目指せ!映画批評家

時たまネタバレしながら、メジャーな作品からマイナーな作品まで色んな映画を色んな視点で楽しむ力を育みます★

イチケイのカラス 劇場版 ★★★

2024-10-27 10:38:28 | ★★★
イチケイのカラス 劇場版
少しネタバレします。悪しからず!




田舎の圧力とか空気みたいな話だと99.9とか沈黙のパレードとか元彼の遺言状の終盤とか映画ノイズとか最近こういう話が多い気もしますね。who done itモノとして推理展開が面白いからなのか、この手の話があまりに増えると展開が読みやすくなってくるのが少々悩ましいですが…

さて、田舎というのは閉鎖的な空間であり、そこでの人間関係が全てといえば全てです。そして、本作ではしっかりと描かれますが、閉鎖的な労働環境と企業、そして、地域の空気。主人公はまさかの家まで燃やされ、別の弁護士も殺されて、恐ろしい目に遭います。こちらの弁護士が死んだ事件が刑事事件として扱われなかった点や、裁判所での調査結果について根拠となる証拠や証言者を裁判で呼ばなかったのはちょっと違和感が半端無いなとは思いました。裁判所は証拠を提示しなくて良いのか?
あと、普段は人気がないだろう、田舎の神社の近くの階段で人が倒れて死んでたら事故と事件の両方疑いませんかね?田舎なら尚更。そこが事件化されなかったのもまた法廷モノとしては致命的かなと。

とはいえ、お話としては面白く観ました。

企業が工場撤退する描写が終盤描かれずにいきなり商店街のお店が次々と潰れる様が描かれましたが、そんなに一斉にみんな同じ日にやめちゃうもんかなあ。シャッター商店街はいろんなところにありますが、だんだん真綿で首を絞めるように店って潰れていくんじゃないかな。あまり映画的な表現かなと。
あと、裁判官の入間さんは「無くなってしまうならそこから始めるしかないんじゃないですか」とは言うものの、入間さんも坂間さんも結局はどこまでいっても、他所の人なんだなとも思いました。工場なんてそんなにポンポンもうできないんですよ、日本に。一度無くなったら雇用は回復しない。

花束みたいな恋をした ★★★

2024-10-27 10:20:47 | ★★★
花束みたいな恋をした
Netflixでフリーになっていたので鑑賞。
有村架純、菅田将暉主演、脚本は坂本裕二、土井裕泰監督。

あらすじ

駅で終電を逃したことをきっかけに出会った麦と絹。お互いに音楽の好みや趣味が同じことを知り、すぐに恋に落ちる。大学を卒業してフリーターをしながら同棲生活をスタートさせ、日々変化する環境の中で日常を共有しながら大切に過ごしていた。この2人での生活を続けるために、就職活動に励んでいく。


以上あらすじ抜粋


自分がこの映画の前情報を入れていなかったこと、予告編のテイストと有村架純、という配役から映画としてはちょっと勘違いしていて、感動系のよくある悲恋モノかなあと思っていました。が、良い意味で序盤から気持ちよく裏切られました。
これは、「500日のサマー」や「ブルーバレンタイン」https://blog.goo.ne.jp/kikidiary/e/5243a2dc06c7aed178916d4a4c306050
の再来かなと思うのにそこまで時間はかかりませんでした。
結論は提示しておいて、その経緯を見せていく映画ですね。

ネタバレしていきます。ここから先はお気を付けを。


さて、まず、京王線沿線に馴染みが深くなった筆者からすると、明大前描写とかはなかなか楽しいですね。あー、このあたりかな?とか想像しながら観ることができました。調布駅まで歩くと2時間半もかかるぞ!とか。焼きそばパンの店は調布ではなく、千歳烏山にある、とか調べて楽しいですね。
大学前の駅、と言う雰囲気自体は似たようなマンモス関西私大に通っていたので雰囲気として共感するところがありました。

あと、様々なサブカル要素が2人を繋ぐものとして出てきます。サブカル界隈とか趣味が多様化してしまった現代においても一定程度こうした話が成り立つものなのだなあとは感じるところです。サブカルチャーに詳しい人やうるさい人、好きな人たちには刺さるところがたくさんあったのではないでしょうか。特に自分はこれが好きで…と様子を見ながら話し始めるというところですかね。誰しも経験がありそうです。

