川本ちょっとメモ

★所感は、「手ざわり生活実感的」に目線を低く心がけています。
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<学術会議 任命拒否> 橋下徹氏がガセネタツィート、フジテレビ平井文夫上席解説委員が「バイキングMORE」でガセネタ解説

2020-10-30 12:22:27 | Weblog
 
橋下徹氏の上掲ツィッター画像は、「東京新聞 2020年10月15日 20時44分」
からお借りしました。


【橋下徹氏の「学術会議批判」ガセネタツィート】

上左画像のツィッター (10月6日) の橋下氏は、「英米の学者団体に税金は投入されていない。学問の自由や独立を叫ぶ前に、金の面で自立しろ」と、英米の例を持ち出して、日本学術会議を批判しました。

この「金の面で自立できない者はもの言うな」という発想は橋下徹氏の信念であろうと思います橋下徹氏は大阪でこういった発想の地方政治を実際にやってきました。もっともこの発想は、橋下徹氏や大阪維新だけでなく現代日本に蔓延しています。

しかし皮肉なことに、「金の無いものは一人前に物言うな」と言いながら、金のある人や企業には減税を行い、金の無い人の財布まで当てにした消費税を創設し、増税してきたのが日本の政治です生きている人は皆、一人残らず消費税を払っています。何かものを言ってはダメなのでしょうか? 生活が苦しければ、何かものを言ってはダメなのでしょうか?

さて、東京新聞が上左画像の橋下ツィートが事実ではないと報告しました。英国王立協会にも、全米科学アカデミーにも、日本学術会議よりはるかに多額の国費が支出されていたのです。

橋下徹氏のツィッターには、「事実と違う」と、まちがいの指摘がいくつも寄せられたそうです。

10月12日、橋下徹氏は10月6日ツィートの訂正をツィートしました。訂正したこと自体は、安倍・菅の二代首相より人間の格は格上(笑)と評価できます。しかし「これは説明不足だった」として間違いを認めないのは往生際悪く、安倍政権下で国会答弁に立った自民党議員や官僚並みの水準です。

世間のあちこちで暮らしている一般人とくらべてどうか?  格下です。間違いを認めないということは正直でないということですから、文部科学省小学校指導要領の「道徳」にひっかかるでしょうね。橋下徹氏のツィッターフォロワーはなんと、262.2万人。桁違いです。大変な影響力のある人ですから、ことばを大切にしてほしい。事実確認を慎重にしていただくようお願いします。

下にこの橋下ツィートに関する「東京新聞 2020年10月15日 20時44分」記事を記載します。


〔東京新聞 2020年10月15日 20時44分〕


◆「税金は投入されていないようだ」 
 約262万人のフォロワーを持つ、元大阪市長の橋下徹氏は、10月6日午前のツイッターで「学者がよく口にするアメリカとイギリス。両国の学者団体には税金は投入されていないようだ。学問の自由や独立を叫ぶ前に、まずは金の面で自立しろ。年1500円ほどの会費で、今の予算は確保できる」などとつぶやいた。

 このつぶやきは、ネット上で拡散し、15日午後3時半現在で2405件のリツイート、8424件のいいねが押されている。「橋下徹さんに全く同意します。いいこと言うなあ!」「すごいさすが橋下さん」と賛同が寄せられた。

◆米国、英国も公的資金を投入
 しかし、学術会議や米国の資料によると、米国では1997年の時点で、科学者団体「全米科学アカデミー」の年間の運営費が2億ドル(約210億円)で、うち8割が連邦政府との契約という形で公的資金が投じられている。具体的には政府から頼まれたプロジェクトを行ったり、中立的・客観的な行政レビューの作成や答申などを行っている。

 2017年時点では、運営費は3億ドル(約315億円)を超えたとされ、内訳の発表はしていないが、学術会議によると、全米アカデミーへの税金の投入額はさらに増えているとみられるという。

