川本ちょっとメモ

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尖閣流出ビデオ――追いつめた側が「違法」レッテルでさらに追いつめる

2010-11-10 12:28:08 | Weblog


尖閣問題の流出ビデオを見ました。中国船の体当たりと船員検挙時点での緊張、危険の苦労がしのばれます。石垣海保のみなさんに、「ほんとうにご苦労さまでした」と感謝申しあげます。

日中領海紛争海域での活動に、石垣海保の皆さんが、四六時中神経をすり減らしていることがよくわかりました。命をすり減らす思いで海上勤務しているのでしょう。その仕事は、ひとつまちがえば今回のように両国家をまきこむ争いになるのですから。ひとつまちがえば、日中軍艦対決にまでつながりかねないのですから。

東京や福岡の海保上級者や東京の国交省や政府にとっては、尖閣問題は何かことが起きれば神経をすり減らす大問題ですが、そうでない平常時はその緊張を忘れている問題です。それだけに関わっているわけにはいかない立場ですからむりもありません。

より大きな船体の巡視船に体当たりするくらいですから、甲板に立っている船員あるいは漁師たちは平然としているのですから、ビデオを見ていた私は「何か意図ある船か」と思いました。機銃射撃をしたあげくに自爆した北朝鮮の船を思い起こしたのです。

私にしてそうなのですから、事件当事者の巡視船の立場にすれば、船員・船体を拘束する折に死傷の危険性を想定したのではありませんか。中国は北朝鮮とは違う。現場ではそこまでは思わなかったかもしれません。しかし相手が体当たりしてくるほどならばそこまでの危険性を覚悟したはずだ、と安全地帯にいる私は思います。

それほどの緊張と危険に際会する現場海域なのだ。流出ビデオを見てそう知りました。石垣海保のみなさんの苦労の切実さを知りました。骨身を削るという言葉があるけれど、安全地帯の茶の間で見た私でさえ緊張を察して骨身にこたえました。

政府はこの海保現場の苦労を慰労し、同苦しなかったのでしょう。本省の上級責任者か政務三役が石垣海保を慰労し、説明をし、説得をしていたなら、ここまでのことはなかったのではありせんか。

そういうことなしに、ただ、事実関係の緘口令と秘密保持を強くするよう命令が東京からなされたのでしょう。そういうことに対するさまざまな不満が、事実を国民の前に曝すという行為につながったのでしょう。

私の見る目では、海保本庁、国交省本省、国土交通大臣、官房長官、総理大臣などに、「YouTube暴露」の責任がある。しかし、その責任を負うべき当事者たちが、追いつめられて直訴した者の罪を堂々と問う。

追いこんだその組織の強者の側が堂々と、追いこんだその弱者の側をさらに追いつめる。追いこんだ側は「合法的」という法衣をまとい、追いこまれた側は「違法」というレッテルを貼られてさらに追われる。内部告発という封建時代の直訴に似た構図には、正当にむくわれない弱者の抵抗という側面があります。


<追記> 上記を書いたあとに、ビデオ流出が神戸海保職員の確信行為であるというニュースを知りました。このことで、石垣海保のご苦労が全国の海保職員共通のご苦労であったことに気がつきました。

11月11日付け毎日新聞朝刊に、原口一博前総務大臣の次の発言を見つけました。――「…一生懸命取り締まっている人たちがその思いを違法な形でしか出せなかったことに、大変な憤りと申し訳なさを感じる」と職員を擁護した。



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