Catch Ball

修業の時計を止めない教師でありたいです。

「うとてとこ」の研究授業を終えて 1

2010-09-24 23:50:42 | 国語
 国語の研究授業を行った。
 勤務校の研究テーマは「伝える力・かかわる力の育成 ~特別支援教育の視点を踏まえた授業づくりを通して~」である。
 
 教材として「うとてとこ」を選んだ。
 野口芳宏氏の実践の修正追試である。
 3連の4行目を子供たちに作らせたあと,3~4人でのグループで適否を検討させていった。
 グループの代表の意見を出させ,その後に教師とのやり取りを通して,更に適否を検討していく。
 
 流れとしては比較的スムーズに進んだが,やはりグループでの検討には課題が生じた。
 自分がその詩を作った根拠をはっきりと述べさせなかったために,発言力の強い子の意見が通ってしまった面が見られた。
 
 検討会では,グループの3人の意見の中から,なぜそれを選んだのかという理由を言うようにすればよかったのではないかという案をいただいた。

 グループでの話し合いでは「僕は(私は)○○にしました」という話型だけを提示した。
 一通り発表が終わった後に代表の意見を選ぶのは,フリートークで行わせた。
 これに対して,「僕は○○にしました。理由は~」と理由も言わせれば,更に話し合いが深まったのではないかという意見をいただいた。

 3連の創作部分には,次の3つの条件がある。
5音5文字であること
「4人の子」に合う述部であること
「ことことことこと」に合う述部であること

 これらの条件を事前に確認しないまま話し合いを行わせたことに対する批判もいただいた。
 選ぶときの基準を事前に確認すれば,話し合いもスムーズにいったのではないかというのである。
 
 しかし,私はそうはしたくなかった。逐一指導のようになってしまうのは避けたかったからである。
 これら3条件について,多くの子は2連までで気づいているはずである。
 だから,子どもたちの話し合いの中で適否を検討するときに,その気づきが生かされると考えていたのである。
 
 ただ,実際に3つの条件を満たしたようなものはあまり出てこなかった。
 結果的には事前に確認しておくこともひとつの手であったということを認識する結果となってしまった。
 子どもの力量の実態把握がしっかりできていなかったということになるだろう。

「うとてとこ」の研究授業

2010-09-01 23:10:26 | 国語
 校内の研究授業で「うとてとこ」を授業することを考えている。
 勤務校の研究テーマは「伝える力・かかわる力の育成」である。

 なぜ「うとてとこ」を取り上げるのか。
 
 積極的な理由としては,言語感覚を高めるのにふさわしい教材だからである。
 授業の中で3連を創作する場面がある。
 言語の適否・正誤について,適切に判断するセンスが育てることができる。
 子どもたちが創作した第3連の内容の適否を,話し合いを通してはっきりさせていく。
 そこに価値ある討議が成立し,伝え合い,かかわり合いが生じる。
 
 消極的な理由としては,教科書にふさわしい教材がないからである。
 「伝える・かかわる」のテーマに沿ったものとしては「話す・聞く」の領域の授業が考えられる。
 教科書には「『分類』ということ」という教材があるが,展開がしっくりこないのである。
 
 「うとてとこ」はいうまでもなく,野口芳宏氏の実践である。
 授業のクライマックスは,3連の創作である。
 様々な考えが出され,拡散する。
 この拡散した考えを比較し,検討させることによって,子どもの論理的思考を高めていく。
 
 野口氏はここで教師の力量が問われるという。
 
 力量に乏しい教師は,子どもに次々と発言させて「いろいろ出ましたね」「なるほど」などと言って終わってしまう。これでは「活動あって指導なし」である。
 
 次のレベルの教師は,いろいろの意見を出させるが,それらの意見の白黒をはっきりさせずに終わってしまう。
 決着をつけることができないので,曖昧のままで終わってしまう。
 
 力のある教師は,価値ある討議を組織し,可否,真偽を明白にさせる。
 それによって,子どもたちに正なるもの・真なるものを求めていくことの面白さ・楽しさを味わわせることができる。
 知的興味をかきたて,知的興奮を感じさせ,私的満足を得させ,知的感動にまで子どもたちを高めていく。
 