 英国でも、英国王立協会が2013年4月~2014年3月の1年で収入7060万ポンド(97億円)のうち67%の4710万ポンド(約65億円)が公的資金として支出されている。優れた研究者や研究機関への支援のほか、海外や国際的な研究機関との協力・連携、政府への助言、市民の公共的問題への関心を高める試みなどが行われている。

◆「説明不足だった」
 橋下氏のツイッターのコメントには、次第にこうした事実関係を示す日本人の研究者のつぶやきや、「デマです」「アメリカの実情はこのようになっている……」などの反応が寄せられるようになった。

 橋下氏は、発信から6日後の12日午前、6日のつぶやきを引用する形で「これは説明不足だった。アメリカやイギリスでは、日本のように税金で学者団体を丸抱えすることはないが、学者団体に仕事を発注して税金を投入する」などとツイートした。

 橋下氏に6日のつぶやきの根拠などを問い合わせたが、橋下氏の事務所は「現在は一私人としての立場なので、無償でのインタビューには応じていない」と回答した。



【フジテレビ平井文夫上席解説委員がガセネタ「学術会議批判」】

フジテレビ上席解説委員の平井文夫氏が、フジテレビ10月5日『バイキングMORE』放送前の午前に、次のようにツィートしました。

「今日も『バイキングMORE』です。お題は日本学術会議の任命問題。しかし既得権益を奪われる人達の抵抗ってスゴイな。まあ僕らの税金ですから。とっとと民営化して欲しいものです」

そして、同10月5日11時55分から始まった『バイキングMORE』の13時半ごろに、日本学術会議のことについて平井文夫解説委員が話し始めました。

概要、日本学術会議の新規会員の選び方が閉鎖的であり、日本学術会議の会員が推薦して次の会員を選ぶので国民のチェックなどが入らない組織だ、そこへ税金が投入されることがおかしい、民営化すればいい、などと話した後に問題発言がありました。

平井文夫氏の妄言「だってこの人たち、6年ここで働いたら、その後学士院というところに行って年間250万円もらえるんですよ、死ぬまで。みなさんの税金から。そういうルールになっているんですね」

しかし、学術会議会員がすべて学士院会員に横滑りするというのはまったくのデマです。平井文夫解説委員の話は事実でなかった。

視聴者から「事実でない」という声がフジテレビに次々寄せられました。翌朝10月6日午前の番組『とくダネ!』で、平井文夫解説委員自身が「誤解を与えた」として視聴者に事実を伝えました。残念ながら、「間違っていた」というお詫びのことばではなかった。

フジテレビ10月6日昼番組『バイキングMORE』では、番組終了間際に伊藤利尋アナウンサーが平井文夫上席解説委員の5日発言を次のように訂正しました。

「昨日の放送について補足と訂正があります。日本学術会議をめぐるニュースを扱った際、フジテレビ平井文夫上席解説委員の発言が、学術会議の会員全員が学士院の会員になって年間250万円の年金を受け取れるというような誤った印象を与えたものになりました。正確には学術会議の会員で学士院に推薦される方もいますが、全員が学士院の会員になるわけではありません。また学術会議以外の方が学士院の会員になることもあります。この点補足して訂正いたします。大変失礼しました」

「東京新聞 2020年10月15日 20時44分」は下記のように伝えました。


〔東京新聞 2020年10月15日 20時44分〕

◆年金250万円もらえる?
 5日昼のフジテレビの情報番組「バイキングMORE」では、同局の上席解説委員の平井文夫氏が「欧米は全部民間。日本だけが税金でやっている」「民営化して、自分たちで会費を払って提言すればいいんじゃないですか。だってこの人たち6年、ここで働いたら、その後、学士院というところに行って、年間250万円年金もらえるんですよ。死ぬまで。皆さんの税金から。そういうルールになっているんです」などと発言した。

 だが、日本学士院の担当者は「日本学術会議の会員やOBが学士院会員になるという規則はない。選出は、学士院の選定規則にそって年一回、候補者の推薦を募ると公示して、総会での選出を経て選ぶ」と説明。「推薦者は大学の学長や研究機関の所長、学士院会員、学術会議の会員の3つで、候補者の所属団体は問われていない」と話す。

