目指せ!映画批評家

時たまネタバレしながら、メジャーな作品からマイナーな作品まで色んな映画を色んな視点で楽しむ力を育みます★

The Legend & Butterfly ★★★

2023-05-27 15:44:22 | ★★★
Amazonプライムで独占配信ということで鑑賞。レジェンド&バタフライを観ました。

思いの外、早い配信開始でしたね。興行収入は30億円届かずということで20億円掛かったという制作費回収のためのアマプラ独占配信では、という声もあるそうです。

レジェンド&バタフライは信長と濃姫(帰蝶)の2人を主役に据えた物語を2時間半にまとめた映画です。
大河ドラマ「どうする家康」と同じ脚本家 古沢良太。

木村拓哉が信長をやる、というのはそれだけで一定の期待感はありました。(木村拓哉は過去に20代の時に信長をドラマで演じているが、そのドラマでは岐阜平定までが描かれている。https://toyokeizai.net/articles/-/646787。
また、木村拓哉の時代劇と言えば武士の一分だろう。こちらは当時、相当のヒット作となった。一方、大河ドラマ主演経験は無い。
綾瀬はるかは大河ドラマ八重の桜で1年間の主演経験があり、座頭市を演じたICHI、ドラマだと仁、などがある。木村拓哉と綾瀬はるかの過去の共演作は主にドラマ。『HERO 特別編』(2006年/フジテレビ系)、『MR.BRAIN』(2009年/TBS系)、『南極大陸』(2011年/TBS系)などがある。)

ここから中身にも触れますので、映画を観る予定の方は読み飛ばしてください。

■ロケ地の多い映像
レジェンド&バタフライは大河ドラマではなく、映画として相当の予算が掛かっているためか、映像もアナログなロケ地での撮影が多く、その意味で豪華でしたね。
NHKは大河ドラマ「青天を衝け」あたりからコロナ事情もあったせいか、マイクロLEDウォールを相当活用し始めていますが、どうしても「映像的な実在感」には乏しいわけです。観てる人にはスタジオだとわかる。合戦シーンなどでそれは顕著で、この作品のようにお金を掛けて撮影されていると、歩兵一人一人の実在感というのは圧倒的に違いを感じるわけです。
大河ドラマだと、この家康たちの後ろに歩いてる歩兵たちはCGだな…とわかるわけです。(合戦シーンで葛折に歩いてるシーンなどはかなりあからさま)
レジェンド&バタフライではこの製作費に見合った豪華な合戦シーンが観られるのかな?と思ったものの、大立ち回りがあるのは限られたシーンのみではありました。京都での落人群的なところのシーンと、本能寺の変のみ、と言っても過言では無かったかな。

■テーマ選定
日本人に極めて馴染みのある三英傑である家康、秀吉、信長。

やはり50年近く生きた波瀾万丈の戦国武将である信長の話を2時間半にまとめるというのはなかなか難しい。
なんなら大河ドラマで50話×45分で日本人は何回も色んな角度で観ているわけです。(家康視点、秀吉視点、最近だと光秀視点も!も含むと更に増える)
戦国武将が好きな人は何パターンも本能寺を観ているし、何パターンも桶狭間を観ている。その中で織田信長の理想像というのは日本人それぞれにあって、こういうのが信長、という視点があるわけです。そんな信長像と少し違った形でこの映画は描きます。

濃姫をかなりフィーチャーした形の作劇が全編で描かれます。
映画としては惜しい、の一言でしょうか。
木村拓哉も綾瀬はるかも素晴らしい演技をしています。その他の役者も素晴らしい。
惜しむらくはテーマ設定なのでしょうか。
木村拓哉と綾瀬はるか、ダブルネームの映画にしたためにこうした形になったんだろうなと。織田信長と帰蝶、ではなく、織田信長と戦国の女性たち、みたいな形にしても良かったのかな…とは思いました。

