Light in June

文学やアニメ、毎日の生活についての日記。

異化の話とアニメの話

2009-05-07 00:44:54 | 文学
今日は昼間からかなり具合が悪くて、夜は個人的なことでかりかりしていたので、もう寝てしまおうかと思っていました。ただ、色々なサイトを見るうちに先程から少し気持ちも落ち着いてきたし、ブログを書くと集中力が高まって精神衛生上よいので、少しだけ文章を書いておこうと思います。

まず、タイトルの「異化」ということですが、これはロシア・フォルマリストであるシクロフスキーの用語で、後に文芸用語として一般化しました。どういうことかというと、見慣れた物事を違ったふうに表現することです。メアリ・シェリー『フランケンシュタイン』を例に取ると、「まもなく、穏やかな光がそっと天にさしわたり、自分に喜びの感覚をあたえてくれた。跳び起きて、見ると光り輝くかたちが木々のあいだを昇ってくる」という文章が異化です。何を異化しているかといえば、「月」です。まだ物を知らない怪物が新鮮な目で月を見たので、こういう表現になっているんですね。異化というのは、こういうふうにその名前を用いずにありのままの様子を述べるときに使われたりします。または、宇宙人が人間を初めて見た、というシーンがあれば、それは自然と異化になるでしょう。シクロフスキーによれば、文学の一番大切な要素というのは、この異化なんですね。日常的な言葉を壊し、それまで見たこともないような言葉のつながりを打ち出してゆくことが重要だとみなされたわけです。

さて、がらりと話題は変わり、先日の朝日新聞の記事のこと。日本のアニメの製造数が減少し、ソフトの売上も落ちている、とのこと。ただね、今までが過剰だったんです。10年以上前に、製造数が100本を越え、その時点で既に飽和状態だと言われていたのに、一昨年かなんかに300本を突破したそうです。去年は288本だったっけな?減ったと言っても、異常に多いですよ。で、記事の結論というのが、これからは量より質だ、ということです。そんなの当たり前じゃないか!今まで粗製濫造が指摘されてきていて、似たようなのばっかしとか、技術的に安易であったりとか、散々言われてきたじゃないですか。やっと減少に転じて、これで普通に戻ってゆくのです。ソフトの数が減るから人員を減らすような動きが出てくるかもしれない、という関係者の話を伝えていましたが、今こそアニメーターの労働環境を改善すべきできですよ。生活を保障してあげないと。もうやっていけないという話を本当によく聞きますからね。腕のあるアニメーターがじっくり時間をかけて作った作品を観たいものです。