渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

キューの糸巻き交換

2022年10月30日 | open

 


キューの糸巻きを交換します。
 
カッターで切ってグルグルと回し
ながら剥がして行く。


接着剤で凸凹です。
これはツルツルになるまでドライ
リューブ(木工用紙ヤスリ)で磨い
て面一を出します。


この下地処理を手抜きすると、
巻いた糸がぼっこぼこになり
ます。いくらローラーをかけて
も駄目。当たり前の事ですが。

これを


せめてここまでやるかやらないか
で、巻きの仕上がりは全然違って
来ます。


このキュー、妙に打感が良いなと
感じていましたが、タモ=アッシュ
をハンドル材に使ってました。
硬質な北米東部の木材。


灰色の材木。木目が他の銘木に
比べて華麗ではないので、あま
り高級家具などには使われてい
ません。丈夫で適度に硬いので
主として道具に使われます。
また、楽器に使うと高音部と低
音部の響きが良いといわれます。
ヴァイオリンのパーツなどにも
常用されます。
このキューの打球音が硬質高音
で澄んでいるのも、この隠れた
部分のアッシュというハンドル
材によるものかも知れません。


巻くのはこの糸。ビリヤードキュー
用のアイリッシュリネンよりも細い
レースヤーンです。色はグレーシル
バー。
コットンなのに極細糸を編み上げて
いる細糸で、丁寧にキューに巻くと、
手触りはまるでシルクのようになめ
らかでしっとりとしたタッチになり
ます。
 
ただし、欠点がある。
それはアイリッシュリネンの半分
程の太さなので、倍の長さが必要
になる。
通常アッシュリネンを巻くと45m
ほど必要ですが、それの倍。
これは一本巻いてみてその手間の
大変さを知りました。
200m物を持っているので、一本分
使った後も充分に今回足りるので
が、巻きに非常に時間がかかる。
この太さの糸巻きは私はこれまで
2回やってますが、ホントに時間
かかる。
アッシュリネンは旋盤を持ってい
たら即行で巻けるのですが、手巻
きだとやはり時間かかります。
このレースヤーンは距離は倍です
が、時間は倍以上かかる。
数周巻いては木片でコンコンと
叩いて機織りのように目を詰めな
がら巻いて行きます。
どれくらい時間かかるかというと、
まあ、ン時間は優にかかる(笑
いや、ほんと。
ただし、手巻きで機織りコンコン
なので、目はギュウギュウに詰ま
って、しかも表面は真っ平らのツ
ルツルのツンツルテンになる。


このレースヤーンは、実は私が
持っているキューのどのアイリッ
シュリネンの糸巻きよりもしな
やかでしっとりとして手に馴染み
ます。喩えようがない良質な涼感。
これをさらに丹念にプレスして、
そして軽くクリアを注して表面を
均します。
クリア吹きでは毛細が毛羽立つの
で、それはローラーでさらに潰し
ます。
もう、それ極上の感触の糸巻きと
なります。
欠点は唯一、手間暇かかり過ぎる
だけ。
一気にはできないので、数日に
分けて作業します。引っ張り糸を
テンションかけてテープでとめて。
友人の息子さんは10才の時に自分
でレースヤーンを巻いて、一気に
やったのですが、夜から巻いて、
終わったのは翌朝だったみたい(笑
途中で「負けるもんか」と挫けず
やり抜いたらしい。小学生が
夜を徹して。父から譲り与えら
れた自分のキューを完成させよう
と。
今ハタチ。まだ10年前の10才の
時に自分で巻いたキューを使っ
ています。
糸巻きは今も一切問題なし。
小学生ながら、丁寧に根気よく
よい仕事をしたからでしょう。
 
その子が15才高1の時の玉筋。
 

マスワリ。玉が隠れず見えれば
マスワリ。隠れていても手玉
を曲げてマスワリ(笑)。この子
が撞くとほぼすべてマスワリ(笑)。

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