川本ちょっとメモ

★所感は、「手ざわり生活実感的」に目線を低く心がけています。
★自分用メモは、新聞・Webなどのノート書きです。

自民党資金1億5000万円問題は党内抗争だけでなく、稲田前検事総長と安倍前首相との検察攻防にも関わりがある(下)

2021-05-30 17:45:07 | Weblog




■岸田派の根拠地を切り崩す
前記事(上)2021-05-21付、(中)2021-05-23付、の国政選挙結果を見れば、広島県が自民党岸田派の根拠地であることがわかります。

そして参議院広島選挙区は岸田派現職、溝手顕正議員の定席です。

そこへ安倍晋三首相(当時)の肝いりで、2019年7月参院選広島選挙区に自民党新人候補河井案里氏を立てました。案里氏は広島県議からの転身。河井克行氏の妻です。河井克行氏は衆院広島3区選出の衆院議員。2015年総理大臣補佐官、2017年自民党総裁外交特別補佐、2019年参院選後に法務大臣、と要職を歴任しています。安倍首相が内輪と信頼する人です。

安倍晋三首相(当時)はそれまで、岸田文雄氏が総理総裁職の禅譲を期待するよう仕向けて岸田氏を手なずけてきました。しかし2019年7月参院選では岸田氏の根拠地を切り崩す方針に転換しました。

新人と現職溝手顕正との2人候補方針に、自民党広島県連は猛烈に反対しました。広島県連には、過去に2人候補を立てて1人落選という経験がありました。それでも党本部は2人目新人候補を広島に押しこみました。

広島県連は溝手陣営、安倍・菅に連なる公明党が河井陣営、という保守分裂選挙の図式になりました。



■自民党本部から河井陣営に党資金1億5000万円
自民党本部は河井案里氏を当選させるために、1億5000万円という異例破格の選挙資金を河井陣営に投入しました。溝手顕正陣営への支給はその10分の1、1500万円でした。これは安倍晋三総裁の指示、二階俊博幹事長の同意がなければできないことだいうのが定説です。

1億5000万円は、岸田派根拠地内で河井案里氏を当選させるための反対派調略買収に使われたことが、参院選後の検察捜査で次々と明らかになりました。


            《自民党資金 1億5000万円支給》 
          河井案里氏の党支部 河井克行氏の党支部        
   2019.04.15.    1,500万円
       05.20.    3,000万円
       06.10.    3,000万円     4,500万円
       06.27.               3,000万円



■河井克行氏は1億5000万円の選挙買収費消を否定、6月18日判決待ち
2021.1.21.河井案里氏に対して、東京地裁の公職選挙法違反(買収)有罪判決が出ました。認定買収金額は計160万円。

河井克行氏は、公職選挙法違反(買収)容疑に対する2021.6.18.東京地裁判決を待っている。これまでの公判で、地元議員やスタッフら100人に計約2900万円を配ったとされるが、1億5000万円資金の使途に関する疑惑については全否定しています。



■1億5000万円――岸田文雄氏が動いた、二階、安倍、甘利が反応した 
岸田文雄氏が2021年5月12日、河井案里氏公選法違反による議員失職に伴う4月25日参院議員再選挙で自民党が敗北した主因は政治とカネの問題だとして、二階自民党幹事長に面会しました。その中で、1億5000万円の使途について党内外に説明する責任があると、要請しました。

二階自民党幹事長は5月18日の会見で「党全般の責任が私にあるのは当然だが、収入、支出の最終判断をしており、個別の選挙区の選挙戦略や支援方針はそれぞれ担当で行っている」と述べた。(東京新聞 2021.5.18.17:47)

2018.10.2.~2019.9.16.の間、自民党選挙対策委員長を務め、河井案里陣営に入っていた甘利明氏は上の二階談話に対して、1億5千万円に関し「事件後の報道で初めて知った」と説明。「関与していない以前に、党から給付された事実を知らない」と語った。(東京新聞 2021.5.18.17:47)

