目指せ!映画批評家

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スターウォーズ スカイウォーカーの夜明け(ネタバレ評)

2019-12-23 22:41:14 | ★★★★
スターウォーズ スカイウォーカーの夜明け (ネタバレ感想)

San JoseのICONシアターのVIP席にて英語字幕無しで鑑賞。

エンドロール始まった瞬間に「すごい!JJありがとう!」とガッツポーズを取ってしまうくらいには素晴らしい着地です。

よくぞ、ここまで立て直した!

新3部作、2作目の「最後のジェダイ」はレビューも書いていませんが、ハッキリ言って展開が苦しい映画でした。いろんな人が既にdisりきっているので、これ以上論を重ねることはしませんが、本筋を盛り上げるための必要な展開の殆どは3作目でやりきる感じになってしまい、2作目はまさに本筋描写不足気味な展開になってしまっています。要はサイドストーリーが余計すぎるんですね。

- [ ] 3作目の成功要因はまさにこのシリーズの主人公であるレイ、そしてカイロ=レンにきちんとフォーカスしてサイドストーリーは極力「あっさり」めにして、メインキャラクターを中心に描いていることだと強く思います。2作目の展開があったからこその展開もあるにはあるし、それはそれで良いのですが、やはり2作目でもっとお話が描きこまれていれば3作目はもっともっと良い作品になっただろうな、とも思わされます。 そういう意味でライアン・ジョンソンの責任はものすごく重いし、これを立て直して「終わり良ければ全て良し」にまで昇華させたJJがすごい!ということでもある。いや、そもそも2作目もJJがガッツリやればよかったんではないか!?JJはライアン・ジョンソンを庇っているようですが…

なので、今作では2作目でも出来たであろうことをわんさか取り入れてるため、序盤から中盤、終盤に至るまでまさにほぼ中だるみなしで駆け抜ける2時間半という展開になりました。

大作映画を撮るにあたって1番難しい事はこうした三部作映画の場合にはこの三部作全てのバランスを取ることだと思います。
3作品も作るとそのうちのいずれか一作で失敗してしまうことがあります。中だるみしたり、詰め込みすぎたり。いずれかの作品の盛り上がりに欠けると言う展開がよくあるんですが、今回スター・ウォーズ新3部作ではこの中で2作目が駄作と言う展開になってしまいました。おかげで3作目では詰め込み気味に話が次々と展開します。




さて、ここからは本格的にネタバレします。

◻️パルパティーン登場
いきなり序の文(最初のタイトルバックで流れるあらすじ)でパルパティーンの名前を出す、という荒技でいきなりパルパティーンが関与しているラスボスであることを匂わせる展開でした。物語を語る上で究極の時短術。
予告編では既に高笑いが聞こえてきていたところからもファンはパルパティーンがなんらかの形で物語に関わってくることはよく分かっていたでしょうが、その情報を事前に知らなければ、パルパティーンって…!?となること請け合いですね。勿論シリーズ過去作をきちんと観ていれば、パルパティーンが誰か?なんてことは思わないのでしょうけども、新三部作だけを観てる新規ファン層にとっては突然の過去ボス登場に戸惑う人もいたのではないでしょうか。(7.8でもあまりパルパティーンの存在を匂わせる存在はおらず、スノークの正体や背景のみがよくわからないままに、スノークもあっさりとカイロ=レンに真っ二つにされてしまっていたわけで…ファーストオーダーとは一体、誰が首謀者なのか?という問い自体があまりなされてこなかったということでもありますが…そして、それはまさにパルパティーンの仕業であり、「あれは全部俺が黒幕だったのだ!」という便利な展開となりました。)
パルパティーンは割とあっさりと登場し、どうやって生き延びたのか?などは詳しく解説されないまま、長い期間にわたって大艦隊を用意していたことが描かれています。この大艦隊、あまり見せ場もなくやられてしまうのですが、大艦隊をただ規則的な距離で並べてしまったのはちょっと勿体なかった気もします。艦隊なのですからもう少しなんらかの編隊を組んで欲しかったようには思います。まあ、一隻一隻が星を壊せるような大戦艦だったわけなので、編隊など組む必要も無かったんでしょうけどね。

