の富野監督が各誌で語ってらっしゃいますが、言わばテレビ版を再構成した総集編に近い体裁を取っているわけで、20年前の映像もバンバン使ってます。100分ある上映時間の中で大体半分くらいは過去の映像を使っています。いや、それ以上か?今と当時ではアニメの技術もかなり進化していて最新の映像で描かれた部分との映像的ギャップは正直凄まじいものがあります。昔のアニメと最近のクオリティ高い劇場用アニメの絵の違いを思い浮かべてもらえばわかると思います。まるで違いますね、うーん、正直新カットのみで構成してほしかったくらい新カットは素晴らしかったのですが・・・。この映像のクオリティのギャップは観る方に時代のギャップなども感じさせますがそれ以上にコロコロ新カットと旧カットが入れ替わるために、映画のストーリーに集中出来ません!これは結構大問題。人によっては怒るかもしれません。いや、映画生活なんかを見ていると怒っている人のが多いですね・・・。確かに見る人によっては純粋に楽しめないかもしれません。劇場予告編はうまーく新カットを中心に構成しているので否が応にも高まった期待感を裏切られたような感じになるのかもしれません。

 脚本に関しては全50話の30分アニメの3割を一本の映画にまとめるという荒業のため、かなり書きなおされている印象を受けました。多分、アニメ版とは全く時間軸の流れや展開の順序が違っていて、展開は非常に早いです。(アニメの要所はばっちり押さえていますが)そのため、話を知らないとついていくのが大変かもしれません。「機動戦士ガンダム」の鑑賞は必須、出来ればZのテレビ版の視聴も必須かと思われます。そうして自分の脳内で補完する必要はあります。ただ、Z入門編としてみれば非常に入りやすい作品です。この作品を観た後にテレビ版を見てさらに理解を深める、というのもアリかもしれません。

 とにもかくにも新カットと新解釈が見所です。省略されてしまったエピソードもいくつかありますし、主人公であるカミーユの性格がかなり矯正されていたり、と物議を醸しそうですが物語的にはこれが非常に見やすい。テレビ版は非常に難解で理解するのが困難なアニメ作品ということで悪名高いですけど、その印象はまるでありません。新カットのモビルスーツの描き方はとにもかくにもカッコイイ。男の子にはたまらないでしょうね。最後30分は新カット目白押しで終わるので見終わったときの満足感は意外に高くなるんですよね。いやー、なかなかズルイやり方(笑)
 ガクトが主題歌を担当しているのも気に食わない人もいるらしいですし、(私も最初は微妙!って思った)この映画に対して過度の期待をしていらっしゃる方も多いと思いますが、言わばこれは過去の作品であって必ずしも新作映画ではないので「お祭り感覚」で見に行った方がいいでしょうね。そう、せっかくあの大スクリーンでガンダムが久々に動くわけですから。私はそれだけでおなかいっぱいだけどなあ・・・。




 更に加筆します。
 えーと、色々見直してみて思い直してみて。私は素直にこの映画を楽しめました。やっぱりこの映画をいまさらながらに「やってくれてよかった」という感じですか。作画監督と総監督との間で新旧カットの出来について意見の相違があったりした、とか、新旧カットの差がひどい、とか、ガクトじゃなくて森口博子がよかったとか、ハッピーエンドなZとかZじゃないだろ、とかあったかもしれませんけど、そんなことホントはどうだっていいはずなんです。まあ、見る人それぞれで意見は違うでしょうけど。とにかく面白かったんですよ。純粋に。躍動的に動くモビルスーツや様々な新解釈(アーガマ艦橋のモニタとかパソコンのブラウザとか細かい描写)がとても嬉しかった。アッシマー、ギャプラン、百式、MK-Ⅱあたりのプラモデルを映画を見た後に買って帰りたくなるくらいの出来です。
 あと、元ホワイトベースクルーの扱いが非常に良くなっています。これはファンにとっては嬉しかったんじゃないでしょうか。「カミーユから見た伝説的英雄アムロとシャア」という構図、ニュータイプという感覚、うまくアムロをクローズアップすることによってファンにとっては少ない出番がまるで気になりません。あー、ハヤトの声が変わっていたのは残念でしたけど・・・・。もう何と言いますか、ファンは何でも嬉しいというとそれで終わってしまうのですが、これはこれで面白い映画だと私は思います。作画で非常に大きな問題はありますが、そこは脳内でいうまく補完してください(苦笑)


