007 スカイフォール ★★★★
渋谷のTOHOシネマズで鑑賞。二週目ながらほぼ満員。
いやー、本当に今年は楽しい映画に比較的高確率で出会えてるのですが、この作品も本当に楽しい映画でした。
ネタバレ注意!
(あらすじ)
007としても知られるMI6のエージェント、ジェームス・ボンドはイヴとともに、トルコでの作戦に参加していたのだが、その最中にMI6の工作員が殺され、ハードディスクが奪われた。ハードディスクには、テロ組織に潜入している全てのNATOの工作員の情報が収められていた。ボンドとイヴは実行犯であるフランス人傭兵パトリスを追い、ディスクを奪い返そうとする。ボンドは肩を撃たれつつも追跡を続ける。ボンドとパトリスが列車の上で格闘している最中、イヴはパトリスに当てる自信は無かったが、Mの命令で狙撃した。パトリスを狙って撃った弾はボンドに当たり、ボンドは峡谷に落下する。ボンドは「行方不明。死亡したものと推定される。」とされた。
(以上Wikipediaより)
Mと言うのはMI6の指揮官の名前なんだなあ。Qは兵器係の総称。そう考えると「007 ジェームズ・ボンド」もあくまでも、受け継がれるコードネームでしかないのかもしれない、と思わせるようなお話でした。
Qは良いキャラでしたね。ダニエル・クレイグ版の007ではQは初登場とのことですが、新しいイメージを示すことが出来たのではないでしょうか。今回のテーマの一つであろう、「古いものと新しいもの」、というところで言うと新しいものに属する彼ですが、あくまでも自分のスタイルは崩さずにボンドとの作戦に臨みます。どんな時もコーヒー飲みながらマイペース、ベテランスパイであるボンドにも一歩も引かないあたり、面白い。ペン型爆弾を古い、と言ってバッサリ切り捨てるのに、彼が渡した銃と発信機は素晴らしく効果を発揮すると言う皮肉。
一昔前のスパイ映画では技術屋って、単に兵器係だったのだけど、これだけ情報戦が当たり前になってくるとパソコン一つあれば現場の人に遅れを取ることはない、って言い切るのもあながち嘘じゃないよなあ、と。
Mは今回のお話では、古いものの象徴、として作戦の失敗を機に政府の官僚マロリーに引退を勧告されてしまうわけで、最後には命を落としてしまうのですが、かなり今作品は彼女のキャラも深堀りしています。Mは古いものの象徴、マロリーは新しいものの象徴なわけですね。
爆破事件でオフィスを失ったMI6が本部を移した場所もまた古き良き時代の建物だったりして。「あそこは目立ち過ぎた」ってのは面白い素直な反省ですよね。確かに政府の諜報機関のオフィスが見えやすい場所ってのも滑稽ですよねえ。いくらセキュリティ万全でも。
今作品はボンドとMのお話だと言い切ってしまっても過言ではないように思います。何故なら今回の悪役シルヴァは元MI6のエージェントであり、007と同じような立場だったわけで。今作品の冒頭でMの判断で切り捨てられそうになったボンドからすれば、シルヴァの気持ちというのもわからないでもない。むしろ、シルヴァが取った行動を自分が取っていてもおかしくはない目に遭うわけです。それでも、Mの元に帰ってきたボンドと、帰らずに彼女を倒そうとするシルヴァ。この対比がシルヴァをもう一人のボンドとしての像を鮮明にさせるわけです。遠隔地からネットワーク経由でMI6を手玉に取るほどのシルヴァと、そんな彼を自分のスコットランドのスカイフォールにある生家で迎え撃ち昔ながらのトラップで対等に渡り合うボンド。ここにも古いものと新しいものの対比が出てくるわけです。ボンドはMに課された再試験に不合格、つまり、スパイとしては旬を過ぎてしまった(時代遅れな存在)であるのにも関らず、シルヴァとの戦いに辛勝するのです。
そういえば、何気にシルヴァ側から描くと、ボーンシリーズのような展開になるんですよね、この映画。
ボンドが途中で追っ手を撒くために乗り換えるアストン・マーチンはこれまでの最新式のモノではなく、非常にクラシカルなものでした。これ、ゴールドフィンガーで使用されたものと同型車とのことで、そういう意味でも非常に意味深いものになっていますね。車体下部前面に付いているマシンガンが活躍したり、助手席の脱出装置ボタンをちらつかせるあたりは往年のファンはニヤリとしてしまったのではないでしょうか。対するシルヴァは最新式の武装ヘリで登場するわけですからこの辺りも対比になっている感じがします。