 今回の授業は,野口氏の実践の修正追試になる。
 3連の意見を収束させていくときに段階を踏む。

 第1段階は,子ども同士の話し合いである。
 自分の意見を明確に持ち,それらを3~4人のグループの仲間同士で検討していく。

 第2段階は,教師主導である。
 グループ内で絞った意見を発表させる。
 グループの検討で7~8つの意見に収束されている意見の正誤をさらに検討していく。

 問題は第1段階がどのように展開していくかである。

公的話法

2010-08-14 00:01:48 | 国語
 私的話法と公的話法の特徴を挙げると,次のようになる。

 私的話法 
 ・日常的
 ・生活的
 ・個人的
 ・私人的
 ・個性的
 ・性格的

 公的話法
 ・非日常
 ・職務的
 ・社会的
 ・公務的
 ・標準的
 ・技術的
 
 授業中に子どもたちが話すとき,話したいように話すのではいけない。
 教師は私的話法を使わせるべきではない。

 野口芳宏氏は次のように言う。
 
 教室で話す時,授業で発言する時,教室で音読する時には「公的話法」「公的音読」を用いよ。私的話法,私的音読は不可である。このような指導を徹底するだけでも子供の「伝え合う表現スキル」は一変する。(『実践国語研究』2010年1月号)

 私が現在担任している3年生のクラスの実態はどうかというと,授業中に関しては丁寧な言葉遣いで話している子が多い。
 授業中ばかりではない。私に対して話すときは大半の子が敬語を使っている。

 これは言語環境との関係があるだろう。
 私は教室では丁寧な言葉遣いで話している。
 授業中,休み時間に関わらず,子どもに対しては「~です」「~ます」と話している。
 
 これは一見すると不自然な光景であろう。
 子どもにとっては,とっつきにくい先生であるかもしれない。
 だが,私のキャラクターもあるのだろうが,実際はそのような受け止められ方はしていないようである。
 
 公的話法は非日常的なコミュニケーション,社会的なコミュニケーションなのである。
 教師が自ら範を示す必要がある。
 しかも,徹底していかなければならないのではないだろうか。
 教師が私的話法を用いれば,たちまち公的話法は崩れていってしまうだろう。
 
 言葉遣いはよい。公的話法に関して,私のクラスでは次のような課題がある。

・声が小さい。
・公的話法で話し合えない。

 これらは他者意識の欠如が原因であるといえる。
 「声が届かなくても別に構わない」「話したいように話せばよい」というような潜在意識があるのではないだろうか。
 相手の立場を考えないから,このような実情になってしまうのである。
 子供たちの公的話法のスキルをさらに高める指導が必要である。 

言語活動の「充実」

2010-08-13 00:10:31 | 国語
 「言語活動の充実」は学習指導要領改訂の大きな特色である。

 言語は「行動」「活動」を伴ってこそ意味をなす。
 文字として書かれたり,音声となって発信されたりして初めて意味をなす。
 したがって,言語力は「活動」することによって形成されていくことは間違いないことである。

 しかし,「活動していれば力がつく」というものではない。
 言語活動の場を保障しただけでは,言語力は身につかない。

 「言語活動」をすればよいのではない。
 「活動」を通して「指導」するのである。
 「指導」によって,「充実」を図っていくのである。

 言語活動には「話す」「聞く」「書く」「読む」の4つが考えられる。
 日常的に最も機会が多いのは,いうまでもなく「話す」「聞く」である。
 しかし,これらの指導は活動主義的,経験主義的であるというのが実情である。

 「充実」を最も手堅く具現化するための手立てとして,野口芳宏氏は3点を提言している(『国語教育』2008年11月号)。

(1)ずばり一言で
 「ずばり一言」で問いに答えられるよう仕向けていく。
 分かっていないから長くなり,長くなるから分からなくなる。
 言えない子には教師がモデルを示す。

(2)「公的話法」で
 「私的話法」は生活話法であり,日常話法である。相手との距離は近い。
 一方,「公的話法」は教室話法,学習話法といえる。
 「常より大きく,常よりはっきり,常よりゆっくり」と野口氏は言う。
 「不自然な話し方をせよ」「価値ある無理」をして話せと言う。

(3)聞き手の反応を読みながら
 話すことの目的は,相手に自分の考えを「伝え,届け,受け止めさせる」ことである。
 そのためには相手の目を見たり,相手の表情を読んだりすることが必要になる。
 話しさえすればいいのではない。

うとてとこ

2010-02-27 00:02:46 | 国語
 野口芳宏氏の実践の追試,「うとてとこ」の授業を行った。
 授業参観である。3年前も1年生の授業参観でこの授業を行っている。
 1年生相手に授業するのは,2回目である。

 第3連の最後の1行を創作させた際,次の意見が出された。

 ①たべるんだ
 ②あそんでる
 ③はなししてる
 ④あそぶんだ
 ⑤おままごと
 ⑥うたうんだ
 ⑦あるくんだ
 ⑧はしるんだ
 ⑨なべでにる
 
 消去法によって絞っていった。

 真っ先に消されたのが③である。
 理由を問うと,「リズムが合わないから」「5文字じゃないから」という。言語感覚がしっかりと養われていることが分かる。
 
 次に①②④⑥が消された。
 「ことこと食べる」「ことこと遊ぶ」「ことこと歌う」という日本語はおかしいという。
 
 そして,⑦⑧が消された。
 「とことこ歩く」とは言うが,「ことこと歩く」とは言わないとの理由である。この意見を出した友達は,「ことこと」と「とことこ」を混同しているのではないかというのである。
 