甘利明氏は安倍晋三氏の側近だが、経済再生担当大臣当時の2013年11月に大臣室で50万円を受け取り、その他多額の授受が明らかになって大臣辞職をした実績があります。きれいな男ではありませんが、河井あたりのために金を運ぶことはするはずがない。

二階氏は使途をまったく知らないわけがない。党務の最高責任者である幹事長なのだから、少なくとも1億5000万円の使途大綱の説明を受けて裁可したでしょう。しかしすべてを知っているはずもなく、1億5000万円疑惑の主犯ではない。主犯は安倍さんだと言いたいところでしょう。

つまるところ使途をすべて知っているのは現場を主宰していた河井克行氏であり、それをさせたのは安倍首相(当時)ということになる。河井克行氏はこれまでの公判で、1億5000万円の使途を話していません。安倍氏との間で何かしらの談合ができていると私は思います。

しかし河井克行氏は「河井案里選挙買収のために1円も使っていない」と公判で明言しています。(2021.5.18.20:16 毎日新聞)


■安倍前総理の総理辞任に残る不審
安倍前総理は、岸田文雄氏要請の1億5000万円疑惑に関する記者質問に無言で通り過ぎました。

そして、5月26日発売の「月刊HANADA」のインタビューで安倍晋三前首相は、「9月末に任期満了を迎える自民党総裁選に関し、菅義偉首相の再選を支持する考えを改めて示した上で、「ポスト菅」について、茂木敏充外相、加藤勝信官房長官、下村博文政調会長、岸田文雄前政調会長の4氏を順に挙げた。自身の再登板については「全く考えていない」と否定した」(毎日新聞 2021.5.27.東京朝刊)

ここで安倍前首相は性懲りもなく4番手に岸田文雄氏を上げて、また懐柔しようとしています。これは、岸田文雄氏が1億6000万円疑惑追及ののろしを上げたことに対する安倍前首相の消火反応です。

「河井克行氏の公判で明らかにされているばらまかれた金は、2900万円」と、どの報道も公判内容を伝えています。概略1億2000万円の使途が不明のままになっています。


2020年8月、安倍前首相の持病悪化による急な辞職には不自然なところがあります。

ブラジル五輪でマリオを演じた安倍首相(当時)が東京五輪を控えて投げ出すことは考えられません。

アベノマスクで笑い者になりましたが、安倍晋三氏の神経はそれでめげるほど柔くはありません。

2012年12月政権当時の看板公約である「物価2%上昇」が一度も実現できなくても、堂々と野党を批判しまくって長期政権を担当したお方の急な辞職には不審が残ります。

そして慶応病院による病状説明がありません。記者会見における診断書提示に基づく説明もありません。仮病辞職ではありませんか? 辞職の真の理由は何なんでしょうか?


6月18日の東京地裁判決の内容に注目です。 (この稿、終わり)

次回は、2019~2021の動きをタイムラインでまとめてみようと思います。
うまくいくかどうか。


コメント

東京オリンピックはコロナでエクモ病床にあり 米国が渡航中止勧告 CNNーUS citizens warned not to travel to Japan

2021-05-26 23:29:17 | Weblog


米国務省が日本旅行に対して日本時間5月24日、渡航警戒情報のレベル4に引き上げたことはみなさまご承知の通りです。日本と同時に、インド、スリランカなどもレベル4に引き上げられました。

5月24日(日本時間)米国のレべル4引き上げ―日本渡航中止勧告はIOC、JOC、日本政府にとって手痛いパンチです。東京オリンピックはいよいよコロナに追いつめられています。

米国の日本渡航中止勧告を伝えるCNNのニュースタイトルは、
US citizens warned not to travel to Japan as Tokyo Olympics nearです。
米国人は日本に行くなと警告された。


米国国務省の渡航警戒情報の4段階は次の通り

  1.Excersize normal precautions
  2.Excersize increased caution
  3.Reconsider travel
  4.Do not travel