 学士院会員は、定員150人で現在は130人。現在の学術会議の会員は、梶田隆章学術会議会長だけで、学術会議の会員でなくても、学士院会員になる人もたくさんいるという。

 学士院の担当者は「平井氏の発言がテレビに出てから市民からの苦情電話もあり驚いた。発信者はきちんとした事実を確認してから発信してほしい」と話す。


◆「放送を訂正」と謝罪
 フジテレビは、6日昼の放送で、アナウンサーが「昨日の放送について補足と訂正がある」として「学術会議の会員全員が学士院の会員になって、年間250万円の年金を受け取れるといった誤った印象を与えるものになりました」と謝罪したが、「欧米は全部民間。日本だけが税金でやっている」との事実と異なる発言への言及はなかった。

 ツイッターに約3万7千人のフォロワーがいる平井氏は、問題となった発言を行った日の直前に「今日も『バイキングMORE』です。お題は日本学術会議の任命問題。しかし既得権益を奪われる人達の抵抗ってスゴイな。まあ僕らの税金ですから。とっとと民営化して欲しいものです」とつぶやいた。15日午後9時現在、それ以降の更新はなく、発言に関する訂正や謝罪は行われていない。

 平井氏の発言の根拠となった情報や平井氏の見解を求めたが、フジテレビ企業広報室は「6日の番組でお伝えした通り。取材の詳細についてはお答えしておりません」と回答した。

 こうした不正確な情報が発信されていることについて、学術会議の担当者は「誤った情報が、ネット上にあふれ、抗議や苦情の電話が市民から来たり、マスコミの問い合わせが来たりして対応に追われる。発信者側は、自分が知った情報が、事実に基づくものか否かを、発信する前に確認してほしい」と話す。




〔東京新聞 2020年10月15日 20時44分〕

◆発信者の態度を見極める必要

 NPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」理事の立岩陽一郎氏は、「言論活動に携わる人たちが事実に基づく発信を心掛けるのは当然。メディアはあくまでも事実に基づく冷静な発信を心掛け、報道を行う必要がある」と語る。

 さらに「影響力のある人々の発言について、ファクトチェックをたえずしていく仕組み作りが重要だ」とし、「市民は、発信者が根拠を示しているか、間違いを指摘された時、その事実を明示した上で謝罪するなど、誠実に対応しているかなど、発信者の態度を見極めていく必要がある」と言う。

 その上で今回の学術問題については、「学術会議への公的資金投入の可否ではなく、首相が学術会議が推薦した6人の任命を拒否したという点だ」と指摘。

 「橋下氏は『自立しろ』としているが、米国は法人が寄付すれば大幅な減税措置が受けられる税制になっており、全く日本と異なる。米国の科学アカデミーなどは、使途が義務付けられない多額の寄付を受け運営できる仕組みがある。単に『自立しろ』と言う前に科学者を育てるために、日本の税制の見直しを含めた指摘や議論が必要ではないか」と提案した。


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<学術会議 任命拒否> 甘利明自民党税制調査会長「国会リポート第410号」の学術会議ガセネタ批判

2020-10-26 22:53:15 | Weblog



2012年12月第二次安倍政権に入ってからというもの、政権批判や政権非難が起こるや否や、反射的に政権擁護にスイッチが入る人たちが増えました。このたびの菅新政権による日本学術会議の新会員推薦のうち6人任命拒否についても、菅首相側を批判するのでなくて逆に、日本学術会議側をさまざまな角度から批判する面々が目立ちます。

まず、甘利明自民党税制調査会長の 2020.8.6.付 国会リポート410号。そこには、日本学術会議が国内で軍事技術の研究を禁じているにもかかわらず、中国(千人計画)との軍事研究を容認していると受け取れる一節が書かれてありました。



      (朝日新聞2020.10.14.掲載写真をコピーしました) 


10月1日、日本学術会議新会員候補推薦105人のうち6人が菅首相に拒否されたことが明らかになりました。菅首相非難の声が巻き起こり、世論調査では菅首相支持率が下がりました。

