川本ちょっとメモ

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<資料> 『集団的自衛権と憲法との関係について』 ――内閣法制局1972(昭47)・10・14 参議院提出――

2015-08-17 16:41:28 | Weblog


                                
集団的自衛権は憲法9条の許容する範囲から逸脱している。これが長い間に積み重ねられてきた政府の統一見解でありました。下に掲載する1972年(昭和47年)政府提出文書もそういう政府の見解を示す文書の一つで、結語はこうなっています。

 ――「いわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない。」

然るに安倍内閣・自民党・公明党は、従来通りの憲法解釈を表明している同じ1972年(昭和47年)政府提出文書を根拠に、真逆の結論を作りました。2014
・7・1閣議決定以後。安倍内閣は、憲法解釈を「集団的自衛権は憲法の許容範囲内」に変更しました。彼らが合憲論の根拠にしているのが、下に掲載する文書です。今後長きにわたって重要な資料になるものと思われる文書です。

■集団的自衛権「憲法9条違反」関係記事(2016/06/06追記)
   ◎日本国憲法は国民に歓迎された
   ◎憲法につきまとう復古(ナショナリズム)勢力
   ◎憲法9条についてどう考えるか-自衛力整備も考慮に入れて
   ◎「平和」は絶対的命題、安全保障効果は国際交流力>軍事力
   ◎転載記事 集団的自衛権―憲法解釈変更の問題点 早稲田大学法学学術院教授・長谷部     恭男
   ◎集団的自衛権を容認する閣議決定に反対する意見書 (元防衛官僚・新潟県加茂市長)
   ◎全国47弁護士会が「集団的自衛権行使容認の閣議決定は憲法違反」と声明、決議
   ◎<資料掲載> 集団的自衛権行使容認の「7・1閣議決定」全文
   ◎<資料> 『集団的自衛権と憲法との関係について』 ―内閣法制局1972(昭47)・10・14          参議院提出―
   ◎<資料> 昭47・9・14 参議院決算委員会、憲法と個別的自衛権と集団的自衛権に関          する質疑/上
   ◎<資料> 昭47・9・14 参議院決算委員会、憲法と個別的自衛権と集団的自衛権に関          する質疑/下
   ◎<資料> 昭56・4・22 「憲法、国際法と集団的自衛権」に関する質問主意書 / 5・29          質問に対する答弁書
   ◎<資料> 衆議院憲法審査会参考人違憲発言に対する政府見解等への質問に対する答弁書         (新三要件について)
   ◎<資料> 自衛権発動の三要件 昭60・9・27 憲法第九条の解釈に関する答弁書 /          6・25 質問主意書
   ◎安倍政権・自民・公明の「集団的自衛権合憲論」トリック(1)論拠文書の由来を知ら      せない
   ◎安倍政権・自民・公明の「集団的自衛権合憲論」トリック(2)なぜこの文書を選んだ      のか?
   ◎安倍政権・自民・公明の「集団的自衛権合憲論」トリック(3)文章をいじって含意を      逆転させる
   ◎安倍政権・自民・公明の「集団的自衛権合憲論」トリック(4終)ごまかし手法に怒り      おさまらず


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                     内閣法制局 昭和47年10月14日

<資料> 「集団的自衛権と憲法との関係について」 
       (参・決委 昭47・9・14 における水口議員要求の資料)

      ※注 1972年(昭和47年)10月14日参議院決算委員会提出資料


【1】 国際法上、国家は、いわゆる集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにかかわらず、実力をもって阻止することが正当化されるという地位を有しているものとされており、国際連合憲章第51条、日本国との平和条約第 5条(C)、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約前文並びに日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言 3 第2段の規定は、この国際法の原則を宣明したものと思われる。
 そして、わが国が、国際法上右の集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上、当然といわなければならない。