参考に、日本外務省の渡航危険情報の4段階は次の通り

  レベル1:十分注意してください。
      その国・地域への渡航,滞在に当たって危険を避けていただくため特別な注
      意が必要です。
  レベル2:不要不急の渡航は止めてください。
      その国・地域への不要不急の渡航は止めてください。渡航する場合には特別
      な注意を払うとともに,十分な安全対策をとってください。
  レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)
      その国・地域への渡航は,どのような目的であれ止めてください。(場合に
      よっては,現地に滞在している日本人の方々に対して退避の可能性や準備を
      促すメッセージを含むことがあります。)
  レベル4:退避してください。渡航は止めてください。(退避勧告)
      その国・地域に滞在している方は滞在地から,安全な国・地域へ退避してく
      ださい。この状況では,当然のことながら,どのような目的であれ新たな渡
      航は止めてください。


海外ニュースでもオリンピックを中止するべきという論調は多い。経済大国の中国が2022北京冬季オリンピック開催国として東京オリンピック実施を応援してくれています。これはIOCやJOCにとってはありがたいけれど、2022北京五輪はウイグル人権問題で批判にさらされそうなので、日本政府にとって中国のエールは喜び方がむつかしい。


神戸新聞2021.4.30. オリンピックアンケートの結果は、「中止・延期してほしい」が77%でした。アンケート実施期間は4/26~4/29。LINEで実施。回答1367人。男女比 44:53。半数が40代・50代。9割が兵庫県在住。


ヤフー「みんなの意見」の投票結果です。

◎東京五輪・パラの今夏開催、あなたの考えは?
 実施期間:2021/2/3(水)〜3/31(水)  58日間
 714,655人 が投票! うち 中止するべきだ   543,838票 76.1% 
              再び延期するべきだ    84,825票 11.9% 

◎東京五輪・パラの開催、あなたの考えは?
 実施期間:2021/5/10(月)〜5/20(木) 11日間
 714,655人 が投票! うち 中止するべき   569,360票 79.0% 
              延期するべき      59,461票   8.3% 



英紙タイムズがコラムで「東京五輪、中止を」
       時事通信 2021年03月03日20時18分

 【ロンドン時事】英紙タイムズ(電子版)は3日、今夏の東京五輪・パラリンピックについて「中止する時が来た」とするコラムを掲載した。筆者はリチャード・ロイド・パリー東京支局長で、「(新型コロナウイルス)感染を拡大させるイベントは日本だけでなく、世界へのリスクだ」と主張した。

 コラムは英国で野外音楽フェスティバルなどが取りやめになったことに触れ、「世界最大の都市で4週間にわたって開かれる大規模イベントも中止する必要があることは明らかだ」と述べた。

 その上で、日本政府やスポンサー企業が五輪開催を推進していることを「止まらない暴走列車」と批判。日本の新型コロナの被害が他の先進国と比較して小さかったのは、良好な衛生状態と外国人のほぼ全面的な入国禁止によるものだと指摘し、「今、日本政府はお金と名声のためにこれらを犠牲にしようとしている」と強調した。

 ロイド・パリー氏は今年1月、日本政府が非公式ながら東京五輪を中止せざるを得ないと結論付けたと報道。日本政府や国際オリンピック委員会(IOC)が否定する声明を出している。



日本の中で、政府とJOCが孤立している。
名誉ある孤立か? IOCとともに汚辱にまみれた孤立か?
オリンピックそのものを見直すべき時代に入りました。



コメント

自民党資金1億5000万円問題は党内抗争だけでなく、稲田前検事総長と安倍前首相との検察攻防にも関わりがある(中)

2021-05-23 04:25:58 | Weblog



前回(上)の記事では、参議院選挙広島の趨勢の移り変わりを見ました。今回はまず、直近の第48回衆議院小選挙区広島 2017.10.22.投開票になる当選結果を見てみます。


<第48回衆議院議員選挙 広島県小選挙区 当選結果> 2017.10.22.投開票
                         (獲得票数) (当時年齢)
  広島1区  岸田文雄 自由民主党   113,239票  男60歳  岸田派
  広島2区  平口 洋 自由民主党     96,718票  男69歳  竹下派
  広島3区  河井克行 自由民主党     82,998票  男54歳  安倍シンパ
  広島4区  新谷正義 自由民主党     64,911票  男42歳  岸田派
  広島5区  寺田 稔 自由民主党     86,193票  男59歳  岸田派
  広島6区  佐藤公治 希望の党     85,616票  男58歳
  広島7区  小林史明 自由民主党  110,547票  男34歳  岸田派


