目指せ!映画批評家

時たまネタバレしながら、メジャーな作品からマイナーな作品まで色んな映画を色んな視点で楽しむ力を育みます★

アナと雪の女王2 ★★★★

2019-11-24 14:16:16 | ★★★★
まさかの2作目!ということで家で一作目を娘と一緒に何度も観て、さらにカリフォルニアディズニーのミュージカルも観ている身からすると非常に楽しみにしていたわけですが、サンノゼにて第二子が産まれたこともあり、時間的な余裕も無く、なかなか映画館に映画を観に行くこともままならない日々。しかし、3歳になった娘は既に映画館でライオンキングやトイストーリー4を夏に観ており映画館での鑑賞には耐えられるということを既に証明しており、長女と一緒に観に行く、ということでシリコンバレーはSan JoseにあるICONシアターで字幕無しで鑑賞。3Dで観たかった気もしますが、そこは諦めて良い時間帯の休日の昼間に観てきました。ICONシアターは全席リクライニングシートという素晴らしい鑑賞環境でしていつものんびりと映画が観られるのが気に入っています。出来たての映画館なので綺麗だし、モールの中ということもあって治安も悪くないというのもあります。

期待し過ぎてもいけないかなあとも思っていたために前情報は殆ど入れずに鑑賞に臨みました。

(以下あらすじと作品解説、映画.comより)
世界中で社会現象を巻き起こし、日本でも歴代3位となる興行収入255億円を記録した大ヒットディズニーアニメ「アナと雪の女王」の続編。雪と氷に覆われたアレンデール王国に陽光を取り戻し、深い絆で結ばれた姉エルサと妹アナ。
氷や雪を操る魔法の力を持つ“ありのままの自分”を受け入れたエルサと、明るいキャラクターが持ち前のアナは、仲間たちに囲まれて幸せな毎日を過ごしていた。そんなある日、エルサにしか聞こえない不思議な歌声により、姉妹は未知の世界へと導かれる。
それは、エルサの魔法の力の秘密を解き明かす冒険の始まりだった。姉妹は仲間のオラフやクリストフとともに、数々の試練に立ち向かっていく。前作に続きエルサとアナの声をイディナ・メンゼルとクリステン・ベル、日本語吹き替え版では松たか子と神田沙也加がそれぞれ務め、監督も前作のクリス・バックとジェニファー・リーが続投。
(以上引用終わり)

というわけでフル英語字幕無しなのですが、今回は出来るだけ感じたことをしっかり書き残しておこうと思いまして筆をとりました。
ネタバレもしますので未鑑賞の方はここで一旦読むのをやめて劇場で観てからまた来てくださいね。

ネタバレします!


まず、1作目を観た人達が誰しもが思うのが、「あの1作目の終わり方からどうやって続編を作るの?」というところでしょうか。1作目は世界的にも大ヒットしたこともあり、完成されたストーリーと演出とキャラ造形とそして歌があり、その後にどういうテーマで話を付け足すのか?と。

アナ雪はスピンオフ作品が2作品も作られており、そのどちらもが彼らの「続く日常のワンシーン」を描いたお話だったところやスピンオフ作品を2回も作ったところからも、続編が望まれている、というのは間違いなかったところなのでしょう。
※2015年にシンデレラと併映された8分間の短編「エルサのサプライズ」と2017年のリメンバーミーと併映された22分間に及ぶ中編の「家族の思い出」

やれば間違いなくある程度はそれなりのヒットが望める企画でもある。でもだからこそ、安易な続編は作れない、というのが最近のピクサー買収以降のディズニーの続編に対する基本的な態度だったのかなとも思います。(ピクサー買収前に一時期不用意に続編を乱発した反省もあるのでは。)

つい先日公開されたターミネーターシリーズのように何が正史(正当な続編)かさえ、あやふやになるような続編は出来るだけ作りたくはない、とも考えているでしょうし、丁寧に積み重ねてきたからこそ、ディズニーなりに世界観も大事にしたいところでしょう。大ヒット映画の続編だからこそ、どういうアプローチでお話を作るのか?というところは最も難しかった点ではないでしょうか。