この動きに応じて、菅首相擁護派のネット民から、日本学術会議が中国に情報を流している、反日だ、中国の軍事研究に参加している、などと非難が多発しました。

そしてまた、このネット民からの日本学術会議非難の根拠になった情報が甘利明自民党税制調査会長の「国会リポート410号」に発していることがわかりました。ところが国会リポート410号中の、中国との軍事研究協力を示唆する日本学術会議批判部分が〈ガセネタ〉でした。

こんどは、「菅首相任命拒否」非難派から甘利明自民党税制調査会長がガセネタを指摘され非難されて、「国会リポート410号」の焦点になる文章を修正しました。――ここのところを、以下に説明します。

上の甘利明自民党政調会長の 2020.8.6.付 国会リポート410号の写真は小さくて読みづらいので、関係部分を下に書き写しました。読みやすくするために改行を施している箇所があります。


  
(注) 甘利氏は安倍晋三前首相の腹心で経済再生担当大臣当時の 2013年11月14
    日、大臣室で現金50万円受領ほかの現金授受の罪に問われたが、不思議な
    ことに東京地検特捜部が不起訴にしたという経歴の持ち主です。
 
   (参照クリック)
   <政治とカネ > 安倍内閣 甘利明前大臣の大臣室現金授受事件を忘れない(1)
   <政治とカネ> 安倍内閣 甘利前大臣の大臣室現金授受を忘れない(2) 



  衆議院議員 甘利明 「国会リポート 第410号」 2020.8.6. 一部抜粋


 日本学術会議は防衛省予算を使った研究開発には参加を禁じていますが、中国の「外国人研究者ヘッドハンティングプラン」である「千人計画」には積極的に協力しています。

 他国の研究者を高額な年俸(報道によれば生活費と併せ年収8,000万円!)で招聘し、研究者の経験知識を含めた研究成果を全て吐き出させるプランでその外国人研究者の本国のラボまでそっくり再現させているようです。そして研究者には千人計画への参加を厳秘にする事を条件付けています。

 中国はかつての、研究の「軍民共同」から現在の「軍民融合」へと関係を深化させています。つまり民間学者の研究は人民解放軍の軍事研究と一体であると云う宣言です。 

 軍事研究には与しないという学術会議の方針は一国二制度なんでしょうか。
そもそも民生を豊かにしたインターネットが軍事研究からの出自に象徴されるように、機微技術は現在では民生と軍事の線引きは不可能です。(引用終わり)

    ---------------------------------------------------------------------

上の青字部分は2020年8月6日初出時の上の青字部分が10月13日に次のように訂正されました。

①〈初出〉「千人計画」には積極的に協力しています。
 〈現在〉「千人計画」には間接的に協力しているように映ります。

②〈初出〉軍事研究には与しないという学術会議の方針は一国二制度なんで

     しょうか。
 〈現在〉軍事研究には与しないという学術会議の方針は日本限定なんでし
     ょうか。


このように甘利明氏は、あたかも日本学術会議が中国の軍事研究に協力しているかのような「国会リポート第410号」の言説を改めたわけではありません。

2020.10.12.付「国会リポート第413号」では「『積極的に協力』と云う表現が適切でないとしたら『間接的に協力していることになりはしないか』と改めさせて頂きます」と居直って、相変わらず学術会議批判の文章を連ねています。 これを牽強付会と言います。

事実でないことを事実として書いたことへの反省はまったくありません。



一人前の社会人であれば、自分の考えを発表する前に、発表しようとしている内容にまちがいがないかどうか、自分でチェックをします。甘利明氏はなぜ日本学術会議と中国との関係について発言前チェックをしなかったのでしょうか? 思い込みによる発言をしてしまう軽い輩が騒々しい時代です。

菅首相の学術会議会員候補任命拒否は日本学術会議法違反になります。このことの追及や議論なくして、学術会議を俎上に載せる輩が勢いづくとは‥‥。

なお、甘利明自民党税制調査会長が日本会議批判をしている学術会議と中国との関係について、BuzzFeedNews ← クリック)毎日新聞( ← クリック)がファクトチェック記事を掲載しています。ご覧ください。


