目指せ!映画批評家

時たまネタバレしながら、メジャーな作品からマイナーな作品まで色んな映画を色んな視点で楽しむ力を育みます★

アンドリューNDR114 ★★★★

2005-04-25 19:07:33 | ★★★★
 またまた地上波放送の作品から。最近はじっくり作品を見る時間がないんですがたまたま見れました。いやーSFヒューマンドラマとしてはかなり良い作品を見させてもらいました。泣かせる話です。この作品は家事手伝い、子守のためにある家族に買われたロボットが主人公で彼の持つ個性が華開き、次第に成長していく様を描いた映画です。
 昨年話題になった「アイ、ロボット」の原作に割と内容が近い作品です。SFファンにはおなじみのロボット三原則が登場したり、ロボットが個性を持ち次第に変わっていく様はある意味感動します。正直大作だった「アイ、ロボット」より面白いです。話にも深みがありますし。
ロボットにプログラムされた内容や家族との交流はとても心温まるものがあります。家族は夫婦と娘二人なんですが父親役の方と娘役の方は名演です。うーん、とてもGOOD!!でした。作品を通じて人間以外の視点から人間の本質が色々と語られます。「自由」や「SEX」、「人間とは」「寿命について」「ジョーク」などなど豊富な人間に関する話題を少ない言葉で、それでいてユーモラスだったり悲哀な感じで描いてます。脚本がとてもよいと感じました。かなり濃密です。
SFでロボットというと派手な作品かと思いきや、CGやVFXは極力使われていない印象を受けました。なかなか心にくいですね。話の内容が内容だけにちょうどよい感じでした。個人的には「AI」より好きですね。「AI」はあまりにも人の心のどきつい一面ばかりにクローズアップされすぎていて見ていて辛いシーンがたくさんありました。それに比べるとこの作品は同じようにロボットが主役ですが、見終わって感じることがとても多いですし安易にお気楽なヒューマンドラマというわけでもないので見応えもあります。


以下、ややネタバレします。「人間型のヒューマノイドいわゆるアンドロイドが人気がなくて売れない」、という描写が作中で言われますがこれはなかなか興味深いですね。最新のテクノロジーを追求し、人間の一歩手前までやってきたロボットを「人工の脳があり不死身である限りロボットは人ではない」と決めつける人間たち。
一方で技術が進歩したおかげで加齢による老衰から人工臓器で逃げ続け、人工物が占める割合がどんどん増えていく人間たち。しかもその人工物を発明したのは主人公のロボットなわけでなかなか皮肉な構図です。かなりの部分で人間に近づき、なんと老衰までするに至りようやく人間であることを認めてもらうくだりは涙なしには見れませんね。

紅の豚 ★★★★★

2005-04-22 23:43:33 | ★★★★★
 1920年代のアドリア海を舞台に、大空をこよなく愛する豚の姿をした一人の賞金稼ぎの活躍を描いた宮崎駿原作、脚本、監督で贈る一大航空活劇。
 いやー、とっても好きですね。子ども向きの映画が最近多い中でこの「紅の豚」は非常にオトナ向けの出来です。今日地上波でやっていたので見ました。以前から見ようとはおもっていたのですがいかんせん何度も途中から見てばかりで中々フルサイズで見る機会に恵まれませんでした。今日は最初からしっかり見れました。子どもの頃からジブリは欠かさず見ていましたが、この作品はとっつきにくいイメージでした。主人公は豚の格好をしたオッサンですし、少年少女が主人公の冒険活劇ばかりに目がいってました。「天空の城ラピュタ」だったり、「魔女の宅急便」だったり、「風の谷のナウシカ」だったり。