広島は池田勇人、宮澤喜一と二人の総理大臣を輩出しました。池田勇人元総理に始まる宏池会(岸田派)が衆議院7小選挙区7人のうち4人、参議院選挙区4人のうち2人と6人の国会議員を擁している広島県は宏池会王国だと、2019.5.12 20:22 産経新聞が伝えています。宏池会の盟主は、安倍首相(2019年当時)から総理総裁の禅譲を待ちつづけてきた岸田文雄自民党政務調査会長(2019年当時)です。


■安倍晋三前首相は河井克行氏を重用する関係

しかしこの宏池会王国の中に、安倍シンパである河井克行衆議院議員がおりました。

  ・2007年(平成19年) 第1次安倍改造内閣で法務副大臣に就任
  ・2007年(平成19年) 福田内閣で法務副大臣に再任

  ・2011年(平成23年)鳩山邦夫の「きさらぎ会」に参加、同会幹事長
  ・2012年(平成24年)9月 自民党総裁選、安倍晋三推薦人に名を連ね、
               票とりまとめに奔走

2015年9月にきさらぎ会が東京都内で安倍首相(当時)を招いて激励会を開いたことがあります。河井克行氏はその様子を伝えるフェイスブックに「活動方針は安倍総理、菅官房長官を支えること」と書きこみました。

  ・2015年(平成27年)第3次安倍第1次改造内閣で内閣総理大臣補佐官
  ・2017年(平成29年)自由民主党総裁外交特別補佐に就任
  ・2019年(令和元年)9月11日 第4次安倍第2次改造内閣法務大臣
  ・2019年(令和元年)10月31日 法務大臣辞表提出、受理  

安倍晋三首相(当時)や菅官房長官が河井克行氏を重用する理由の一端を毎日新聞 2020.6.18.21:55 が次のように紹介しています。

――(毎日新聞記事)―きさらぎ会会長を務めた故鳩山邦夫元総務相らとともに、安倍首相が党総裁に返り咲いた2012年の総裁選で票のとりまとめに奔走し、「首相はきさらぎ会に恩義を感じている」(自民中堅)とされる。2017年12月の忘年会では、あいさつした首相が「きさらぎ会にとってはゲストだけれど、自分はこのきさらぎ会の会員です」と持ち上げてみせたほどだ。


■2019年7月参院選 安倍―菅―二階ラインが動く 
■宏池会王国斬りこみ隊長は河井克行氏 

安倍晋三前首相は現職総理当時、一貫して、岸田文雄氏の「次期総理禅定期待」をくすぐって手なずけてきました。しかし2019年7月の参院選では方針を変えて、岸田氏の本城広島に斬りこみました。

参院広島選挙区の自民党得票数は固く見て50万票~55万票です。党本部は広島の参院候補を従来の1人に加えてもう1人増やせると見こみました。2人候補でしっかりやれば得票数も増やせるので、広島2人選挙区を自民党で独占も可能だ、と。

しかし、自民党広島県本部の猛反発が止みません。自民党1人、野党1人の当選で安定してきた広島選挙区です。2人立てれば、1人が落選する可能性が高い。参院広島選挙区では候補を2人に増員して1人落選した過去の経験がありました。

しかし、党中央の2人候補選挙戦の計画は変わりません。安倍首相(当時)の決意は固い。広島県本部の反対なんぞ相手にしません。溝手は落ちてもいい、という意思が見えます。

安倍首相(当時)は河井克行氏を見こんでいました。広島3区での衆議院議員歴は長く外交委員長など議会活動の経験も豊富であり、総理補佐官、総裁外交特別補佐も務めた。宏池会王国の中にあって、頼りになる安倍砦でした。2人目の新人候補を、党本部は広島県議経歴を若くから重ねた河井案里氏に決めました。