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<学術会議 任命拒否> 菅首相が学術会議の任命を拒否した6人の学者はこんな人です

2020-10-22 23:17:06 | Weblog





菅首相が学術会議の任命を拒否した6人の学者はこんな人です
             (東京新聞 2020年10月1日 21時01分 から)

 ① 東京大学社会科学研究所教授の宇野重規しげき教授(政治思想史)
   2013年12月に成立した特定秘密保護法に対し、「民主主義の基盤そのも
   のを危うくしかねない」と批判。「安全保障関連法に反対する学者の会」
   の呼び掛け人にも名を連ねていた。2007年に「トクヴィル 平等と不平
   等の理論家」でサントリー学芸賞受賞。

 ② 早稲田大学大学院法務研究科の岡田正則教授(行政法)
   「安全保障関連法案の廃止を求める早稲田大学有志の会」の呼び掛け人の
   1人。沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設問題を巡っては2018年、他
   の学者らとともに政府の対応に抗議する声明を発表。

 ③ 東京慈恵会医科大学の小沢隆一教授(憲法学)
   2015年7月、衆院特別委員会の中央公聴会で、野党推薦の公述人として出
   席。安保関連法案について「歯止めのない集団的自衛権の行使につながり
   かねない」と違憲性を指摘し、廃案を求めた。

 ④ 東京大学大学院人文社会系研究科の加藤陽子教授(日本近現代史)
   憲法学者らでつくる「立憲デモクラシーの会」の呼び掛け人の1人。改憲
   や特定秘密保護法などに反対してきた。2010年に「それでも、日本人は
   『戦争』を選んだ」で小林秀雄賞を受賞。政府の公文書管理委員会の委員
   も務めた。

 ⑤ 立命館大学大学院法務研究科の松宮孝明教授(刑事法)
   2017年6月、「共謀罪」の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法案について、参
   院法務委員会の参考人質疑で、「戦後最悪の治安立法となる」と批判。
 
 ⑥ 京都大学の芦名定道教授(キリスト教学)
  「安全保障関連法に反対する学者の会」や、安保法制に反対する「自由と
   平和のための京大有志の会」の賛同者。


私は加藤陽子教授の新書・文庫・単行本を4冊読んでいて、教授の昭和時代風の固定的見方とは縁遠い歴史叙述を信頼しております。この先生が拒否対象になっていることに驚きました。安倍前首相もそうでしたが、菅首相にしても杉田官房副長官にしても、学術に対する理解力の貧しいこと、学術に対する謙虚さの足りないこと (権力に寄り掛かった増上慢) に心寒く思います。

   ◎私が読んだ加藤陽子本4冊
      岩波文庫「シリーズ日本近現代史⑤ 満州事変から日中戦争へ」
      講談社現代新書「戦争の日本近現代史  征韓論から太平洋戦争まで」
      文春文庫「とめられなかった戦争」
      朝日出版社「それでも日本人は『戦争』を選んだ」


前回 「2020-10-02 川本ちょっとメモ」に書いたように、菅首相によるこのたびの日本学術会議会員候補一部任命拒否が「違法」であるという考えは変わりません。その理由は前回に書きました。 


日本学術会議は学問の分野を三部に大別して活動をしています。菅首相が任命拒否した6人はいずれも、第一部 人文・社会科学部門に属する学者です。

学術会議会員の半数改選105人の推薦作業は本年2020年2月に始まり、7月9日学術会議総会で推薦105人が承認されました。

 8月31日、会員候補推薦名簿一覧表を安倍晋三首相 (当時) 宛て提出
 9月28日、10月1日付会員任命一覧表が内閣府から学術会議事務局に届く
      推薦105人中6人任命されず


推薦作業は慎重に行われています。(「推薦依頼書明細」参照 http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/senko/25/suisen_irai.pdf
 
