台湾政権与党の民進党が昨年2022年11月の統一地方選で大敗し、政権の蔡総統は与党の主席(党首)を辞任しました。
1月18日、政権の頼清徳(ライチントー)副総統が与党民進党の主席(党首)に就任し、記者会見を開きました。
頼主席は記者会見で、「中台は互いに隷属しない。台湾の未来は台湾人の考えを尊重して決める」との蔡総統の方針を踏襲すると表明しました。
そして「台湾は実質的に独立した主権国家だ。改めて独立を宣言する必要はない」とも話しました。(※朝日新聞2023.01.18.付による)
台湾史を見ても、東南アジア、元ソ連圏の諸国の独立経緯を見ても、わたしはこれをまことに当然なことばだと思いました。
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台湾にはもちろん、先史時代から人が住んでおりました。
やがて人口も増え、数々の先住民の部族が定住しておりました。
14世紀・15世紀には、高麗や明の沿岸を倭寇が侵掠した記事が多くなります。
そのころから16世紀にかけて倭寇の勢力が強かったようで、
台湾島は倭寇の有力な根拠地になっていました。
倭寇は室町時代の瀬戸内海を根拠地として勢力を広げました。
盛期には朝鮮半島から中国大陸の沿岸地域を掠奪し、
明朝を苦しめるほどの海賊に成長しました。
盛期の倭寇は、和人だけでなく大陸人や半島人も加わった国際派海賊です。
このころまでの台湾と台湾周縁の島々や海は、近現代史で定義されるような独立した国家ではなく、どこかの国や王朝が支配する領土の土地、領海の海でもなかった。明朝中国の台湾支配は歴史上の期間で言えば、「明朝統治」と言えるほどではありません。
とりわけ17世紀の台湾はオランダやスペインの支配下にありました。
歴史上中国領土と言えるのは、清朝の統治期間だけではないでしょうか。
けれども、その統治のありようは近現代の「領有」と異なる性質がありました。
1684年、福建省台湾府が設置されて清国領になりました。
1895年、日清講和条約締結により、日本へ台湾割譲。日本領になりました。
1945年、日本敗戦。
同年9月、連合国軍総司令部が国民党軍(=中華民国政府軍)に台湾占領を命令。
同年10月、中華民国台湾省行政長官公署が執務開始。
1947年4月、台湾省行政府に改組
1949年12月、中華人民共和国成立 中華民国政府は首都を台北に移す
清朝統治下、日本統治下、日本敗戦後の各時期に台湾独立運動がありました。
また、清朝統治末期から日本統治開始期には台湾独立軍も活動していました。
1945年日本敗戦を契機にして、東南アジア諸国は米・仏・蘭の植民地支配を脱して、独立国になりました。
台湾については、1945年10月、日本占領連合軍総司令部が台湾の日本統治後継を中華民国政府に命令しました。1949年12月、共産党政権による中華人民共和国が成立。
共産党軍との内戦に負けて中国本土を追われた中華民国政府が台北を首都にして、台湾を統治しました。
共産党の中国支配に対抗する国際政治の力学によって、
台湾は独立することができなかった。
こうした台湾の歴史に沿って言えば、
「台湾は実質的に独立した主権国家だ。改めて独立を宣言する必要はない」
ということは、まことに当然と思います。
その一方、中国史主流の見方では、
明朝支配以後、台湾は中国領土だと言っています。
けれども、古代から清朝に至るまでの中国史主流の論拠については、下の書に強い異説があります。(※1)(※2)(※3)
(※1)『激動! 台湾の歴史は語りつづける ──ある台湾人の自国の認識』
( 張 徳水 著 雄山閣 1992.6.5.発行)
(※2)著者略歴 1920年生まれ。台南州立台南第二中学校、三高文科甲類を経て、
東京帝国大学法学部政治学科卒業。東石区署区長、嘉義市長など
を務めた。
(※3)大谷房之介氏による推薦のことばから抜き書き
‥‥ 本書は…在台台湾人による「台湾人がたどった茨の道」の実
録である。大方の台湾人の代弁の書でもある。
‥‥ 著者は憶測や偏見を避け、事実のみを克明に記述しようと努
めている。
‥‥ 台湾は一時、清国の領有するところとなったが、大陸から見
て台湾はつねに「化外かがいの地」か、せいぜい「藩籬はんり」(垣
根) であって、一度として大陸一体化したことのないことを論証して
いる。
‥‥ 戦後史について言えば戦後大陸に対して台湾人の意識をかき
たて、その民主化運動の出発点となった「二・二八事件」およびそれ
に続く住民運動の条りは、本書の圧巻である。
‥‥ 「住民自決」は大方の台湾人の念願であり、…「一国二体制」
は中共による台湾併呑である。
‥‥ 最近ソ連解体の流れの中で七十年余にわたってソ連邦に結合さ
れていた同じスラブ民族であるウクライナと白ロシヤが独立を宣言し
ている。そして世界の諸国もそれを当然視している。「住民自決」は
人類の基本的人権であり、誰しもが認める世界の常識である。
‥‥ 台湾の「住民自決」の実現以外に台湾問題解決の道はあるま
い。その日の一日も早からんことを祈るものである。