週末の滞在先の大阪梅田ブルク7で鑑賞しました。インセプション。
ダークナイトが世界中で大ヒットしたクリストファー・ノーラン最新作で、ラスト・サムライやバットマンビギンズに続き渡辺謙が日本人俳優としてはかなり露出の多い作品となっており、日本人からするとすごく喜ばしいことだと思います。バットマンビギンズのときなんかはかなりひどい役だったしなあ。渡辺謙演じるサイトーは権力がある企業経営者であり、なおかつ非常に行動力があり信念のある男として描かれます。立場としては中立に近い立場にあるキャラクターですが、かなり好意的に描かれていると感じました。
またハリウッド映画で非常に虚構っぽい日本が出てきて辟易することが多いのですが、本作では新幹線が出てきたりしてなかなか面白い。渡辺謙が誘い込まれる場所がかなりキルビルなのはご愛敬というところでしょうか(笑)
巷では「難解だ」とか言われてるこの映画ですが、私はこの映画、渡辺謙のことを抜きにしても好きです。
この映画の主題は荘子の胡蝶の夢だと私は思いました。序盤がフックになっていて、海辺に打ち上げられるディカプリオが運び込まれるところから物語は展開されるわけですが、非常に面白い。
興味と緊張感の持続という意味ではやや難解でありながらきちんと映画終盤まで引っ張ってくれる。
荘子の話を引き合いに出さなくても、誰にでも経験のある話でしょう。夢というのは意外にも、語られる機会が少ないですが毎日自分たちの身近にある話ではあるのです。
この映画では夢を重層的に構築し、ターゲットを誘い込み、夢の中でターゲットのアイディアを盗むという仕事をしているディカプリオたちが渡辺謙演じるサイトーにある仕事を頼まれ…という話に加えてディカプリオの過去の話が折り重なっていきます。
また、ターゲットを誘い込み、目的を達成させるために重層的な構造の夢の世界を構築します。
この三重構造(四重)の夢の中での展開が後半の白眉ですが、この奇妙で複雑ででも魅力的な話を作り上げた脚本家は非常に優秀だと感じました。
夢の中は時間の流れの早さが半分に遅くなるから、現実の1分があれば夢の中では60分になる、というのが面白いアイディア。このアイディアがあるから、脚本上、無理なく現実世界でターゲットを夢の中に誘い込んだ後にも十分に時間をかけて、ターゲットからアイディアを盗んだり、出来るわけです。つまり、夢の中の夢の中の夢に入れば更に長い時間をかけられる。だから、多層構造の夢を構築する必然がある。
夢から引き戻すための「キック」や夢から戻れなくなる「虚無」など、非常に魅力的な世界観の構築に成功しています。またその説明にもかなりの時間を割いており、夢を設計する設計士の女の子に説明するという物語的必然によって無理なく説明がなされます。
良くできたSFというのはこの難解な部分の説明に手を抜かないし、物語的にも必然のある展開で説明します。インセプションはそういった意味では難解という評価を受けなければならないほど、難解な映画ではないし非常に丁寧な映画になっています。 夢の世界の描かれ方も非常に高度なCGが活用されていて独特な動き。街並みを動かしていく描写や、無重力描写はとても興味深い。
ただ、目的を達成させるために夢の中の夢に入っていく展開と夢から起きるために必要な引き金があって、これが展開をスリリングにしつつも観客を混乱させるのだと思う。
また、私は鑑賞後に特殊な印象を受けた。まるで、自分がまだ映画の中の夢の世界から帰って来られないかのような…。非常に言い様のない感覚。
どこからどこまでが夢でどこからどこまでが現実かかなんて自信を持って言える人なんてなかなかいないものだ。
誰もが不安な気持ちを抱えやすい部分にすごく訴えかけてくるのだと思う。ディカプリオ演じるコブの妻モルが語りかけるシーンは非常に印象的だ。
「この現実が現実だなんてどうして断言出来るのか、この現実は夢じゃないとどうして言い切れるのか」
ラストシーンはいたずらめいたクリストファー・ノーランなりの茶目っ気だとは思うが、エンドクレジットに入ったとたんに、観客はみんな、ざわめいた。2人で来ている客は隣の連れ合いに話しかけていた。
ラストの解釈はどうとでも解釈出来るから、そしてその「どうとでも解釈出来る」ことが怖くて、みんな一斉に口を開いて連れ合いに話しかけたのではないだろうか。
映画を真面目に観ていたらラストの真意は十分はっきりしているのだけど。それまで描かれなかったある2人の顔がしっかり映ってる。
どこからどこまでが夢でどこからどこまでが現実かあなたには判別出来るだろうか。
この夏、踊る3よりもアリエッティよりもオススメなのはトイ・ストーリー3とインセプションだと思う。
トイ・ストーリーの他に観る映画に迷ったらインセプションがオススメです!