岡田准一が石田三成を演じた「関ヶ原」のような本格的な戦国時代劇でもなく、新解釈の現代風時代劇にもなりきれず、「どっちつかず」になってしまった感はあります。

■濃姫大フィーチャー
序盤の「濃姫に組み伏せられる信長」「鷹狩りで負ける信長」などの展開はコメディ的で面白いです。前半の濃姫の活躍については創作だと割り切って観ればこれはこれでなかなか面白く観ることができました。
一方で、その後の濃姫とのコミュニケーションを通じた信長の精神的な成長がわかりづらかった。
時間が限られている中では何を描いて何を描かないのか、というのは映画でも非常に重要です。
濃姫の存在の必然性がどうして後半にゆくにつれて、仕方がないものの下がり続けるわけです。濃姫との絡みを無理やり出そうとするあまり、なかなかにお話は後半、苦しくなっていきます。史実でも岐阜平定までは濃姫が前面に出てきてもお話的に破綻がありませんが、そこから先は劇中でも濃姫が「妾(わらわ)はもう用済み」という通り、まさに史実から鑑みると、蛇足とも言えます。
濃姫はあまり実際の記録に出てこないのですよね。つまり、謎が多い。なんなら没年すらもよく分かっていないわけです。そのため、創作の余地はかなりあるキャラクターなわけですが、今作は特に前半は濃姫のフィーチャー具合が相当なものとなります。
え、そこの助言も彼女なんですか?というくらいに濃姫が描かれます。

■全体のバランス
姉川やお市の方、朝倉義景、浅井長政、武田信玄、今川義元すらキャストとしても出てきません。斎藤道三もナレ死に近く、桶狭間も戦闘シーンは無し。
桶狭間も出陣シーンこそあるものの、出陣前の敦盛シーンも無し。なんなら、家康も秀吉もあまり出てきません。(斎藤工の演じる徳川家康はなかなか見どころですが、ほとんど出番が無いのが残念)
このあたり、大河ドラマ「麒麟がくる」などでは描かれていたあれこれが無かったりと戦国ファンとしては寂しさを覚えました。
光秀の解釈もなかなか面白いキャラ造形ではあります。(かーなーり、無理があるけど)
そして、終盤のシーンで新解釈か!?となるところあたりは非常に楽しく観ました。
○○ランド的な展開。正直、それはそれでやりきってくれてもアリだったかも、とは思うわけです。流石に憚られたのでしょうけども…
この辺りの「どっちつかず感」がまさに惜しいと思わされました。

天外者 ★★★

2023-05-27 15:43:13 | ★★★
映画「天外者」
Amazonプライムの無料期間が終わるとのことで慌てて視聴。
三浦春馬主演で描かれる幕末の志士、五代友厚の物語。
前半の幕末期における躍動感は素晴らしい。ある程度、日本の歴史に詳しくないと西郷隆盛や大久保利通がどの人かはパッとわからないかもしれない。
そもそも論、五代友厚は幕末から明治期に活躍した偉人ではあるが、坂本龍馬や維新三傑ほどの知名度が無い五代友厚の映画を見る人たちはある程度歴史の知識があると見るべきなのか、三浦春馬目当てのファン層が観るのだとすれば、歴史ファンばかりというわけでもないのか…
朝ドラで五代友厚を知った人も多いのではないだろうか。大河ドラマ青天を衝けでも登場していた。(どちらもディーン・フジオカ)