詳しい内容についてはこちらのブログ 
http://blog.livedoor.jp/mpzero/archives/23420195.html

富野監督の発言についてはこちらのブログにて http://blog.livedoor.jp/deathtron/archives/23415886.html

詳細が載っています。

TUBE ★★★

2005-05-26 15:28:35 | ★★★
さて、今回見たのは韓国映画ですね。これはなかなか大まじめに作ったアクション映画のようです。地下鉄を走るある電車を乗っ取り、無茶な要求を突き付けるテロリストと刑事の因縁の対決。止まらない電車、飛び交う銃弾、薙ぎ払われるSWATなどなど見所はたくさんありますが、見所はそのままツッコミ所でもあるように思います。なんしか、最近好評公開中の「交渉人真下正義」とやや被りますねーいや、モロ被る描写もチラホラ。ただ求めているモノ描こうとしているモノに若干ズレはあります。手段が違う、という方が正しい?
 「交渉人真下正義」とちがい、主人公は銃の腕前も抜群、運動能力も高く、並み居るテロリストに物おじもしません。クールで熱い感じ?過去に因縁もあり、復讐というファクターも感じますが、最後にはそういった負の感情よりも挺身、献身の正の感情も見え感動を誘います…が、ちょっと報われなさすぎのような気もします。ただでさえ重い感じで進む作劇でアクション映画としては正直見てる方はツライかも。
似てるっていうのは地下鉄のスタッフの方々の気質であったり描き方ですね。人命を運ぶ仕事に就く方々のプライドと姿勢はどこかの方には見習っていただきたいものです。
犯人たちの要求であったり、描き方はありきたりだったので残念。もう少し観客の想像を裏切るような展開ならよかったんですが。あと犯人強過ぎです。まあ、簡単にヤラレても展開に支障をきたしますが、SWAT一人一人の能力ってかなり高いハズなのでは…。訓練不足?(笑)リアリティに欠けた描写は随所に見られ、最初から最後までかなり笑えます。最強である説得力があんまりないですよねー。作品の展開のためにボロ負けするジャッキー・チェンあたりをぜひ見習っていただきたい。
地下鉄を生かしたアクション、という意味では傑作「スピード」(ありゃ、最後にしか出てきませんが)であったり件の「交渉人真下正義」を上回る描写の数々。ここまでこだわりきったのは拍手!もう少し細部にこだわりを見せてほしかったけど充分面白かったですわ。

トゥルー・コーリングvol.1~vol.3

2005-05-20 20:27:15 | 気になる映画
このblogでは基本的には映画の話題を基本としているのですが、たまには違う内容も書いて行こうと思います。こういうのやるとなんかTSUTAYAの回し者みたいになってしまうのが玉に傷なんですが、見てくれている方が曲がりなりにも一日100人以上いらっしゃるようなので色々と更新するネタなんかも新たに用意していきたいな、と思います。一時期は非常に更新が滞ってしまいましたし。まあストイックにやっていくつもりではいますが…アフィリエイトなんかにも興味ないですし。純粋に面白いと思ったモノを皆さんに伝えられたらとおもっています。
もしよろしければいつも記事を読んでくださっている方はこの記事にコメントなんか残してくれる有り難いです。
 海外ドラマ「トゥルー・コーリング」をDVD3巻まで見ました。(六話まで)海外ドラマは「アリーmyラブ」や「24」を今まで見てきましたが、今作も同じく海外ドラマなんですが作りが非常に良いので取り上げようと思います。3巻までは充分オススメできるクオリティを保っています。一話完結のエピソードながら少しずつ謎が解かれていく進行は見応えがあります。日本ではどうしてこういうドラマを真面目にやらないんでしょうね。アイドルくらいしかこういう話やりませんけど…。
トゥルーは幼い頃に母親を殺されます。弟や姉とそれでも懸命に生きてきて医学生の卵ですが、ひょんなことから死体安置所で死体保管の夜勤をすることになります。そこであるときトゥルーはある「声」を聞くのですが…。
夜中まで一度一日を過ごした後、一日を最初からやり直すというのはオカルト系ではよくある話ですがそれを「能力」として描き、毎回何かしらの謎解きと引っ掛けを用意しながら漠然と大きな謎にも迫っていく様はなかなか見応え充分です。母親の謎や主人公の能力の謎、更に伏線を張りながら物語は進行します。また、姉や弟を助けながらうまく死ぬはずだった人を助けていきます。主人公は不眠症になるんじゃないか?と思ってしまいます。人助けの能力を使えば使うほどに死者は減ります。でも時に助けられない人がいたりするのがこのドラマの秀逸な点ですね。ただ毎回同じような展開なのでワンシーズンもつのか非常に心配ですが…Yahoo!掲示板によるとアメリカ本国ではシーズン2の途中で打ち切りになったそうなので非常に残念です。とりあえず今出ている3巻までは楽しめます。★にすると四つくらいの面白さです。