この作品、予告編も何度も様々な形で流れましたが、荒れ狂う海を果敢に魔法で渡ろうとするエルサを描いた予告編が最初の頃に出ていたり、冒険の旅に出るような様子が既に見てとれていたわけですが、今回やはりそうした冒険の旅に出てアレンデールの国から外へ踏み出すというところは事前に想像されていました。(この初回予告動画はYouTubeで1.2億回も再生されたとか。期待値の高さが伺えます)

今回は1作目の中では触れられなかった
①エルサの能力の由来、
②父母が1作目の3年前に亡くなった理由の解明

これらが主な旅の動機になり、また2作目をお話として成り立たせる上での重要な動機にもなりました。続いていく日常を描くだけならスピンオフ作品で十分ですしね。
1作目で直接描かれなかったとはいえ、これらの2つの要素は実は事細かに描かなくても1作目は成立できていたとも言えます。

大人にとっては惹きつけられるというか、気になる要素ではあるわけですけども、1作目ではエルサの能力はなぜか最初から備わっている天賦の能力であり、両親は何らかの不幸な事故で亡くなってしまった、と駆け足でサラリと描かれたにすぎませんでした。

子どもが何回も観るミュージカル系ディズニー映画では、小難しい解説もさることながら、話に入りやすいように不要な説明シーンは極力、カットし、90分くらいに納めていたわけです。

で、2作目はやはりこれらの「ややこしい話」を主軸に置いたため小さな子どもにはやや退屈な映画だったようであり、映画の序盤では娘が寝そうになっていたりもしました。(中盤から勿論、眠そうではなくなるわけですが)

1作目は世界的に大ヒットしたこともあいまって、よくヒットの要因分析がなされることが多かった映画でした。やはり、「Let it go」という曲のインパクトやストーリーと社会情勢や抑圧されてきた女性の解放といったテーマで語られることが多く、その完成度の高い脚本、きちんとした伏線回収、キャッチーなキャラクター造形、アナとエルサの対照的なキャラ、個性的かつ魅力的な脇役たち、と今観ても非常に面白い映画と言えます。自制的なエルサの妹のために抑圧されてきた個性と解放、姉が魔法を自粛して隠している理由が自分のためであるということを知らない奔放な妹アナの開放的なキャラクターとの対比しながらの描写が実に見事でエルサがその葛藤を吹き飛ばしてどうにでもなれ!という前半のLet it goへの繋がりは非常に見応えがありました。
安易に王子様のキスで一件落着という流れには落ち着かず、最終的に姉妹で国を守っていく姉妹(家族)愛にフォーカスした点でもある意味では「2010年代のあるべきプリンセス像」を示した映画とも言えたのかもしれません。「Let it go」自体は作品内では決してポジティブな意味合いでの曲ではないですし、2作目でもエルサはその過去をやや恥ずかしいものとして捉えている様子が描かれますが。

2作目として課せられた使命は非常に重いわけですが、1作目のと同じテーマを焼き直してもつまらないわけで結局のところ、異なるアプローチでキャラクターを掘り下げつつ、キャラクターたちを成長させていく道筋を見つけていくことにした、というところでしょうか。
観終えての感想はやはり、アナと雪の女王という作品はアナとエルサを描く作品であり、2人が成長していく様を描くという意味においては今作はある程度成功した作品ではないかと思います。
しかし、1作目のようなエポックメイキングはありませんでした。あくまで、1作目で描き上げた世界観やキャラクターたちありきのファンムービーの域を出なかったようにも思います。そして、3作目を作るのはきっと難しいだろうなとも思います。

2作目に登場した新キャラ(ノーサルドラ族や精霊)であったり、終盤に明らかになった身勝手で傲慢なおじいさまのダムやら、両親の過去という数多くの新要素は子ども向け映画の上映時間的な制限も相まって、やや駆け足感が否めないところもありました。(それでも一つ一つの紹介の手順やら描き方は巧みとは思います)