どうしても自分語りがしたくなるようなお話ですよね。

この映画を観ていると、麦くんと絹ちゃんの選択についてあれこれ思うことが出てくるわけです。

キングダム 大将軍の帰還 ★★★

2024-10-13 01:20:12 | ★★★
キングダム 大将軍の帰還
誰が書いても似たようなレビューになるとは思いますが…
渋谷TOHOシネマズで鑑賞。公開から日が経っていましたが、まだまだ満席で驚きました。もう何回も観に来てるリピーターもいた様子で後ろに座っていた女性は6回目も絶対来るーと言っていてそんな声が耳に入って驚きました。
四作目ともあり、全体的にさすがの安定感。予算枠もアップしてるそうで、引の絵では合戦シーンでCGを活用しつつも、そこそこのアップのシーンではかなりエキストラを使っており説得力のある絵を描けています。

六大将軍王騎を演じる大沢たかおがもはや主役と言っても過言ではなく後半は彼がずーっと出ずっぱりになります。そして、この存在感のある大沢たかおがしっかりと鍛えたからこその凄まじい説得力を生み出していました。やっぱりね、矛をしっかりと持って絵になるってのが超大事なので、これをがっつり肉体作りからやることが重要なんですね。大沢たかおの場合は山本耕史同様もしかすると趣味かもしれませんが…
三国無双みたいな吹き飛ばしなどは、やはり、肉体美があってこそかなと。説得力が出ます。あと、やはり一作目から見せていた「ンフっ」もハマってるなあと。
山﨑賢人は信の役をかれこれ5-6年は演じてることになりますが、映画シリーズがもしこのまま続いていくと、はてさて、どこまで描けるのかなあとはおもわされます。なにせ、原作漫画がまだまだ続いているだけに…どこかでは打ち止めになるんでしょうかね。それはそれで残念ですが…次にやるとすれば朱海平原ですかね。と思い原作を見返すととてもじゃないけど、そこまでは無理そうな長さ…

さて、今作に話を戻すと、他にも王騎の想い人である摎(きょう)を新木優子が演じていました。こちらは腕の細さがあまりにも細く、ちょっと説得力に欠けたような気もしますね。ビジュアル的にはもちろん、良いのですが…ちょっと衣装がワンダーウーマンっぽいのはなぜだったのかな…

今後も楽しみなシリーズですが、どこまで続けられるか?の方が気になる感じです!

ミーガン ★★★

2024-01-14 16:36:44 | ★★★
ミーガン
サンフランシスコから帰りの飛行機で鑑賞。これはなかなかに面白い作品でした。AIが昨年はもてはやされ、今年もその勢いはとどまることを知りませんが、そんなAIが今後どうなるか?のダークサイドを描いた作品とも言えるのでしょう。
両親を事故で亡くしてしまった姪の心を癒すために超高性能な等身大の人形のおもちゃを作りあげた主人公の女性エンジニアがそのおもちゃが引き起こす事態に翻弄されていくお話です。
予告編は結構流れていたのでSFスリラーであることはなんとなく予想できるのではないでしょうか。チャッキーあたりを思い出す人もいるんではないかな。
この女性エンジニアは姪を引き取るのですが、仕事で忙しくてあまり姪をきちんと育てることが出来ません。そんな状況から、人形を作りあげるわけですが、お話の流れからして女性エンジニアは必ずしも良い代理親とは言えず、おもちゃ開発の仕事が忙しすぎて姪の面倒を見る時間も無いわけです。お話の構造的に、こうしたある意味で自己中心的な主人公は報いを受けることが多いわけですが…

それにしても、技術の進歩というのは恐ろしいものでこうしたミーガンという人形のおもちゃが実際に存在していてもおかしくはないなと思わせるような時代になってきました。本当にAI技術とロボティクス技術が進歩した時にこうした事故を防ぐことは本当にできるのか?というのは大変気になるところです。ロボティクスはだんだん小型化していますし、AIやセンサーの技術も徐々に進化していますので確かにいつかはそうした日がやってくるのだとは思いますがそれは意外と早いのかも、そして、私の生きてるうちにそんな日が訪れるのかも、と思わされます。

SFスリラーとしてはなかなか面白かったです。

クリエイター 創造者 ★★★

2024-01-14 16:34:56 | ★★★
クリエイター 創造者
ギャレス・エドワーズのSF大作。
サンフランシスコ行きの飛行機で鑑賞。
こう言う作品は本当は大音響の大画面スクリーンで観たいものです。飛行機の小さな画面で観る映画ではないなあ。

