すでにご承知の方もいらっしゃると思いますが、11月27日付にて東京都から全国に向けて重要な提言がなされました。
「キャップ&トレードの全国導入についての提言」
- 東京における実績を踏まえて -
この提言における東京都のスタンスは、新政権が排出量取引制度の導入を目指している基本姿勢を評価した上で、より実効性のある当該制度を実現するため、積極的に協力をしていくことを宣言したものです。
そこで提示している4つの観点は以下の通りです。
1.総量削減を確実に達成する実効性の高い制度であること
2.日本経済全体を低炭素型に転換し、持続的な成長を可能とする制度であること
3.国際的な共通性と日本での先駆的な取組を踏まえた制度であること
4.国と地方がともに積極的な役割を果たす制度であること
最大の特徴は、「国家キャップ&トレード制度」と「地域キャップ&トレード制度」との2つの取引制度を併存させ、それぞれに前者が大規模排出事業所(500箇所ほどが対象)向けであり、後者がある一定規模以上の事業所(省エネ法の第2種エネルギー管理指定工場相当)向けとなっている点です。
また、前者が国の直接執行として、後者を都道府県及び政令指定都市が管轄するとしており、双方の市場では、それぞれの制度設計に基づいた排出量算定がなされるため、原則として両制度間の排出枠取引を認めないこととなっています。
その意味では、世界の他の国や地域間で行われている排出量取引市場に対しては、前者のみが一定のルールの下で開かれることとなり、後者の市場は、あくまで国内企業間における中小クレジットや再エネクレジットでの取引を想定しているものです。
このような二重構造的な市場構築の考え方は、大変ユニークであり、日本の実情のあった実効性の高い妙案ではないでしょうか。
私としては基本的には大賛成であり、都の積極姿勢を大いに評価したいと思います。
これならば、海外のカーボン価格の乱高下に左右されることなく、国内対策を確実に進めることもでき、国内企業における省エネ努力が公平に評価されるでしょう。また、海外に向けても、国内事情を加味した省エネ先進国ならではの制度として、評価を受けるのではないかと思います。
さすが東京都環境局ですね。
さて現政権や民主党はこうした自治体からの提案を虚心坦懐に受け入れることができるでしょうか?従来の官僚主導型の流れでは、おそらく体よくあしらわれる類のものでしょうが、ここでも新政権の謳う政治主導の看板が試される局面ではないか。具体的な動きが早期に始まることに期待したいものです。
なお、本制度の詳細については、以下のURLを参照願います。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2009/11/20jbr400.htm