本作の映像美はやはり圧倒的で前作では限定的に氷や雪が目立っていましたが、今作では炎、水、風、土の4つの精霊が出てくることもあり、これらの描かれ方と映像表現はさらにまた高いレベルに達しているように思いました。特に水の精霊をエルサが乗りこなすシーンの躍動感は特筆すべきものがあると思いました。また、秋に公開ということもあってか、ノーサルドラの森の紅葉が美しいというのもありました。

また、劇中で使われる曲についてはところどころに1作目を踏襲したものがあったりもしますが、テーマ曲ともいえるInto the UnknownやShow Yourself, The next right thing, lost in the woodsなど見せ方含めて名曲揃いと思いましたし、各キャラごとに思い切った見せ場があって良かったです。
特にクリストフは長めのソロ曲で面目躍如ですね。(もろクイーンっぽい描写が相当笑えます)
something never changeではいつもと変わらない日常と変わらないものがあることを歌いつつ、into the unknownでは躍動感と共に、旅へ出ることになるエルサの勢いと戸惑いを描き出していました。

1作目のようにエルサやアナがこの旅を通じて、自分たちの価値観をアップグレードさせるところまでは至らず、冒頭で歌われるsomething never changeの通り、変わるものもあれば、変わらないものもある、という風情でエルサはノーサルドラの女王になり、アナがアレンデールの女王に戴冠し、クリストフを王に迎えるというところで大団円。

今回はオラフが消えかけたり、エルサも氷漬けになり死にかけ、アレンデールが決壊したダムからの洪水で水没しかける、などかなり危険な状態に陥るところまで描かれるわけですが、やはりエルサの無尽蔵かつ無敵のパワーになんらの制限も無いことからもおおよその問題はクリアされ、エルサが祖父の過ちを知りそれをアナに伝え、正しい過去を知ったアナがnext right thingを成し遂げることで、エルサは助かり、アレンデールも結果的には助かったことから、おおよそ、何も失うことなく、ハッピーエンドになっています。
物語構造の基本はハッピーエンドであるべきとは思いますので、誰も居なくならなかったのはディズニーの子ども向け映画としては非常に正しい作劇だと思うわけですが、その分、ピンチがピンチではなくなり、なんとか切り抜けられるものであることから、「ワクワクドキドキのハラハラ感」は1作目と比べて進化した表現が多いにも関わらず、少なくなっているんですね。
これはアベンジャーズ、特にキャプテンマーベルあたりでも言える話なんですが、劇中で強力無比なキャラクターを仕立て上げてしまうと、安定感や爽快感はあるのですが、それと引き換えに劇中で設定する問題や困難が困難たりえない、ピンチがピンチにならない、という別の問題が生じてしまうんですよね。強力な敵もすぐ退場してしまうという。アナ雪の場合にはエルサがこれにあたるわけですが、やはり万能感が強く終盤でも彼女が退場する展開は想像し辛かったです。
そのため、アナが絶望の淵から立ち上がるThe next right thing自体の出来やそこに至るまでの描写は白眉の出来、のはずが、どうしても作劇上の必然性という意味では意味合いが軽くなってしまうんですね。また、これはアナというキャラクターの特徴とも言えますが、絶望の淵に立っていてもそれでも力強く立ち向かう彼女はあまり悲劇的なヒロインには向いてない、というのもありました。ポジティブな意味でですけども。

全体を通して躍動感や語り口のスピーディさも手伝って殆ど中だるみ無く駆け抜けるので、映画としては非常に完成度の高いエンターテインメントとして万人にオススメできるのですが、その一方で、アナ雪1作目との比較はどうしても避けられず、また2作目の作劇の必然性を持たせきれなかった、と感じてしまうという意味では期待を超える作品では無かったとも言えます。これは面白すぎる1作目を持つ不幸がなせる技で、たとえば、カーズが1作目で最高にイカす物語を作り出したのに2作目で単なるスパイアクションの凡庸な作品になってしまったことを思い出させますが、そういう意味では3作目などで挽回の機会がもし与えられるならそういう作品を観てみたいな、とも思います。


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