AIアンドロイドが力を持ちすぎて核戦争が起こり、復讐と言わんばかりに米国が徹底的なAI狩りを始めた世界。
AIアンドロイドに人権を認め、保護しているアジアの国々。そこに容赦なくAIを殺すために巨大な兵器を送り込み、アジア人諸共、殺して回るというお話。なかなかに酷い話ですが、別にこの話はAIは関係無くて実際に今でも米国やイスラエルなどの西側諸国や中国、ロシアなどの共産圏の覇権国家が現在進行形でやっていることですね。そこは痛烈な皮肉になっているのかなと。
一方で、AIが進化した先に果たしてどういう行動を取るのか?という問いに対して、この作品は一つの考えられそうな回答を用意しています。
結末は嫌いじゃないなあ。
名優 渡辺謙が日本語を話すAIアンドロイドとして登場します。


インディ・ジョーンズ 運命のダイヤル ★★★

2023-11-12 18:39:38 | ★★★
インディジョーンズ 運命のダイアル
面白かった。韓国往復の国際線で鑑賞。

何にしろ、ハリソン・フォードが80歳と高齢の中で続編が作られただけでも嬉しい。
劇中でも考古学の教授としても引退するわけだが、恐らくは次回作は難しいだろうとも思わされる。
それにしても、作中で過去作に比べて、時代の影響もあってか、インディの講義の人気も考古学の地位も下がってるのは少し寂しかった。
インディ・ジョーンズの面白さと言ったらまさに「痛快なアクションとアドベンチャー」なわけだが、それをやりきるにはハリソン・フォードが歳をとりすぎたのかもしれない。
過去作との関連も多く見られる。
最後のインディの選択は確かに、最後の聖戦の頃のことを思えば、やっぱり、そこはその選択はしないべきだと思うんですよね。なんとはなしに。手に入れるべきものと手に入れてはいけないもの、というのがこの世の中には色々とあるんだよな、ということだと思うんですよね。

AIR ★★★

2023-07-21 08:30:21 | ★★★
AIR
この映画、よく出来ていました。Amazonプライムで鑑賞。

マット・デイモン主演。ベン・アフレック監督・出演。

2018年にNIKEの創業者であるフィル・ナイトが作者の「Shoe Dog」という本が発売されて日本でも大いに話題になりました。
この本、私は未読なんですが、NIKEの創業当時の苦労話から1980年頃までを描いています。
そして、この本で描かれたNIKEの成功から、数年経った1984年がこの映画の舞台となります。
NIKEはシューズメーカーとしては後発のシューズメーカーですが、市場の先行者であるconverseや adidasと真っ向勝負してランニングシューズではシェアを取ることに成功。しかし、バスケではまったくシューズのシェアを取れていなかった、というところから話が始まります。

私は今40歳のため、世代的に、バスケットボールのシューズと言えばNIKEのエアマックスやエアジョーダンなんですが、そんな私からすると、バスケシューズと言えば、コンバースのオールスターだった時代があるというのが信じられないわけです。(世代ごとに感覚が異なるんでしょうけども)

そんなNIKEが今年も負け戦よろしく、バスケのわからないマーケティング担当者たちが印象だけでコラボ契約する人を選んでいるシーンから話は始まります。
他社よりも少ないだろう予算を数人に振り分けるから、そこそこの選手数名と契約しようという会話。ドラフト5位より下の平均的な選手に予算をバラけさせようとするわけですが、これに主人公は反対し、自分が信じる選手1人に予算を振り向けようと提案します。
それがマイケル・ジョーダンで…
という流れで話は進展していきます。

現実にかなり寄せてキャラを描いているため、どのキャラクターも相当現実味を持って描かれます。走るのが嫌いというキャラ設定のソニーを演じるマット・デイモンはなかなかのお腹のでっぷり具合。

どういう結末に至るかはまさに誰もが知っているわけですが、予算潤沢で評判の高い他社が2社もある中で絶対的な不利な状況をどうやってNIKEが覆していくか、というところが楽しく描かれていきます。

