Light in June

文学やアニメ、毎日の生活についての日記。

ふるさと探訪

2009-05-03 00:50:02 | Weblog
昼間、暇だったので昔住んでいたところへ久々に行ってきました。
目的は、当時通っていた塾があるかどうか確かめること。
その塾はいわゆる地元の塾で、Wアカデミーなんかとは規模が違いますが(といっても、ぼくの通っていた当時はWアカデミーは今ほど大規模ではなく、有名高校の合格者数も地元ではこの塾とどっこいどっこいでした。まあ全国の総数では水をあけられていたと思いますが)、そこそこの進学実績をあげていました。ところがぼくらが卒業し、21世紀になると、教室の数が減り、進学実績も落ちてきました。どうやら「あまりできない子」を中心に教える塾に変貌していったようなのです。ここ数年はさっぱり音沙汰がなくなっていたので、あの塾は今もあの場所で続いているのだろうか、と前々から気になっていたのです。

というわけで、行ってきました。ありました。あったのです。しかもなかなか繁盛しているようでした。土曜日だというのに塾の前には小学生のものらしい自転車が何台も停めてあり、看板も新しくなっているように見えました。感慨深いです。感慨深いと言えば、この辺りはかつて毎週訪れていた地域であり、まさしく地元です。今日、その側を流れている川に沿ってランニングする20歳くらいの若い女性とぼくは擦れ違ったのですが、ああ、君なのか、と一瞬錯覚しました。あの夜、あの場所で、塾帰りに仲間と一緒にいたぼくが、学校の同じクラスのコがランニングしているのに出会ったときのことをまざまざと思い出しました。君はぼくの名前を呼んでとても驚いていたね。…今日擦れ違った人は、しかし君ではありえない。君はぼくと同じ年齢なのだから。もうそんなに若くはないよね。あれは遠い日の話で、時の深淵が「今日」から隔てている。

変わるものと変わらないもの。街には携帯ショップができ、人は皆歳を重ねてゆく。一方で緑の公園は残り、小さな本屋もそのままだ。ぼくはあれからどれほど変わってしまったのだろう。そして君もあれから変わってしまったのでしょうね。お互い、もう擦れ違っても気付かないだろうか。変わりたくなんかないって思うけど、時間は残酷にぼくらを横切り、ある者には罰を与え、ある者には褒美を取らせる。君は時に祝福されているでしょうか?時の歩みを遅くする鎖に、足を取られてはいないでしょうか?ずるずる引きずられるその鎖は、多くの人間を絡め取り、がんじがらめにしてしまう。ぼくは十年近くもその鎖に縛られていましたが、ようやく最近その縛めが緩くなったようです。それは実は寂しくて悲しいことでもあるのですが。

古いことを思い出し、少し泣きたくなりました。ああしかし、塾が残っていてよかった。