さて、映画は2時間くらいなのだが、相当に駆け足で進む。
後半は特にそうだ。前半の長崎での大立ち回りであるとか、坂本龍馬や伊藤博文、岩崎弥太郎との牛鍋の風景、色街で知り合う女性との儚い恋であるとか、薩英戦争での顛末であるとか、横浜から九州までの逃走劇とかかなり楽しめるが、明治期に入ってからは作劇としては少々減速という感じだろうか。そのため、映画的な盛り上がりが後半に無い残念な展開となっている。
実際に五代友厚が果たした役割は明治期に入ってからの方が大きいのだが、それをうまく映画的には表現できなかったようだ。
五代友厚は大阪株式取引所、大阪商法会議所、大阪商業講習所(大阪商科大学の前身)などを設立している。大久保利通らとも新政府初期に相当議論に入ったりもしている。
政治/経済ドラマというのはなかなか難しい。青天を衝けでも残念ながら後半は少々退屈な展開であった。明治期に五代友厚や渋沢栄一が果たしたことが多すぎていくら時間があっても描ききれなかったということなのかもしれない。
あと、「経済関係の仕掛け」は時間が掛かるものばかりなので、映像にするとなかなかスムーズはいかないのだろう。多年に渡り、様々な事業を複数同時に立ち上げていく様を映画やドラマで躍動感を持って描くのは相当に難しいだろう。おそらく短い時間で描こうとすると、「ものすごく移り気な人」みたいになってしまう。それくらい、当時のこの人たちの立ち上げた事業は数多くあり、後の日本に大きな影響を残している。
例えば、五代友厚は鉱山王として知られるのだが、残念ながらそうした描写は殆ど無い。(現存する鉱山があまり無いため映像化が大変?)
とはいえ、こうしたあまり知られていない偉人に光を当てて取り上げるというのは意義のあることだと思う。

さて、この映画を評する上では主演の三浦春馬氏については言及せざるを得ない。まだ若いのに亡くなってしまい、本当に残念としか言いようがない。存命であれば、もっと活躍したのではないか?と思わされる演技を本作でもしている。もっと活躍が観たかった。共演している三浦翔平についても勢いがあり、なかなか良い龍馬役だと思う。五代友厚の映画であるためか、坂本龍馬暗殺シーンが割とあっさりしていたのはやや残念だ。

ガーディアンズオブギャラクシーvol.3 ★★★★

2023-05-09 21:58:06 | ★★★★
連休中に渋谷のTOHOシネマズで字幕版で観てきました。ネタバレせずに軽く解説。

もし、vol.3を観るなら当然ですが、vol.1, vol.2, ホリディスペシャルをディズニープラスで事前に鑑賞することを強くお勧めします。(可能ならソーの過去作やアベンジャーズ、インフィニティウォー、エンドゲームは観てほしい)事前知識が必要なのがなかなかハードル高いですよね…。

マーベルシネマティックユニバースってもう40作品目くらいなんですけども、これ北米では「お話に全部ついていけてる人が相当数いる」というとても空恐ろしいことをしているわけです。
なんなら奇跡がずーっと起こり続けているような状態なわけです。だからこそ、大きな予算で製作できてるし、それぞれの作品のクオリティも非常に高いわけですね。
一方で、日本って、マーベルヒーローに思い入れがある人があまりいないこともあって、日本市場だけそこまでヒットしてないという状態がずーっと続いています。アメリカのヒーローって日本であんまりウケないんですよねえ、なぜか。日本のヒーローもまた、アメリカではそんなにウケない気もします。
ガーディアンズオブギャラクシーあたりはまさにその典型かもしれませんが、非常にコメディ色の強めのヒーロー映画と言って良いのではないでしょうか。
本当に、メンバーの掛け合いが最初から最後まで笑えるわけです。劇場では声に出して笑ってしまった人はあまりいなくて、隣に座っていた欧米系の方々には大いにウケていました。

ガーディアンズオブギャラクシーの適度な緩さと銀河系レベルの敵のスケールのデカさは毎回そのギャップが思わず笑えるわけです。宇宙の危機にもいつでも飄々としている、というのが、彼らの特徴でした。(このあたり、大真面目なチームモノのエターナルズやファンタスティックフォーなどとは違う。)

一方で、仲間思いでもあり、いつでもメンバー一緒という印象の強いチームです。それぞれがキャラが立っていて、一人一人全く違う見た目と能力があるわけですが…。
今作はガーディアンズのメンバーでも人気のキャラの1人、ロケットというアライグマの格好をしたキャラクターにフォーカスを当てた話になっています。彼、可愛らしい見た目によらず口は大変悪いわけですが、そんな彼が結構仲間想いだったりするギャップが楽しいキャラなんです。
過去作では語られてこなかったそんな彼の過去にまつわるお話がvol.3では展開されます。
勿論、過去作で色んな経緯があったキャラクターたちが織りなす皮肉たっぷりのシニカルな会話劇がまた楽しいのですが、シリアスとコミカルを行ったり来たりするのが楽しいですね。(英語が理解できるとより楽しいギャグや間合いも多いんですよねえ)
前述の理由により簡単には人にオススメできる映画ではありませんがファンなら観ておいて損はない、そんな映画でした。