詳しくは作品を観てほしいところです。ビジネスモノとして楽しく、あまりシーンもないのでスポーツモノって感じではないですね。

ソニーたちが働くNIKEのオフィス、80年代からアメリカのオフィスってあんまり雰囲気が変わってないんだなあということが感じられました。

この映画を観て思うのは、前例を覆し、新しい歴史を作る時の判断というのは簡単ではないということでしょう。ビジネスの通例上、考えられないことも、前例が無いという理由で選択肢から除外していることも結局はバイアスなんですよね。そして、誰しもがバイアスを持っていてそれをきちんと認識できて、バイアスを取り除くために適切かつ最短距離のアクションを取れる人がブレークスルーを起こすことができる、と。そして、本質にブレずにきちんと提案できれば、相手にちゃんと伝わるということでもある。契約金は安くてもダメだけど、他社と並べば、後は何を見せて、何をお願いし、譲歩するか、ということだけ、なんですね。

NIKEのバスケットシューズはその後、世界を席巻することは誰もが知っているわけですが、その前夜に起きたこと、というのは1人の男の熱意とそれに影響を受けた人たちによるもので、それが何人もの人の人生を大きく変えるわけで、最初は誰もが無理だと思っていることでも、信念を持ち、貫き通すことができれば、達成出来る、ということが感じられました。

あと、ベン・アフレック演じるフィル・ナイトCEOのコミカルさ、はなかなか特筆すべき点かもしれません。終盤のプレゼンシーンの登場などなかなかに笑える展開でした。

The Legend & Butterfly ★★★

2023-05-27 15:44:22 | ★★★
Amazonプライムで独占配信ということで鑑賞。レジェンド&バタフライを観ました。

思いの外、早い配信開始でしたね。興行収入は30億円届かずということで20億円掛かったという制作費回収のためのアマプラ独占配信では、という声もあるそうです。

レジェンド&バタフライは信長と濃姫(帰蝶)の2人を主役に据えた物語を2時間半にまとめた映画です。
大河ドラマ「どうする家康」と同じ脚本家 古沢良太。

木村拓哉が信長をやる、というのはそれだけで一定の期待感はありました。(木村拓哉は過去に20代の時に信長をドラマで演じているが、そのドラマでは岐阜平定までが描かれている。https://toyokeizai.net/articles/-/646787。
また、木村拓哉の時代劇と言えば武士の一分だろう。こちらは当時、相当のヒット作となった。一方、大河ドラマ主演経験は無い。
綾瀬はるかは大河ドラマ八重の桜で1年間の主演経験があり、座頭市を演じたICHI、ドラマだと仁、などがある。木村拓哉と綾瀬はるかの過去の共演作は主にドラマ。『HERO 特別編』(2006年/フジテレビ系)、『MR.BRAIN』(2009年/TBS系)、『南極大陸』(2011年/TBS系)などがある。)

ここから中身にも触れますので、映画を観る予定の方は読み飛ばしてください。

■ロケ地の多い映像
レジェンド&バタフライは大河ドラマではなく、映画として相当の予算が掛かっているためか、映像もアナログなロケ地での撮影が多く、その意味で豪華でしたね。
NHKは大河ドラマ「青天を衝け」あたりからコロナ事情もあったせいか、マイクロLEDウォールを相当活用し始めていますが、どうしても「映像的な実在感」には乏しいわけです。観てる人にはスタジオだとわかる。合戦シーンなどでそれは顕著で、この作品のようにお金を掛けて撮影されていると、歩兵一人一人の実在感というのは圧倒的に違いを感じるわけです。
大河ドラマだと、この家康たちの後ろに歩いてる歩兵たちはCGだな…とわかるわけです。(合戦シーンで葛折に歩いてるシーンなどはかなりあからさま)
レジェンド&バタフライではこの製作費に見合った豪華な合戦シーンが観られるのかな?と思ったものの、大立ち回りがあるのは限られたシーンのみではありました。京都での落人群的なところのシーンと、本能寺の変のみ、と言っても過言では無かったかな。

■テーマ選定
日本人に極めて馴染みのある三英傑である家康、秀吉、信長。

やはり50年近く生きた波瀾万丈の戦国武将である信長の話を2時間半にまとめるというのはなかなか難しい。
なんなら大河ドラマで50話×45分で日本人は何回も色んな角度で観ているわけです。(家康視点、秀吉視点、最近だと光秀視点も!も含むと更に増える)
戦国武将が好きな人は何パターンも本能寺を観ているし、何パターンも桶狭間を観ている。その中で織田信長の理想像というのは日本人それぞれにあって、こういうのが信長、という視点があるわけです。そんな信長像と少し違った形でこの映画は描きます。

