川本ちょっとメモ

★所感は、「手ざわり生活実感的」に目線を低く心がけています。
★自分用メモは、新聞・Webなどのノート書きです。

共同通信速報 黒川弘務前東京高検検事長の処分 法務省は「懲戒相当」と判断 報告受けた官邸が「懲戒にしない」と結論 

2020-05-25 11:33:42 | Weblog
2020-04-23
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2020-06-05



中日新聞 2020.5.23. 22:20
「訓告」、首相と法相で食い違い 黒川氏問題、答弁に「疑義」も

 辞職した東京高検の黒川弘務検事長(63)に対する「訓告」処分を決めた過程について、安倍晋三首相と森雅子法相との間で、説明が大きく食い違っている。森氏は、内閣と法務省が実質的に決めたと説明。これに対し、首相は「検事総長が事情を考慮し、処分を行ったと承知している」と強調した。法務・検察内からは「首相の説明がおかしい」との声が上がっており、「軽い」と批判される訓告を巡り、首相答弁に疑義が出た。

 検事長は、内閣が任命し、天皇が認証する「認証官」だ。任命権者は内閣で、その首長は安倍首相。国家公務員法では、懲戒処分は任命権者が行うと規定しており、過去には内閣が検事総長や検事長を懲戒処分したこともある。

 懲戒処分より軽い訓告は、法務省の内規に基づく。今回の黒川氏の処分は、上司に当たる検事総長が主体なのは事実だ。

  問題は過程にある。森氏は22日午前の記者会見で「法務省内、任命権者である内閣とさまざまな協議を行った」とした上で「最終的に内閣において決定がなされたものを、私が検事総長に『こういった処分が相当であるのではないか』と申し上げ、検事総長から訓告処分にするという知らせを受けた」と語った。


 (川本コメント) 森氏は法務大臣である。大臣が「内閣と協議を行った」ので
  あれば、官房長官と総理大臣は当然、知っているはず。勝手に法律の解釈変
  更だと言い出して閣議決定までして、黒川弘務氏の定年延長をさせたのは安
    倍首相です。黒川処分は政権を揺るがす大事件だから、法務大臣と検事総長
  のやり取りだけですむはずがない。


 つまり、まずは内閣と法務省で調査・検討し、内閣が行う懲戒処分には当たらず、内規の訓告以下であると判断し、検事総長に最終判断を委ねた―という流れだ。

 関係者によると、実際、週刊文春報道が出た当初、法務省内では「退職金が全額出ることになるのは理解が得られない」(幹部)との見方もあり、黒川氏を懲戒処分することも含めて調査が進められたという。

  一方、安倍首相は22日午後、衆院厚生労働委員会で、野党から「(黒川氏に)重い処分が必要では」と追及され、「検事総長が事案の内容など、諸般の事情を考慮し、適切に処分を行ったと承知している」と何度も繰り返した。内閣という言葉は使っておらず、処分の検討過程に関わっていないかのような印象を与える。  (共同)




スポニチ 2020.5.25. 05:30
懲戒相当の判断が…賭け麻雀・黒川前検事長の“激甘”処分
官邸が決めた「訓告」 退職金も満額か


 賭け麻雀で辞職した黒川弘務前東京高検検事長(63)の処分を巡り、事実関係を調査し首相官邸に報告した法務省は、国家公務員法に基づく懲戒が相当と判断していたが、官邸が懲戒にはしないと結論付け法務省の内規に基づく「訓告」となったことが24日、分かった。複数の法務・検察関係者が共同通信の取材に証言した。

 安倍晋三首相は国会で「検事総長が事案の内容など、諸般の事情を考慮し、適切に処分を行ったと承知している」と繰り返すのみだった。訓告処分の主体は検事総長だが、実質的には事前に官邸で決めていたといい、その経緯に言及しない首相の姿勢に批判が高まるのは避けられない。

高検トップの検事長は、内閣が任命し、天皇が認証する「認証官」。任命権者は内閣で、その首長は安倍首相。国家公務員法は、任命権者が懲戒処分をすると規定しており、そもそも検事総長には懲戒の権限はない。

複数の法務・検察関係者によると、調査を始めた法務省は、賭博をした職員は「減給」または「戒告」の懲戒処分とする人事院指針などに照らし、懲戒が相当と判断し内閣として結論を出す必要があると考えていた。

 法務・検察関係者は「当然、懲戒だと思っていたので驚いた」と話した。

 黒川氏は「訓告」にとどまったことで、7000万円ともみられる退職金が満額支給される見通し。“大甘処分”を官邸が主導したことで、毎日新聞の世論調査で支持率が27%にまで急落した安倍政権の、さらなる支持率低下に拍車が掛かるのは必至。「安倍1強」で長期政権を築いてきたが“末期”の足音は着実に近づいている。

黒川前検事長定年延長問題
  政府が1月31日、黒川弘務東京高検検事長の定年を半年間延長する閣議決定。先例はなく、官邸に近いとされる黒川氏を次期検事総長にするための布石だと臆測を呼んだ。その後の国会で政府は「定年延長は検察官に適用されない」とする従来の解釈を変更したと説明。続いて定年延長を認める検察庁法改正案に対し、著名人らがツイッターで相次いで非難し、検察OBらも反対意見を表明。政府与党は改正案の今国会での成立を断念した。




共同通信 2020.5.25. 10:27
黒川氏処分、首相官邸が実質決定
法務省は懲戒と判断、軽い訓告に


 賭けマージャンで辞職した黒川弘務前東京高検検事長(63)の処分を巡り、事実関係を調査し、首相官邸に報告した法務省は、国家公務員法に基づく懲戒が相当と判断していたが、官邸が懲戒にはしないと結論付け、法務省の内規に基づく「訓告」となったことが24日、分かった。複数の法務・検察関係者が共同通信の取材に証言した。

 安倍首相は国会で「検事総長が事案の内容など、諸般の事情を考慮し、適切に処分を行ったと承知している」と繰り返すのみだった。確かに訓告処分の主体は検事総長だが、実質的には事前に官邸で決めていたといい、その経緯に言及しない首相の姿勢に批判が高まるのは必至だ。





共同通信 2020.5.25. 12:27
安倍首相「虚偽答弁」、野党が追及へ 前検事長の訓告処分決定巡り

 立憲民主党など野党4党は25日、国対委員長会談を国会内で開いた。賭けマージャンで辞職した黒川弘務前東京高検検事長への訓告処分を巡り、安倍晋三首相が国会で虚偽の答弁をした疑いが強まったとして徹底追及する方針で一致した。

 法務省は懲戒が相当としたのに、官邸が懲戒にしないと結論付けたとの共同通信の報道を踏まえた。

 菅義偉官房長官は記者会見で、訓告処分を決めた過程に官邸側は関与していないと説明。

 「法務省が検事総長に訓告が相当と考えると伝え、検事総長も訓告が相当であると判断して処分したと承知している。法務省から内閣に報告があり、異論がないと回答した」と語った。




