川本ちょっとメモ

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<資料> 昭47・9・14 参議院決算委員会、憲法と個別的自衛権と集団的自衛権に関する質疑/上

2015-08-20 08:53:31 | Weblog


第069回国会 参議院決算委員会 第5号
昭和四十七年九月十四日(木曜日)
   午後一時一分開会


<資料>「憲法と個別的自衛権と集団的自衛権」
  水口宏三参議院議員による質疑 会議録・上


      
      ※注 これは昭和47年10月14日政府提出資料「集団的自衛
         権と憲法との関係」
を出す前提になった国会質疑の会議録
         です。前記事の安倍政権・自民・公明の「集団的自衛権合
         憲論」トリック(1) 論拠文書の由来を知らせない
と併せ
         てご覧ください。

      ※注 水口宏三参議院議員の「質疑会議録」全文のうち、「憲法
         と個別的自衛権と集団的自衛権」に関わる部分を下に転記
         した。【 】は川本が付した。
 
      ※注 (答弁)国務大臣(増原恵吉君) → 防衛庁長官
             説明員(吉國一郎君)  → 内閣法制局長官
             説明員(久保卓也君)  → 防衛庁防衛局長


【海外派兵】

○水口宏三君 そこで、いま長官は絶対に外征などをすることはないという言明をなさったわけなんでございますけれども、これまで国会論議を通じて、海外派兵の問題がしばしば非常に問題になっております。最近、私が直接質問した中でも、これは江崎防衛庁長官のときに、日本は憲法上海外派兵はできませんということを明言なさっておるわけでございますけれども、これは増原防衛庁長官も海外派兵ができないということは、憲法上できないのだというふうにお考えになっていると考えてよろしゅうございましょうか。

○国務大臣(増原恵吉君) 自衛隊というものは憲法に基づいてできておりまして、自衛、防衛に徹しなければならぬということが憲法上出てくるわけでございます。そういう意味で、憲法上海外派兵はできないというふうに解釈をいたします。

○水口宏三君 それでは、憲法上海外派兵ができないということは、増原防衛庁長官もそう考えているというふうに理解いたします。

 ただし、こまかく言いますと、海外派兵というのは、いろいろな形態があるわけでございますね。たとえば陸上自衛隊が敵前上陸をして、どこかの国へのぼっていって、そこで戦闘行為をした。これは非常にはっきりした海外派兵だと思うんですけれども、それ以外にこれは海上自衛隊、航空自衛隊になってくると、どこまでが、どういう形態が海外派兵であるのか、あるいは防衛庁はどういう形態を海外派兵と考えておいでになるのか、この点もこの前いろいろ論議がありましたけれども、どうも私のいままでずっと国会論議を調べた上では明確でないものがございますね。この点、ひとつ陸海空に分けて、どういう状況、行動を海外派兵というのか、この点ひとつお示しいただきたいと思います。

○国務大臣(増原恵吉君) 一応、私からお答えをして、この点の基本的なあれは法制局長官に答えていただきたいと思います。

 海外派兵というのは、いままで私どもが申し上げておりますのは、客観的に確立された定義というふうにはなかなかなっておらぬかと思いまするけれども、武力行使の目的をもって武装した部隊を海外領域に派遣するということであると思いまするので――これは陸海空とも武装した部隊を海外領域に派遣する、武力行使の目的をもって武装した部隊を海外領域に派遣するということであると解釈をしております。

【公海からミサイル発射は?】

○水口宏三君 そこで、ちょっと問題があるのは、海外領域というのはどういうことなんですか。他国の領海、領空、領土ということでございますか、それとも公海、公空も含むのですか。