今回はややネタバレしながらキャラクターについて言及してみます。
 私ももう子どもではない年齢に近づいて改めてこの作品を見ると非常に心惹かれるものがありました。素敵な話です。魅力溢れるキャラクターが生き生きと作品の中を動き回ります。しかも、この作品にはいわゆる「敵」であったり「悪役」はいません。言わばカタキ役はいますけどね。
 豚になってしまった賞金稼ぎポルコは真紅の飛行艇を駆り、空を愛し殺人を嫌い、信念を持って生きています。空賊と敵対していても、歌手のジーナのいる酒場で出会っても誰一人として戦いを始めることなく酒を飲み、話もするし、挨拶もするわけですから。仲良くはしませんけどね。
 ポルコが豚にされてしまった理由であったり、最後は人間に戻れたのか、戻れた理由はやっぱりベタにキス?ジーナさんは賭けに勝ったの?といった観客に色々考えさせる材料を残してあるのは心憎い演出だと考えます(苦笑)
 ポルコの飛行艇のメカニックとして登場するフィオが個人的には一番好きなキャラですね。17歳で飛行艇のメカニック、テキパキと仕事もするし空賊相手に一歩も引かなかったり、ポルコに対する憧れであったり恋であったり・・・。一途な感じであったり仕事に対する一本気な姿勢、目が輝いてますよね。空賊の男性諸君がみんなデレデレしてしまうのもわかる気がします。ジーナは落ち着いた感じの「待つ女」といった感じでしょうか。こちらも非常に素敵なキャラクターです。随所でポルコのことを想っていることがよくわかります。フィオのまっすぐな感情表現とは違いますが、いまだに少年の心を持つオトナであるポルコには余裕のあるジーナの方が楽なのかもしれませんね。
 作中で当時の世界情勢が語られたり、各人物にきちんとした背景が作られた上で深みを持たせたり、と物語に一定のリアリティを持たせています。SFというかファンタジックなのはまさに紅の豚だけだったりして。人も死なないし、怪我もしないし、とても平和な感じです。1920年代(作中では恐慌が示唆されているので後半でしょうね)は戦争などが最も身近な年代だけに救いがあるように想います。
 宮崎監督は作品の対象年齢を毎回考えてあんまり重複のないように作っているそうなので(千と千尋のパンフより)こういった作品を今後宮崎映画で作られるかどうかはわかりませんが、対象年齢高めのファンタジーもたまには製作してほしいものです。「ハウルの動く城」のような作品もいいんですけどね、もう少し面白みを出してほしいものです。

ヘルボーイ ★★★

2005-04-22 15:53:49 | ★★★
 アメコミの映画化ですね。現在レンタルも始まり、売り文句は「スパイダーマン」に匹敵するVFXアクション!ということで期待して見ました。ま、正直ただでさえ日本人ウケしないデザインが多いアメコミヒーローの中でも(偏見ですかね?)ハルクと同じくらいキワモノなヘルボーイを映画化したとして、果たして集客を望めたのか…私には疑問でしたが…。
私的にはデザインはあまりよいと思えない無骨なヘルボーイはナチスドイツが実験で異世界から呼び出したものの、捕獲には至らず。アメリカ人の博士が父親代わりとなり育て、FBIで超常現象に対応するための部隊に入るところから始まります。仲間に青い半魚人がいたりして中々特殊な能力を持ったキャラクターがでてきます。彼らの姿は「正義の味方」という感じではありませんね。敵役の仮面のキャラが個人的にはツボでした。できれば素顔は美形であってほしかったのですが…(苦笑)ストーリーはテンポもそれなりによく、魅力溢れるキャラを出し過ぎずしっかり一人ずつの描写を行い説明もそれなりに入れたおかげでアメコミ知らない人にも楽しめます。CG演出についてはもはや見慣れた感すらあります。ここまで違和感なく見られるようになったんですね。特に驚くような演出もないんですが…。
 私は劇場予告やパッケージからヘルボーイのデザインを微妙と思っていましたが、実際に作品を通して見るととても愛嬌のあるやつとして描かれていて共感できるキャラクターです。煙草くわえてコートきて多少ぶっ飛ばされても全くダメージはない。(作中苦戦するシーンはあまりない(笑))
 組織が扱いにくい性格で気難しく、一人で特殊な銃と格闘戦で敵をガンガン打ち倒す姿とは裏腹に父親代わりの博士には頭が上がらず、好きな女には一途でなかなか言いたいことをしっかりと言えない、愛らしいキャラクターなわけです。このギャップをちょっとコミカルに描いたりする辺りは非常によいですね。ハルクなんかよりはよっぽどナイスなキャラ作り。(ま、ハルクはテーマが父親と子の確執が根幹にあるので非常に内容が重く明るいキャラ設定が出来なかったわけですが。)
 エンターテイメントに徹した姿勢は評価出来ます。細かい悩みというよりはわかりやすく恋愛の悩みであるとか、近親者とのわかれの辛さを描いた作品の方が観客も共感出来ますしね。わかりやすい。で、自分にかせられた使命を受け入れつつも運命には流されないという成長も描いています。スパイダーマンやスーパーマン、マトリックスなどのヒット作と違って主人公は特殊メイクの塊なものですから残念ながら感情移入が一定以上は憚られるのが日本であまりヒットしなかった理由でしょうか。彼の造形は女性の観客にはウケ悪そうですし。いやー見てみると最初から最後までしっかりと作り込んでますし、それなりにおもしろいんですけど…(^-^;個人的には★四つです!ただ、凡庸な映画というかもう有り触れてしまっている感じ
はします。