毎日新聞 2020.5.25. 15:40
官房長官記者会見 菅氏、黒川氏の訓告決定は「法務省と検事総長」

25日午前の菅義偉官房長官の記者会見で、東京高検の黒川弘務前検事長の「賭けマージャン」問題について、 質疑があった。 主なやりとりは以下の通り。

 --辞職した東京高検の黒川前検事長の処分に関して「法務省が国家公務員法に基づく懲戒処分が相当と判断したが、官邸が内規に基づく訓告処分を決定した」との報道があったが、事実関係は。

〇官房長官
 黒川氏の処分については、法務省において2020年5月21日、検事総長に対し、訓告が相当と考える旨を伝え、検事総長においても訓告が相当であると判断して処分をした。

 そのように承知しています。なお、同日、法務省から任命権者である内閣に報告があり、法務省としての決定につき異論がない旨、回答したところであります。

  --森雅子法相は「最終的には任命権者である内閣において決定がなされた」と説明している。この説明と食い違うのではないでしょうか。

〇官房長官
 法務省の調査結果や黒川氏の処分内容については、あくまでも法務省、および検事総長において決定したものと承知しています。その後、法務省から総理や私に対して、報告があったものであります。

--そうなると官邸側は全く処分の決定には関与していないということになるのでしょうか。

〇官房長官
 今、申し上げた通りです。




毎日新聞 2020.05.25.18:34 
黒川氏「訓告」追及へ 野党「官邸が判断 濃厚」

 立憲民主、国民民主、共産、社民の野党4党は25日の国対委員長会談で、賭けマージャン問題で辞職した東京高検の黒川弘務前検事長が訓告処分を受けた経緯を追及する方針を決めた。

  政府・与党は「処分の判断主体は法務省」と主張するが、立憲の安住淳国対委員長は記者団に「法務省はもっと重い処分を提起したが、官邸がはねつけた疑いが濃厚だ」と語った。

 森雅子法相は22日の記者会見で、黒川氏の処分について「最終的に内閣で決定された。私が検事総長に『こうした処分が相当』と伝え、総長から訓告処分にする、との知らせを受けた」と説明した。

 一方、安倍晋三首相は衆院厚生労働委員会で「法務省で事実確認などしながら、検事総長が処分した。その報告が法相からなされ、私も了とした」と答弁した。

 野党4党は説明の「食い違い」を問題視。特に森氏の「内閣で決定」発言から、官邸が処分を判断したとの見方を強める。安住氏は会談後、自民党の森山裕国対委員長に対し、首相が出席する衆参両院の予算委員会を週内に開くよう要求した。

  一方、森氏は25日の参院決算委員会で「法務省内で協議を行い、任命権者である内閣とも並行して協議した。検事総長に法務省から『訓告相当だ』と伝え、総長からも『訓告相当だ』と連絡があった」と釈明。自身の「内閣で決定」発言を軌道修正した。

 参院法務委員会の与党理事も「官邸が処分内容を覆した事実はない。森法相の『内閣で決定』発言は、表現の誤りだ」と強調した。【宮原健太】




朝日新聞 2020.5.25. 22:48
賭けマージャン、黒川弘務前検事長を告発 朝日新聞社員ら3人も
告発人弁護士「常習性は明らか、違法性は高い」


 東京高検の黒川弘務・前検事長(63)=22日付で辞職=が新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言中に産経新聞記者や朝日新聞社員と賭けマージャンをしていた問題で、岐阜県の弁護士らが25日、常習賭博の疑いで黒川氏と記者ら計4人に対する告発状を東京地検に郵送した。

  告発内容は、黒川氏ら4人は常習として5月1日と13日、産経記者の自宅で、マージャンをして金銭を賭けていたというもの。1回で現金のやりとりは数千円から2万円程度だったと指摘。4人は3年前から月に数回、同様の賭けマージャンをしていたとした。

 その上で「常習性は明らかで、賭け金も多額だ」と指摘。4人はいずれも「高度の倫理観を維持して、社会に範を示し、法律を遵守(じゅんしゅ)すべき立場にあることからすれば、違法性は極めて高い」と主張している。

 告発した岐阜県弁護士会の美和勇夫弁護士は「賭博の常習性があることは明らかだ」と話している。

  朝日新聞社広報部の話 社員が、定年延長などの問題の渦中にあった前東京高検検事長と賭けマージャンをしていたことは、緊急事態宣言中だったこととあわせ、極めて不適切でした。告発に至ったことを重く受け止め、皆さまの信頼を損ねたことを改めておわびします。すでに役職を外して人事部付としており、処分を含めて適切に対応いたします。




2020.5.26. 05:00
東京高検検事長に林氏 引責辞職の黒川氏後任

 法務省は、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言中に、新聞記者らと賭けマージャンをし、辞職した東京高検の黒川弘務前検事長(63)の後任に、名古屋高検の林真琴検事長(62)を充てる26日付発令の人事を発表した。

  黒川氏と司法修習同期の林氏は、早くから総長レースの本命と目されていた。愛知県出身で、1983年検事任官。法務省勤務が長く、刑事局総務課長や人事課長を歴任。法務省刑事局長を経て2018年1月に名古屋高検検事長に就任した。

  検事総長の稲田伸夫氏は、7月で在任2年。林氏が7月に検事長の定年となる63歳を迎える前にバトンタッチするとの見方が強い。 (共同)


  (川本コメント) 検察首脳の意中では、林真琴氏を法務事務次官、東京高等
    検察庁検事長を歴任させて、稲田伸夫氏次の検事総長に想定していまし
    た。安倍首相はその林真琴氏を排して、黒川弘務氏に法務事務次官、 東
    京高検検事長を歴任させ、次の検事総長に据えようとして、今の混乱を
     招きました。


     林真琴氏の東京高検検事長就任は、次期検事総長含みと思われます。
    黒川弘務氏の訓告処分と林真琴氏の東京高検検事長就任をめぐって、安
    倍首相側と検察首脳側に駆け引きがあったかもしれません。



林真琴氏が次期検事総長に就任するかどうか。まだまだ駆け引きがあるかもしれません。

また、河井前法相夫妻の公職選挙法違反を起訴に持ち込めるかどうか。起訴に持ち込めてもそこで終わるのか。あるいは、けた外れの党支給選挙資金の絡みで安倍首相に迫ることができるのか。

「桜を見る会」告発はこれからどう進むのか。東京地検の取り組みはこれからです。森友公文書変造事件では、あれほどの大規模な公文書変造でも関係者全員不起訴にした検察ですから、心もとない限りです。これを機会に検察再建にかけるよう、検察官一同の奮起を期待します。