○国務大臣(増原恵吉君) 仰せのとおり、他国の領空、領海、領域ということでございます。

○水口宏三君 それでは、公海上で海上自衛隊が武力行動をとること、あるいは公海上から航空自衛隊がミサイルを発射すること、これは含まないわけなんですか。

○国務大臣(増原恵吉君) 何といいますか、公海の上の領空にあらざるところから外国に向かって、たとえばミサイルを発射する、そういうことは、そういう意味でこの公海、その上空に行くということは、ちょっとそういうことは、海外派兵という、いま申したことばでは入りませんが、そういうことをも私どもはやってはならない、やらないというたてまえの中に入っておるというふうに考えます。

○水口宏三君 これからの論議は、もうぜひこれをひとつ前提にしていただきたいのでありますけれども、防衛庁長官は、海外派兵は憲法上できないのだという前提に立って御答弁いただきたいのであります。政策論としてこれが入ってくると、政策論と憲法論がまじりますと非常に――これまでの国会論議が非常に紛糾するのはいつでも憲法論と政策論が混同するところにあると思うんですね。憲法上できない海外派兵というものは、どういうものであるのかということをここではっきりしたい。

○国務大臣(増原恵吉君) その点はひとつ法制局長官にお答えをしてもらいたいと思います。

○説明員(吉國一郎君) 先ほどの水口委員の御質問の中で、公海からミサイルを発射することはどうかと、海外派兵になるかという御趣旨の御質問だったと思いますが、公海から発射いたしまするにしても、あるいはこれを日本の領域から発射するにいたしましても、その行為自体が、憲法第九条が許容しております自衛行動の範囲内になるかどうかということで検討しなければならないと思います。したがいまして、この点は前々から申しておると思いますけれども、そのミサイルの性能いかんでございますとか、そのミサイルが発射されますときの状況とかというものによって判断しなければならないと思います。いずれにいたしましても、ミサイルを発射する行為自体が、自衛行動の範囲内として観念せられるかどうかということによって判断すべきものだと思います。

【日本海海戦・バルチック艦隊迎撃の事例で、自衛権の範囲は?】

○水口宏三君 いや、そこで自衛行動というものをある程度明確にしたいので伺っているわけなんですけれども、それじゃ事例を出しますと、これは明治の例の日露戦争による日本海海戦、これは私ども子供のときには非常によく聞かされたものですね。これはまさにバルチック艦隊がずっと曳行してウラジオストックに入ろうとした途中に、これを日本の連合艦隊が迎撃をして全滅をさせた。これはまさに公海上における戦闘行為でございますね。こういう場合はどうなんですか。これは海外派兵と言えるんでございますか。

○説明員(吉國一郎君) 戦前の、たとえば日露戦争のころにおきまする日本の国権の作用として説明をいたしましたような状況と、最近の憲法第九条の説明として自衛という観念を用いております現在の観念、特に国民一般にございます法意識に基づいて自衛行動を説明いたします場合とは、全く状況が違いますので、一がいには申せませんが、あの当時の状況を考えてみまするに、ロジェストヴェンスキー中将の率いるバルチック艦隊は、いわばリバウの軍港から回航いたしまして、ウラジオに入るという目的で来たものだと思います。ウラジオから先にまたどういう行動に出るか、その当時いろいろ憶測があったと思いますけれども、少なくともああいう状況を考えてみまするに、これをわが国に対する急迫不正の侵害が現に発生したといって自衛行動に移るというには、まだその段階に達していなかったと言うべきではないかと思います。また、その当時の軍事的な状況を私も知悉いたしておりません。まさに子供のころ聞いたような話をもとにして判断いたしますので、その状況判断は的確を欠くかとは思いますけれども、まだ日本に現実に侵略があったという状況では少なくともなかった。したがって、現在の憲法において考えられるような自衛行動に移れるような状況ではなかったということであろうと思います。

○水口宏三君 それは非常に微妙な問題であって、そのときの状況判断をする、これは最高の状況判断はむしろ指揮官である――指揮官と申しますか、総理大臣が行なうべきでございましょうね。だけれども、一々総理大臣に相談していたんじゃ間に合わないような状況もあり得るし、当然これは幕僚監部が判断する場合もございましょう。そういうようなものを含めて公海上の、私は特にこれは海上自衛隊の問題になると思うんでございますよ。公海上における行動というものに、自衛のための行動、つまり憲法の許容する行動というものの限界というものは何らか基準がないんですか。防衛庁はお考えになっていないんですか。