コンスタンティン ★★★★

2005-04-19 10:32:37 | ★★★★
 いやーようやく新作の記事をアップできます。主演はキアヌ・リーブス、レイチェル・ワイズ。監督はフランシス・ローレンス。今回は私の琴線にびびっときましたよー!期待を裏切らないデキでした。エンタメに徹した作品ですが、ちょっとオカルトチックな世界観についていけない観客が多そうなのが残念です。マトリックスのような濃密かつ斬新な世界観ではありませんが、(むしろ語り尽くされた感じすらある)マニアックと感じるぎりぎり一歩手前で踏ん張っています。大天使ガブリエル、堕天使ルシファー(サタン)、七ツの大罪などについての知識に馴染みが全くない方は、ネットなどで補完しておくことを勧めます。より作品に対しての理解が深まり、物語が加速する後半にも振り落とされずついていけると思います。
それでもハーフブリードなどの各種設定にはついていけないかもしれません。作中に特に詳しい解説もありませんし。
 題材はアメコミ原作「ヘルブレイザー」でアメコミ読者にすれば割愛しすぎな内容かもしれませんが原作未読な日本人にすればこの作品はギリギリ理解できる限界ラインですね。アメコミ読者の友人によると、「ヘルブレイザー」は「スポーン」の影響が色濃く出た作品らしいです。
 主人公のジョン・コンスタンティンは人間界に侵入してくる悪魔を祓ういわゆるエクソシストです。この辺りは名作B級ホラー「エクソシスト」を見ておくとより話に入りやすいかもしれません。あ、でもコンスタンティンはホラーではないですよ。SFアクションになるんですかね。
 煙草吸い過ぎて余命いくばくもない、地獄行き決定な彼が天国へ行きたいがために悪魔を片っ端から地獄へ突き返していきます。非常にカメラワークや全体の映像の質感が心地よく、スタイリッシュです。また登場するキャラ設定も作り込まれており、一人一人非常に背景が気になるキャラばかりです。相棒のキャラは後半とてもナイス。
 また出てくる退魔師アイテムも作り込みがなされていて制作スタッフの意気込みを感じます。音楽などもイイ感じです。
 CGを用いた地獄に関しての描写及び設定は秀逸ですね。行きたくないなーと思わされます(笑)地獄や天国が実は紙一重で併存している構図やその描写はかなり新鮮味あります。劇中コンスタンティンが取る行動について後半ではやや展開がテンポ良すぎてついていけなくなるかもしれません。大きな見所を作るよりも全体としてそれなりのテンションを保ちながらの上手な映画化と言えるでしょう。うまく伏線を張りながら観客の興味を引き続きます。個人的にはあのマトリックスのネオとはまた違ったヒーロー像を提示できたキアヌに拍手喝采といったところでしょうか。やはり大ヒット作が生まれた後の役作りには苦労するでしょう。ディカプリオも「タイタニック」以来の後遺症をようやく「アビエイター」で解消出来たように
。噂ではキアヌは太りやすい体質らしく、作中の余命いくばくも無い主人公を演じるための調整は大変だったことでしょう。
 双子のヒロイン姉妹を演じるレイチェル・ワイズも好演しています。ちゃんと双子とわかっていなかった最初、私は混乱しました(笑)まあ、かなりメイクや衣装で雰囲気は違いますが。特に終盤の姉にはかなり驚きました。体張ってます。嫌じゃないのかな…(^-^;

とにかくこれはなかなか素敵な映画です。★四つなのは誰しもが楽しめるかどうか微妙なためです(^-^;