森友公文書変造事件に絡む赤木夫人の裁判もこれからです。



<政治とカネ>安倍内閣シリーズ記事 (2016年6月)
<政治とカネ> 安倍内閣 甘利明前大臣の大臣室現金授受事件を忘れない(1)
<政治とカネ> 安倍内閣 甘利前大臣の大臣室現金授受を忘れない(2)
<政治とカネ> 安倍内閣の西川公也元農水大臣 大臣は辞職・議員辞職はなし 痛くもかゆ         くもない面々
<政治とカネ> 安倍内閣の小渕優子元経済産業大臣 大臣辞職したが議員辞職はなし 痛く         もかゆくもない面々
<政治とカネ> 安倍内閣の「政治とカネ」辞職大臣が8名、多過ぎる!
<政治とカネ> 安倍首相 世襲政治資金は相続税免除(合法)、世襲政治団体は認めるべき         じゃない



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コロナ除菌にオゾンガス 世界初 オゾンによる新型コロナウイルス不活化を確認 奈良県立医大実験成果

2020-05-23 23:25:31 | Weblog

奈良県のニュース一題。
コロナ除菌にオゾンガス。
ほぼ十日前の2020.5.14.付で奈良県立医大が記者発表していました。
記者発表PDFが奈良県立医大HPに掲載されています。
以下は発表原文通り


    ------------------------------------------------------------------


                         令和2年5月14日

                   公立大学法人奈良県立医科大学
                   一般社団法人MBTコンソーシアム

報道関係各位


(世界初)
オゾンによる新型コロナウイルス不活化を確認
オゾンによる新型コロナウイルス不活化の条件を明らかにした


概要
 奈良県立医科大学(微生物感染症学 矢野寿一教授、感染症センター 笠原敬センター長)とMBTコンソーシアム(感染症部会会員企業:クオール株式会社、三友商事株式会社、株式会社タムラテコ)の研究グループは世界で初めてオゾンガス曝露による新型コロナウイルスの不活化を確認しました。また、その不活化の条件を実験的に明示することにより、実用性を学問的に示しました。

背景
 診察室や集会場等においては、感染拡大防止のため使用後は手作業によるアルコール拭き等で除菌を行っており、労力と時間がかかっていました。

 この課題を解決する手段の一つとして、オゾンガスによる除菌が提唱されていましたが、その医学的エビデンスはありませんでした。

 この度、奈良県立医科大学を中心とする研究グループはオゾンガス曝露による新型コロナウイルスの不活化実験を行い、オゾンにより、新型コロナウイルスが不活化されること、ならびに、オゾンの濃度と曝露時間の条件とオゾンの不活化の関係について実験的に明らかにしましたので報告します。

実験内容
 新型コロナウイルス細胞株を培養し、安全キャビネット内に設置した耐オゾン気密ボックス(アクリル製)内に、ステンレスプレートを設置し、実験対象の新型コロナウイルスを塗布します。

 耐オゾン気密ボックス(アクリル製)内に設置したオゾナイザー(PMDA認証の医療機器:オゾン発生器)を稼働させて、耐オゾン気密ボックス内のオゾン濃度を1.0~6.0ppmに制御し維持させます。

 オゾンの曝露量はCT値で設定します。(厚労省PMDAによる医療機器認証の実証実験値であるCT値330や、総務省消防局による救急隊オゾン除染運用値であるCT値60を使用。)

 曝露後ウイルスを細胞に接種し、ウイルスが細胞に感染しているかを判定しウイルスの量を算出します。

 この実験は、本学がバイオセーフティーレベル3の実験室を保有し、ウイルスの培養技術を保有しているので可能となりました。

研究成果
1.CT値330(オゾン濃度6ppmで55分曝露)では、
  1/1,000~1/10,000まで不活化。
2.CT値 60(オゾン濃度1ppmで60分曝露)では、
  1/10~1/100まで不活化。

  
        (オゾンによる新型コロナウイルス不活性化実験装置)

まとめ
今回の研究では、オゾンにより最大1/10,000まで不活化することを確認しました。
これは、オゾンの実用的な条件下で、新型コロナウイルスを不活化できることを示しています。


 〇公立大学法人奈良県立医科大学(橿原市)
 〇一般社団法人MBTコンソーシアム(橿原市)
 〇クオール株式会社(東京都港区)
 〇三友商事株式会社(大阪市中央区)
 〇株式会社タムラテコ(東大阪市)

 ◎問い合わせ先
 ≪報道に関すること≫
 奈良県立医科大学研究推進課
 電話:0744-22-3051(内線:2552・2553)



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安倍首相による検察私兵化への道は以後の政権にも恩恵をもたらす 恐怖を感じます

2020-05-22 10:51:47 | Weblog


2020-05-13
2020-05-15
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2020-05-17
2020-05-20
2020-05-22
2020-05-25
2020-06-05


<お知らせ> 黒川弘務氏賭け麻雀に絡む法務省「訓告」処分の毎日新聞取材記事をこのブログ記事の末尾に転載しました。


このたびの東京高検検事長「特例勤務(定年)延長」は法的根拠に欠ける安倍内閣の私的行為と言えます。それは、検察を安倍政権の私兵にする道筋をつけるものです。

そして、「高位検察官特例勤務(定年)延長」の法制化は、以後のどの政権であっても、検察を私兵にできる制度であります。

この安倍首相の試みを、以後のどの政権に対しても検察私兵化への道を切り開くものとして、今も恐怖と言ってよいほどの恐れを抱いています。

安倍首相による検察私兵化への道は、
次代以後のどの政権にも恩恵をもたらします。
日本を含む世界の近現代史にあった「もの言えば唇寒し」への道です。
想像するだけで恐ろしい。

私はこの検察私兵化への動きにまだまだこだわり続けます。
今の政界には安倍首相と同じ思いの「安倍族」がうようよいますから。


   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇


安倍晋三首相による検察潰しが急転回しました。

黒川弘務氏の検察庁勤務経歴と任官年次を見れば、検事総長に成る資格があった。しかし、検察首脳は黒川弘務氏の政治性、すなわち安倍政権との癒着体質を危惧していました。

わかってみると、黒川弘務氏は法務省官房長時代から、政権と検察の調整能力を評価されていました。しかし、黒川官房長の調整能力とは安倍政権の歓心を買うことでもありました。

検察首脳人事は内閣の承認があってはじめて確定する。このため、検察庁は安倍政権の圧力に押されつづけたと見られます。政権の意向を伝えるのは法務省官房長の仕事です。政権の意向もあって黒川弘務氏が長く官房長を務めていました。

この経過から、検察首脳は林真琴名古屋高等検察庁検事長を稲田伸夫検事総長の次の検事総長に想定しています。

安倍首相はこれが気に入らない。黒川弘務氏を検事総長にするために、検察官について前代未聞の特例定年延長を強行しました。

そのうえ、特例定年延長の法的根拠がないことを国会質疑で問い詰められていくと、安倍首相は、検察庁法に法務大臣(=総理大臣)の主観(えり好み)で特定の検察官を指定できる特例定年延長の条項を差し入れる暴挙に出ました。