安倍首相(当時)主導で、常から交流のある河井克行氏の奥さんである広島県議案里氏に決まったことに菅官房長官(当時)も良い候補を得たと思ったでしょう。二階自民党幹事長は、安倍さんのやることに口出しはしないという立ち位置です。

しかし、当選後の河井案里氏は二階派に入りました。河井克行氏の二階幹事長への気づかいと、安倍シンパという自分の立ち位置に対して保険的なバランスをとったのでしょう。

宏池会王国への斬りこみであり、広島県本部が溝手顕正陣営一本に固めている選挙情勢です。河井案里陣営は現地党員・議員の助けが得られず、安倍首相(当時)の強い後押しを心の支えとして選挙戦に乗り出しました。

しかし朗報もありました。広島県連の助けを得られないという困難に対して、1億5000万円という、これまでに聞いたこともない破格の党資金を受けることになったのです。選挙戦終盤にはさらにもう一つ、公明党票は河井案里陣営に向けられるという情報が流れました。 (次回につづく)


コメント

自民党資金1億5000万円問題は党内抗争だけでなく、稲田前検事総長と安倍前首相との検察攻防にも関わりがある(上)

2021-05-21 16:19:33 | Weblog




2019年7月4日公示、7月21日投開票の参議院広島選挙区当選の河井案里議員公職選挙法違反による参議院議員失職を受けた再選挙1議席が、4月25日に投開票されました。当然のごとく自民党候補が敗北し、野党統一候補が当選しました。

参院広島選挙区は2人区で、1位自民党、2位野党と、与野党一人づつ分け合っていました。とは言え自民党の得票数は野党を圧しています。ご承知のように参議院議員は6年任期で3年ごとに半数改選になります。


<参院選広島選挙区(2人区)の移り変わり
 2010.7.11.開票結果  宮沢洋一(自民)  547,845票 岸田派
              柳田 稔(民主)  295,276票

 2013.7.21.開票結果  溝手顕正(自民)  521,794票 岸田派
   投票率49.99%      森本真治(民主)  194,358票

 2016.7.10.開票結果  宮沢洋一(自民)  568,252票 岸田派
   投票率49.58%     柳田 稔(民主)  264,358票

 2019.7.21.開票結果  森本真治(野党共闘)329,792票
   投票率44.67%     河井案里(自民)  295,871票 二階派
             溝手顕正(自民)  270,183票(落選)岸田派

 2021.4.25.開票結果  宮口治子(野党共闘)370,860票(再選1人)
   投票率33.61%     西田英範(自民)  336,924票(落選)  


2019年、自民党広島県連の猛烈な反対にもかかわらず、安倍晋三前首相が岸田文雄氏の勢力を削ぐために、強引に河井克行法相(当時)の妻である広島県議河井案里氏を参議院議員候補に押し出しました。これが、自民党資金1億5000万円問題の始まりでした。



コメント

<コロナ> 体験2例、コロナにかかると苦しいぞ コロナにかからないライフスタイルを心がけよう

2021-05-05 12:56:22 | Weblog


インドで多くの遺体を広場で焼く風景を他人事には思えません。あのような光景は東京大震災でも、東京大空襲でも、ヒロシマ原爆でも、写真で見ることができます。

そして感染症では、1665年のペスト禍ロンドンでも似た風景が見られました。人口規模と遺体の数では目下のインドと比較にはなりませんが、1665年ロンドンでは遺体の埋葬代わりに、いくつもの四角な大きい凹地を深く掘って、ペスト遺体を投げ入れて積み上げ、土をかけて埋めました。医療崩壊の結末は、目下のインドや1665年のロンドンと同じ、こういうものだろうと想像します。


今年2021.1.21. 05;00 読売新聞は「自宅療養中に症状が悪化して亡くなった人が昨年12月以降、8都府県で計16人に上る」と伝えました。8都府県16人の中には大阪府も入っています。1都3県への緊急事態宣言発令から1月21日で2週間のことでした。コロナ自宅死はすでに昨年春ごろから始まっています。

