目指せ!映画批評家

時たまネタバレしながら、メジャーな作品からマイナーな作品まで色んな映画を色んな視点で楽しむ力を育みます★

リアルスティール ★★★★

2011-12-18 14:29:29 | ★★★★
リアルスティール ★★★★

上大岡のTOHOシネマズで鑑賞。
ヒュー・ジャックマン主演。ほぼ等身大のロボット同士のボクシングを通じてそこに携わる元ボクサーの父とずっと離れて暮らしていた息子との心の交流を描く。
とても面白かったです。

ネタバレ注意です!


この映画の面白いところは普通ならボクサーの父親がボクシングにカムバックして、頑張る姿を通して息子に生き様を見せるというのがベタな作劇なところなのに、そうしなかったところです。なぜ、わざわざロボットボクシングなのかと。それは取りも直さず11歳の息子でもロボットへの指示を通して活躍できるようにするためなのですが。父のボクサーとしてのカムバックは最後の試合で半分程度果たされます。

この映画で唯一きちんと描かれないこととして、ATOMの出自がありますが、そこについては詳しく掘り下げられません。廃棄処理されたロボットとは言え、持ち主がいたはずで、あそこまで有名になってしまうと誰かしら何かいいそうなものですが(^^;;
そういう意味でこの映画の主題はあくまで、そこに出てくるロボットではなくて、そこに携わる親子のドラマにあることがハッキリとしています。
悪役に単純な悪役以上の役割を担わせなかったところにもそれははっきり表れています。

ロボットボクシングという変化球を使いながら、描こうとしていることは普遍的な父と子の物語なのだ、と言えるでしょう。
ただ、ロボットボクシングについてはかなりしっかりと作り上げられていて説得力があります。一つ一つのセリフや背景、情景描写でロボットボクシングの世界をしっかりと表現しています。公式戦とそれ以外のイレギュラーな賭けのある草試合があること。世界戦があったりそこを転戦するロボットがいたり。音声操作が出来るロボットもいれば、そうじゃないロボットもいたり。高級車程度が買えるお金があればロボットは手に入ること。「ロボットを操る人にはボクサーの経験があってもあまり意味がないと思われてること。」
実はこの最後の部分が盲点というか、ポイントになっていて、スパーリング用のロボットであるはずのATOMがシャドー機能によって、世界戦に挑める下地になっています。作劇の妙ともうしますか、本来であればこういうロボット系のモーションだとかって専門家の意見をふんだんに取り入れるでしょうから、トレースには意味がないと思われてるのが実際には変なのですが、「この世界ではそうなんだ、」というルールというか先入観、イメージを観客の中に構築させることによって、主人公たちにスターダムへ上がらせる「作劇上の仕掛け」を作ってあるわけです。この辺りはやはりディズニー映画らしい、というか。SF的思考の強すぎる普通のSF映画ではこういう作劇はできないように思います。
父親は最初、お世辞にも人間的に褒められる存在ではありません。ロボットボクシングでは負けが続き、稼ぐどころか借金が雪だるま式に増えていく状況で、もはや限界というところへ来た別居していた息子が母親を亡くしたせいで転がり込んで来るわけですが、早速その息子をネタにお金を稼ぎます。まさにここの流れなどは本当に救いようがないダメな人っぷり。息子には早々にお金で売り飛ばされたことを見抜かれる始末。せっかく手に入れたロボットも無策な戦い方のせいで、あっという間にスクラップ同然になります。ここで、いいロボットがあっても指示する人間がダメだとうまくいかない、ということがはっきり描かれます。息子の大活躍の下地を作ってるわけですね。
紆余曲折あって、ATOMを偶然手に入れた息子はATOMを試合に出し始めます。この試合でうまく勝つわけですがそこで、父親にはボクサーの資質によって、相手ロボットの動きはきちんと二手先くらいまで読めていることが発覚。(ってことは、これまでも相手の動きは読めててもロボット操作が下手くそだったということですね。)
ゲームで腕をならしてきた息子にはロボットの操縦はそれほど苦もないことだったようで、順調にロボットを自分の手足のように操れるようになっていきます。シャドー機能も駆使して、ダンスも出来るボクシングロボット、という形で名をあげていくわけです。

シャドー機能そのものもそうですが、このロボットのCGの存在感の凄さは劇場で観ると息を飲むほどでした。特に初めてダンスを踊るシーンあたりの実在感というのは、半端ないな、と。日本でもHINOKIOというロボット映画がありましたが、比べるのが悲しくなるほどです。(HINOKIOは私は大好きですが!)ASIMOやアイボやムラタセーサク君など、ロボットの平和利用では一日の長がある日本ですが、こういう映画はむしろ日本の方がやれたんじゃないかなあ、と思うんですけどね。アメリカであんなロボットが開発されたら真っ先に兵器利用されそうです笑。

そこで来た公式戦のオファー。強敵をなんとか退けて、チャンピオンと戦うことに。ここで、トラブルがあり、父は息子に危険が及ばないように、いったんは息子と離れて、もう試合は諦めようとするのですが、結局きちんと向き合うことで息子と最後にチャンピオンに挑むことになります。
この父と子が改めて向き合うシーンから試合へ向かって行く高揚感たるや凄まじいものがあります。
チャンピオン戦も大苦戦するものの、ATOMは健気に壊れずに戦い続け、最後は音声認識まで壊れてしまうものの、シャドー機能によって真価を発揮します。それにしても、誰かのTweetにもありましたが、Gガンダムでいうモビルトレースシステムですよね笑。まあ、そもそも、あれはあれでモーションキャプチャーをモデルにしてるような気がしますが。人間の力は及ばないけど、人間の勘や経験にはロボットでは対応できない、ってことなのでしょう。ロボット開発の流れから言うとこの流れって少し矛盾するようにも思いますけどね(^^;;

勝敗は判定にもつれこみます。この先はぜひ劇場で、という感じですかね。

タイトルのREAL STEELというのは直訳すると、真の鉄、となります。劇中ではロボットボクシングの公式戦がそう呼ばれていますが、この映画全体を通して描かれるのは親子の絆と信頼の回復であり、その絆の強さこそが最終的にはReal Steelなんだぞ、ということのように感じました。


※steelには「鋼のような強い精神力」という意味もあります。


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