 最後に代表の子に音読させていると,予想外のことが起こった。
 音読のリズムに合わせて数名が手拍子をし始めたのである。
 やがて全体に波及し,最後は全員で手を打ちながらの音読で締めくくった。
 七・五調,八・五調のリズムを十分に味わい,楽しんでいる証拠である。
 今まで何度か行っている授業であるが,このような反応は初めてであった。
 
 初めは分からなかった「うとてとこ」の意味がすっきりと分かるようになる。
 どう読んでいいか分からなかった出鱈目な読みから,望ましい読み方へと変容する。
 リズムや響きを味わう。
 第3連の最後の行を創作し,音数律や文脈に合うように補う。
 
 「うとてとこ」の授業は,まさしく向上的変容が保障される授業であるといえる。

野口芳宏氏の指名なし討論批判

2010-02-10 00:57:59 | 国語
 4日の研究授業では指名なし発表があった。
 指名なし発表,指名なし討論は,有効な手段なのであろうか。

 野口芳宏氏は,1998年の日本言語技術教育学会で,指名なし討論について「放牧の授業」と批判したという。石黒修氏の著作『学年別討論の授業 小学3年』(明治図書 2000)にまとめられている。
 次のような批判である。

 基本的に,授業というものは組織されるものであり,成り行き任せではいけない。
 教師は明快にして組織だった授業ができる腕をつけるべきである。

 指名なし討論は,次のような授業である。
(1)基本的に発言したい子が発言する。
(2)教師が筋道を作らない。
(3)偶発的なことを期待して授業を組んでいる。
 
 具体的には,次のようである。

発言したがり屋が発言する。
内気な子は発言しない。
さまざまな情報がコントロールされずに出てくる。
脈絡だって,子ども一人一人が整理しにくい。
発言は行き当たりばったりになる。
場当たり的になる。
成り行き任せに,さまざまな情報が飛び交う。
情報が混乱する。
分かりにくい授業展開になる。
非能率的で,ねらっていることがぼやけやすい。
成り行き任せの授業であって,よくない。


 これらの野口氏による批判は,授業観の問題を含んでいる。
 指名なし討論をよしとするTOSSの先生方との授業観の違いである。
 したがって,指名なし討論が悪いとは一概には言えない。

 ただ,4日の研究授業では,指名なし発表によって情報が混乱し,ねらいがぼやけ,分かりにくい展開になったと,私は感じた。

「すきなもの,おしえて」授業検討会

2009-07-09 00:00:12 | 国語
 授業検討会が行われた。
 
 主として,次の4観点で話し合いが行われた。
(1)活動のモデルを示す
(2)ペア→グループ→全体とステップを踏んだ指導
(3)反復練習を取り入れた指導
(4)配慮が必要な児童への指導


(1)活動のモデルを示す
・導入として有効であった。
・よい例を子どもが行い,悪い例を教師が行っているのはよい。
・教師と子供でモデルを示したが,あらかじめ2年生などに演技させたものをDVDなどに収録して活用してもよかった。
・子どもを引きつける技術があった。
・教師の誤答を活用する方法がよい。○×式により,どんな学習をしているのかがつかみやすくなっている。
・話し方のポイントをカードなどで示すと,その後の判定基準も明確になった。
・丁寧な話し方で行うと,気持ちがよいということに気付かせるとよかった。


(2)ペア→グループ→全体とステップを踏んだ指導
・相互評価の基準が曖昧であった。板書によって整理すべきであった。
・ステップを踏むことで,具体的な観点が子どもたちから出されていた。


(3)反復練習を取り入れた指導
・1時間の中で1人7回程度は行ったことになる。繰り返すことで,型は定着していった。
・基本型は身についたが,応用が欲しい。普段の生活場面でどのように生かすかなど。


(4)配慮が必要な児童への指導
・グループ内での協力,助け合いが見られた。
・座席の位置に再考が必要である。


(5)その他
・種々の教育技術が生かされていた。「指導技術の玉手箱」のようであった。
・授業にさまざまなものを盛り込むことで,子どもが飽きずに45分間集中していた。
・ねらいがシンプルであり,分かりやすく,見通しが持てた。

「すきなもの,おしえて」2時間目 3

2009-07-08 23:56:25 | 国語
◆いま聞いたことを,今度は文章に書いてもらいます。
 でも,どういうふうに書けばいいのか分からないので,困ってしまいます。
 そこで,今日は,プリントに書いてあることを写して書いてみます。
 