シルヴァが本拠地としていた場所は日本の長崎県にある軍艦島と呼ばれて有名な端島をロケ地としていたそうです。端島はかなりいいロケーションですね。B'zのミュージックビデオでも舞台になってるそうなので、気になる人はチェックしてみると良いのでは。
マカオのシーンや上海のシーンもなかなかに面白かったですね。マカオのカジノのシーン見てて、また大金GETしてギャンブルして負けたらどうしようと思わせるボンドはクレイグ版くらいでしょうねえ笑。
ただ、何よりオープニングのトルコのシークエンスは本当に素晴らしかった。追っかけっこからのバイクでの追跡、最後は列車での格闘シーン、と往年のスパイ映画ならばクライマックスシーンになっていてもおかしくないクオリティの展開を開始15分で見せてしまい、そこからの主題歌、という展開は今年の映画の中でもドラゴンタトゥーの女と並ぶ名オープニングだったと思います。
古いものと新しいもの、それらを対比させていきながら、ボンドとM、そして、シルヴァを丹念に描いていくことで、この映画は50周年を迎えたスパイ映画の在り方を問い直しているかのようにも思えます。
ボーンシリーズの大ヒットやミッションインポッシブルのシリーズ展開とは裏腹にクラシカル感を全面に押し出してスパイ映画を再構築してる感すらある、ダニエル・クレイグ版007、もう少し彼のジェームズ・ボンドを観ていたいなあ、と思いました。
今作品の白眉のシーンはM絡みのシーンが多かったように思いますが印象に強く残ったのは議会で糾弾を受けるMが、自分が襲撃を受けることがわかっていながらに、大臣相手に「あなたは今自分がどの程度安全だと思っていますか?」と問いかけたあとに銃撃戦が見事に始まるシーン。
007の遺品はすべて処分した上で、「私はあなたを泊めないわよ?電話くらいよこせばよかったのよ」と言われて焦るボンド。
遺産整理されちゃって、猟銃しか残ってなかった生家を前にして唖然とするボンド。
ボンドが「あんたの書いた俺の追悼文読んだけど、あれ最悪だわ、」って伝えて「私もそう思う、特にこの辺りが…」って言われて「いや、その部分じゃなくてさ…」ってうろたえるボンド、などなど。
それにしても、ダニエル・クレイグのスーツの着こなしは流石ですね!もちろん全身オーダーメイドなのでしょうけど、本当に素晴らしい。彼の肉体美あっての立ち姿なんでしょうけども。
渋谷のTOHOシネマズで鑑賞。二週目ながらほぼ満員。
いやー、本当に今年は楽しい映画に比較的高確率で出会えてるのですが、この作品も本当に楽しい映画でした。
ネタバレ注意!
(あらすじ)
007としても知られるMI6のエージェント、ジェームス・ボンドはイヴとともに、トルコでの作戦に参加していたのだが、その最中にMI6の工作員が殺され、ハードディスクが奪われた。ハードディスクには、テロ組織に潜入している全てのNATOの工作員の情報が収められていた。ボンドとイヴは実行犯であるフランス人傭兵パトリスを追い、ディスクを奪い返そうとする。ボンドは肩を撃たれつつも追跡を続ける。ボンドとパトリスが列車の上で格闘している最中、イヴはパトリスに当てる自信は無かったが、Mの命令で狙撃した。パトリスを狙って撃った弾はボンドに当たり、ボンドは峡谷に落下する。ボンドは「行方不明。死亡したものと推定される。」とされた。
(以上Wikipediaより)
Mと言うのはMI6の指揮官の名前なんだなあ。Qは兵器係の総称。そう考えると「007 ジェームズ・ボンド」もあくまでも、受け継がれるコードネームでしかないのかもしれない、と思わせるようなお話でした。
Qは良いキャラでしたね。ダニエル・クレイグ版の007ではQは初登場とのことですが、新しいイメージを示すことが出来たのではないでしょうか。今回のテーマの一つであろう、「古いものと新しいもの」、というところで言うと新しいものに属する彼ですが、あくまでも自分のスタイルは崩さずにボンドとの作戦に臨みます。どんな時もコーヒー飲みながらマイペース、ベテランスパイであるボンドにも一歩も引かないあたり、面白い。ペン型爆弾を古い、と言ってバッサリ切り捨てるのに、彼が渡した銃と発信機は素晴らしく効果を発揮すると言う皮肉。
一昔前のスパイ映画では技術屋って、単に兵器係だったのだけど、これだけ情報戦が当たり前になってくるとパソコン一つあれば現場の人に遅れを取ることはない、って言い切るのもあながち嘘じゃないよなあ、と。
Mは今回のお話では、古いものの象徴、として作戦の失敗を機に政府の官僚マロリーに引退を勧告されてしまうわけで、最後には命を落としてしまうのですが、かなり今作品は彼女のキャラも深堀りしています。Mは古いものの象徴、マロリーは新しいものの象徴なわけですね。