なぜ、そこまで強行するのでしょうか。

広島地検で河井案里・河井克行前法相の公職選挙法違反問題が立件の方向に進められています。これには検察庁が全力を傾けています。これが安倍首相本人に関わってくる可能性があります。

もう一つ桜を見る会です。これは安倍首相の政治資金規正法違反問題です。国会では野党からくり返し詳細を追及され、同じ内容でまったく新味のない答弁をくり返し、くり返しくり返し行っています。

この問題で国会の安倍首相は、「苦しい逃げ」に追い詰められています

検察庁が真剣に立件に取り組むならば、安倍晋三は政治資金規正法に抵触する恐れがあります。

安倍首相はこの二つを恐れているのではないか。黒川弘務氏が検事総長になれば、安倍首相は枕を高くして眠れるのです。権力政治を続けられます。

検察庁にとって当面は、黒川弘務氏の後任を誰にするのか、が焦点になります。「桜を見る会」の舞台は東京です。

5月21日、全国の弁護士や法学者662人が「桜を見る会」をめぐって、安倍首相を告発しました

当面、検察首脳人事に注目です。安倍首相は執拗です。

森雅子法相がぶら下がり会見で、黒川検事長の賭け麻雀辞職願を理由に「稲田検事総長はその責任を取って辞職するべき」と発言したニュースを見ました。

田崎史郎氏がテレビで、週刊文春の「黒川賭け麻雀」報道への感想を聞かれて、「稲田さんが検事総長を辞めないんですよ。いつまでも辞めないと後が詰まるんですよ。辞めないからこうなるんですよ」と発言しているのを見ました。

黒川検事長に執心した安倍政権。違法の閣議決定をした安倍内閣の大臣たち。それらの責任を追及するのでなくて、稲田検事総長を攻撃している。ひどい話です。

それだけに、今は検察を応援するべき時だ。

検察がすべて良いわけではない。安倍政権の強圧に妥協し続けてきた。いくつもの政治家の犯罪を見て見ぬふりをしてきた。 
※このブログ記事末尾の<政治とカネ>シリーズをクリックしてご覧ください。

そういうことがあるけれども、東京高等検察庁の後任人事とそれに連動する検察首脳人事や次期検事総長を誰にするかを固めることが先決です。稲田検事総長の辞職は検察再生に任じる後任検事総長人事が固められた後にすることだろうとおもいます。

加えて、広島の河井克行前法相・河井案理参議院議員の起訴、「桜を見る会」告発の捜査進展の道筋をつけることなく、稲田検事総長が辞職することがあれば、安倍政権の攻勢に対する検察の敗北です。

安倍政権は検察庁に人事攻勢をかけるでしょう。
検察首脳は検察人事の推薦はできる。
しかし、安倍首相はそれを拒否できる。
安倍首相が承認しなければ、検察の新任人事が成立しない。
高等検察庁検事長と検事総長は、天皇の認証官なんです。

検察首脳が検察再生に向けた人事を貫くには、安倍の壁が立ちはだかる。

検察はどうあるべきか。国民の信頼回復を得るためにも、広島地検は河井前法相・河合案里夫妻の起訴に向けて進まねばならない。「桜を見る会」に対する告発を受けて、政治資金規正法違反の立件に向けて前進しなければならない。

検察にもまだまだ不満はある。
しかし今は検察批判でなく、検察応援をしよう。

私は安倍首相が始めた検察私兵化への動きにまだまだこだわり続けます。
今の政界には安倍首相と同じ思いの「安倍族」がうようよいますから。



(2020.5.23.04:12追記)
黒川弘務氏の賭け麻雀処分について、「訓告」は軽すぎると誰もが思うところです。毎日新聞の解説記事を転載します。


 黒川弘務氏賭け麻雀 「訓告」処分 軽すぎると批判 事件化にはハードル
     
毎日新聞 2020年5月22日 21時53分(最終更新 5月23日 00時28分)

 法務・検察は黒川氏を懲戒処分にせず、監督上の措置である検事総長による「訓告」にとどめた。人事院は懲戒処分の指針で、賭博をした職員は「減給」または「戒告」、常習として賭博をした場合には「停職」にすると定めており、野党などから「処分が軽過ぎる」との批判も出ている。

 5月22日の衆院法務委員会で、懲戒処分としなかった理由を問われた法務省の川原隆司刑事局長は「賭けマージャンは許されるものではない」と断りつつ、黒川氏らのマージャンのレートは1000点が100円の「点ピン」だったと明らかにし、「社会の実情を見ると、必ずしも高額とは言えない」と述べた。

 黒川氏が記者のハイヤーに同乗して帰宅したことも認めたが、「黒川氏のために手配されたハイヤーではなく、社会通念の程度を超えた利益供与があったとは認められない」と述べ、処分対象に含めなかったとした。いずれも無所属の山尾志桜里氏の質問に答えた。

 ただ、賭けマージャンは賭博罪に問われかねない違法行為だ。刑法は賭博罪の法定刑を50万円以下の罰金または科料と定め、常習であれば3年以下の懲役が科される常習賭博罪に問われる。交番勤務中に賭けマージャンをした愛知県警の警察官2人を、名古屋簡裁が2013年に罰金10万円の略式命令とした例もある。

 この日の国会質疑では野党から「処分が国民感情で適切とは思えない」との批判も出た。ある法務省OBも「黒川氏の立場や(コロナ禍の)社会状況を考えれば懲戒処分にすべきだった」と指摘する。

 処分の重さとは別に、事件化には専門家は否定的だ。

 警察関係者によると、立件の要否を判断する上で「点ピン」は必ずしも高いレートとは言えず、常習性の認定は前歴の有無も目安になるという。

 ある刑事裁判官は「賭けた額は桁外れに高くなく、突出した常習でもない。違法であり、厳しい非難は免れないが、割と多くの人がやっているレベル。告発が出ても起訴は難しいだろう」と指摘する。



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2020.1.31.閣議決定は違法 黒川弘務氏の東京高等検察庁退去を求める

2020-05-20 23:23:46 | Weblog


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黒川弘務東京高等検察庁検事長に対する兼務(定年)延長を決めた2020.1.31.閣議決定が、政府の勝手な国家公務員法解釈を根拠とし、しかも口頭決裁に基づくということが周知のこととなりました。

閣議決定の法根拠となる国家公務員法の解釈変更が違法であり、その法解釈変更の手続きが違法であるとする見解はどう考えても正しい。説得力に富む。

政府の国家公務員法解釈変更を指摘する根拠は幾つも出そろっているのですが、「検察庁法が国家公務員法に対する優先法である」という指摘一つで、政府の法解釈変更の論理は崩壊です。

さらに、政府の法解釈変更が、諸般の事情にかんがみ解釈変更をすることにした、という総理大臣の一言で片づけられ、法務大臣の口頭決裁で済ませられるという信じられない経過です。