◻️パルパティーンの倒し方
パルパティーンとまともに対峙したのはシリーズでも、マスターウィドウ、マスターヨーダ、ルーク、ダースベイダー、そしてレイ&カイロ=レンなわけですが…

・ジェダイ評議会で代表的な立場を務めていたウィドウは「シスの復讐」にて、あと一歩でパルパティーンを倒せるところまで迫っていましたが、アナキンに阻まれて腕を切られ、その後にフォースライトニングの直撃を食らってしまいコルサントの街中まで吹っ飛ばされました。

・ヨーダは「シスの復讐」時点ではパルパティーンと実力では明らかに拮抗していたものの、地理的な不利を覆しきれず敗退。割と諦めよく撤退します。もっと頑張れよ、ヨーダ!!

・ルークは「ジェダイの帰還」の終盤、憎しみや怒り、そしてダークサイドに取り込まれる可能性があったためにライトセーバーを使わなかったわけですが、そのためにフォースライトニングを弾き返すことが出来ませんでした。

・ダースベイダーは「ジェダイの帰還」の終盤、皇帝の不意を突いてデススターの中に投げ込むことで皇帝を倒すわけですが、この時も皇帝の動きはちょっと不自然ではありました。フォースライトニングを使ってる時はもしかすると隙が大きい?

今回のレイによるパルパティーン攻略法を見ると、パルパティーンの倒し方としてはやはりメイス・ウィドウは相当良い線いってたというのがわかる展開でした。

憎しみや怒りに任せて首を跳ね飛ばしたのではダークサイドに取り込まれるからダメで、(これはルークと同じアプローチ)
強すぎるフォースライトニングを跳ね返してパルパティーンに対して逆に浴びせ続けるのが正攻法ということですね。フォースライトニングの当たり判定は自分にもあるんですねえ。(そして、数百機にも及ぶ戦闘機の電子系統を一度におかしくさせるくらいのパワーはあるようです。)

パルパティーン撃破直前に数多くのジェダイの声にレイは立ち上がるわけですが、この中にはメイス・ウィドウやクワイ・ガン、ヨーダもおり、どう戦うべきなのかを瞬間的に理解したのかもしれませんね。

また、パルパティーンになす術もなくフォースを吸い取られるシーンはもう少し抵抗の余地は無かったのか!?とも思わされるシーンでした。


◻️レイの出自
レイ=「あのお方」の係累、というのはまさに予想の少し斜め上をいく展開でした。
今回の新三部作では「突如強大なフォースを持って現れたレイは一体何者なのか?」というフックを残しつつ、2作目では何者でもないとカイロ=レンが語り、3作目ではやはりやんごとなき人の血脈でした…という話を描くことになります。まさかのフォースライトニングによって、レイの禍々しいフォースの片鱗が見えてしまいます。
そりゃそうだよね。でなければ、レイがこのシリーズの作品の主人公である必然性がないし、敵と対峙し続ける強く深い動機にも繋がらない。そういう意味では2作目の展開(カイロ=レンによる暴露ではない暴露)が不要でした。これは脚本上の奇を衒いすぎた結果ではないかなとも思います。
2作目の終盤で3作目のポイントとなるレイの出自を描いてしまうとやはり帝国の逆襲を彷彿とさせ過ぎてしまうからやらなかったという言い訳は聞こえてくるんでしょうけども、それでも3作目は駆け足感が否めない展開にはなってしまいました。

ルークの場合は「父は死んだ」と1作目で聞かされていたものの、2作目の帝国の逆襲でそれが宿敵のはずのダースベイダーによって覆され、苦悩する、というものでしたね。
I'm your father. からのNooooo!は有名過ぎて沢山のパロディが作られたほどでした。