詳しい話の内容についてはこちらのブログで詳しく書かれています★

http://gucchifone.exblog.jp/1984187

バタフライ・エフェクト ★★★★★

2005-05-19 01:19:14 | ★★★★★
ほんとに楽しみな人は何も読まずに時間見つけて映画館行った方がいいですよ!とても面白い映画です。
監督:エリック・ブレス&マッキー・J・グラバー
出演:アシュトン・カッチャー エイミー・スマート

えー、私がもし映画学の講義をするときには「伏線の消化の仕方」という1節があったら必ず題材にしたい映画ですね。
えー粗筋はここを参照してもらうとして・・・なんというか、すごい映画ですね。まさしく「映画」を見たって感じです。ジャンルはSFの要素も入ったサスペンス・スリラーになるんですかね?

 みなさん、色々とラストの展開についての感想を言及してますがネタバレ警告してからにしましょうね。この映画はそれくらいラストの結末を予想するのは簡単ですから。どこを言ってもネタバレになっちゃうと思います。
 映画のストーリーの見せ方は緻密です。時間移動モノですから矛盾点を感じるところはあると思います。事実、私も映画を見終わったあとに「あれ?」と思ったりしましたが「過去を変えようとする」話では既にその時点で大嘘をついてるわけですから「整合性うんぬん」よりも「いかに面白く展開させているか」だと思います。もちろん整合性はあったほうがいいんですけどね。最初の大嘘が大嘘に思えなくなりますから。
 脚本や演出はかなり緻密に練られていた気がします。一つ一つのセリフにほとんど無駄がなく、また序盤のワンシーン、ワンシーンのほとんどが伏線となっています。ここまで伏線張りまくってちゃんと活かすのはかなり大胆だと思います。言わば解答を提示しておいてその過程に迫る、というか。2回目を見たらまた見え方が変わってくるのでしょうけど。役者、特に子役もよく頑張っていたほうではないでしょうか。見所はまさにアイデアとその見せ方でしょうか。
 アシュトン・カッチャー演じる主人公と子役がよく似ていたので違和感を感じずに見ることが出来ました。また、エイミー・スマート演じるヒロイン(?)役の彼女も体を張った演技でした。


ここからはネタバレします。気をつけてください

 Butterfly Effect(バタフライ・エフェクト)とは・・・
「ある場所で蝶が羽ばたくと、地球の反対側で竜巻が起こる」。初期条件のわずかな違いが、将来の結果に大きな差を生み出す、という意味の「Chaos Theory(カオス理論)」のひとつ。
この映画では、愛する者を助けるための些細な行いが、すべての人々の人生に予想もしなかった大きな変化となって襲いかかってくる。
 
 さて、主人公が戻ることが出来る過去における行動のちょっとした違いが生む大きなズレ。
それがこの映画の主題なわけです。こういった過去へ移動してうんぬん、という映画は非常に面白く話を展開させることができる反面、物語の整合性に無理が生じてしまいます。「ターミネーター」「T2][T3」のシリーズを通したタイムパラドックスや「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズでの矛盾、ドラえもんのタイムマシンもそうですし、「タイムマシン」もそうですね。こういった作品では矛盾点を感じさせないような演出が行われていますがどうしてもそこは難しいですね。
SF考証というものについては私はそうたいして詳しくありませんが、以下の3つの考え方があったように思います。ま、そもそもタイムマシンや時間移動の存在自体が論理的矛盾の発端ですが、それを言ったらロマンもへったくれもないですしね。

 ①「過去」を変えることによって「現在」、「未来」も変わる。(Aが自分の親を過去で結婚させなければ自分の存在は消える)

