Light in June

文学やアニメ、毎日の生活についての日記。

トップランナー 光のアニメ

2009-05-09 02:19:39 | アニメーション
5月9日の0時10分、すなわち5月8日の深夜に放送されたNHKの「トップランナー」に出演したのはトーチカ(TOCHKA)。テレビ欄に、世界も注目、新感覚の光のアニメ、とかなんとか書かれていたので、誰かな、あの人のことかな、と想像を巡らせて観たのですが、彼らのことか。あの「PiKA PiKA」(ピカピカ)の作者(男女二人組みの作家)です。

懐中電灯の残像を利用してアニメーションにするという、一風変わった方法で作成していて、メディア芸術祭で優秀賞をもらったし、またオタワなど海外でも評価されているし、日本のテレビでも少し取り上げられたこともあるので、一般的な認知度はそれなりに高いと思われます。しかも、ぼくは知らなかったのですが、動画投稿サイトで彼らの作品を模した独自の「ピカピカ」が制作されて投稿されているようです。これには彼らのアニメーションの奇抜さと簡易さが大いに貢献していて、本当に懐中電灯とデジカメさえあれば誰でも作れる作品みたいです。ぼくは実を言えばトーチカのファンではないのですが、素人の作った応用編的な作品を観てみると、なかなかおもしろいなと思わされます。もちろんこれは逆転的な考え方ですが、オリジナルの作品よりもコピーの作品のほうを気に入ってしまうというのは、何もこれに限ったことではないし、ぼくが初めてでもないでしょう。

今日の放送でも触れられていましたが、たぶんこのピカピカという作品の意義の一つは、誰でも容易に作れるという、芸術の大衆化という点にあるでしょう。それは芸術作品が複製されて展示的価値が高まり、誰でもそれを見られる自由化が進んだ、という意味での大衆化ではなくて、制作する側の大衆化です。パソコンが流通して誰でも自分の作品を発表できることになったこととパラレルな関係にあるでしょう。ぼくはこれまでピカピカのそういう側面を見逃していましたが、今日の放送を見て、そのことに気付かされました。

でも本当は、放送を見るまではセル風のアニメーションが紹介されるのかと期待していたんですけどね。

追記(2009年5月10日)
芸術作品が複製されて誰でもそれを見られるようになる、という事態をベンヤミン的だと書きましたが(ちなみに最初は間違えてベルクソンと書いてしまった!)、彼は「読者は、つねに執筆者になりうるのである」と書いていて、むしろピカピカ的な事態を予告していたようです。訂正しておきます。