濃姫をかなりフィーチャーした形の作劇が全編で描かれます。
映画としては惜しい、の一言でしょうか。
木村拓哉も綾瀬はるかも素晴らしい演技をしています。その他の役者も素晴らしい。
惜しむらくはテーマ設定なのでしょうか。
木村拓哉と綾瀬はるか、ダブルネームの映画にしたためにこうした形になったんだろうなと。織田信長と帰蝶、ではなく、織田信長と戦国の女性たち、みたいな形にしても良かったのかな…とは思いました。

岡田准一が石田三成を演じた「関ヶ原」のような本格的な戦国時代劇でもなく、新解釈の現代風時代劇にもなりきれず、「どっちつかず」になってしまった感はあります。

■濃姫大フィーチャー
序盤の「濃姫に組み伏せられる信長」「鷹狩りで負ける信長」などの展開はコメディ的で面白いです。前半の濃姫の活躍については創作だと割り切って観ればこれはこれでなかなか面白く観ることができました。
一方で、その後の濃姫とのコミュニケーションを通じた信長の精神的な成長がわかりづらかった。
時間が限られている中では何を描いて何を描かないのか、というのは映画でも非常に重要です。
濃姫の存在の必然性がどうして後半にゆくにつれて、仕方がないものの下がり続けるわけです。濃姫との絡みを無理やり出そうとするあまり、なかなかにお話は後半、苦しくなっていきます。史実でも岐阜平定までは濃姫が前面に出てきてもお話的に破綻がありませんが、そこから先は劇中でも濃姫が「妾(わらわ)はもう用済み」という通り、まさに史実から鑑みると、蛇足とも言えます。
濃姫はあまり実際の記録に出てこないのですよね。つまり、謎が多い。なんなら没年すらもよく分かっていないわけです。そのため、創作の余地はかなりあるキャラクターなわけですが、今作は特に前半は濃姫のフィーチャー具合が相当なものとなります。
え、そこの助言も彼女なんですか?というくらいに濃姫が描かれます。

■全体のバランス
姉川やお市の方、朝倉義景、浅井長政、武田信玄、今川義元すらキャストとしても出てきません。斎藤道三もナレ死に近く、桶狭間も戦闘シーンは無し。
桶狭間も出陣シーンこそあるものの、出陣前の敦盛シーンも無し。なんなら、家康も秀吉もあまり出てきません。(斎藤工の演じる徳川家康はなかなか見どころですが、ほとんど出番が無いのが残念)
このあたり、大河ドラマ「麒麟がくる」などでは描かれていたあれこれが無かったりと戦国ファンとしては寂しさを覚えました。
光秀の解釈もなかなか面白いキャラ造形ではあります。(かーなーり、無理があるけど)
そして、終盤のシーンで新解釈か!?となるところあたりは非常に楽しく観ました。
○○ランド的な展開。正直、それはそれでやりきってくれてもアリだったかも、とは思うわけです。流石に憚られたのでしょうけども…
この辺りの「どっちつかず感」がまさに惜しいと思わされました。

天外者 ★★★

2023-05-27 15:43:13 | ★★★
映画「天外者」
Amazonプライムの無料期間が終わるとのことで慌てて視聴。
三浦春馬主演で描かれる幕末の志士、五代友厚の物語。
前半の幕末期における躍動感は素晴らしい。ある程度、日本の歴史に詳しくないと西郷隆盛や大久保利通がどの人かはパッとわからないかもしれない。
そもそも論、五代友厚は幕末から明治期に活躍した偉人ではあるが、坂本龍馬や維新三傑ほどの知名度が無い五代友厚の映画を見る人たちはある程度歴史の知識があると見るべきなのか、三浦春馬目当てのファン層が観るのだとすれば、歴史ファンばかりというわけでもないのか…
朝ドラで五代友厚を知った人も多いのではないだろうか。大河ドラマ青天を衝けでも登場していた。(どちらもディーン・フジオカ)