スパイダーマン ノーウェイホーム ★★★★

2023-05-07 15:12:02 | ★★★★
映画館で鑑賞。
素直に面白かった。
スパイダーマンって実写ハリウッドでの映画化は3回目なわけです。
3回とも割と興行的には成功しているわけで、全米ではスパイダーマンは本当に愛されているキャラクターです。
ソニー・ピクチャーズはなんならスパイダーマンのおかげでなんども経営を助けられていたりします。
そんなことを思えば、MCUにおけるスパイダーマンもまた奇跡の存在なわけです。
ソニーがまだ興行権を持っているけども、競合にあたるディズニーのシリーズに出るわけですから。
この縛りがあるために、なかなかスパイダーマンはアヴェンジャーズに参加できないのでは?と言う疑惑もありました。
それが払拭されたキャプテン・アメリカvs. アイアンマンこと、シビルウォーでは、スパイダーマンが出てくるシーンで拍手喝采だったわけです。
異例の初登場からすでに何作品も経ており、スパイダーマンの役者としてしっかり板についてきたトム・ホランドなわけです。
なんなら彼のおかげでMCUでスパイダーマンが続投していると言っても過言ではないというのはよく言われているところです。そんな彼がスパイダーマンを演じる作品ももう6作品目?になります。
今回はアイアンマン不在ではあるものの、ドクター・ストレンジと共演し、そしてまさかの2人とも共演し最高の瞬間を描きます。
実際、置かれている状況は笑い話のような展開ではあるものの、本人たちにとっては大きな分かれ道である進学。
そこに絡めた痛切なお話に仕上がっていました。
特にエンディングに至る流れは物悲しさがありました。
一方で、夢の共演シーンは本当にあれよあれよという間に実現します。
もう本当にじんわりとくるわけですが、またこういう共演があることは2度と無いとは思う一方、またどこかで観られるのでは?という期待もまたしてしまいました。

THE FIRST SLAM DUNK ★★★★★

2023-05-07 15:08:33 | ★★★★★
これはすごい作品だわ。
TOHOシネマズ新宿で22年末に友人たちと鑑賞。
アニメでここまでスポーツを描けるものなのかと驚愕しました。

バスケットボールのアニメ作品としてこれ以上の作品は出てくるのだろうか。
漫画作品としてはいまだにスラムダンクは金字塔だと思うけども。
アニメとしてはこの作品を超えるのはなかなか難しいくらいすごい表現の目白押しだったと思う。
あらすじは色んなところでも言われているので触れませんが、個人的には宮城をフィーチャーしたのは支持しますね。
掘り下げ方も好き。
あまり描かれることが無かった彼の内面や生き方が色々と描かれていて好感が持てました。
声優総入れ替えで物議を醸していたけど、それでも全然いけたかな。
脳内置き換え余裕でしたが、それは初代アニメの声で何回も漫画読んでたからなんだろうな。
漫画スラムダンクは買ったことはないくせに何回も色んなところで読みすぎて相当覚えてたな…。
当時としては相当頑張ってた初代アニメを美しく超えていきました。

文句ある人は一度観てみたらと思うくらいには素晴らしい作品でした。

スーパーマリオブラザーズ ★★★★

2023-05-03 21:29:42 | ★★★★
同名ゲームを3D CGで映画化した作品。
渋谷のTOHOシネマで吹き替え版で鑑賞。(本当は字幕版で見たかったのですが、残念ながら良い時間帯で見られず。)
結論から言えば、大ヒットするのも頷けるさすがの過不足のない出来上がり、鑑賞後に快感のある良作でした。