前回5/1ブログ記事でお伝えしたときは、4/29現在で大阪府のコロナ死は44人、3月~4月29日間の自宅死累計が9人でした。

NHKニュースによれば、5/4大阪府の感染者884人、コロナ死20人、うち自宅死3人でした。自宅死3人の内訳は、自宅で入院調整待ち2人、自宅療養1人でした。


■「いっそ殺して」、今も完治せず
■ 変異株感染の50代男性が語る8日間の闘病生活

2021.4.30.毎日新聞から50代男性のコロナ闘病体験をご紹介します。

奈良県在住の50代男性、妻と長女大学生、次女高校生の4人暮らし。

4月3日、共働き妻の変異株感染が判明。濃厚接触者として男性と娘2人はPCR検査。検査結果、長女大学生が陽性、男性と次女高校生は陰性。

妻は即日入院できた。長女は軽症でしたが受け入れ先が見つからない。4月10日になってやっとホテル療養開始。自宅調整待ちに1週間かかりました。

4月8日、男性が発熱。最高39・5度まで上がりました。同日、2回目のPCR検査、しかし陰性。医師は「偽陰性かも」と指摘。

4月9日、10日、自宅にて高熱、下がらず。

4月10日、長女がホテル療養開始。

4月11日、保健所に連絡。3回目のPCR検査、結果は陽性で変異株感染と判定。同時にCT検査で肺炎と診断。中等症として緊急入院することになったが、すでに自力では動けないほどに弱って、保健所の車で病院に運び込まれました。

4月12日~15日、入院後、急激に症状悪化。呼吸困難、全身が痛む、夜も眠れない。高熱に浮かされ、酸素投与を受けた。4月15日まで記憶も定かでない。「人生で経験したことのない苦しみ」。

4月16日、熱が下がり、回復に向かった。発症から8日経過。「点滴も少なくなり、やっと食事を取れるようになった」。

4月27日、3日間の経過観察と薬物投与や点滴が終了し、退院。


 男性に基礎疾患や喫煙歴はない。運動も好き。「体力には自信があったが急激に症状が悪化し、人生で経験したことのない苦しさだった。『いっそのこと殺してほしい』とさえ本気で思った」と振り返った。退院時にはまだ肺に影が見られ、日常生活のなかでも急に息切れを起こすなど、肺炎は完治していないとみられる。


■「こんな恐ろしい病気はない」 
■ 自宅療養の夫を看病していた妻が急変、重症に 

2021/05/04 21:07 関西テレビニュースから、東大阪市の田中さんご夫妻(仮名、お二人とも69歳)のコロナ闘病体験をご紹介します。

4月15日、田中さん夫妻とも、コロナ感染判明。田中さんは重症の一つ手前の中等症2と診断されたが、自宅待機。

脳貧血とみられる症状で意識を失ったりしましたが、入院先が見つからず、自宅待機が続きました。奥さんは当初、症状が軽かったので、田中さんの看病をしていました。

4月21日、東大阪生協病院の医師が往診に来てくれました。

〇医師 「家にいて不安じゃないですか?」

〇田中さん 「不安ですよやっぱり。それは不安ですよ」

〇田中さん妻 「必死で保健所に毎日毎日電話してどうですか? どうですか?って言ってもなかなか(入院できない)」

――(アナウンス)田中さんを看病していた妻の症状が悪化してきました。

4月24日、田中さん妻の病状が悪化し、中等症2。

4月26日、田中さん妻、入院。

4月27日、田中さん妻、容体が急変し、重症化。

――(アナウンス)人工呼吸器をつけるため、気管を切開して現在も治療が続いています。

<5月1日取材>

〇田中さん 「(妻は)いま気管支に酸素をチューブで入れている。もうすぐ(のどを)切開して酸素送る治療になると聞いています」

――(アナウンス)大阪府では、自宅療養中など自宅で死亡した事例が今年3月以降、14人にのぼっています。田中さんは、変異ウイルスが妻の体をむしばむ速度を目の当たりにし、自宅待機の恐ろしさをこう語ります。