2020.1.31.閣議決定は違法です。 検察庁法第22条に従えば、黒川弘務氏は
2020年2月8日午前0時に、定年です。黒川弘務氏の東京高等検察庁退去を求めようではありませんか。

今回は、奈良弁護士会の会長声明を掲載します。
この会長声明文も理路整然としたものです。

文中の番号は、原文にもともと付せられたものです。
◇小見出し、はこのブログで付したもので、原文にはありません。




 検察庁法改正法案に反対する会長声明 (奈良弁護士会)
                                                  http://www.naben.or.jp/news/seimei/6174/ 

                           2020/03/23

                         奈良弁護士会 
                         会長 石黒 良彦


【1】
検察官の勤務(定年)延長決定は1947年検察庁法制定以降初めて
 政府は、本年1月31日の閣議において、検察官を国家公務員法(以下「国公法」という。)第81条の3の勤務(定年)延長制度の適用対象から外すとしてきた従来の解釈を変更し、定年により退官予定であった東京高等検察庁検事長の勤務を6か月延長する決定を行った。

 検察官の勤務が延長されたのは、1947(昭和22)年に検察庁法が制定されて以降初めてのことである。

【2】
◇検察官の勤務延長(定年)制度は検察庁法制定時に廃止された
 戦前には司法大臣の権限で検察官の勤務(定年)を延長する制度があったが(旧裁判所構成法第80条の2)、戦後、検察庁法が制定されるにあたり廃止された(検察庁法第22条)。

◇検察庁法制定時に検察官の勤務延長(定年)制度を廃止した理由
 わが国では、原則として検察官が起訴権限を独占している。起訴の対象は、政界にも及ぶ。また、検察庁は行政機関であるとともに、広義の司法の一部でもある(憲法第77条2項参照)。それゆえ、検察官の起訴権限が人事の面から歪められることを防ぎ、検察官の独立性・公平性を担保するために、その勤務(定年)延長の制度を廃したことには、合理性があったと言うべきである。

【3】
◇国家公務員法の定年制度導入は1981年(昭和56年)
 これに対し、一般の国家公務員について定年制が法定されたのは昭和56年である(国公法第81条の2)。その際、任命権者による定年延長の制度(国公法第81条の3)も導入された。

◇国家公務員法の定年制度導入時に「検察官に適用しない」国会答弁
 この法改正の際、既に定年制度が存在する検察官に対しては、(定年延長制度と他の制度を区別することなく)新たに導入される国公法の定年制度は適用されないとの国会答弁がなされていた。それゆえ、従前、国公法第81条の3の勤務(定年)延長制度は検察官には適用されてこなかった。

◇検察庁法は国家公務員法に優先する(検察庁法第32条の2)
 また、検察庁法第32条の2は、検察官の定年について定めた検察庁法第22条が、国家公務員法付則第13条の規定により同法の特例であることを明記している。

【4】
◇上記1~3の経緯により、黒川検事長勤務(定年)延長のための政府解釈変更は法治主義に反する
 今回、政府が主張する解釈変更は、検察官の退職に関して国公法の特例となっているのは検察庁法第22条に規定がある定年年齢と退職時期のみで、同条に定年延長に関する規定がないことは特例にあたらず、国公法の規定により勤務(定年)延長が可能となるというものである。

 しかし、上記のように戦後、検察官の勤務(定年)延長の制度が廃止され、それが維持されてきた経緯に照らせば、今回の政府見解は法解釈の限界を超え、法治主義の原則に反するといわざるを得ない。

◇検察官の権限行使が政治的思惑に不当にゆがめられてはならない
 すなわち、わが国では、検察官が起訴権限を独占しており、この起訴の判断のために捜査権限を行使している。検察官は、ときには権力を有する者に対してもこれらの権限を行使することになるが、その権限行使が政治的思惑から不当にゆがめられ、独立性・公平性を欠くことがあってはならない。

 それを法的に担保するため、法務大臣は、個々の事件の取調又は処分について個々の検察官を直接指揮命令することはできないものとされている(検察庁法第14条)。

◇法務大臣の指揮権発動権限
 唯一の例外として、具体的事案における検事総長を通じての指揮が認められているが(同条)、その場合も、法務大臣が指揮をした事実及び責任の所在が明確になるため、戦後、この指揮権が発動されたのはわずか1例にとどまる。

◇政府意中の検察官についてのみ勤務(定年)延長を認めることは検事総長選任人事への実質的介入である
 然るに、政府が意中の検察官についてのみ勤務(定年)延長を認め、その結果として検事総長選任人事に実質的に介入できることになれば、政府は、個別事件についての指揮権を発動せずとも、捜査・起訴権限の行使に影響を及ぼすことが容易になるため、検察官の独立性・公平性・政治的中立性を著しく損なうことになる。

【5】
◇今回の法解釈変更は口頭決裁によって行われた――公文書法違反
 また、法務省は、今回の法解釈変更に関する人事院との協議文書について、正式な決裁手続きを取らず、「口頭決裁」だったことを明らかにしている。

 しかし、国の諸活動を国民に説明する責務を全うするために、必要な事項については文書を作成しなければならず(公文書管理法第4条)、最終的には意思決定の権限を有する者が文書に署名、押印して、その内容を当該行政機関の意思として決定しなければならない(文書主義の原則、行政文書の管理に関するガイドライン参照)。

 今回の解釈変更の対象となった決裁は、法律の解釈の基準の設定に関する決裁に該当し、文書で残すことが前提とされているのであり(上記ガイドライン別表第1、1(7)②参照)、法務省の見解は、文書主義の原則に反するものとして、到底看過できない。

【6】
◇上記の解釈変更に対する批判を受けた末の検察庁法改正案国会提出
 上記の解釈変更に対する批判を受け、政府は、国会に検察庁法改正案を提出するに至った。しかし、その内容は、検事長ら役職者の勤務(定年)延長を内閣の判断に委ねるというもので、政府が堂々と検察官幹部人事に介入することを認める内容となっている。検察官の独立性・公平性・政治的中立性の維持の観点から、到底容認しえない。

【7】
◇黒川検事長の勤務(定年)延長に強く抗議、検察庁法改正案に反対
 よって、当会は、司法制度の一翼を担う団体として、東京高等検察庁検事長の勤務(定年)延長に強く抗議するとともに、検察庁法改正案に反対するものである。



<政治とカネ>安倍内閣シリーズ記事 (2016年6月)
<政治とカネ> 安倍内閣 甘利明前大臣の大臣室現金授受事件を忘れない(1)
<政治とカネ> 安倍内閣 甘利前大臣の大臣室現金授受を忘れない(2)
<政治とカネ> 安倍内閣の西川公也元農水大臣 大臣は辞職・議員辞職はなし 痛くもかゆ         くもない面々
<政治とカネ> 安倍内閣の小渕優子元経済産業大臣 大臣辞職したが議員辞職はなし 痛く         もかゆくもない面々
<政治とカネ> 安倍内閣の「政治とカネ」辞職大臣が8名、多過ぎる!
<政治とカネ> 安倍首相 世襲政治資金は相続税免除(合法)、世襲政治団体は認めるべき         じゃない


