けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

「激論!原発再稼働と日本のエネルギー」を見てのコメント~その1~

2015-03-08 00:21:59 | 政治
遅ればせながら、先週の朝まで生テレビをやっと見終えることができた。テーマは「激論!原発再稼働と日本のエネルギー」であった。この議論はあまり有益な議論ではなかったと思うのだが、幾つかの点は整理できたと思うので、思い出しながらコメントを書いてみたい。

最初に言及しておくが、実はこの討論に参加している方の中には、東京電力を擁護する側の人間が殆ど皆無であった。かろうじて、世間的には御用学者と揶揄される東京工業大学原子炉工学研究所助教の澤田哲生氏ぐらいがいるくらいで、再稼働容認派の池田信夫氏や自民党の山本一太参院議員もいたが、明らかに間違ったことが話された時に方向修正を試みるぐらいで、ある程度、東電とは距離を置いたポジションを貫いていた。だから、再稼働の議論ではなく東電の糾弾に関しては、欠席裁判的な感は否めない。ただ、私も東電など擁護するつもりはないので、東電が可哀想であるという話をするのではなく、反論の余地を与えてもう少し論理的な議論をしたいという要望である。

さて本題である。何点か論点はあるのだが、長くなりそうなのでまず今日は下記の1点に絞りコメントしておく。

それは先日話題になった、福島第1原発構内の雨水などを海に流す排水路から高線量の放射性物質の汚染水が港湾外の海に流出していたという報道に関してである。実は、この問題にはふたつの側面があるのだが、これが世の中的には綺麗に整理できていないということが明らかになった。私なりに事実関係を整理すると以下の様である。

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【第1の側面】
(1)雨が降ると、福島第1原発構内の建屋に降った雨水を流す排水路上で、放射線量の高い汚染水が流れ出す現象が観測されていた。
(2)この汚染水は、シートで隔離された港湾内ではなく、港湾外に流れ出ていた。
(3)この事実を東電は以前から1年ほど前から知っていたが、これまで公表してこなかった。
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まず、ここまでが報道や朝まで生テレビの反原発系の方の追及で、特に(2)と(3)に関する非難が熾烈である。(3)に関しては、「信頼関係が崩れた!」と涙ながらに語るし、(2)についても「港湾内ならまだしも、港湾外というのがケシカラン」という話であった。この点については後述するが、多分、合理的な考え方が出来る方であれば少々疑問に感じるはずである。ただ、これよりも実は問題が大きいのはこの後で、こちらの重要な問題を原発再稼働容認派の人の方から話が出てくるのが面白いところである。

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【第2の側面】
(4)この手の情報を東電は隠蔽しようとしていたのではなく、オフィシャルな報告書の形式は取っていなかったのかも知れないが、原子力規制委員会の面々も東電社員から話を聞いて知っていたし、そこから周りのその他の関係者にも話はあった(公式な報告書として報告が上がっていたか否かは不明)。
(5)ただし、多くの福島原発に詳しい専門家の間では、(原子炉建屋の屋上に降った雨水の問題など小さい話だが)建屋以外の敷地に降った大量の雨水が地下に染み込んだり、地面伝いで海に流れ出たりなどする問題の方が圧倒的に重大で、そのインパクトは以前から問題の地下水の問題よりも遥かに大きい。
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多分、上述の(1)~(3)のインパクトと(5)のインパクトの差を理解している人は、この出演者の中の反原発派の人の中には一人もいないのではないかと思う。さらに言えば、何故、原子力規制委員会の人々が(1)~(3)を問題視してこなかったかについても、それは(5)のインパクトを知っているからであろうと予想できる。以下に私なりの解説を行いたい。