 ②「過去」を変えることによって別の「現在」、「未来」が現れる。(全ての次元は張り巡らされた糸のようになっていて例えば、AがいてBがいる未来もあれば、Aはいない未来もあるという風に並行世界が存在することになる)
 
 ③「過去」を変えようとしても時間的矛盾が許されず、本質的には「現在」も「未来」も変わらない。(微妙に変動することもある)

こういう三つの考え方があるんですけど、時間的矛盾を説明するためにはどれも間違ってるしどれも正しいんですよね。(そもそも時間移動の存在自体が論理的矛盾の発端だから)だから、うまく全てを2時間程度の映画で説明するのは至難のワザだと思います。そう考えるとこの映画はほとんどそういった矛盾を感じさせないのですから、監督の手腕は大したものだと思います。

 どうやっても彼女を助けられないどころか、自分がどんどん惨めになる様は非常に泣けてきます。切ない話です。ラストへ向かっての展開はもう泣くしかないくらいの悲しい選択でした。彼女と偶然すれ違っても何も起こらない、そういった展開を選択した主人公はとてもやりきれない気持ちでしょう。過去に戻れるから、って万能じゃないですよね。そうそううまくいかないのがとてももどかしいですが、それがまたドラマチックであり、「バタフライ・エフェクト」の醍醐味だと思います。(「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で主人公が金持ちになりますが、そういった気楽さ、エンタメ的要素とは無縁の展開ですね)

 最初は一見幸せそうな現実を構築することに成功したかに見えたけど結局うまくいかず・・・。で、何度も訪れる結果を変えようとしてトライするたびにどこかが望まない結果になってしまう。そして変えようとすればするほど望まない方向へと変わってしまう。例えば

・自分が半身不随・彼女と友達が付き合いだす・母親が肺がんで余命幾ばくもない
・彼女が没落して売春婦に。
・友達がうつ病で引きこもり
・友達が精神病院に強制入院
・自分が精神病院に強制入院
などなど、ろくな目に合わないわけで・・。
ほんのちょっとしたことが引き金で全てが変わってしまうこの映画の主人公の能力・・・。
まさしくバタフライ・エフェクトなわけですが、結局はそれが幸運を呼ぶことはなく
むしろ不幸な事態を招いてしまうというのは皮肉な話です。
 この能力がかなり限定的な能力だったこともこの映画をスリリングにした要因でしょう。自分の記憶のどの時点にもいけるわけではなく、自分が記憶を失ったわずかな時間、日時へだけさかのぼれる、というのはよくできた話です。このおかげで緊張感が出ました。
主人公がこの能力を封印してしまう(過去への時間移動のキー「日記」を焼く)ことで得たものが愛する者との別離だとするならば本当に悲しいことです。過去を変えてもしょうがないことに気づいた主人公は能力を捨て、平穏でどこか物寂しい生活をしているようでしたが、それで終わることなく過去にとらわれない生活を送ってほしいものです。(まあ、数十年分の記憶を持ってしまった後ではそうもいかないのかもしれませんが・・・)あ、それとまつさんの映画伝導師ブログではとてもいい記事が書かれています。

この映画はいい映画です。が!公開館数や規模が小規模なため見ることが難しいもです。しかし一見の価値が大いにあります!みなさん、ぜひ見てみてください。

CUBE2 ★

2005-05-18 14:28:25 | 
 さて、以前高い評価をした映画「CUBE」の続編、「CUBE2」をDVDを借りて見ました。率直な感想は蛇足やったかなあ、といった感じです。無理に見る必要は全くないです。「手段」と「目的」を履き違えると、こういう至極つまらない映画が出来ます。
以下ネタバレしますから注意。


今作を見てあらためて感じた前作のよかったところですが…
・部屋により色が違い、色によって役者の芝居や脚本がうまく切り替えられていた。赤、青など。またそれがいいようのない不安感や圧迫感を出していた。
・謎が謎のままであり、CUBEが作られた目的なども謎のまま、不気味な感じが出ていた。
・数学的な謎解きなどがあり、観客の興味をひく。
・部屋に仕掛けられた罠がアナログで恐怖感を煽る。
・一人一人のキャラクターの職業や性格がうまくアメリカや世間の縮図として描かれているように感じた。人間の醜さをうまく描けすぎていてしんどいくらいでした。奇抜な設定はそれを描くための「手段」に過ぎない、といった感じ。前作は突飛な設定を与えることにより(手段)、人間の醜さを描いていて(目的)それが優れていた。