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黒川弘務検事長定年延長「閣議決定」は違法 仙台弁護士会会長声明から逐条解説 弁護士議員は違法政治に抗議するべし  

2020-05-17 23:29:41 | Weblog

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仙台弁護士会の「東京高検黒川弘務検事長の定年延長を行った閣議決定を直ちに撤回することを求める会長声明」 2020.3.12. をもとに、1月31日閣議決定が違法である根拠を箇条書きに書き直してみます。このほうがわかりやすいので。


(1) 検察庁法 第22条 検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他
   の検察官は年齢が63年に達した時に退官する。


(2) 黒川弘務東京高等検察庁検事長は上記(1)の検察庁法22条の「その
   他の検察官」にあたる。

(3) 黒川弘務氏は1957年2月8日生まれ。 検察庁法22条の「年齢63年に達
   した時」とは、厳密には、2020年2月8日午前0時。一般にはその前日
 (2月7日)に退職する。本来なら、本年2020年2月7日に定年退職し
  ていたはずである。

(4) これに対して安倍内閣は、本年2020年1月31日の閣議で、黒川弘務
   東京高検検事長の半年間の定年延長を決定した。黒川弘務検事長の定年
  退職は本年2020年8月7日まで延びた。

 (5) この「定年延長」閣議決定の根拠法令は、国家公務員法第83条の2
   第1項、条文は次の通り。

(6) (定年による退職の特例 ) 
     国家公務員法第81条の3第1項
      任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべ
    きこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又はその職員の
    職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著し
    い支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、同項の規定に
    かかわらず、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して一年を超
    えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引
    き続いて勤務させることができる。 

(7)  検察官も国家公務員であるが、1月31日閣議決定は合法なのか?
    検察庁法の検察官の身分処遇に関する条項を飛び越えて、国家公務
    員法を適用するのは、違法ではないのか?
  
(8)  検察庁法第32条の2の条文が、国家公務員の一般法である国家公 
    務員法附則第13条を取り上げている。ここで、検察官の身分、職務が
    司法に関係して特殊性を有することから、検察庁法は国家公務員法
    に対する特別法であると定めている。

(9) 検察庁法 第32条の2、条文は下記(9-1)の通り。
       国家公務員法 附則第13条、条文は下記(9-2)の通り。

(9-1) 検察庁法 第32条の2 この法律第15条、第18条乃至第20条及び第
    22条乃至第25条の規定は、国家公務員法(昭和22年法律第120号)
    附則第13条の規定により、検察官の職務と責任の特殊性に基いて、同
    法の特例を定めたものとする。

(9-2)  国家公務員法 附則第13条 一般職に属する職員に関し、その職務
    と責任の特殊性に基いて、この法律の特例を要する場合においては、
    別に法律又は人事院規則(人事院の所掌する事項以外の事項につい
    ては、政令)を以て、これを規定することができる。但し、その特例
    は、この法律第1条の精神に反するものであつてはならない。 

(10) 上記(8)で結論している、検察庁法が国家公務員法に対する特別
    法であるとは、検察官に対する法適用において、検察庁法が国家公務
    員法に優先する、ということである。

     従って、検察庁法を超えて国家公務員法を適用した1月31日閣議
    決定は違法である。

(11) 検察庁法では第22条で定年を定めているが、検察庁法に定年を延
    長する条項が無い。

(12) 黒川弘務東京高検検事長の定年延長閣議決定を合法と肯定する者
    は、検察庁法に定年延長の条項が無いのは、検察庁法の欠陥である―
    ―という前提に立っている。

(13) 検察官も国家公務員に違いはなく、検察庁法の欠陥を補うために
    家公務員法第81条の3第1項を援用するのはあたりまえだろうという
    理屈である。

(14) 上記(12)(13)の考えは素朴に過ぎる。短絡に過ぎる。
      検察は国家そのものに害を成すと判断した公安事案には、政権と一
    体になって国家権力の強烈な性格を見せる。

     しかしそれよりも、国民が検察に大きな期待をかけている第一は、
    公正でない政治家を退治すること。検察の使命もそこにあり、検察も
    国民の期待に応えたいと意識している

     だから、検察官は、間断なく政治権力の圧力や干渉にさらされてき
    た。検察官といえども政治権力の圧力には弱い。

     このゆえに政治的中立という思想が検察庁法の立法思想にこめられ
    ている。検察庁法に「定年延長」条項が無い理由は、「検察の政治的
    中立」を守るためという積極的な理由があった。

(15) 仮に、どうしても検察庁法の欠陥であると考えるとするならば、国
    家公務員法附則第13条の規定と検察庁法第32条の規定を改変しなけれ
    ばならない。さらに、検察庁法第22条も改変するか、新しい条文を追
    加するという法改変が必要になる。

(16) 仙台弁護士会会長声明は、国家公務員法第81条の3第1項 [上記 
    (6)参照] の援用を根拠にした1月31日閣議決定は、検察庁法第 
      22条 [上記(1)参照] に違反し、違法である、としています。  

(17) 最後になりますが、閣議決定の法令根拠をそのまま認めるとして
    も、という条件で会長声明が考察しています。

(18) 閣議決定根拠の国家公務員法第81条の3第1項は、任命権者が特定
    職員の定年延長を決めるためには、「その職員の職務の特殊性又はそ
    の職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の
    運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるとき」と規
    定している。

(19) 「その退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十
    分な理由」とは、人事院規則11-8第7条が列挙している。

(20) 人事院規則一一―八(職員の定年) 人事院は、国家公務員法(昭
    和二十二年法律第百二十号)に基づき、職員の定年に関し次の人事院
    規則を制定する。

   第七条 勤務延長は、職員が定年退職をすべきこととなる場合におい
    て、次の各号の一に該当するときに行うことができる。
     職務が高度の専門的な知識、熟達した技能又は豊富な経験を必要
     とするものであるため、後任を容易に得ることができないとき。
     勤務環境その他の勤務条件に特殊性があるため、その職員の退職
     により生ずる欠員を容易に補充することができず、業務の遂行に重
     大な障害が生ずるとき。
     業務の性質上、その職員の退職による担当者の交替が当該業務の
     継続的遂行に重大な障害を生ずるとき。

(21) 黒川検事長については、上記(20)記載の人事院規則第七条に列
    挙する事由のいずれに該当するかについて合理的な説明がなされて
    いない。従ってこの点でも容認できない。国家公務員法および人事院
    規則に違反している。(会長声明)