【2】 ところで、政府は、従来から一貰して、わが国は国際法上いわゆる集団的自衛権を有しているとしても、国権の発動としてこれを行使することは、憲法の容認する自衛の措置の限界をこえるものであって許されないとの立場に立っているが、これは次のような考え方に基づくものである。

【3】 憲法は、第9条において、同条にいわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しているが、前文において「全世界の国民が……平和のうちに生存する権利を有する」ことを確認し、また、第13条において「生命・自由及び幸福追求に対する国民の権利については、……国政の上で、最大の尊重を必要とする」旨を定めていることから、わが国がみずからの存立を全うし国民が平和のうちに生存することまでも放棄していないことは明らかであって、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。

【4】 しかしながら、だからといって、平和主義をその基本原則とする憲法が、右にいう自衛のための措置を無制限に認めているとは解されないのであって、それは、あくまでも外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの擁利を守るための止むを得ない措置としてはじめて容認されるものであるから、その措置は、右の事態を排除するためとられるべき必要最小限度の範囲にとどまるべきものである。

【5】 そうだとすれば、わが憲法の下で武カ行使を行うことが許されるのは、わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られるのであって、したがって、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない。

                              ==了==


※注1 以上、原資料写真PDFを、句読点に至るまで点検して忠実に再現し
    ました。上記本文の「右にいう」は、原本タテ書きのゆえです。原本
    に、上記【1】【2】【3】【4】【5】の番号はありません。

※注2 政府の「限定的集団的自衛権」合憲論に関わる文段に、【1】【2】
    【3】【4】【5】の番号を振りました。原本にこの番号はありません。

※注3 国際連合憲章
    第7章 平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動
    第51条

     この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発
    生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要
    な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害する
    ものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直
    ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、
    安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要
    と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対して
    は、いかなる影響も及ぼすものではない。

※注4 日本国との平和条約
    第5条 c項

     連合国としては、日本国が主権国として国際連合憲章第51条に掲
    げる個別的又は集団的自衛の固有の権利を有すること及び日本国が集
    団的安全保障取極を自発的に締結することができることを承認する。

※注5 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約
    前文

     日本国及びアメリカ合衆国は、両国の間に伝統的に存在する平和及
    び友好の関係を強化し、並びに民主主義の諸原則、個人の自由及び法
    の支配を擁護することを希望し、また、両国の間の一層緊密な経済的
    協力を促進し、並びにそれぞれの国における経済的安定及び福祉の条
    件を助長することを希望し、国際連合憲章の目的及び原則に対する信
    念並びにすべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きよ
    うとする願望を再確認し、両国が国際連合憲章に定める個別的又は集
    団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、両国が極東におけ
    る国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、
    相互協力及び安全保障条約を締結することを決意し、よって、次のと
    おり協定する。

※注6 日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言 3
     日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、相互の関係におい
    て、国際連合憲章の諸原則、なかんずく同憲章第二条に掲げる次の原
    則を指針とすべきことを確認する。
    (a) その国際紛争を、平和的手段によって、国際の平和及び安全並
      びに正義を危くしないように、解決すること。
    (b) その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使は、い
      かなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際
      連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むこ
      と。
     日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、それぞれ他方の国が
    国際連合憲章第五十一条に掲げる個別的又は集団的自衛の固有の権利
    を有することを確認する。
     日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、経済的、政治的又は
    思想的のいかなる理由であるとを問わず、直接間接に一方の国が他方
    の国の国内事項に干渉しないことを、相互に、約束する。

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<私のアピール>
2012年末の安倍政権成立以後の短年月、武器輸出3原則を廃し、特定秘密保護法の新設、憲法9条解釈変更の7・1閣議決定(※憲法違反です)と、先行き不安な政策ばかり急激に推進されています。安倍内閣はデモクラシー日本を食い破りつつある危険な内閣です。その政治手法は民主主義下の独裁と見えて、危険です。安倍総理退陣まで、来年7月参院選で自民党に“No”を!




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