目指せ!映画批評家

時たまネタバレしながら、メジャーな作品からマイナーな作品まで色んな映画を色んな視点で楽しむ力を育みます★

007 スカイフォール ★★★★

2012-12-09 20:32:54 | ★★★★
007 スカイフォール ★★★★

渋谷のTOHOシネマズで鑑賞。二週目ながらほぼ満員。

いやー、本当に今年は楽しい映画に比較的高確率で出会えてるのですが、この作品も本当に楽しい映画でした。

ネタバレ注意!



(あらすじ)
007としても知られるMI6のエージェント、ジェームス・ボンドはイヴとともに、トルコでの作戦に参加していたのだが、その最中にMI6の工作員が殺され、ハードディスクが奪われた。ハードディスクには、テロ組織に潜入している全てのNATOの工作員の情報が収められていた。ボンドとイヴは実行犯であるフランス人傭兵パトリスを追い、ディスクを奪い返そうとする。ボンドは肩を撃たれつつも追跡を続ける。ボンドとパトリスが列車の上で格闘している最中、イヴはパトリスに当てる自信は無かったが、Mの命令で狙撃した。パトリスを狙って撃った弾はボンドに当たり、ボンドは峡谷に落下する。ボンドは「行方不明。死亡したものと推定される。」とされた。
(以上Wikipediaより)


Mと言うのはMI6の指揮官の名前なんだなあ。Qは兵器係の総称。そう考えると「007 ジェームズ・ボンド」もあくまでも、受け継がれるコードネームでしかないのかもしれない、と思わせるようなお話でした。
Qは良いキャラでしたね。ダニエル・クレイグ版の007ではQは初登場とのことですが、新しいイメージを示すことが出来たのではないでしょうか。今回のテーマの一つであろう、「古いものと新しいもの」、というところで言うと新しいものに属する彼ですが、あくまでも自分のスタイルは崩さずにボンドとの作戦に臨みます。どんな時もコーヒー飲みながらマイペース、ベテランスパイであるボンドにも一歩も引かないあたり、面白い。ペン型爆弾を古い、と言ってバッサリ切り捨てるのに、彼が渡した銃と発信機は素晴らしく効果を発揮すると言う皮肉。
一昔前のスパイ映画では技術屋って、単に兵器係だったのだけど、これだけ情報戦が当たり前になってくるとパソコン一つあれば現場の人に遅れを取ることはない、って言い切るのもあながち嘘じゃないよなあ、と。
Mは今回のお話では、古いものの象徴、として作戦の失敗を機に政府の官僚マロリーに引退を勧告されてしまうわけで、最後には命を落としてしまうのですが、かなり今作品は彼女のキャラも深堀りしています。Mは古いものの象徴、マロリーは新しいものの象徴なわけですね。
爆破事件でオフィスを失ったMI6が本部を移した場所もまた古き良き時代の建物だったりして。「あそこは目立ち過ぎた」ってのは面白い素直な反省ですよね。確かに政府の諜報機関のオフィスが見えやすい場所ってのも滑稽ですよねえ。いくらセキュリティ万全でも。
今作品はボンドとMのお話だと言い切ってしまっても過言ではないように思います。何故なら今回の悪役シルヴァは元MI6のエージェントであり、007と同じような立場だったわけで。今作品の冒頭でMの判断で切り捨てられそうになったボンドからすれば、シルヴァの気持ちというのもわからないでもない。むしろ、シルヴァが取った行動を自分が取っていてもおかしくはない目に遭うわけです。それでも、Mの元に帰ってきたボンドと、帰らずに彼女を倒そうとするシルヴァ。この対比がシルヴァをもう一人のボンドとしての像を鮮明にさせるわけです。遠隔地からネットワーク経由でMI6を手玉に取るほどのシルヴァと、そんな彼を自分のスコットランドのスカイフォールにある生家で迎え撃ち昔ながらのトラップで対等に渡り合うボンド。ここにも古いものと新しいものの対比が出てくるわけです。ボンドはMに課された再試験に不合格、つまり、スパイとしては旬を過ぎてしまった(時代遅れな存在)であるのにも関らず、シルヴァとの戦いに辛勝するのです。

そういえば、何気にシルヴァ側から描くと、ボーンシリーズのような展開になるんですよね、この映画。

ボンドが途中で追っ手を撒くために乗り換えるアストン・マーチンはこれまでの最新式のモノではなく、非常にクラシカルなものでした。これ、ゴールドフィンガーで使用されたものと同型車とのことで、そういう意味でも非常に意味深いものになっていますね。車体下部前面に付いているマシンガンが活躍したり、助手席の脱出装置ボタンをちらつかせるあたりは往年のファンはニヤリとしてしまったのではないでしょうか。対するシルヴァは最新式の武装ヘリで登場するわけですからこの辺りも対比になっている感じがします。