だったわけですがこの作品はそのあたりを間違いましたね。まあ、ただでさえ二番煎じは新しい要素がないとウケないのに(あってもウケないこともある!)ここまで続編として間違えて作るとねえ…。
・全ての部屋は白い。なんだか希薄な感じがした。画面はキレイだったけど。
・罠がCGに。なんだか嘘っぽくて、バラバラにされる罠なんかは爆笑。罠が少ない気もする。緊迫感は全くない。もっとグロくていいのに。
・四次元的な観念を入れたのは評価出来るが、描き方を失敗していて「死」の恐怖感が薄れる。(死んだキャラクターが何度も別次元の人間として現れるのは緊張感が薄れる。っていうか笑える。ラスト付近のシーンはかなり爆笑。「どこでもドア」で自分の後ろに出て、自分の後ろ姿を見る感じ?自分たちの死体と対面するのはまだ描き方としていいんだけど。
・数字に関してはたいした謎解きもなく、偶然脱出。全く達成感がない。ラストを描いてしまったのもそれに繋がる。別になくてよかった。前作は観客の想像力を煽る展開がナイスだったのに。もし描くなら徹底してCUBEの謎に迫るべきだった。やっぱり依然としてCUBEの目的はイマイチハッキリしないし。
・殺人鬼の存在、何度も殺されるヤツの存在、実は〇〇だった盲目の少女、実は黒幕会社に属していたおばあさん、などなどどのキャラクターも非常に滑稽。焦りや緊張感を観客に伝えるわけでもなくひたすらCUBEの恐ろしさ、四次元空間での奇妙な出来事を描いている。四次元の奇妙な世界を描きたいならCUBEでなくともよい。

など、CUBE2は総じて手段と目的を履き違えてしまったために極めて滑稽な映画になってしまいました。評価出来る部分…四次元空間を最近のCGで描こうとしたこと、くらい。★ひとつですな。

S.W.A.T ★★★

2005-05-17 15:37:52 | ★★★
 コリン・ファレル主演の映画ですね。名作になれる可能性を秘めた題材だと私は感じましたね。残念ながら描き方に失敗?いや、間違ってはいないわけだから、あと一歩といったところでしょうか。
 ずばり前半の訓練シーンをもっともっと細かく描いて、訓練を受ける隊員が苦悩したり仲間との確執、友情の復活などをもっと力を入れて描いたらとても面白いモノになっていたと思います。それくらい前半が面白い。冒頭のシーンなんかは名作「スピード」を彷彿させますね。こういった導入や友情が壊れたりするシーン、主人公が閑職に回される辺りはとてもよかったですね。主人公の苦悩などをうまく描けていて。スカウトシーンなども次々と個性的なキャラクターが現れてこれからの作劇に心が弾みます。
訓練成功あたりまでがきっちり二時間くらいで描かれてうまく演出されていたら私は★五つにしていたでしょうしもう少しヒットしていたでしょう。
 残念ながら一億ドルと喚く麻薬王と旧友、裏切り者が絡み始めてからはちょっと微妙な展開。まあ「トップガン」の二番煎じばかりは出来ないのでしょうが、これは何とも…いきなりB級の香りがしはじめます。裏切る隊員の背景や苦悩、麻薬王が一億ドルを支払える裏付け、旧友が悪に走り逃走の準備をする過程などなどがすっぱ抜かれているために非常に淡白な感じ。あまりに急展開すぎて、正直手抜きすら感じます。驚きよりもがっかり感が大きかったですね。ラストの決着もスケール小さい!海外ドラマ「24」の方がお金かかっているのでは…。S.W.A.Tの活躍を事件と絡めたいならもっと事件を詳細に描いて欲しかったですね。じゃないと観客は呆れてしまいますよ。
 まあ良くも悪くもハリウッド大作映画ですね。それなりには楽しめます。何も考えずに映画を見たい人にはオススメします。SWATはカッコイイですしね。

2005年公開作品評価

2005-05-16 19:18:02 | 2005年公開作品評価
2005年に公開された作品の中で私が観た作品の一覧です。

ネバーランド ★★★★
Ray/レイ ★★★★★
ボーン・スプレマシー ★★★★
セルラー ★★★★★
ローレライ ★★★
香港国際警察/NEW POLICE STORY ★★★★★
あずみ2/Death or Love ★
ナショナル・トレジャー ★★★
インファナル・アフェアⅢ 終極無間 ★★★
コンスタンティン ★★★★
交渉人 真下正義 ★★★★
バタフライ・エフェクト ★★★★★
最後の恋の始め方 ★★★


