目指せ!映画批評家

時たまネタバレしながら、メジャーな作品からマイナーな作品まで色んな映画を色んな視点で楽しむ力を育みます★

天外者 ★★★

2023-05-27 15:43:13 | ★★★
映画「天外者」
Amazonプライムの無料期間が終わるとのことで慌てて視聴。
三浦春馬主演で描かれる幕末の志士、五代友厚の物語。
前半の幕末期における躍動感は素晴らしい。ある程度、日本の歴史に詳しくないと西郷隆盛や大久保利通がどの人かはパッとわからないかもしれない。
そもそも論、五代友厚は幕末から明治期に活躍した偉人ではあるが、坂本龍馬や維新三傑ほどの知名度が無い五代友厚の映画を見る人たちはある程度歴史の知識があると見るべきなのか、三浦春馬目当てのファン層が観るのだとすれば、歴史ファンばかりというわけでもないのか…
朝ドラで五代友厚を知った人も多いのではないだろうか。大河ドラマ青天を衝けでも登場していた。(どちらもディーン・フジオカ)

さて、映画は2時間くらいなのだが、相当に駆け足で進む。
後半は特にそうだ。前半の長崎での大立ち回りであるとか、坂本龍馬や伊藤博文、岩崎弥太郎との牛鍋の風景、色街で知り合う女性との儚い恋であるとか、薩英戦争での顛末であるとか、横浜から九州までの逃走劇とかかなり楽しめるが、明治期に入ってからは作劇としては少々減速という感じだろうか。そのため、映画的な盛り上がりが後半に無い残念な展開となっている。
実際に五代友厚が果たした役割は明治期に入ってからの方が大きいのだが、それをうまく映画的には表現できなかったようだ。
五代友厚は大阪株式取引所、大阪商法会議所、大阪商業講習所(大阪商科大学の前身)などを設立している。大久保利通らとも新政府初期に相当議論に入ったりもしている。
政治/経済ドラマというのはなかなか難しい。青天を衝けでも残念ながら後半は少々退屈な展開であった。明治期に五代友厚や渋沢栄一が果たしたことが多すぎていくら時間があっても描ききれなかったということなのかもしれない。
あと、「経済関係の仕掛け」は時間が掛かるものばかりなので、映像にするとなかなかスムーズはいかないのだろう。多年に渡り、様々な事業を複数同時に立ち上げていく様を映画やドラマで躍動感を持って描くのは相当に難しいだろう。おそらく短い時間で描こうとすると、「ものすごく移り気な人」みたいになってしまう。それくらい、当時のこの人たちの立ち上げた事業は数多くあり、後の日本に大きな影響を残している。
例えば、五代友厚は鉱山王として知られるのだが、残念ながらそうした描写は殆ど無い。(現存する鉱山があまり無いため映像化が大変?)
とはいえ、こうしたあまり知られていない偉人に光を当てて取り上げるというのは意義のあることだと思う。

さて、この映画を評する上では主演の三浦春馬氏については言及せざるを得ない。まだ若いのに亡くなってしまい、本当に残念としか言いようがない。存命であれば、もっと活躍したのではないか?と思わされる演技を本作でもしている。もっと活躍が観たかった。共演している三浦翔平についても勢いがあり、なかなか良い龍馬役だと思う。五代友厚の映画であるためか、坂本龍馬暗殺シーンが割とあっさりしていたのはやや残念だ。


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