さて、映画は2時間くらいなのだが、相当に駆け足で進む。
後半は特にそうだ。前半の長崎での大立ち回りであるとか、坂本龍馬や伊藤博文、岩崎弥太郎との牛鍋の風景、色街で知り合う女性との儚い恋であるとか、薩英戦争での顛末であるとか、横浜から九州までの逃走劇とかかなり楽しめるが、明治期に入ってからは作劇としては少々減速という感じだろうか。そのため、映画的な盛り上がりが後半に無い残念な展開となっている。
実際に五代友厚が果たした役割は明治期に入ってからの方が大きいのだが、それをうまく映画的には表現できなかったようだ。
五代友厚は大阪株式取引所、大阪商法会議所、大阪商業講習所(大阪商科大学の前身)などを設立している。大久保利通らとも新政府初期に相当議論に入ったりもしている。
政治/経済ドラマというのはなかなか難しい。青天を衝けでも残念ながら後半は少々退屈な展開であった。明治期に五代友厚や渋沢栄一が果たしたことが多すぎていくら時間があっても描ききれなかったということなのかもしれない。
あと、「経済関係の仕掛け」は時間が掛かるものばかりなので、映像にするとなかなかスムーズはいかないのだろう。多年に渡り、様々な事業を複数同時に立ち上げていく様を映画やドラマで躍動感を持って描くのは相当に難しいだろう。おそらく短い時間で描こうとすると、「ものすごく移り気な人」みたいになってしまう。それくらい、当時のこの人たちの立ち上げた事業は数多くあり、後の日本に大きな影響を残している。
例えば、五代友厚は鉱山王として知られるのだが、残念ながらそうした描写は殆ど無い。(現存する鉱山があまり無いため映像化が大変?)
とはいえ、こうしたあまり知られていない偉人に光を当てて取り上げるというのは意義のあることだと思う。

さて、この映画を評する上では主演の三浦春馬氏については言及せざるを得ない。まだ若いのに亡くなってしまい、本当に残念としか言いようがない。存命であれば、もっと活躍したのではないか?と思わされる演技を本作でもしている。もっと活躍が観たかった。共演している三浦翔平についても勢いがあり、なかなか良い龍馬役だと思う。五代友厚の映画であるためか、坂本龍馬暗殺シーンが割とあっさりしていたのはやや残念だ。

シン・仮面ライダー ★★★

2023-04-02 12:21:29 | ★★★
シン・仮面ライダー
新宿TOHOシネマズ、IMAXで鑑賞。
満足!
事前の評判が微妙な人がちらほらいたので、期待値下げて見に行ったけど…だからなのか、満足でした。

しかし、シンゴジラやシンウルトラマンと比べると、これは観る人を選ぶ映画かもしれない。

それは仮面ライダーが描いている本質的なテーマが改造人間の悲哀だからなのかもしれない。一般の人にとっては本当にどうでもいいテーマなのだ。「悪の秘密結社に勝手に改造される」なんてこと自体が普通の人には訪れない。

平成ライダーはクウガを筆頭に「普通の人がやんごとなき事情に巻き込まれる形で変身せざるを得なくなるという虚構」をリアルに描こうとしてきた。

初代仮面ライダーを忠実に再現しようとするとどうしてもショッカーとか怪人とか改造された経緯を描かざるを得ない。人体改造というテーマは超難しい。

一方でゴジラもウルトラマンもあくまでも一般人の視点というのをいくらか持たせることができる。それはゴジラで言えば人間全員だし、ウルトラマンで言えば禍特対の皆様や普通の人間たちである。つまり、巨大な異様な存在vs.取るに足らない人間存在という対比の中にドラマを配置できる。

人間存在をしっかりと描かなくてはならないのに、エヴァ的なアプローチでのキャラ造形しか出来なかったのは敗因かもしれない。特撮で人のサイズでドラマ展開するので、人のドラマがきっちりと描かれてほしいというのは我儘だろうか。

つまり、簡単に言えば設定も含めて
本郷猛=碇シンジ
緑川ルリ子=綾波レイ+葛城ミサト
緑川博士=碇ゲンドウ
緑川イチロー=碇ゲンドウ
2号=アスカ
怪人たち=使徒
といった構図である。