候補者としての資格要件は「優れた研究又は業績がある科学者」であることです。(「候補者の推薦に当たっての質疑応答集 問15 」参照 http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/senko/25/situgi.pdf
 
したがって、推薦対象の学問分野に精通していなければ「優れた研究又は業績がある」と判断できる素地がありません。しかも特に優れた専門学者であってさえ、広範多岐にわたる学問分野全般に一人または少数で取り組むことは不可能です。

総理大臣、官房長官、官房副長官あたりに、「優れた研究又は業績がある科学者」に対する十分な判断能力が欠如していることは火を見るより明らか。

また、上記「推薦依頼書 9 その他 ①」において、「今回の改選においても、日本学術会議会則第36条第4項の規定に基づき協力学術研究団体に対し会員又は連携会員の候補者に関する情報提供を、この推薦手続とは別に並行して求めております」と添書きされています。
 
これは、学術会議側から、幅広く数多の学会等に「優れた研究又は業績がある人」の情報を求めている謙虚な姿勢を表しています。
 

日本学術会議は3つの部会に分かれています
         http://www.scj.go.jp/ja/scj/index.html
 
  第一部 人文・社会科学‥‥文系の研究者の集まりです
  第二部 生命科学
  第三部 理学・工学
 

3つの部会は、それぞれ分野ごとの委員会に分けられます
        http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/index.html#bunya
 
  第一部(人文・社会科学)
    ①言語・文学 ②哲学 ③心理学・教育学 ④社会学 ⑤史学
    ⑥地域研究 ⑦法学 ⑧政治学 ⑨経済学 ⑩経営学
 
  第二部(生命科学) 
    ①基礎生物学 ②統合生物学 ③農学 ④食料科学 ⑤基礎医学
     ⑥臨床医学 ⑦健康・生活科学 ⑧歯学 ⑨薬学 ⑩環境学 

  第三部(理学・工学) 
    ①数理科学 ②物理学 ③地球惑星科学 ④情報学 ⑤化学
       ⑥総合工学 ⑦機械工学 ⑧電気電子工学 ⑨土木工学・建築学 
    ⑩材料工学
 


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<学術会議 任命拒否> 菅義偉首相の政治スタイルは「圧政型」 しかし任命拒否は日本学術会議法違反

2020-10-02 23:52:44 | Weblog


菅義偉首相の政治スタイルが圧政型であることを早くも見せつけるできごとが起きました。それは、日本学術会議会員の任命拒否です。経緯を毎日新聞記事で見ます。


  「学問と政治の関係の大きな分水嶺」 学術会議に政権の人事介入
    揺らぐ学術会議の独立性       (毎日新聞 2020年10月1日)


 9月28日夜、日本学術会議の事務局に、10月1日付で首相が会員に任命する学者らの名簿が内閣府から送られてきた。学術会議が推薦した105人分の氏名が記載されているはずだが、いくら数えても99人分しかない。

「なぜ人数が足りない?」。事務局の問い合わせに、内閣府官房人事課は次のように答えたという。「人事上の問題で、理由は回答できない」

 会員210人からなる学術会議は3年に1回、半数の105人を改選する。学術研究団体などから提出された推薦書をもとに、今回は2月から学術会議の選考委員会で選考が進められ、7月9日の臨時総会で候補者105人が承認された。

8月31日、安倍晋三首相(当時)あてにその一覧表を提出。約1カ月が過ぎ、いよいよ新体制始動という矢先の「任命拒否」通告だった。

 なぜ政府は推薦された6人を任命しなかったのか。政府はその理由を明かさないが、安全保障法制や「共謀罪」を創設した改正組織犯罪処罰法の制定に反対を表明するなど、菅政権が継承した安倍政権の看板施策にもの申してきた学者が複数含まれていた。



申請から6人落としたことの説明なしに決定書類を学術会議事務局に送りつけた内閣府官房人事課の非常識さに怒りを覚えます。内閣府官房は国の中心の中の中心。それがこういう非常識さでは国の中枢に希望を持つことはできません。人でなしかと罵りたい。