  〔理事世耕政隆君退席、鶴園哲夫君着席〕

○説明員(久保卓也君) 自衛の中でも必要最小限度の自衛が、憲法で許された自衛行動であるというふうに言われておりますけれども、具体的な基準というのはなかなかむずかしいのでありまして、私ども十分に持っておりませんが、おそらくその時点その時点においてデリケートな問題については、政府部内で協議されるであろう。と申しますのは、突発的なことは格別といたしまして、全般的な部隊の行動というものはわれわれの情報あるいは予告、日米安保体制のもとにおいてはそういった行動というものが予見できると思います。

○水口宏三君 だから陸上自衛隊の場合ならこれははっきりしておりますね。海上自衛隊の場合も、お話のように何か状況が起きたら、それを国会の中で審議してもらって内閣総理大臣が判断してなんと言っているうちには、これはもうとっくにそういう状況は変わっちゃうわけなんです、実際の戦闘状況のもとにあっては。そうすれば、あらかじめ、もし憲法上禁止されている海外派兵ということの限界を、何らかの形でつくっておかなければ、現地の司令官こそがいい迷惑――迷惑どころじゃなくて行動がとれないですね。そういうことが何でいままで防衛庁内部で論議されなかったのか。

○説明員(久保卓也君) 戦争というものが起こり得る態様というのは千変万化であります。しかもどういう事態が起こるかということは――具体的な事実ということはなかなか予想しにくいわけであります。たとえば通常の刑法犯において、それが過剰防衛であるかどうかでも、どういった基準があるかということはなかなかむずかしいので、そういったものは判例の積み重ねということで、国内法の場合には一応のめどというものが立ちまするけれども、国際関係で、しかも他国と違いましてわが国独自の憲法というものを持っています以上は、なかなかそういった基準というものはむずかしかろう。したがいまして、おおよそのことはわれわれも見当がつきまするけれども、ボーダーラインになりまするとなかなかわからない。こういった問題は、あるいは具体例を想定しまして政府部内で研究すべき問題であるかと思います。

○水口宏三君 どうも、もう自衛隊ができて十数年になるのに、これから研究するというのでは、私どうも非常に危険だと思うんでありますけれども、たとえば航空自衛隊の場合ですね。これは、かつて高辻法制局長官ですか、座して死を待つような状況の場合には、相手のミサイル基地をたたくことも、これは自衛行動の範囲である。航空自衛隊の場合には、まさにその限界までは憲法上許容される行動として国会ではっきり答弁したわけですね。そういう意味で、どうしても私は、憲法上の問題としてどこまでが許容できるかということは、いまだに研究課題であって、片方でどんどん自衛隊が強化されていくということは、これはもう本末転倒ではないか、これは当然、法制局としても、憲法上の問題である以上、憲法上の限界というものは明確になさる必要があるんじゃないか。

  〔委員長代理鶴園哲夫君退席、委員長着席〕

○説明員(吉國一郎君) 憲法第九条が許容しております自衛行動の範囲というものは、抽象的にはもう十数年来、国会で何べんもお答えをいたしておりますが、その具体的適用が個別の場合にどうであるかということを、あらかじめ確定しておけという御趣旨かと思いますが、事はいろいろ広範にわたりますので、この抽象的な範囲をもって憲法論としてはやむを得ないとしなければならないと思います。特に自衛隊の行動につきましては、自衛隊がいきなり自衛行動をとるわけではございませんで、必ず自衛隊法の定めるところによりまして一定の要件のもとに防衛出動待機命令なり、あるいは防衛出動命令が出るわけでございます。その出るにつきましては、国会においても御審議を願うという手段が用意されておるわけでございまして、その場合に、さらにそういう出動がなされました後において、具体的な自衛のための処置をとるわけでございまして、その場合につきましてはおのずからそのときの状況が――特定の武力集団がどの辺に近づいてどうこうという状況が判定されると思います。それに応じて部隊としては行動が十分にとれるものと思いますので、いまの段階におきましては、やはり憲法論としては抽象的な原理、基準をもって十分足りるものではないかと私どもは考えております。