   *次下に仙台弁護士会会長声明の全文を弁護士会ホームページから転載します。

   -------------------------------------------------------------------------


2020年03月12日
東京高検黒川弘務検事長の定年延長を行った閣議決定を
直ちに撤回することを求める会長声明
仙台弁護士会



検察庁法22条は、「検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63年に達した時に退官する」と定める。東京高等検察庁の黒川弘務検事長は「その他の検察官」にあたり、本年2月7日に退官する予定であった。ところが、安倍内閣は、本年1月31日の閣議で、国家公務員法81条の3第1項の規定を根拠に黒川検事長の定年延長を決定した。

国家公務員法81条の3第1項は、任命権者は、定年に達した職員が退職すべきこととなる場合において、「その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは」、定年退職予定日の翌日から起算して1年を超えない範囲内で、その職員の定年を延長することができるとしている。

しかしながら、検察官も国家公務員ではあるが、国家公務員の身分や職務に関する一般法である国家公務員法とは別に、検察庁法が特別法として、検察官の定年を定めているのであるから(検察庁法32条の2)、国家公務員法81条の3第1項が検察官に適用される余地はないというべきである。


しかも、国家公務員法81条の3が新設された1981年当時の国会審議では、人事院が検察官にはこの規定は適用されないという考え方を示したことを踏まえて同規定を含む法案が可決成立しており、立法者意思は明確に示されていた。


条文構造から見ても、国家公務員法81条の3第1項は、「前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において」とし、同法81条の2(定年による退職)を前提にした勤務延長を規定するが、検察官には同法81条の2の適用はない以上、同条を前提とする国家公務員法81条の3の適用も当然にない。


安倍首相は、本年2月13日の衆院本会議で、上記政府見解の存在を認めた上で、安倍内閣として閣議決定で解釈を変更したことを明言した。


しかしながら、上記のとおり、国家公務員法81条の3は検察官には適用がないことを前提に国会で審議され制定されたものである。


それをときの内閣の都合で国会の審議も経ずに変更することは、国会の立法権を軽視するものであり、三権分立の趣旨に反する。


そもそも、検察庁は「検察の理念」として「厳正公平、不偏不党を旨として、公正誠実に職務を行う」ことを掲げている。


刑事司法の一翼を担い、強大な捜査・訴追権限を有している検察官の人事のルールは、国政上の最重要事項の一つであり、全国民を代表する国会の審議・決定をも経ずして、単なる閣議決定で決められるべき事柄ではない。


ときの政権の都合で、こうした重大事項についても、立法者意思を無視し、従来の法解釈を恣意的に変更してかまわないということでは、法治主義の否定にほかならない。


したがって、黒川検事長の定年延長を認めた閣議決定は、検察庁法22条に違反し、違法である。


なお、念のため付言すると、仮に閣議決定により解釈変更をして検察官にも国家公務員法を適用して定年を延長できると考えたとしても、それが可能な場合は現行法上、きわめて限定されている。


国家公務員法81条の3第1項によれば、定年延長には「その退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由」が必要である。


そうした理由が認められる場合を人事院は、その規則で限定列挙している(人事院規則11-8第7条)が、 黒川検事長については、同条の列挙する事由のいずれに該当するかについて合理的な説明がなされていない。


したがって、黒川検事長の定年延長を認めた閣議決定は、国家公務員法および人事院規則に違反している疑いが極めて強い。


任命権者の恣意的判断でこれらに反する定年延長が許されるとなれば、内閣から独立した立場から国家公務員の政治的中立性と計画的人事を支える人事院の機能が没却されかねない。


 今回の定年延長は、明らかに違法であり、検察の政治的中立性を損ないかねず、国民の検察に対する信頼をも失わせるおそれが大きい。


 よって、当会は、政府に対し、黒川検事長の定年延長を行った閣議決定を直ちに撤回することを求める。


2020年(令和2年)3月12日


仙 台 弁 護 士 会
会 長 鎌 田 健 司



<政治とカネ>安倍内閣シリーズ記事 (2016年6月)
<政治とカネ> 安倍内閣 甘利明前大臣の大臣室現金授受事件を忘れない(1)
<政治とカネ> 安倍内閣 甘利前大臣の大臣室現金授受を忘れない(2)
<政治とカネ> 安倍内閣の西川公也元農水大臣 大臣は辞職・議員辞職はなし 痛くもかゆ         くもない面々
<政治とカネ> 安倍内閣の小渕優子元経済産業大臣 大臣辞職したが議員辞職はなし 痛く         もかゆくもない面々
<政治とカネ> 安倍内閣の「政治とカネ」辞職大臣が8名、多過ぎる!
<政治とカネ> 安倍首相 世襲政治資金は相続税免除(合法)、世襲政治団体は認めるべき         じゃない


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日弁連会長声明 2020.4.6.黒川検事長の勤務延長撤回を求める 2020.5.11.検察庁法一部改正に反対する

2020-05-16 21:23:25 | Weblog

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上の5/13付当ブログの<検察潰しのための検察庁法バトル> では、昨年末から今年3月ぐらいまでの期間における安倍人事攻勢に対する検察防衛の流れを少し書きました。

上の5/15付当ブログは、東京地検特捜検事時代に田中角栄ロッキード事件立件に働いた元検事総長ら検察OB連名による『東京高検検事長の定年延長についての元検察官有志による意見書』全文掲載したものです。

政界浄化の権限が検察にゆだねられています。その検察組織を政治権力者の下請け組織に堕落せしめるのが、検察官人事支配の下心ありありの「検察官定年延長法案」です。

安倍首相は「法治尊重」というあたりまえの政治姿勢を持ち合わせていません。安倍首相は、自分の意を尊重して働く有能な配下を使って政治をします。「法治」を用いず「人治」を使う、と言っていい。

これまでの安倍首相の手法を見れば、特定のごく少数の官僚を重用し、意識的にえこひいきをして官僚群を分断、相互に疑心暗鬼にさせるというやり方で官僚を操っています。

安倍首相は有能な配下を使って自分が望む成果を追います。有能な配下が失敗して、その責めを追及されても、自分が好むところの気持ちを表現して具体的な指示をしていないか、あるいは文書やメモ、連絡メールなどは短時間破棄抹消を原則にして証拠が残らないようにして、安倍首相自身が罪に問われないようにしています。森友・加計を追いかけている間に、私はそう見るようになりました。

憲法9条解釈変更のときと同様に、今回も日本弁護士連合会会長声明をここに転載しておきます。これにはこのブログの覚書という意味があります。まさに、ちょっとメモで、後に参照閲覧して調べるときの便宜に備えています。


    ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇


2020.4.6.
検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求め、
国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明



政府は、本年1月31日の閣議において、2月7日付けで定年退官する予定だった東京高等検察庁検事長について、国家公務員法(以下「国公法」という。)第81条の3第1項を根拠に、その勤務を6か月(8月7日まで)延長する決定を行った(以下「本件勤務延長」という。)。 