 この任命問題の経過を箇条書きに整理してみます。


 【 任命問題の経過 箇条書き整理 

 ① 日本学術会議会員数は210人と定められている。(法第7条1項)
 ② 会員の任期は6年。
(法第7条3項)
 ③ 3年ごとに半数の105人づつ任命する。
(法第7条3項)
 ④ 今回は2月から学術会議の選考委員会で選考を進めた。
(法第17条)
 ⑤ 7月9日、臨時総会開催、会員候補者105人が承認された。
(法第17条)
 ⑥ 8月31日、安倍晋三首相(当時)宛てに、会員候補者推薦一覧表を提出
                               (法第17条)
 ⑦ 9月28日夜、日本会議事務局に内閣府から10月1日付承認会員名簿到着
        
(法第7条2項)
 ⑧ 同夜、日本学術会議事務局が閲覧して承認人数が99人で6人不足と知る
 ⑨ 同夜、事務局から内閣府官房人事課に承認不足6人を通知、理由照会
 ⑩ 同夜、内閣官房人事課「人事上の問題で、理由は回答できない」


日本学術会議の推薦する会員候補者105人の一部である6人について、内閣総理大臣が推薦を承諾せず、自動的に任命しなかった。承認の諾否の結果は、即、任命の可否なので、これはワンセットの行為になります。

この問題の前提には、日本学術会議による学術会議会員候補者推薦に対して、「内閣総理大臣には推薦拒否、即、任命拒否できる権限がある」というまちがった認識があります。当事者である日本学術会議も内閣総理大臣も、第三者であるマスコミ報道も、そう思っているのではありませんか。

しかし、私は、内閣総理大臣に「推薦拒否・任命拒否の権限がない」と考えます。関係条文をみてみましょう。


〇日本学術会議法 第7条2項
 会員は、第十七条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する。

〇日本学術会議法 第17条
 日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする。


上の第7条2項の文言は、「任命する」ですこれは、「任命しなくてはならない」という意味です学術会議から会員候補の推薦書を受け取って任命をしないまま放置するという「不作為」もまた違法と言えます

さらに、任命してもよいし、任命しなくてもよい、という意味ならば「任命することができる」という文言になります。

日本学術会議から会員候補者の推薦があれば、内閣総理大臣はその推薦に応じて、任命しなければなりません。また、推薦なしに任命してはいけません。「推薦」と「任命」は一対の行為になっています。


上の承認・任命に関する日本学術会議法における日本学術会議と内閣総理大臣の関係と同様の両者相互関係を示している第25条、第26条の条文を見てみます。この条文は、上の「内閣総理大臣に任命拒否の権限がない」という解釈を補強するものです。


〇日本学術会議法 第25条
 内閣総理大臣は、会員から病気その他やむを得ない事由による辞職の申出があつたときは、日本学術会議の同意を得て、その辞職を承認することができる。

〇日本学術会議法 第26条
 内閣総理大臣は、会員に会員として不適当な行為があるときは、日本学術会議の申出に基づき、当該会員を退職させることができる。


法第25条、法第26条ともに、条文の文末が「~することができる、させることができる」という文言になっていて、法第7条の文末は「~する」です。これは、学術会議法の他の条文が日本学術会議の運営に関わっているのに比して、25条、26条が会員個人の身の処し方に関する規定であるという違いによります。


さて、上の法第25条の規定では、「日本学術会議の同意を得て」が、内閣総理大臣による承認の条件になっています。同意がなければ、承認してはいけない。

同様に、上の法第26条では、「日本学術会議の申出に基づき」が条件になっています。

法第7条、法第25条、法第26条に共通しているのは、内閣総理大臣は日本学術会議の運営について、学術会議という団体の意思を尊重しなければならず、その意思に沿った法的行為をおこなわなければいけないという原則です。この原則はまた、日本学術会議法という法の精神でもあります。

日本学術会議法にこのように共通して流れている法の意図は、日本学術会議が裁判所や検察庁や公正取引委員会に見られるような独立性の高い学術団体として成立した経緯と学術会議法立法時の趣旨とが相応したものと思われます。


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