爆破事件でオフィスを失ったMI6が本部を移した場所もまた古き良き時代の建物だったりして。「あそこは目立ち過ぎた」ってのは面白い素直な反省ですよね。確かに政府の諜報機関のオフィスが見えやすい場所ってのも滑稽ですよねえ。いくらセキュリティ万全でも。
今作品はボンドとMのお話だと言い切ってしまっても過言ではないように思います。何故なら今回の悪役シルヴァは元MI6のエージェントであり、007と同じような立場だったわけで。今作品の冒頭でMの判断で切り捨てられそうになったボンドからすれば、シルヴァの気持ちというのもわからないでもない。むしろ、シルヴァが取った行動を自分が取っていてもおかしくはない目に遭うわけです。それでも、Mの元に帰ってきたボンドと、帰らずに彼女を倒そうとするシルヴァ。この対比がシルヴァをもう一人のボンドとしての像を鮮明にさせるわけです。遠隔地からネットワーク経由でMI6を手玉に取るほどのシルヴァと、そんな彼を自分のスコットランドのスカイフォールにある生家で迎え撃ち昔ながらのトラップで対等に渡り合うボンド。ここにも古いものと新しいものの対比が出てくるわけです。ボンドはMに課された再試験に不合格、つまり、スパイとしては旬を過ぎてしまった(時代遅れな存在)であるのにも関らず、シルヴァとの戦いに辛勝するのです。
そういえば、何気にシルヴァ側から描くと、ボーンシリーズのような展開になるんですよね、この映画。
ボンドが途中で追っ手を撒くために乗り換えるアストン・マーチンはこれまでの最新式のモノではなく、非常にクラシカルなものでした。これ、ゴールドフィンガーで使用されたものと同型車とのことで、そういう意味でも非常に意味深いものになっていますね。車体下部前面に付いているマシンガンが活躍したり、助手席の脱出装置ボタンをちらつかせるあたりは往年のファンはニヤリとしてしまったのではないでしょうか。対するシルヴァは最新式の武装ヘリで登場するわけですからこの辺りも対比になっている感じがします。
シルヴァが本拠地としていた場所は日本の長崎県にある軍艦島と呼ばれて有名な端島をロケ地としていたそうです。端島はかなりいいロケーションですね。B'zのミュージックビデオでも舞台になってるそうなので、気になる人はチェックしてみると良いのでは。
マカオのシーンや上海のシーンもなかなかに面白かったですね。マカオのカジノのシーン見てて、また大金GETしてギャンブルして負けたらどうしようと思わせるボンドはクレイグ版くらいでしょうねえ笑。
ただ、何よりオープニングのトルコのシークエンスは本当に素晴らしかった。追っかけっこからのバイクでの追跡、最後は列車での格闘シーン、と往年のスパイ映画ならばクライマックスシーンになっていてもおかしくないクオリティの展開を開始15分で見せてしまい、そこからの主題歌、という展開は今年の映画の中でもドラゴンタトゥーの女と並ぶ名オープニングだったと思います。
古いものと新しいもの、それらを対比させていきながら、ボンドとM、そして、シルヴァを丹念に描いていくことで、この映画は50周年を迎えたスパイ映画の在り方を問い直しているかのようにも思えます。
ボーンシリーズの大ヒットやミッションインポッシブルのシリーズ展開とは裏腹にクラシカル感を全面に押し出してスパイ映画を再構築してる感すらある、ダニエル・クレイグ版007、もう少し彼のジェームズ・ボンドを観ていたいなあ、と思いました。
今作品の白眉のシーンはM絡みのシーンが多かったように思いますが印象に強く残ったのは議会で糾弾を受けるMが、自分が襲撃を受けることがわかっていながらに、大臣相手に「あなたは今自分がどの程度安全だと思っていますか?」と問いかけたあとに銃撃戦が見事に始まるシーン。
007の遺品はすべて処分した上で、「私はあなたを泊めないわよ?電話くらいよこせばよかったのよ」と言われて焦るボンド。
遺産整理されちゃって、猟銃しか残ってなかった生家を前にして唖然とするボンド。
ボンドが「あんたの書いた俺の追悼文読んだけど、あれ最悪だわ、」って伝えて「私もそう思う、特にこの辺りが…」って言われて「いや、その部分じゃなくてさ…」ってうろたえるボンド、などなど。
それにしても、ダニエル・クレイグのスーツの着こなしは流石ですね!もちろん全身オーダーメイドなのでしょうけど、本当に素晴らしい。彼の肉体美あっての立ち姿なんでしょうけども。