インファナル・アフェアⅡ 無間序曲 ★★★

2005-04-16 22:23:42 | ★★★
 前作から「インファナル・アフェア」の前日談をパート2として公開した作品で、前作でトニー・レオンやアンディ・ラウが演じた役どころを別の若い俳優が演じています。この二人がやはり、前作でのスター二人と比べると(比べてしまいますよね、やっぱり)ちょっとパワー不足。キャラと人物が一致しない、というか。脇を固める熟年俳優たちが非常に濃ゆい演技を披露するため、主役が誰かわからなくなるくらいです。(っていうか、この話の主役はどちらかというと潜入を送り込んだ二人なのかもしれないですね)
あと、前作の鑑賞は必須です。見ている人に限ってはオススメ度合いは★5つです。見てない人にはこの映画はオススメできないです。1作目を見たからこそ得られるものはとても大きいです。
 潜入捜査に入る動機であるとか、背景、人物像を深く掘り下げ世界観を更に濃密に構築した作品です。1作目がヒットしたために急遽3部作ということで製作に入ったそうですがそうとは思えないくらいしっかりと、人物設定や年代設定を構築したようです。この作品を観ると1作目が更に深いものになりますし、3作目も楽しめること間違いないでしょう。

インファナル・アフェア ★★★★★

2005-04-16 22:10:07 | ★★★★★
 以前もDVDで見ましたが、先日のテレビで見直して改めて非常に面白い映画だと思いました。警察に潜入したマフィアの男(アンディ・ラウ)と、マフィアに潜入した警察の男(トニー・レオン)の2人が、運命的な対決を果たす、緊張感に溢れたハードボイルド作品、ということですがこの二人が非常に密度の濃い演技を披露しています。とにかくこのもともとのアイデアに加えて、脚本や演出がうまく作用し非常にこの映画は面白いです。
特にマフィアに潜入した警察官であるトニー・レオン側の緊張感を煽る演出はナイスです。常にバレそうでバレない緊張感が常に持続する構成は非常に見所があります。また、警察に潜入しているマフィアを演じるアンディ・ラウはとてもうさんくささが出てて良かったですね。もうなんというかやるせない展開が目白押しでラストなんかは悶絶ものですが、不思議と嫌悪感はないんですよね。トニー・レオンが演じる潜入捜査官のモチベーションであるとか使命感には脱帽です。また、脇役が非常に濃い演技です。警察側、マフィア側ともに非常に濃いキャラクターで名演といっても過言ではないでしょう。3作目が公開されこのシリーズは完結するそうですが非常に見たくなりますね。

69-sixty nine- ★★★

2005-04-14 04:26:30 | ★★★
 村上龍による同名の自伝的小説を、人気の宮藤官九郎脚本で映画化。妻夫木聡、安藤政信ら主演。1969年長崎・佐世保の高校での出来事を出来事一つ一つにスポットをあてていって話が展開する青春学園ムービー、といったところ。方言もかなり出てくるし、地方色も結構強いかな。当時、アメリカはベトナム戦争中で日本国内でも反戦運動であるとか、学生による活発な学生運動が行われていたみたいです。またロックが世間一般的にも認知された後であるために高校生もこぞってロックバンドのカバーをしていた時代のようです。私は残念ながらこの作品の舞台1969年には影も形も無い、つまり生まれてもいないんです。そのため、この映画の時代考証であるとか、当時の雰囲気をどれだけ再現できているか、といったことはわからないのです。が、結構面白い映画だと思います。だってこの当時の高校生がみんな今日本を支える年代なんですよね?むしろもう引退時期ですかね?信じられない、って思っちゃいますよね。まあ、とにかく色んな意味で楽しめる映画です。役者一位一人も丁寧に方言をしゃべるし、脚本のクドカン節はうまくきいていて、ところどころ非常に笑えるシーンもあります。クドカン脚本が嫌いな人、下ネタ嫌いな人以外にはそこそこオススメです。PG12指定だから地上波ではなかなか放送されなさそうですね。