「誰が主人公の親か明確には描かれない」という展開はアナキンも父親に関してはそうなわけですが、レイの出自もアナキン(父親不明)と似たような出自なのかもと予想していた人も多かったのではないでしょうか。あとはルークの子ども説だとか、ソロの隠し子説だとか…

結局、レイは何者でもない自分をジェダイの騎士と位置付けようとしたものの、あのお方の係累とわかり、絶望しかけ、そして、スカイウォーカーの名を継ぐ者として生きていくことになるわけです。舞台立てとしてそのレイによる宣言をラストにタトゥイーンの夕陽をバックにやる、というのはまさに「本当のファン心理というものをよく分かってるな、JJ」という感じがしました。

「受け継がれる血によって己を定義する」のではなく、「自分が何者であるかは自分で定義する」「受け継がれるのは血ではなく、フォースの教えである」というのが、この物語の終着点であり、アナキンから始まったスカイウォーカー家の血族による物語は「血族が1人残さずいなくなる」という展開でこれにて終了となりつつも、ジェダイの騎士という概念、ないしはフォースは不滅、レイアやルークの「スカイウォーカーの意思」を継ぐものは今後もこの世界に生き続ける、という展開になりました。

そういう意味では前作は「最後のスカイウォーカー」、今作は「フォースの夜明け」という方がタイトルとしては正しい気もするんですが、それでもやはりThe rise of skewalkerは良いサブタイトルだな、と感じる次第です。このタイトルのskewalkerはレイなんですね。なので、やはりこの物語はレイの物語なのでしょう。

カイロ=レンは伝説の英雄であるハンとレイアの息子に生まれ、更には伝説のジェダイ騎士であるルークに鍛えられるというまさにエリート、サラブレッド街道まっしぐらだったはずが、修行中に屈折してしまい、ダークサイドに取り込まれてしまいました。レイもカイロ=レンも3作品で血や出自にこだわり続けたわけですが、結局はカイロ=レンは血族によって道を取り戻し、レイは血族を断ち切ることにより正しいと思われるであろう道を歩み始めます。

レイは登場直後から強いフォースを持っていると描かれてきたわけですが、そのフォースがダークサイドに傾くか、ジェダイサイドに傾くかは結局は「人それぞれ」であり、「血が原因ではない」ということを端的に示した二人がレンとカイロ=レンだったとも言えます。

◻️レイとポーとフィン
この3人の組み合わせでの旅は今回初めて描かれており、これがまた少し心温まるシーンも交えつつなので、なかなか楽しめました。ラストシーン近くで泣きながら3人が抱き合うシーンを見てこの3人の冒険は出来ればもっと長く見ていたかったな…とつくづく思わされました。2作目でも、やって欲しかった。


◻️カイロ=レンの最後
カイロ=レンが最終的にはレイにフォースを託してフォースと共になってしまう、という展開は、物語的納得性としては非常に高いものがあります。ファーストオーダーとして無辜の人々を散々殺戮してしまった後なのでいくら改心したとはいえ、その後のハッピーエンドに立ち並ぶわけにはいかなかったでしょう。そして、レイとの気持ちの通じ合いやらレイアとの邂逅、ハン・ソロとの邂逅もまた、これはファンサービスだとは思ったものの、それでもこれは素晴らしいフォースの贈り物とも言えなくもないかなと。最後に青いライトセーバーで戦ってくれたのは嬉しい展開ではありました。

◻️レイの闇落ち説
あと、赤い双刃のライトセーバーが話題になったダークサイド レイはあくまでもレイの弱い心の中の存在という展開でしたね。

◻️C-3PO
彼は今回、メモリー消去のくだりからも、居なくなるかと思いきや、これまた意外とあっさりと記憶も復帰。

◻️チューバッカ
彼もまた退場かと思いきや、なぜかラッキーにも生き残り怪我一つなく再合流します。

◻️ランド
ランド=かルリシアンも相当歳とりましたね。予告編よりも歳をとったように見えました。最後の最後に非常に美味しいシーンがいくつかあり、十二分に存在感を発揮します。