◆先生が読むので,同じところを読みます。

◆みんなで読みます。さんはい。

◆では,これを写してみます。
 
 視写である。
 初めての活動なので,手順を確認してから行った。
 
◆終わった人は,裏側に自分で友達に聞いたことを書いてみます。
 
 これはステップが大き過ぎた。どう書けばよいか,理解していない子が多かったという実感である。
 
◆今日はどんな勉強をしたか確認します。
 
 こう言って,板書を消しながら,子どもたちに読ませていった。
 板書を消すことで,活動を振り返らせていった。

「すきなもの,おしえて」2時間目 2

2009-07-08 23:53:48 | 国語
◆今日は,このような流れで行います。

 板書して流れを提示し,見通しを持たせる。
①おしえあう
・となりのひとと
・グループで
・いろいろなともだちと
②きいたことをかく

◆最初に隣の人とやってみます。
 向かい合って行います。

◆次にグループで行います。
 前,後ろの人同士で行います。1組ずつ行って,残った1組は見ています。
 そして,○か×の判定をします。

 初めての活動なので,見本を示し,手順を理解させてから行った。

◆どうして,いま○を出したのでしょうか。
 
 ○になるための条件を,全体に問い掛け,確認していく。
 ○印を出した本人に聞くのではなく,全体に問い掛けていくことで,学びを広げていった。
 
◆では,始めましょう。
 
 短時間に教師が一人一人を評定していくのは難しい。
 そこで子ども同士の相互評価を取り入れた。
 それはある程度の意味はあったと思うのだが,子どもによって,評定の基準が曖昧なところがあり,なぜ自分が×を出されたのか理由が分からないといった子もいた。
 
 私の押さえとしては,基本話型に沿って話していれば○だったのだが,声の大きさは適切であったか,お辞儀をしたかなど,基準が多様化してしまったのである。
 
◆この人が上手だったという人はいませんか。
 
 指名し,2組に見本をさせた。自然と拍手が起こった。
 
◆拍手をしたということは上手だったということですね。
 どこが上手でしたか。
 
 「丁寧な話し方がよかった」「ありがとうのお辞儀をした」「声が聞きやすかった」などが出た。
 全てを認めたが,やはり基準が多様化していることが感じられた。
 
◆いろいろな友達と行います。
◆自由に動いて,2人以上の友達とやります。相手の言い方がいいかどうか,○×をつけてあげます。先生が「やめ」と言うまで続けなさい。
 
 参観していた校長に聞きに行く子もいた。
 活動は盛り上がったが,やはり一人一人の活動を教師が適切に評定できないのは問題であると感じた。

「すきなもの,おしえて」2時間目 1

2009-07-08 23:49:48 | 国語
 「すきなもの,おしえて」の研究授業を行った。

◆○×クイズをします。
 この時間は算数の勉強である。○か×か。せーの,ドン。
 この時間は国語の勉強である。○か×か。
 「いろいろなくちばし」の勉強である。○か×か。

 つかみ型導入により,今日は「すきなもの,教えて」の学習をすることをつかませた。
 黒板に単元名を書いた。
 
◆どういうふうにするのか,先生と一緒に見本をしてくれる人はいませんか。
 
T:おーっ!○○ちゃん。好きな食べ物,教えてよ。
C:私は,□□□がすきです。
T:ああ,そう。どうもありがとう。
 
 このようにして寸劇風にすることで,子どもの緊張が緩和され,授業の雰囲気がよくなっていくのを感じた。
 
◆今の先生の話し方はよいだろうか。○×せーの,ドン。

 周りを見て考えさせるのではなく,一斉に判定させた。当然全員×である。
 
◆では,どうして×なのでしょうか。
 
 「丁寧な言葉遣いではないから」「声がよくない」「ちゃんと『ありがとうございました』と言っていない」などの意見が出された。
 
◆本当はどのように言えばよいのでしょうか。
 
 板書しながら整理した。
「すきなたべものをおしえてください」
「ぼくは,□□□がすきです」
「ありがとうございました」

◆では,みんなで読んでみましょう。
 
 読むことで正しい基本話型をインプットするようにした。
 
◆先生と一緒にもう一度見本をしてくれる人はいませんか。
 
 モデルを示す。見本を見ることで,情報を強化する。
 きちんとしたモデルを示すと見せかけて,だめな見本を示す。

C:好きな食べ物を教えてください。
T:俺の好きなもの?えーと,ラーメン,ラーメン!
T:ありがとうございました。

 子どもたちからブーイング。
 そこで,やり直しをして,きちんとした見本をようやく示す。
 何度もふざけた見本を見せて,ややクドイ感じもしたが,そのことで何が違うのかということを理解させることはできた。
 
◆今日の勉強は,何をするかと言うと,これです。
 板書して提示する。
 「ともだちとすきなものをおしえあおう」