初代仮面ライダーやエヴァという作品をちゃんと観て知ってて、という前提があると次から次へと楽しいが、知らないとあんまり分からないまま、共感しづらいかもな、と。

以下ネタバレします。





「仮面ライダー 本郷猛は改造人間である…」
という有名なナレーションと仮面ノリダーでもオマージュされた有名な改造シーンが無いままに、ダンプに追いかけられるバイクチェイスで話が始まり、簡単な回想と説明セリフでしかサクッと説明されないのでかなり理不尽に本郷猛は改造人間になってしまったという描写がなされる。
今時、あの改造手術シーンを真っ向から作成するのはちょっと難しいのかもしれない。人間体に戻すための機構が内蔵されてるのは何故なんだろうなあ。そこは言及がなかったが、まあ、ずーっと改造体だと流石に人間世界には溶け込めないからだろうか。それにしてもどんな謎技術なのだろうか。顔の皮が裂けた後に綺麗にすっきり戻るというのは…。
あまり過去や改造直前の展開も語られない。これはある意味原作踏襲ではあるものの、初見の人は一気に置いていかれる気はする。
しかも、戦闘員との戦闘ではいきなりのグロ描写。(戦闘員の頭蓋やら胴体が吹き飛ぶ吹き飛ぶ)
これは大百科やら設定集などで何十トンと散々誇張されてきた仮面ライダーのパンチ力、キック力が普通のショッカーの戦闘員に発揮された場合の正しい描写とも言え、ある意味では好感が持てた。この辺りがまさに庵野節だろうか。
謎のダンプ爆破により、崖から落ちたはずなのにかなり元気な浜辺美波演じるルリ子、その理由は後ほどわかります。
それにしても、ルリ子、キャメルのロングコートが似合いすぎています。
そして髪型含めたキャラデザインは言ってはなんですが、完全に「綾波レイを実写化した感じ」にも見えますね。悲劇的な結末までも綾波レイを踏襲…。原作である仮面ライダーには緑川ルリ子という名前のキャラはいたものの、こういう存在(ショッカーの構成員かつ緑川博士のDNAを使った生体電子演算装置)ではなかった、ということを考えると、ここがまさにシン仮面ライダーとしてのオリジナル要素とも言えるでしょうか。蝶々オーグ/緑川一郎の設定にもまたオリジナル要素があります。

90話もある長編である原作の特徴あるストーリーを2時間の映画にまとめようとすると何かしら特徴的な脚本にはしないといけないわけですね。

その後、緑川博士は変身の仕組みやら元の姿に戻る方法、どうして本郷猛を仮面ライダーに改造したのかを一通り説明したら蜘蛛オーグに早々に殺されてしまいます。

その後、さすが、仮面ライダー、変身前で爆弾を喰らってもびくともせず、しかも建物の中に停めてあったバイクはなぜかすぐに外に停まってて…というなかなかのドラマ的な嘘。

仮面ライダーはルリ子を攫った蜘蛛オーグを追いかけます。ここでサイクロン号も脅威の変形。なかなかにこのサイクロン号の変形シーンは男心がくすぐられるシーンでした。

蜘蛛男あらため、蜘蛛オーグはこれまた声が聞いたことあるなあ、最近よく聴く声だなあと思ってたら大河ドラマに出ずっぱりの大森南朋と大物を声に起用。

飛翔シーンからのキックはバッタ男の面目躍如でしょうか。今回、非常に強力なライダーキックは終盤まで大活躍でした。(流石に技名は叫ばない)

空に飛び立つと蜘蛛とバッタでは圧倒的にバッタが有利というのは確かになあと言う感じではありました。
また、「仮面ライダー」は本郷猛の自称、というのもなかなか面白い展開でした。(原作TVシリーズでは、名前は4話で戦闘員に初めて呼ばれるそうです)

バッタオーグではカッコがつかないものなあ。
ショッカーの略称が
Sustainable
Happiness
Organization with
Computational
Knowledge
Embedded
Remodeling
というのも今どきですね。幸福の追求というのもまた…近年の新興宗教などでもこの手の連中がいるわけですが…1970年代の秘密結社と2020年代の秘密結社はそりゃあ趣も違って然るべきではありますよね。

そして、政府の男 竹野内豊と公安の男 斎藤工ですよ。
なかなかにインパクトありますね。
2人の名前がまさかの立花と滝というのは終盤でわかりますが、シンゴジラ、シンウルトラマンと観ているとね…。キャラや演出も殆ど同じというのもまたニヤッとさせられます。勿論、違うキャラなんだろうなあと思うものの…同じユニバースの赤坂と神永なんじゃないかなと思ってしまいますよね。
仮面ライダーが政府のために戦う構図になってしまっている…という非難の声もありますが、実際のところ、まともにショッカーと相対しようとすると旧作のFBIの滝だったり、今作の公安だったりのサポートは不可欠だよなあと思いますね。クウガでもアギトでも警察組織はバックアップに回っていますよね。


蝙蝠オーグ 
意外と銃で撃たれるだけで相当のダメージを受けてしまうという蝙蝠オーグ。あと、ここでようやくルリ子がどうやら普通の人ではないことがわかります。どうにもここのネタばらしは、そこに至る仕組みの説明があまりないので、ルリ子が用意周到…ということがわかるエピソードに留まります。屋外でのライダーキックの餌食になります。それにしても、このライダーキックは相当にかっこいいですね。
蝙蝠オーグはどうしてこいつだけこういう旧作っぽいテイストになったのかなあ。