〇田中さん 「(妻は)きょうは数値いいし熱も何日もないしと話してたんですよ。次の日に急にばっと悪くなる。この病気は急変するんですよね。あれはびっくりした」

〇田中さん 「(妻の血中)酸素の数値が悪くなってきて80台に落ちたんですよ。急に数字落ちてきて(機械が)壊れてるわと話していた時に、往診の先生が来て頂いてすぐにこれはあかんということで、救急車来てくれました」

「なんにもなかったら不安になっていくじゃないですか。医師に来ていただいたら頑張ろうという気になるんですよ。気持ちがパッと明るくなりましたわ。先生の顔見た時に」

〇医師 「往診に行ってなかったら(夫婦が)機械が潰れてると思ってたくらいなので、夜には自宅で重篤になったと思う。こちらが(受け入れ病院に)紹介状を書いて対応したことで、治療をスピーディーに的確に行えたことにつながった」

入院が必要でも必ずしも入院出来るわけではない危機的な大阪の医療体制。できる限りの処置で耐える時期が続きます。



上2件の体験例のように、コロナは苦しい、きつい。家族が感染しても罹患しない家族がいる。満員電車に乗っても、多くの人が罹患しない。細心の注意を払ってコロナにかからないライフスタイルを心がけよう。感染症専門家が進める生活を心がけよう。どうしたってかかるときはかかる、なんていう居直りを避けよう。

感染症は自分がかからないことが人のためになります。家族のためになります。勤め先の同僚のためになります。自分が健康であることだけで、人のためになるなんてすばらしいことではありませんか。


コメント

大阪府はコロナ医療危機 府医療監がトリアージ勘違いで保健所宛て高齢者選別メール 4.29.コロナ死44人

2021-05-01 07:21:44 | Weblog


大阪のコロナ感染の広がりと医療危機について連日、全国ベースで報道されています。奈良県に住む我が家から数十メートルのお宅でも家族感染が出ました。一家4人のうち3人が感染。うち2人が退院しましたが、まだ1人退院できていません。


■4月29日、大阪府のコロナ状況 コロナ死は44人 
4月29日の大阪府のコロナ発表は衝撃的な數でありました。2021年4月29日 17時18分 NHKニュースによれば、4月29日の感染者数1172人、同日死亡者数は過去最多で44人。3月から4月29日までの自宅療養死亡數累計は9人。

また、4月29日時点の重症患者用の病床は337床、この病床で治療を受けている重症患者数は331人です。

このほかに、重症病床に入れないで軽症・中等症の医療機関で治療を続けている重症患者が58人います。重症患者の数が、用意された重症病床の数を上回っている状況です。

現場の医師からは自宅療養や宿泊療養中の患者の症状が悪化しても病院に搬送されてくるタイミングが遅れることで、治療が間に合わないケースが出てきているという厳しい声もあがっています。 (以上、NHK)


■災害医療 トリアージ 
名古屋大学医学部付属病院の山本尚範救急科医局長は3月早々のころに大阪の医療ひっ迫を見て、至急にDMATの活用による災害医療態勢を築くべきだと提唱していました。

大阪府の吉村知事は1週間ほど前の記者会見の折に、記者のDMATの運用はどうかという質問に答えて、すでに現場に入っていただいていると言っていました。

DMATは発災時に災害現場に医療出動する献身的な医師・看護師のチームで、上述の山本尚範医師は大阪府には660人ほどのDMATメンバーがいると言っていました。大都市型神戸大震災の教訓から生まれた全国的な組織で、門外漢である私が知っている特徴はトリアージです。

トリアージとは、災害・事故現場などで一時に 大勢 の負傷者が発生した時に、重症度によって治療の 順番 を決める 対処法です。

しかしここで、大阪府の健康医療部の医療監(医師)は「トリアージ」ということについて重大な勘違いを起こしました。


■年齢区分による医療選別 → 重大な人権問題
トリアージは重症度によって治療の順番を決めるものですが、トリアージ選別の意味を取り違えて、高齢者という年齢区分で治療順位を選ぶという指示を出した行政責任者が明るみに出ました。