○水口宏三君 いや私は、憲法論としても、いままで出てきていることばというのは、専守防衛であるとか、不正な侵略が起きた場合、これに対応するのだという程度のことですね。ところが、憲法というのは、もっとそういう意味では、この問題に関しては第九条はかなり厳密な規定をしているわけです。それでさっき伺うと、防衛庁長官は憲法上の問題である。したがって、武力行使を目的にした武装した部隊を海外領域に派遣することを海外派兵と言うと、ただし公海上の行動についてはあいまいなわけですね。特に公海上の行動であいまいなのは海上自衛隊と航空自衛隊。さっき私はバルチック艦隊の例を申し上げたんですが、その艦隊なりその航空部隊がはたして直接日本を攻撃目的として来たのかどうかわからなくても、公海上でそれを迎撃するのか、あるいは日本の領海へ入ったときに、日本の領空へ入ったときに、これを迎撃するのか。これは、つまり私は原則的な問題だと思う。そういう点についてはいかがですか。

○説明員(久保卓也君) バルチック艦隊の場合に、ある地点から他の地点に移動する、その後の行動が明確でないという場合に自衛の範囲にはならない。そういう前提のもとには、そう言い得ようと思いますが、われわれのほうの防衛構想上前提といたしておりますのは、公海上でありましても、その艦隊なら艦隊が日本を目ざして、日本の侵略のために行動を起こしているということが、四囲の状況で明白であるという場合には、領海に入らなくても、公海におきましても攻撃を加えるであろう。それは自衛の範囲に入る、こういう考え方であります。

○水口宏三君 どうもバルチック艦隊ばかり例に出して恐縮でございますけれども、バルチック艦隊が単なる移動であるなんというのは、久保さんらしくない御答弁だと思うんです。あのときには、アジア地域において当時の帝政ロシアは全く艦隊を失ってしまった。同時に、もう使えなくなった。日本を攻撃するためにバルチック艦隊が来たのは、これは明らかなわけです。長途の航路であったから、一応ウラジオストックへ行って補給しようというだけのことであって、これは日本攻撃のために来たということは明瞭でございますね。じゃ、バルチック艦隊を迎撃することも、いまのお話からいえば、当然、自衛行動に入るんじゃないですか。

○説明員(久保卓也君) ウラジオに入った後、日本を攻撃するであろうということが明白な場合に、それが自衛の範囲に入るか入らないか、まさにデリケートな問題でありまして、法制局にお伺いしなければいけないわけでありますが、私どもが想定をしております事態は、公海の上であっても、日本を目ざして進んできておる、そういう事態から防衛構想が実は始まっておる。したがって、バルチック艦隊のような事例はわれわれの防衛構想の中では出ておりません。しかし、現実にそういった事態があった場合に、つまりウラジオに入る――まあウラジオと申してはよくないわけでありますが、特定の港に入ってそれからわが国を攻撃するであろうということが予想されるときに、途中を要して攻撃するのが自衛の範囲であるかどうか非常にむずかしい問題であろうと思います。

○水口宏三君 要するに、この点については、今後、研究課題であるということですか。これはしかし私は、憲法上の問題である以上、これがいつまでも研究の課題として国民に不明のまま自衛隊が強化されるということは、非常に大きな矛盾だと思うんです。早急にこれは研究して、研究結果を法制局とも御相談になり、国会で明確に御答弁いただきたいと思うのでございますが、長官いかがでございましょうか、どのくらいの時日を要しますか。

○国務大臣(増原恵吉君) 一週間ぐらいで協議をしてお答えできるようにいたします。

                  ――この項(下)につづきます――



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