蠍オーグ 
長澤まさみは仕事を選んだら?という気がしないでも無いですが、本当に…。三谷幸喜と言い、庵野秀明と言い、古沢さんといい、最近の長澤まさみのコメディエンヌぶりがヤバいですね…。いや、いい意味でなんですけどね!サクッと倒されてしまうのが残念なのと、他のレギュラーキャラとの絡みが無いのがなんともかんとも…蜂女を倒すためのシークエンスに成り下がってる感じでそこが残念。公安の銃でナレ死。無念ですね。

蜂オーグ 
またもや、USAFが登場。今回は爆弾ではなく、ライダーを投下。シンゴジラ、シンウルトラマンに続き、三作品連続?今作ではあまり自衛隊は出てきませんでしたね。
黄色ベースの衣装やら刀が使われてたのは若干キルビルを彷彿としましたね。意識したのだとは思うんですけども。あらら…という口癖が何度も出てきましたね。ルリ子との過去が少しイメージできる流れでしたね。
戦闘シーンは止め絵のアニメーションみたいなアプローチでしたね。超高速戦闘。出来れば、この超高速戦闘の結末の付け方は工夫が欲しかったなあ。
最後はルリ子による説得中に蠍女の毒の入った銃で死亡。
ってか、公安強すぎでは?
別に仮面ライダーと共闘しなくても怪人2体も倒しているではないか。

2号ライダー: 寡黙、暗めの1号と相反して非常に強い陽キャラで、飄々とした1人が好きな一匹狼。1号と違い、風の力を必要とせずに変身可能。明らかに1号よりも力も強いし、そもそも洗脳のためか、元々の性格なのか、中の人の思い切りが良い。おかげで空中戦で1号は足の骨を折られる重症。(仮面ライダーテレビ版でも藤岡弘が骨折したために2号ライダーが出てくるんですよね。そのオマージュなのだろう。)2号の洗脳をルリ子が解くものの、その後に涙を流してる絵がなかなかのインパクト。
物語的には後半のキーマンの1人になります。2+1号となるわけですが、1号ライダーはこの世界観では復活は無いのだろうか。2号と1号の空中戦を見ていると、ちょっと他の怪人との戦いが浮いちゃうような別次元の戦いに見えてしまいますね。バッタオーグ同士だから実現した戦いということにしておきますかね…

カメレオンカマキリオーグ 何気に光学迷彩マントという最大の武器を最初に放り投げたというのが残念の極み。いわば、反則武器だし、まとっていると強すぎてライダーが勝てないからかな…是非とも、攻殻機動隊の最初のシークエンスの逆をやってほしかった。(光学迷彩にどうやって勝つ?)
ルリ子抹殺に成功するも、2号ライダーキックで即退場になってましたね。

偽ライダー: これまたあっという間にバイク技やダブルライダーキックで瞬殺。動きのあるシーンではありましたが、フルCGに近いシーンでもあり、FF7風味たっぷりでした。後にNHKで放送されたドキュメンタリーによると、実はフルCGではなく、格闘シーンもあったとのことで、そちらも見てみたかったなあと思う次第。完全版みたいなもので見られると良いなあ…

蝶々オーグ:0号を名乗るわけですが、そういう意味では彼もまたヒーローになりたかったクチなんでしょうね。
詳しい解説は以下記事ですが、過去も含めて屈折した経緯を感じさせました。が、別売りの漫画読まないとわからないバックグラウンドがあるのはちょいといただけないなあとは思いました。もう少し解説が欲しかったかな。
倒され方は割と自壊に近い感じだったのでしょうか。
プラーナを自前では取り込めなかったのも痛手?

https://cinemarche.net/column/sin-kamenrider-0-ichiro/#i-2

あと、この作品におけるイチローの目的はまんま、エヴァの人類補完計画だよね、というツッコミがウェブ上では多数。
確かにその通りなんだよね。庵野秀明の世界観の中で絶対悪として存在するのは「人間としての自主的な尊厳を奪う存在」というのは面白いのだが、違う主題も出てくると良いなあとは思う。

K: ロボット刑事を意識したKのデザインとキャラクターは気になる目配せ。石ノ森作品を今後もシンシリーズで作るのかどうか。最後が描かれず気になるところです。が、流石にシン・キカイダーとかシン・ロボット刑事、はやらないんだろうなあ。