既に全世界で大ヒットしており、興行収入10億ドルを突破し、このままいけばアナ雪2を超えるヒットも狙えるということでした。
過去、1980年代にファミリーコンピュータというゲーム機とともに一世を風靡した髭男は今度は映画界を席巻しているわけです。
日本のゲームソフトメーカーであり、ゲーム機メーカーでもある任天堂からこうした大ヒット作品が生まれたことは大変に興味深いことだと思います。
なぜなら、任天堂はこれまでもこうしたチャンスはあったはずですが、ゲームのIPを使ったエンタメ作品展開はやってこなかったわけです。
そして、それはなぜかといえば、過去に1993年頃、ハリウッドで50億円もかけて実写化され大失敗した「スーパーマリオブラザーズ 魔界帝国の女神」が存在しているから、ということになるのかもしれません。こちらはゲームとも相当設定を変えて話を展開しています。色彩豊かなマリオの世界観を表現できていたとは言い難い作品でした。
映画というのは大変お金がかかる上に失敗するとイメージ戦略上もかなりのマイナスになるわけです。
例えば、日本のRPG超大作だったファイナルファンタジーも3D CG映画化で大失敗し、結果、スクウェアはエニックスと統合するしかない、展開を迎えることになってしまいました。ハリウッドは鬼門だったわけです。
また、あまり誰も語りませんが、1986年「スーパーマリオブラザーズ ピーチ姫救出大作戦!」というアニメ映画も過去に制作されています。何気にマリオの声は古谷徹だったり、和田アキ子や山瀬まみが出演クレジットにも名を連ねていたりします。この作品のプロットはWikipediaでも確認できます。(昔、なぜかこのアニメのダビングされたビデオが家にあったので、よく見ていました。)この作品と今回の作品を比べてみると時代の変遷を感じられて面白いかもしれません。ゲームの世界に入り込むような話ですが、そこはトロンっぽさもある感じです。
一方で、任天堂といえば、ポケモンというキラーIPがあり、こちらでは世界中でアニメが放映され続けており、ポケモンカードは今や社会問題になるような状態にまでなっています。また、ハリウッド映画としても近年、名探偵ピカチュウという予想外の作品でヒットを飛ばしたことで、任天堂の中でもIPに対する考え方は大きく変わってきたように思います。(ポケモンはスマホゲームとしてポケモンGoでもナイアンティックと組んだことで世界中で大ブームとなりました。このゲーム展開でも数千億円の収益があったといわれていますが、任天堂本体にはそこまでキャッシュインはなかったようでした。これはスマホアプリとしてスーパーマリオランが出た時も同様だったようです)
任天堂はあくまで、IP展開としては自社ハードを第一義に取り扱い、USJなどで少々横展開こそあったものの、ここまで本格的にマリオの映画化に取り組んだのはかなり意外に感じた人が大多数だったのではないでしょうか。イルミネーションとの合作ということで、内容は大変、面白いものに仕上がっていました。
音楽の使い方も80年代をふんだんに使ったり、ゲーム中の音楽の見事なアレンジがあったり、クッパに歌わせたりピアノを弾かせたりとやれそうなことは何から何まで全方位でした。
ゲームとしても様々な作品への目配せが効いていました。
マリオとドンキーコングJrが戦う大乱闘スマッシュブラザーズ的な展開、はわかりやすかったですし、マリオカートやレインボーロードもまた非常にわかりやすい展開でしたが、「ルイージマンション」まで入れ込んでくるのはなかなかにマニアックでしたし、スーパーマリオギャラクシーのキャラクターを出したり、ヨッシーもカメオで出したり、と過去作品のオマージュもふんだんに使われていました。
各任天堂の作品自体がメガヒットして世界で何千万本も売れている作品であるからこそ、この折り重なるように見せてくれる数々の懐かしの作品のオマージュは楽しめるわけです。
マリオが序盤でピーチ姫に特訓されるシーンはまさにスーパーマリオの世界観そのものです。きのこを食べなければ強くなれない設定やダメージを受けると効果がなくなるという不思議設定もさらっと刷り込んできます。この辺りの自然さが憎いところです。
キノピオたちの役立たず具合や「こんなに可愛いのに」も痛烈ですし、どのシーンもニヤニヤしながら見てしまいました。

