Light in June

文学やアニメ、毎日の生活についての日記。

贋作・恐竜ガーティ

2009-05-20 01:41:46 | アニメーション
文学とアニメーションを接続するテーマを先日発見しました。修士論文に入れてやれ。

さて、最近このブログで触れることの多いウィンザー・マッケイの代表作「恐竜ガーティ」。たしか1914年の作だったと思いますが、翌年には贋作が出ます。題名はもちろん「恐竜ガーティ」。真作の方は、マッケイが約10分の映像に10000枚も費やした労作で、ブラキオザウルスのような体格の恐竜ガーティが水辺で足を上げたり木を引っこ抜いたりする、まあ他愛のない作品なのですが、贋作の方もそれとほぼ同じ構成で、やはり水辺で猿を追っ払ったり木を引っこ抜いたりします。両作共にプテラノドンと水蛇(というか水竜)と象が登場して、ガーティが石をくわえて彼らに向かって放り投げたりする動作も共通しています。

ガーティの造形が少しだけ異なっていますが、完全な物真似です。もし二人の人がそれぞれ異なる片方だけを見ていたとしても、「恐竜ガーティ」に関する彼らの会話はある程度成立するのではないかとさえ思われます。

ところが、この二つの作品には、決定的な違いがあります。
動きです。
贋作の方が、明らかに稚拙でお粗末な出来なのです。絵自体は別に下手ではないのですが、アニメーションというものをバカにしていますね(少なくても真剣に考えてはいない)。動かすことは動かすのですが、ただ単に尻尾を左右に振らせたり(同じリズムで)、体をやはり左右に揺するだけ(これも同じリズム)です。想像力があったのは、長い首をぐるりと巻いて、飲み込んだ石がそこを通り抜けるカットだけですね。
本当にしょーもない作品で、せめてもっと上手く真似ろよ、と言いたくなるほどです。

ウィンザー・マッケイの作品は、うなるような箇所こそないですが、一定の水準には達していると思います。

そういえば贋作の方は、レイアウトというのではないかもしれないですが、ガーティのポージングというのかな、とにかくガーティの画面の収まり方が妙に悪かったです。こういう悪い例を見ると、マッケイの作品はよくできていると思えてきますね。それだけを見るのでは気付かないですが、別のもの(似て非なるもの)と比較することで、良さや悪さが分かってくるのですね。

勉強になりました。