カンフー・ハッスル ★★★★
東京タワー
オーシャンズ12
バッチギ!
レイクサイドマーダーケース
オペラ座の怪人
着信アリ2
ステップフォード・ワイフ
アレキサンダー ★★
きみに読む物語
THE JUON/呪怨
Uボート/最後の決断
サイドウェイ ★★★★
シャークテイル
いぬのえいが
鉄人28号
ハサミ男
アビエイター ★★★
ブリジットジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月
真夜中の弥次さん喜多さん
Shall we Dance ?
レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語
ブレイド3 ★★★
阿修羅城の瞳
キングダム・オブ・ヘブン ★★
クローサー
炎のメモリアル
劇場版 機動戦士Zガンダム/星を継ぐ者 ★★★
ミリオンダラー・ベイビー ★★★★★
エレクトラ ★★★
電車男 ★★★
戦国自衛隊1549 ★★★
スピーシーズ3/禁断の種
ザ・リング2 
バットマン・ビギンズ ★★★
宇宙戦争 ★★★★
スター・ウォーズ エピソード3/シスの逆襲 ★★★★★
星になった少年/Shining Boy and Little Randy ★★★
タッチ ★★★
亡国のイージス ★★★



80デイズ ★★★

2005-05-15 23:10:50 | ★★★
アカデミー賞を受賞した同名映画のリメイクです。題材はジュール・ベルヌの同名小説。英国の王立アカデミーのはぐれ科学者が中国人と画家志望の女性を連れて80日間で世界一周できるかどうかの賭けに勝つために本当に旅に出る話です。ジャッキー・チェンの映画だと思ってなかったのでちょっとびっくりしました。もっと脇役かと思ってました。脇役はアーノルド・シュワルツネッガーの方でした。シュワちゃんはかなり脇役でこっちはびっくりするほど脇役でした。
映画の舞台となる年代との時代考証、SF考証は結構いいかげんです。まあ、その辺りはギャグとして受け取っておくとよいでしょう。(例えばライト兄弟のシーンとか)実際、この時代に80日間で世界一周するというのは非常に難しいことのように思うのですが・・・旅費とか移動手段とか言語の違いであるとか。まあ、そういった細かいことを気にし始めるとキリがありませんね。また、旅先で知り合う人々との心の交流とかもあんまりないですかね。どっちかというと、主人公たち3人の友情!というところにクローズアップされていますね。

交渉人 真下正義 ★★★★

2005-05-09 02:17:30 | ★★★★
監督:本広克行 原案:君塚良一
脚本:十川誠志 音楽:松本晃彦
出演:ユースケ・サンタマリア/寺島進
 大ヒットした映画「踊る大捜査線」シリーズのスピンオフ(番外編)映画で、脇役のユースケ・サンタマリア演じる真下警視の活躍を描いた作品です。先日公開されて公開当日に行って見ました。久々に公開当日に見れました。結論から言っておくと「面白い映画」でした!うーん、意外!

 それにしてもこの作品は非常に気の毒な作品です。うーん、あんまり触れるべきではないかもしれませんがJRの脱線事故のニュースの直後ということもあってか、宣伝もあまり出来ないままに公開する羽目になってしまったこの作品はちょっと可愛そうです。なぜかというとこの作品は地下鉄でジャックされたフリーゲージトレインが登場して、地下鉄の一般車両に接触しそうになったりしてパニックを引き起こす乗客を描いたりしているのです。まあ、劇中には確かにぞっとする場面が出てきます。私は関西在住なので余計に感じます。正直JRに乗って映画を見に行くところを自転車にして見に行ったくらいまだJRの電車が怖いですからね・・・・。(事故現場とつながっている路線で未だにオーバーランが繰り返されている路線です、分かる人は分かるでしょう)地下鉄が接触して車内の乗客が吹き飛ばされるシーンと、倒れるシーンは正直、「きっついなあ・・・・」と思いながら見ていました。この時期にこれはしんどいです。見ている人の中には非常に不快になられる方もいらっしゃるかもしれません。主に前半でこういったシーンがいくつか見受けられました。後半になるとずいぶんそういった電車のシーンは減るのですが・・・。
 JR脱線事故でお亡くなりになられた方のご冥福をお祈りします。