さて、そんないろんな細かい話はあるわけですが、お話の本筋として、「ピーチ姫を助けるマリオ」という図式はそこまで変えずに、「兄弟の絆」を主題に持ってきたのはなかなかクレバーな展開でした。序盤のシーンでも分かるわけですが、今や、女性は「守られなければならない弱い存在」という時代ではありません。それはアナ雪で散々、描かれたわけです。強い女性像、戦う女性像、たくましい女性像が今のハリウッドやアメリカ社会では求められている。別に「髭の小男」に、本当は守ってもらう必要など、ピーチ姫にはないわけです。なんなら、ほぼ全編、ピーチ姫はクッパと互角に戦っています。マリオが弟のルイージを助けなければならなくなるからこそ、ピーチ姫とも共闘した、というのがまさに図式としては妥当なわけです。ポリコレ的な反発も受けづらい。この辺りの「バランス感覚」はさすがだなあとしみじみ感じます。

序盤、マリオとルイージは配管工業者を立ち上げ、スーパーマリオブラザーズプランビングという会社を立ち上げています。(このロゴやTVCMがまたなかなか秀逸)サラリーマンを辞めて、起業しているわけですね。配管工って冴えないイメージがあるかもしれませんが、実際にはアメリカで配管工などのブルーカラーなガテン系の業者のコストって結構高くてですね、ブルーカラーの給与というのもきっちりダイナミックプライシングが効いており、高騰しています。そのため、日本でのイメージで配管工を語ると結構間違った理解になるようにも思い、アメリカのニューヨーク、ブルックリンで会社を立ち上げていきなりTVCM作成して、アピールするあたり、割とマリオは戦略的なビジョンは持っていたのかなあとも思います。異常気象が続いているせいか、実際、ニューヨーク、ブルックリン周辺では洪水だったり、も起きていたりもするので、何気に喫緊の課題だったりもするかもしれません。皆さんが思い描いているよりもニューヨークの街は古臭いし、草臥れているし、様々なインフラが相当弱っています。地下鉄も含めて、心地よい場所ではないわけです。そのため、需要というのは結構あるのではないかなあと。とはいえ、大変な仕事なので、誰しもがやりたい仕事ではないのかもしれませんね。

で、気の弱めなルイージをマリオはいつも励まして助けてきたわけで、兄弟で協力して物事に取り組んできたけど、周りからは理解されず、馬鹿にされてばかりきた。せっかく最初の仕事が入ってもうまくいかない、本当に踏んだり蹴ったりの中でたまたま出会した事態からキノコ王国へ行く羽目になる、と。
ルイージというキャラクターは元々、ファミコンゲームで二人プレイをするためにできたキャラクターなわけです。そんなルイージとマリオの絆を中心に話を構成することで、誰もが共感しやすい話に仕立てたのはさすがイルミネーション、さすが宮本茂ということになるのでしょうか。
宮本茂のインタビューを読んだりしていると、今後も様々なIPが映画化される可能性は感じられますが、できそうなものと難しそうなものがありますね。「星のカービィ」などは難しそうと思う一方で、「ゼルダの伝説」や「ファイヤーエムブレム」などはぜひドラマで展開してほしいと思わされます。

お話としてはニコニコして見ていられる万人受けするお話に仕上がっていますが、なぜか見ていてジーンとくるものがありました。
それはなぜなんだろう、と思うと、私のように生まれた頃からファミリーコンピュータと育った人間にとってみれば、マリオはずっと「そこにいた存在」だったわけで、幼少時に親も含めて、「何百回とプレイしたゲーム」がそれだったわけです。そんな「原初体験」がそのまま、鮮烈にしっかりと映画の中でイキイキとキャラクターが喋り動き回り、躍動感のある様をお約束も含めて、これでもか、と見せつけてくれたわけです。しっかり、キャラクターが描きこまれており、人間ドラマもあるわけで、そうした現代技術の進歩によってようやく描き込め表現できるようになったこれらの日本のエンターテインメントの千両役者であるマリオが世界で活躍する様を目の当たりにして、じんわりと感動したのでした。