ヤゴというのはトンボの幼虫のことで、池や川などの水の中に住んでいます。
野外プールにもシーズンオフの間はヤゴが住みついているのです。
どうしてプールにヤゴが住みついているのかというと、トンボが産卵にやってくるからです。
実はシーズン中に私たちが泳いでいる間にも、トンボが産卵にやってきます。
しかし私たちが泳ぐのに適した水質を保つために、水がろ過されたり、消毒薬が注入されたりするため、ヤゴは住みつくことができません。
シーズンオフになるとろ過も消毒薬の注入もされなくなるので、ヤゴが住みつくことができるようになります。
また、トンボ以外にもいろいろな生きものたちがやってきて、産卵したり住みついたりします。
このため、ヤゴのエサとなる生きものも住みつくようになり、プールでもそれなりに水辺の自然の生態系が形成されるのです。
このようにして季節が過ぎ、また初夏がめぐってくると、プールの解禁も間近になります。
すると、準備をするのにプールを掃除しなければなりません。
プールに住みついているこれらの生きものたちは、一緒に掃除されてしまいます。
そこで全国的に行なわれるようになってきたのが、プールのヤゴ救出。
各地の自然保護団体などが関わって行なわれています。
菊名エコクラブでも、この6月、横浜市内の4つのプールでヤゴ救出を行ないました。
その際、次のようなお話をさせていただきました。
・プールの水が茶緑色に濁っているのは、植物プランクトンがいるためだということ。
・植物プランクトンをミジンコなどの動物プランクトンが食べること。
・これらをコミズムシなどの小さな昆虫が食べること。
・こうした小さな昆虫たちをヤゴが食べていること。
・これらを食べに、さらに大きな生きもの(カルガモなどの水鳥)も飛来するということ。
今年は「国際生物多様性年」となっています。
環境問題として地球温暖化ばかりが話題となっていますが、生物多様性の減少(野生生物が急速に絶滅していっていること)も大きな環境問題なのです。
近年では身近な自然が激減し、それらとふれあう機会も少なくなっていますが、プールのヤゴ救出のような活動に参加していただくことで、自然とふれあう喜びを感じていただくとともに、生態系や生物多様性の大切さについて理解していただければと思っています。
シーズンオフ中にプールの水は茶緑色になります。
これは植物プランクトンたちの色。
植物プランクトンは動物プランクトンのエサとなり、動物プランクトンは小さな肉食性昆虫のエサとなり、そしてこうした小さな昆虫たちをヤゴたちがエサにします。
さらのこれらの生きものたちを食べにカルガモなどの水鳥がやってくることもあります。
無色透明な水は、私たちが飲んだり泳いだりするには良いけれど、植物プランクトンは住んでいません。だから、生きものたちは住めないのです。
プールの底には泥もたまっています。
これは落ち葉が水の中のバクテリアたちに分解されて、土に還ったもの。
こうしたものは植物プランクトンが育つための養分となります。
落ち葉や泥の中にヤゴたちも隠れています。
プールの中の色々な生きものたちを見ているだけでも楽しいですが、子供たちがヤゴを採るのに夢中になっている様子を見るのは、開催者として大変嬉しく、疲れも吹き飛ぶ感じがします。
太陽の光が反射する水面。
水の中に沈んだ落ち葉。
そしてヤゴなど色々な生きものたち。
プールではありますが、そこには自然があります。
こうした自然と親しんでいると、癒されるような感覚もあります。