私の記憶を辿れば、正確か否かは分からないが以下の様なことが起きているのだと思う。

原発事故発生当時、大量の放射性物質が原発建屋の周りに降り注いだ。その中には、数十分もいれば死に至るぐらいの超高線量の放射性物質も局所的に存在し、これらがあると作業性が低下するので、まずはこれらの除去を東電は試みた。やがてこれらの放射性物質を除去できたが、そこまでではないが高濃度の汚染土壌は空気中に風で舞い上がると飛散しやすいので、これらに対して緑色の樹枝状の物質を噴霧して、地面をコーティングする様なことを行った。こちらは面積が非常に広いため、簡易な対策として行った感が強い。本来の対策は、ここで雨水を地面に染み込ませないような対策をして、その雨水を排水する経路を確保し、その汚染水処理を筋である。しかし、例えば福島第一原発の敷地だけを考慮したとしても、その面積は320万平方メートルになる。仮に1時間に10mm(つまり1cm)の雨が1時間降り続いたとする。これは1cm四方のエリアに1時間に1ccの量だから、1平方メートルではその1万倍の10リットルになる。320万平方メートルでは3200万リットルで、これはトン換算で3万2千トンの水量である。地下水ですら問題になっていたが、これは1日に400トンの水である。全くもって桁違いの水量で、これをタンクに貯めようものなら、あっという間にパンクしてしまう。原子力規制委員会の面々も、原子力の専門家も、池田信夫氏の様な論理的な議論の出来る方も、こちらの方は対処不可能であることを熟知している。だから、出来る範囲の対策として線量が高い箇所に関しては地面を掘り起こし、除染をして別の場所に防水処理をして保管しているのだと思う。残りの場所は土ぼこりが舞い上がらない様にする対策だけを施し、雨対策は見送ったのだろう。しかし、その雨水に含まれる放射性物質の総量は膨大な値であることは間違いない。これに対し、今回問題になったのはある原子炉建屋の屋上に降った雨水の排水である。この雨水の量は上述の量とは比較にならないほど小さく、当てずっぽうで言わせて頂ければ少なくとも4桁ほどは小さい量であろう。報道ではあくまでもKg当たりのベクレル数で放射線量を説明するが、実際にはそれに流れ出た水の増量を掛けることで、実際の総放射線量を知ることができる。分かり易く噛み砕けば、飲料水の基準は1リットル当たり10ベクレルであるが、仮に100ベクレルの水が1リットル入りのペットボトルで手元にあったとする。これを「基準の10倍の危険な汚染水がここにある!」と騒ぐ人がいるかも知れないが、例えば1リットル当たり10ベクレルの基準値内のお水をお風呂に100L汲むと、そこから放射される放射線の総量は先の1リットルのペットボトルの10倍の量になる。しかし、その様なお風呂に入ることを「危険だ!危険だ!」と騒ぐ人はいない。その水を体に吸収する場合には、その汚染の濃度的なものが意味を持つが、自然界に存在する放射性物質の危険度は、結局はその総量に依存する。だから、報道では1Kg当たりのベクレル数ばかりを報道するが、その数値を聞いても総量が分からないとその意味することは理解できない。そして常識的には、上述の(5)の方がインパクトは格段に大きく、それに比較すると(1)~(3)は取るに足らないのだが、その辺が反原発派の論理的思考が出来ない方々には理解できないらしい。原子力規制委員会の人々や専門家は、強盗に合って100万円を盗まれているのに、その直前に財布から落とした10円玉の損失を議論しても意味はないと感じるので、それを問題としないのである。ただ、結論から言えば「信頼関係」維持の為に、この程度のことも全て情報公開していれば良かったのは事実なので、本人達からすれば「ケアレスミス」でしかないのだが、「それでもちゃんと情報公開をしておくべきだったね!」と池田氏たちは諭しているのである。

この議論から分かるのは、原発反対派の人々の議論は全く論理的ではないということである。

上述の(2)に関しても、どうせ港湾内に流れ出たものも、完全な柵を作って港湾外と港湾内の水の流れをシャットアウトしている訳ではないので、所詮は港湾外にも汚染水は漏れ出すことになる。しかし、例えば工場の排水なども海に流されていて、それはとても人が飲めるものではないが、自然界の中で拡散し、長期的に持続可能な状態を保っていればそれで良いのである。例えば、ウラン鉱石などは世界中の何処でも採掘できるのではなく、局所的に集中的に埋蔵している。海に流れ出た放射性物質が海底に沈殿し、更にその上に様々な物質が沈殿し、1億年後ぐらい経過した地球上でその海底が隆起していたとすると、そこでそこそこの濃度の放射性物質が採掘できるようになるかも知れない。ウラン鉱石の産出国が、その自然界のウランのせい(採掘工場の従業員と言う意味ではなく、普通の生活の中でと言う意味)で膨大な健康被害を受けて問題になっているかと言えばそうではないので、自然界の自浄能力を借りて許容できる範囲であれば、それはそれで認めざるを得ないということである。しかし、その様な低レベルでも問題だと言われると、全くもって議論が出来ない。(5)の話などを出せば、福島県全体に汚染水タンクを作りまくり、そこに雨水を貯めようという話になってしまうから、平身低頭謝って、隠しはしないのだが(5)の議論を持ち出したりしないのである。しかしそれは、ラディカルな急進派の原発反対派の存在が、建設的な安全促進のための議論を実効上不可能にしてしまったのと同様に、現在でも論理的な議論を遮っている様に感じる。

まずは、論理的な議論の土俵に彼らが戻ってくるのを期待する。(続く)

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