 さて、問題のお話です。今回はスピンオフということもあり、「きっと踊る2が売れたからって便乗商法なんだろー」と思いながらあまり事前に情報を入れないで行きました。正直な話、私はかなりの「踊る」ファンで「踊る2」は公開当日の朝っぱらから鑑賞しましたが(苦笑)(ちなみにレビューはそのうちしますがあまりこのサイト的な評価は高くありません)この映画には期待していませんでした。なんてったってユースケ・サンタマリアですし・・・。織田裕二のいない「踊る」なんて、どうせ昔2時間ドラマでやった内田ゆきのやつみたいにつまんないもんが出来るんだろ、と思っていました。

 しかし、意外や意外、スタッフはかなり本気で撮影を進めたようです。今回は神戸・大阪の地下鉄でロケをしたそうですが非常によく出来ています。SAT(特殊部隊)が今回も出てきますが、彼らの突入シーンやその他、かなり躍動感溢れる映像、たくさんのエキストラ、とお見事です。なんというか「踊る2」よりも効果的に必要なものが配置されていてスマートかつスタイリッシュな方向に近づいてますね。
 役者ですが、ユースケの交渉人を演じる演技力は正直「すげえ」とは思わなかったわけですが、なんというか、彼の力のぬけっぷりが逆に好印象だったりします。感情移入できる余地を残した演技とでも言えばいいのでしょうか、後半はかなり感情移入できました。彼にはまだ織田裕二のような「アップに耐える顔」は無理ですが、主役としてはそこそこ成功していると思いました。沈着冷静でクールな交渉人、というよりはおっちょこちょいで自信なさげな見習い刑事の方が向いているのは間違いありませんけどね(失笑)シナリオの都合上、真下がすぐに交渉をうまくまとめてしまうと(つまり優秀な交渉人であればあるほど)この映画の根幹に関わってくるので、真下の交渉術が素晴らしいとはお世辞にも言えないシナリオですし、ユースケがそれを上手く見せる技術もあるわけではないので正直「交渉人」と言っておきながらその手腕は微妙です。まあ、これは仕方ないですね。交渉人としての真っ当な仕事は特になく、結局・・・、というのはちょっと残念でした。普通、交渉人って・・・・。踊る2から思ってましたが、ちょっと心理分析捜査官あたりと勘違いしてないでしょうか?
 寺島進演じる相棒の刑事がとっても私的にはよかったです。正直サラリーマンっぽい刑事が多いのがこのシリーズの特徴だったので熱血漢で「勘」に頼る昔かたぎな「デカ」が登場するとは思いませんでした。彼の存在、そして地下鉄の責任者の存在が映画の屋台骨になっていたと思います。彼らがいないと多分この映画の評価はもうちょっと下がったと思いますね。
 さて、なんだかんだいって後半には結構引き込まれてしまう物語の吸引力はあります。特に地下鉄の「脇線」の話は「劇場版パトレイバー2」を思い出しました。(劇中、使われていない実在する地下鉄の駅および路線が事件解決の鍵になる)
 

 音楽は従来の踊るシリーズの曲と新曲、そしてクラシックをうまく交えつつ、年末の大都市東京をうまく描けていました。クラシックがかかると年末の感じってうまく出ますよね。交響楽団の指揮者役の西村雅彦にはかなり笑いましたが・・・私も高校時代に指揮者をやっていたことがあったのでちょっと指揮が下手すぎて興ざめしました(笑)まあ、そのシーンはギャグということで捉えました。舞台設定が年末のクリスマスイブなのは理由があるのかよくわかりません。まだ春なのにこの寒そうな映像にはなかなか感情移入できないですよー。
 ほんの3時間くらいの話を2時間の映画にした、という感じでリアルタイムサスペンス海外ドラマ「24」にも影響を受けた、と製作者インタビューで言っていたように記憶しています。
ただ、いくつか謎を残して話が終わってしまうために消化不良になりそうでしたがその辺りは次回作の「容疑者 室井慎次」を見ろ、ということなのでしょう。

例によって、エンドロールでも一幕、今回はエンドロール後にも一幕あるので映画が終わったからって席を立たないように!