 これは見過ごすわけにはいかない重大な問題です。今のコロナ社会のように、社会全体に困難や緊張や不満がつづくと、いろいろな種類の無自覚な差別が起こってきます。放っておけば社会の大きな風潮に成長していくことがあるので、たとえ些細なことであっても、たとえ悪気のないままに引き起こされたものであっても、神経過敏になってトリアージ選別の誤用を正しておかねばなりません。


■高齢者の入院優先順位を下げざるを得ない


(毎日新聞 2021/4/30 12:28 から)
■「高齢者の入院優先順位を下げざるを得ない」
■ 大阪府医療監が府内全保健所にメール


  大阪府庁で新型コロナウイルス患者の入院調整などを担う健康医療部医療監が、病床逼迫(ひっぱく)を理由に高齢患者について「入院の優先順位を下げざるを得ない」とするメールを4月19日に府内府内全18の保健所長らに送っていた。府が30日、明らかにした。府は不正確な表現だとして内容を撤回し、幹部職員を厳重注意した。

 府は65歳以上で無症状・軽症以外の患者について入院を原則としている。健康医療部の藤井睦子部長は「高齢を理由に入院の優先順位を下げることはない」と説明した。 医療監は「DNAR、心肺蘇生を望んでいない高齢の入所者は、施設でみてもらうことを一つの選択肢として検討してほしいというお願いだったが、言葉足らずで深く反省している」と陳謝した。


メール送付が19日、大阪府がこの事実を公表してメール内容を撤回し、医療監が陳謝したのは30日です。高齢者医療順位下げを要請するメールを受け取って、この選別方針の差別性に疑問を抱いた保健所職員が複数いたのではないか。そうした保健所職員が府庁の健康医療部にこの選別方針について照会、あるいは再確認をしたことで、この問題が発覚し、府庁側の公表につながったのではないかと推測します。

私は大阪府保健所職員の中に医療監メールに不審を抱いた者がいたことが問題発覚の原因だと思っています。そうであるとして、府自らの手でメール指示の不適切部分を手早く訂正し公表したことを、大阪府行政組織の健全性を示すものとして歓迎します。

もっとも、今の大阪の感染激増と病床ひっ迫には吉村知事の失政も問われます。大阪府の人口は東京都の63%。コロナ感染数とコロナ死者数を東京都対比で見ればわかることです。

次に、報道写真から読み取った大阪府医療監メール本文を掲載します。


■問題の医療監4月19日発信メール全文


(2021.4.19.大阪府健康医療部医療監発信メール)


府保健所長様
政令・中核市保健所長様


 平素より大変お世話になり、有難うございます。
 先生方におかれましては、新型コロナ陽性者への対応に大変なご苦労をされておられることと存じます。

 本日の段階では重症病床の稼働数は271例と運用病床数の248例を大幅に超えており、中等度病床でも挿管事例が40を超えており、さらに高濃量酸素を必要とするケースを100例以上診ていただいています。このため、病院には多大な負担がかかっており、数字上空床があっても新規患者を受けられないという事態が多発しております。

 以前にも増して入院調整が厳しくなっており、先生方には大変なご迷惑をおかけしております。

 当面の方針として、少ない病床を有効に利用するためにも年齢が高い方につきましては入院の優先順位を下げざるを得ないことをご了承いただければ幸いです。

  特に高齢者施設に入所中の方でDNARの方につきましては、看取りも含めて対応をご検討いただきたく存じます。


 先生方には無理なお願いばかりで心苦しいところでありますが、ご理解いただきますようよろしくお願いいたします。


上のピンク文字の部分にご注目ください。「年齢が高い方につきましては入院の優先順位を下げざるを得ない」と明言していて、弁解の余地はありません。

これは、年齢という人間の属性によって医療優先順位を決定するよう要請するもので、明確な高齢者選別による医療差別です。人間の持つ属性によって享受できる社会的サービスに差異を設定することは、「差別」なのです。してはいけないことです。

一方、トリアージは異常環境における医療優先順位を患者の重症度によって区分するもので、高齢者選別とはまったく関係のないことです。


コメント