シルヴァが本拠地としていた場所は日本の長崎県にある軍艦島と呼ばれて有名な端島をロケ地としていたそうです。端島はかなりいいロケーションですね。B'zのミュージックビデオでも舞台になってるそうなので、気になる人はチェックしてみると良いのでは。

マカオのシーンや上海のシーンもなかなかに面白かったですね。マカオのカジノのシーン見てて、また大金GETしてギャンブルして負けたらどうしようと思わせるボンドはクレイグ版くらいでしょうねえ笑。
ただ、何よりオープニングのトルコのシークエンスは本当に素晴らしかった。追っかけっこからのバイクでの追跡、最後は列車での格闘シーン、と往年のスパイ映画ならばクライマックスシーンになっていてもおかしくないクオリティの展開を開始15分で見せてしまい、そこからの主題歌、という展開は今年の映画の中でもドラゴンタトゥーの女と並ぶ名オープニングだったと思います。

古いものと新しいもの、それらを対比させていきながら、ボンドとM、そして、シルヴァを丹念に描いていくことで、この映画は50周年を迎えたスパイ映画の在り方を問い直しているかのようにも思えます。

ボーンシリーズの大ヒットやミッションインポッシブルのシリーズ展開とは裏腹にクラシカル感を全面に押し出してスパイ映画を再構築してる感すらある、ダニエル・クレイグ版007、もう少し彼のジェームズ・ボンドを観ていたいなあ、と思いました。

今作品の白眉のシーンはM絡みのシーンが多かったように思いますが印象に強く残ったのは議会で糾弾を受けるMが、自分が襲撃を受けることがわかっていながらに、大臣相手に「あなたは今自分がどの程度安全だと思っていますか?」と問いかけたあとに銃撃戦が見事に始まるシーン。
007の遺品はすべて処分した上で、「私はあなたを泊めないわよ?電話くらいよこせばよかったのよ」と言われて焦るボンド。
遺産整理されちゃって、猟銃しか残ってなかった生家を前にして唖然とするボンド。
ボンドが「あんたの書いた俺の追悼文読んだけど、あれ最悪だわ、」って伝えて「私もそう思う、特にこの辺りが…」って言われて「いや、その部分じゃなくてさ…」ってうろたえるボンド、などなど。

それにしても、ダニエル・クレイグのスーツの着こなしは流石ですね!もちろん全身オーダーメイドなのでしょうけど、本当に素晴らしい。彼の肉体美あっての立ち姿なんでしょうけども。

2012年公開作品評価

2012-12-09 19:08:53 | 2012年公開作品評価
2012年日本公開映画 ランキング

12/9までに鑑賞した2012年公開映画は全部で33本!この中で現時点での自分の中でのランキングを付けておきたいと思います。今年はフライト中に観た映画も多いため映画館での濃密な鑑賞体験があまり出来てないなあ、と言うのが個人的な印象。相変わらず偏りのある鑑賞作品群ですねえ。

■暫定ランキング
1位
アベンジャーズ

まー、これは文句無しでしょう。一作品として観させる強さと連作としての強さを重ね合わせられたわけですから面白く無い訳が無い。アイアンマン1.2、ハルク、キャプテンアメリカ、ソーを観てきた人にはご褒美のような作品でしょう。日本よ、これが映画だ!

2位
桐島、部活やめるってよ

まさか、ここまで面白いとは。本当にトラウマ級の映画ですね。アベンジャーズがプラスの意味でのトラウマ級映画だとすると、桐島はマイナスな過去の記憶を否が応でも思い出させる恐怖の映画体験でした笑。今年はホラーを一本も観てないのですが、この作品は充分に恐ろしい映画だと思いました笑。世界よ、これが日本映画だ!って言いたいところですが、日本人にしかわかんない面白さなんだろうなあ。(たとえば中国人には部活する時間もないって言うし)

3位
007 スカイフォール

滑り込み三位!ってか、個人的には007の中でも最高峰、スパイ映画の中でも最高峰の作品じゃないかなあ、と。詳しくは別記事で書きたいです。

4位
ダークナイトライジング

まー、ダークナイトにケリをつけてくれた、という意味でこの位置で良いのかなあ、と。充分に面白かったんですけども、今年はアベンジャーズもあったし、どうしても霞んでしまったかも…さらにはまとまりにも欠けてるので、作品としては歪な作品なんだけど、それを補って余りあるだけの何かが、あったと私は思います。


5位
エクスペンダブルズ2

大味ハリウッド大作アクション映画の金字塔としての看板を完全に打ち立てた記念すべき作品と言えるでしょう。細かいことはどうでもいい、俺たちを邪魔するやつはみんな打ち倒す!ってのが全面に押し出されてて、こんなにスカッとする映画はないでしょう。映画史に残るスリーショットと圧倒的な弾薬数!これだけで、私はおなかいっぱい。