 さて、ここからは映画を観て色々思ったことを書いていこうと思います。あんまり映画の感想ではないんですけどね。私の大学は非常に学生運動が盛んな大学だったらしく、それこそこの映画の舞台になった1969年あたりはとても大変なことになっていたようです。テストができなかったり、教室に立てこもりがあったり、学生が死んだり。それこそ血で血を洗う紛争が続いたそうです。そのせいで色々な確執が大学と学生の間に残ってしまいました。大学は学生側を恐れて、学生運動などにはノータッチを貫くようになりました。触らぬ神にたたりなし、とでも言いましょうか。大学内のいくつかの施設は運動家によって不法に占拠されたままになって数十年が経ちました。私が大学生になってもその人たちの残党は根強く大学内で活動していました。ビラ配りであったり、大学の至るところにポスターを糊付けしたり、巨大な看板を不法に設置したり。毎年何人かの新入生が怖い目に遭ったりもしたようです。学園祭の時には実行委員とトラブルを起こしたり。こういった人たちを大学内の施設から一掃しないことにはいけない事態になりまして大学在学していたある1年間をそれに充てることになってしまいました。(もちろん私は生徒ですよ?)まあ、成り行きでしたが逃げようもありませんでした。そういった運動家というのは実際、普通の人たちなんですよね。映画の劇中でも刑事が主人公に似たような「ことを言うシーンがありますが、普通っぽい人がそういったことをしているんですよね。私は直接は見ていませんが、映画劇中で観られる一番お下品なシーンの話も、「実際に」あったそうで先輩はそういった被害にあったそうです。(詳しくは割愛)
そして、1年かかってなんとかそういった勢力を大学内からある程度一掃できたんですよね。だから、この映画を観ているとなんだか感慨深いっていうか。
正直、運動家っていうのは周囲が見えてないことが多くて、人の迷惑を省みないことが多いです。劇中でも主人公たちがとる「バリ封」という行為は一般生徒からしたら迷惑極まりない行為だと思う。ペンキなんてなかなかはがれないことを私は実際になんとか消そうとしたことがあるから知っている。
あと作中で出てくる木刀であるとか、赤いヘルメットも実物を数回目にしました。正直怖かったですよ。狂気を感じました。
なんというか、この映画で主人公たちが後半に取る行動に私はとても救われました。そう、闘争も立派かもしれないけど実際には「楽しく過ごす」学生生活が一番いいに決まっていると私は思います。自分が好きなように、誰に押し付けるわけでもなく、でもみんなで楽しめる場所「フェスティバル」を作り上げる、そっちのほうが100倍も200倍も意味があって意義があって、記録には残らないかもしれないけど、若いもんなの脳裏に記憶として鮮烈に残るんじゃないかな、と。闘争とか、ツッパリとか、まあ、そういうのもいいかもしれんけど。人に迷惑かけるのはやっぱりよくないと思うんだよね。
あ、そうそう同じような年代の映画でもっとバンド音楽にベクトルが向いた青春学園ムービー「青春デンデケデケデケ」が個人的には私のオススメです。実はそこの高校、私の母校なんです。

es ★★★

2005-04-07 21:32:03 | ★★★
 久々です。今回見た映画は「es」という作品です。レンタルで見れます。実際にあった有名な心理学実験をモデルに製作されたそうで実話に沿って多少の脚色はされながらもかなり近しいところまで再現しているようです。
 主人公の男はある大学の研究に参加することに。二週間自由が拘束される代わりに4000マルク(大体60万円だったかな?自信ないです)の大金が手に入るという。その報酬とは別にその実験内容をひそかに記録し、雑誌社にタレ込むという仕事も請け負う。眼鏡に仕込まれたカメラはつぶさにその実験で起こった事実を記録していく。その実験とは人権を度外視した一種の極限状態を作り出すことだった。
はっきり言ってsawやCUBEほど面白い傑作ではありませんが実際にこんな実験があったと考えると充分衝撃的な内容です。具体的には男性のグループを看守グループと囚人グループに分け、衣装や衣食住、人権にもある程度制限を加えその経過をみていく、というもの。なんだそれだけ?と思うかもしれませんがこれがなかなかすごい展開になります。あまりに危険な実験だったために現在では禁止されているらしいですが、このときの話は心理学を大学で履修すると大概の場合、聞くことが出来ます。(心理学の内容、ジャンルにもよりますが)
 人に潜む心理が見所です。作中ではあまり触れられませんが社会的に地位のある方を看守役に、前者と比べると社会的経済的弱者を囚人役に設定することにより起こる状況に着目する実験だったようです。人間は美しい生き物だと考えている人にはショッキングな内容ですね。ラストに向かうにつれ、映画的な演出が増しその分現実味は薄れますが…。派手な演出や有名な役者を使っておらず、あまり予算がかからないにせよ、こういった映画を製作し公開までこぎつけたのはすごい有意義なことだと思います。映画にする意味があった題材だと思います。全編ドイツ語なんでドイツ語のリスニング教材としても、社会心理学の教材としても。
 もし興味がある方は、探せば実際の実験の写真をネット上でも見ることが出来ます。写真の方がショッキングだったりしますが(苦笑)