ダークナイトが世界中で大ヒットしたクリストファー・ノーラン最新作で、ラスト・サムライやバットマンビギンズに続き渡辺謙が日本人俳優としてはかなり露出の多い作品となっており、日本人からするとすごく喜ばしいことだと思います。バットマンビギンズのときなんかはかなりひどい役だったしなあ。渡辺謙演じるサイトーは権力がある企業経営者であり、なおかつ非常に行動力があり信念のある男として描かれます。立場としては中立に近い立場にあるキャラクターですが、かなり好意的に描かれていると感じました。
またハリウッド映画で非常に虚構っぽい日本が出てきて辟易することが多いのですが、本作では新幹線が出てきたりしてなかなか面白い。渡辺謙が誘い込まれる場所がかなりキルビルなのはご愛敬というところでしょうか(笑)
巷では「難解だ」とか言われてるこの映画ですが、私はこの映画、渡辺謙のことを抜きにしても好きです。
この映画の主題は荘子の胡蝶の夢だと私は思いました。序盤がフックになっていて、海辺に打ち上げられるディカプリオが運び込まれるところから物語は展開されるわけですが、非常に面白い。
興味と緊張感の持続という意味ではやや難解でありながらきちんと映画終盤まで引っ張ってくれる。
荘子の話を引き合いに出さなくても、誰にでも経験のある話でしょう。夢というのは意外にも、語られる機会が少ないですが毎日自分たちの身近にある話ではあるのです。
この映画では夢を重層的に構築し、ターゲットを誘い込み、夢の中でターゲットのアイディアを盗むという仕事をしているディカプリオたちが渡辺謙演じるサイトーにある仕事を頼まれ…という話に加えてディカプリオの過去の話が折り重なっていきます。
また、ターゲットを誘い込み、目的を達成させるために重層的な構造の夢の世界を構築します。
この三重構造(四重)の夢の中での展開が後半の白眉ですが、この奇妙で複雑ででも魅力的な話を作り上げた脚本家は非常に優秀だと感じました。
夢の中は時間の流れの早さが半分に遅くなるから、現実の1分があれば夢の中では60分になる、というのが面白いアイディア。このアイディアがあるから、脚本上、無理なく現実世界でターゲットを夢の中に誘い込んだ後にも十分に時間をかけて、ターゲットからアイディアを盗んだり、出来るわけです。つまり、夢の中の夢の中の夢に入れば更に長い時間をかけられる。だから、多層構造の夢を構築する必然がある。
夢から引き戻すための「キック」や夢から戻れなくなる「虚無」など、非常に魅力的な世界観の構築に成功しています。またその説明にもかなりの時間を割いており、夢を設計する設計士の女の子に説明するという物語的必然によって無理なく説明がなされます。
良くできたSFというのはこの難解な部分の説明に手を抜かないし、物語的にも必然のある展開で説明します。インセプションはそういった意味では難解という評価を受けなければならないほど、難解な映画ではないし非常に丁寧な映画になっています。 夢の世界の描かれ方も非常に高度なCGが活用されていて独特な動き。街並みを動かしていく描写や、無重力描写はとても興味深い。
ただ、目的を達成させるために夢の中の夢に入っていく展開と夢から起きるために必要な引き金があって、これが展開をスリリングにしつつも観客を混乱させるのだと思う。
また、私は鑑賞後に特殊な印象を受けた。まるで、自分がまだ映画の中の夢の世界から帰って来られないかのような…。非常に言い様のない感覚。
どこからどこまでが夢でどこからどこまでが現実かかなんて自信を持って言える人なんてなかなかいないものだ。
誰もが不安な気持ちを抱えやすい部分にすごく訴えかけてくるのだと思う。ディカプリオ演じるコブの妻モルが語りかけるシーンは非常に印象的だ。
「この現実が現実だなんてどうして断言出来るのか、この現実は夢じゃないとどうして言い切れるのか」
ラストシーンはいたずらめいたクリストファー・ノーランなりの茶目っ気だとは思うが、エンドクレジットに入ったとたんに、観客はみんな、ざわめいた。2人で来ている客は隣の連れ合いに話しかけていた。
ラストの解釈はどうとでも解釈出来るから、そしてその「どうとでも解釈出来る」ことが怖くて、みんな一斉に口を開いて連れ合いに話しかけたのではないだろうか。
映画を真面目に観ていたらラストの真意は十分はっきりしているのだけど。それまで描かれなかったある2人の顔がしっかり映ってる。
どこからどこまでが夢でどこからどこまでが現実かあなたには判別出来るだろうか。
この夏、踊る3よりもアリエッティよりもオススメなのはトイ・ストーリー3とインセプションだと思う。
トイ・ストーリーの他に観る映画に迷ったらインセプションがオススメです!