6位
ドラゴンタトゥーの女

上半期公開映画ではダントツに面白かった、ドラゴンタトゥーの女。ダニエル・クレイグは今年はいい仕事をしたよ!TOP10に二度もお目見えするなんて。強烈なインパクトを残してくれた映画でした。

7位
シャーロック・ホームズ シャドウゲーム

と思ったらロバート・ダウニーJr.も同じく二度もお目見え。アイアンマンのトニー・スターク役あってのシャーロック・ホームズ役ではありますが、こっちもかなり良かったのですよね。一作目よりも出来がよかったと思います。飄々としてる、ダウニーJr.が本気出して戦うのって、燃えますよね。

8位
悪の教典

日本映画からも。伊藤英明、素晴らしかった。クレイジーなシリアルキラー役を演じてる爽やかな彼。エックセレーンッ!ショットガンで素敵に殺しまくる作品。

9位
おおかみこどもの雨と雪

ちゃんと映画館で観てたらもっと点数高かったかも…とっても楽しい映画でした。と、同時に考えさせられる映画でもあったかも。オオカミって何気に暗喩で、オオカミでなくてもよいお話の構成なんですけど、こういう童話的アイコンをもってきて日常的に起こりうるしんどい話を少しオブラートに包んでるのが上手い、と思った。オオカミでなくとも子供は大暴れするし、散らかすし、大きくなって喧嘩したらシャレにならんくらい家財道具壊すのだ。そして、大きくなっていくに従ってそれぞれが道を見つけるのだよね。

10位
のぼうの城

エヴァQと迷ったんですけども、個人的にはのぼう様に入れておきたい。なんでだろう、やっぱり実写オリジナル作品ってこれからも応援していきたいんですよね。こういう意欲的な作品が今後も作られて行ってほしいからこそ、多くの人にこの映画は観てほしい。

11位
ヱヴァンゲリヲン新劇場版Q

エヴァはもっと上位でもいいんですけど、この流れを評価すべきかどうかは次回作次第で。

12位
アメイジング・スパイダーマン

アメスパもまだまだ顔見せ程度の作品だと思うので、次回作に期待、とても面白かったんですけど、ライミほどのインパクトは無いんですよねえ。

13位
BRAVE HEARTS 海猿

もっと上位に入れたいくらい。良かったです。今の日本映画で出来るスペクタクル描写の限界点かなあ。

14位
バトルシップ

これくらいのアホ映画はやっぱり大金つぎ込まないとねえ。海猿よりも大金注がれてるけどね(^^;;

15位
テルマエ・ロマエ


16位
トータルリコール

17位
メン・イン・ブラック3

18位
宇宙兄弟

19位
劇場版SPEC 天

20位
ジョン・カーター

21位
009 RE:CYBORG

22位
劇場版魔法少女まどか マギカ 永遠の物語

23位
海賊戦隊ゴーカイジャーvs宇宙刑事ギャバン

24位
仮面ライダーフォーゼ みんなで宇宙キター!

25位
るろうに剣心

26位
ハンガーゲーム

27位
リンカーン 秘密の書

28位
グスコーブドリの伝記

29位
デンジャラスラン

30位
ブラック&ホワイト

31位
TIME/タイム

32位
踊る大捜査線FINAL 新たなる希望

33位
仮面ライダーxスーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦

はっきりと今年一番の駄作と言えよう。去年仮面ライダーを一位にしたことを忘れさせるくらいの駄作っぷり。こんな作品を観させないために、もうずっと坂本監督、脚本三条さんでやってほしい。今回は本当にひどかった。ごめん!



■まだ観てなくて今後観ておきたい映画

今年は見逃しも結構多いんですよね。ホビットは観るとして、最強のふたりとか夢売るふたりとか戦火の馬とかランキングに影響するだろう良作を見逃してるのは痛いですねえ。ヒューゴあたりはさっさとDVDで観るべきかなあ。

ホビット 思いがけない冒険
レ・ミゼラブル
仮面ライダーx仮面ライダー フォーゼ&ウィザード MOVIE大戦アルティメイタム
アルゴ
人生の特等席
最強のふたり
夢売るふたり
ヒューゴの不思議な発明
戦火の馬
プロメテウス
バイオハザード5 リトリビューション
ボーンレガシー
天地明察
その夜の侍
ヒミズ
アイアンスカイ
ロボジー
アウトレイジ ビヨンド
演劇1
演劇2
終の信託
高地戦
宇宙刑事ギャバン
ALWAYS64 三丁目の夕日
ジョニーイングリッシュ気休めの報酬
麒麟の翼
ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
ライアーゲーム 再生
長ぐつをはいたネコ
イップマン 誕生
SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者
わが母の記
ポテチ
ダークシャドウ
外事警察 その男に騙されるな
スノーホワイト
メリダとおそろしの森