◻️レイア 
過去に撮影した映像も使い、キャリー・フィッシャー没後にも関わらず存在感を発揮。しかし、あまり台詞は無かった。これは致し方が無いのだろう。それにしても、レイアはフォースでここまでしっかりとカイロ=レンに語りかけることができるのだからもっと早くそうすればよかったのに、という野暮なことを考えてしまいました。
カイロ=レンをダークサイドから呼び戻すにあたって重要な役割を果たします。レイはこのレイアの呼びかけに気付き、カイロ=レンの命を助けます。

◻️ハン=ソロ
もう、画面に映った瞬間にグラグラと感情を揺さぶられました。やはり超カッコいい。ハリソン・フォード。ハンはフォースが使えるわけではなかったため、霊体としては現世に現れることは出来なかったはずで、カイロ=レンが見たのは幻なのかそれとも…という位置付けでしたが、新たに撮影されたシーンは名シーンと呼んで差し支えないように思います。

◻️ルーク
前作では変節してしまったルークが新たに学び直してヨーダの声にも耳を傾けて、次代に未来を託す展開だったわけですが、やはりルーク=スカイウォーカーの前作での扱われ方が残念すぎて、その点ばかりが悔やまれます。
今作ではフォースと共に生きる存在となっており、(いわゆる霊体)、レイが絶望の淵から這い上がる手助けをします。
前作では自身が放り投げたライトセーバーを今作ではライトセーバーは由緒ある武器だからきちんと扱うようにとレイを諭すシーンなどはやや滑稽な面もありましたね。また、初期の三部作ではまるきり持ち上がらなかったXウィングを軽々とフォースで海中から引っ張り上げるというのは霊体にしては強力すぎやしませんか…殆ど生きてるといってもよい存在では…これはヨーダが前作で雷を落としたのと似ていますね。

◻️フォースの新解釈
新三部作ではフォースの新解釈がいくつかありました。1作目ではカイロ=レンがブラスターをフォースで止めたり、「最後のジェダイ」でルークが使った分身を送り込む術であったり。(ってか、ルークはXウィングを海中から出せるんだったら「最後のジェダイ」では直接カイロ=レンとケリをつけるべく向かうべきだったのでは、とも思わされてしまいます。自分の撒いた種なわけですから。)

今作で言えば傷の治癒、生命力伝播と言った癒しの能力。そして、精神感応からの物質転移。どちらも劇中でレイやカイロ=レンの窮地を救っています。それにしても、銀河を超えた精神感応による交信はこれまでも描かれてきましたが物も渡せるとなると、これはとんでもないことになります。というか、やはり反則的な展開に持ち込むことに成功しています。この能力はカイロ=レンとレイの間でだからこそ出来た能力と考えたいところですが…傷の治癒はある意味ではレイのフォースのジェダイともダークサイドとも違う性質を感じさせます。

レイアが宇宙空間で氷付けになっても死なずに浮遊しながら宇宙船に帰還した「最後のジェダイ」でのワンシーン。これは相当に物議を醸したのではないかとも思うのですが、レイアはフォースをそこまで自在に扱えるんだ!と驚いた人も多かったのではないでしょうか。
今作ではレイアとルークが若い頃、おそらく、時間軸的には「ジェダイの帰還」後にライトセーバーで訓練しているシーンが少しだけ描かれています。レイアもジェダイなので、ライトセーバーを使った訓練やレイを鍛えたりもできるのかもしれませんが…これは2作目と3作目の冒頭のレイの訓練シーンを監督するレイア、というシーンを補強するためのシーンでもあり、JJの類稀なシリーズ構成力が一役買っていると言えるでしょう。

全体を通じてあれこれと気になる描き方はあったものの、本作はあの2作目を受けて作る3作目としては素晴らしい出来だったのではないでしょうか。

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