 (注)  国家公務員法 (定年による退職の特例)  
    第81条の3第1項 任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により
    退職すべきこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又はその職員の
    職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が
    生ずると認められる十分な理由があるときは、同項の規定にかかわらず、その
    職員に係る定年退職日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、
    その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる。 

しかし、検察官の定年退官は、検察庁法第22条に規定され、同法第32条の2において、国公法附則第13条の規定により、検察官の職務と責任の特殊性に基づいて、同法の特例を定めたものとされており、これまで、国公法第81条の3第1項は、検察官には適用されていない。

(注)検察庁法 第22条 検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官
         は年齢が63年に達した時に退官する。 

   検察庁法 第32条の2 この法律第15条、第18条乃至第20条及び第22条乃至
           第25条の規定は国家公務員法(昭和22年法律第120号)附則
           第13条の規定により、 検察官の職務と責任の特殊性に基いて、
           同法の特例を定めたものとする。

   国家公務員法 附則第13条 一般職に属する職員に関し、その職務と責任の特殊
           性に基いて、この法律の特例を要する場合においては、別に法
           律又は人事院規則(人事院の所掌する事項以外の事項について
           は、政令)を以て、これを規定することができる。 但し、その
           特例は、この法律第一条の精神に反するものであつてはならな
           い。 
   国家公務員法 第1条 この法律は、国家公務員たる職員について適用すべき各般 
           の根本基準(職員の福祉及び利益を保護するための適切な措置を
           含む。)を確立し、職員がその職務の遂行に当り、最大の能率を
           発揮し得るように、民主的な方法で、選択され、且つ、指導さる
           べきことを定め、以て国民に対し、公務の民主的且つ能率的な運
           営を保障することを目的とする。
          〇2 この法律は、もつぱら日本国憲法第七十三条にいう官吏に関
           する事務を掌理する基準を定めるものである。
          〇3 何人も、故意に、この法律又はこの法律に基づく命令に違反
           し、又は違反を企て若しくは共謀してはならない。又、何人も、
           故意に、この法律又はこの法律に基づく命令の施行に関し、虚偽
           行為をなし、若しくはなそうと企て、又はその施行を妨げてはな
           らない。
          〇4 この法律のある規定が、効力を失い、又はその適用が無効と
           されても、この法律の他の規定又は他の関係における適用は、そ
           の影響を受けることがない。
          〇5 この法律の規定が、従前の法律又はこれに基く法令と矛盾し
           又はてい触する場合には、この法律の規定が、優先する。

これは、検察官が、強大な捜査権を有し、起訴権限を独占する立場にあって、準司法的作用を有しており、犯罪の嫌疑があれば政治家をも捜査の対象とするため、政治的に中立公正でなければならず、検察官の人事に政治の恣意的な介入を排除し、検察官の独立性を確保するためのものであって、憲法の基本原理である権力分立に基礎を置くものである。

したがって、国公法の解釈変更による本件勤務延長は、解釈の範囲を逸脱するものであって、検察庁法第22条及び第32条の2に違反し、法の支配と権力分立を揺るがすものと言わざるを得ない。

さらに政府は、本年3月13日、検察庁法改正法案を含む国公法等の一部を改正する法律案を通常国会に提出した。この改正案は、全ての検察官の定年を現行の63歳から65歳に段階的に引き上げた上で、63歳の段階でいわゆる役職定年制が適用されるとするものである。

そして、内閣又は法務大臣が「職務の遂行上の特別の事情を勘案し」「公務の運営に著しい支障が生ずる」と認めるときは、役職定年を超えて、あるいは定年さえも超えて当該官職で勤務させることができるようにしている(改正法案第9条第3項ないし第5項、第10条第2項、第22条第1項、第2項、第4項ないし第7項)。

しかし、この改正案によれば、内閣及び法務大臣の裁量によって検察官の人事に介入をすることが可能となり、検察に対する国民の信頼を失い、さらには、準司法官として職務と責任の特殊性を有する検察官の政治的中立性や独立性が脅かされる危険があまりにも大きく、憲法の基本原理である権力分立に反する。

よって、当連合会は、違法な本件勤務延長の閣議決定の撤回を求めるとともに、国公法等の一部を改正する法律案中の検察官の定年ないし勤務延長に係る特例措置の部分に反対するものである。

 2020年(令和2年)4月6日

日本弁護士連合会
会長 荒   中


    ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇


2020.5.11.
改めて検察庁法の一部改正に反対する会長声明.


当連合会は、本年4月6日付けで「検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明」を公表し、検察庁法改正法案を含む国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対した。

検察庁法改正法案によれば、内閣ないし法務大臣が、第9条第3項ないし第6項、第10条第2項、第22条第2項、第3項、第5項ないし第8項に基づき、裁量で63歳の役職定年の延長、65歳以降の勤務延長を行い、検察官人事に強く介入できることとなる。

当連合会は、検察官の65歳までの定年延長や役職定年の設定自体について反対するものではないが、内閣ないし法務大臣の裁量により役職延長や勤務延長が行われることにより、不偏不党を貫いた職務遂行が求められる検察の独立性が侵害されることを強く危惧する。「準司法官」である検察官の政治的中立性が脅かされれば、憲法の基本原則である三権分立を揺るがすおそれさえあり、到底看過できない。少なくとも当該法案部分は削除されるべきである。

しかしながら、政府及び与党は、誠に遺憾なことに、検察庁法改正法案を国家公務員法改正との一括法案とした上で衆議院内閣委員会に付託し、法務委員会との連合審査とすることすらなく、性急に審議を進めようとしている。

5月7日に開催された内閣委員会理事懇談会の結果からすると、まさに近日中に開催予定の内閣委員会において本法案の採決にまで至る可能性もある。

そもそも、検察庁法の改正に緊急性など全くない。

今般の新型インフルエンザ等対策特別措置法上の緊急事態宣言が継続する中、かくも重大な問題性を孕んだ本法案について、わずか数時間の議論だけで成立を急ぐ理由など皆無である。

当連合会は、改めて当該法案部分に反対するとともに、拙速な審議を行うことに強く抗議する。

 2020年(令和2年)5月11日

日本弁護士連合会
会長 荒   中



<政治とカネ>安倍内閣シリーズ記事 (2016年6月)
<政治とカネ> 安倍内閣 甘利明前大臣の大臣室現金授受事件を忘れない(1)
<政治とカネ> 安倍内閣 甘利前大臣の大臣室現金授受を忘れない(2)
<政治とカネ> 安倍内閣の西川公也元農水大臣 大臣は辞職・議員辞職はなし 痛くもかゆ         くもない面々
<政治とカネ> 安倍内閣の小渕優子元経済産業大臣 大臣辞職したが議員辞職はなし 痛く         もかゆくもない面々
<政治とカネ> 安倍内閣の「政治とカネ」辞職大臣が8名、多過ぎる!
<政治とカネ> 安倍首相 世襲政治資金は相続税免除(合法)、世襲政治団体は認めるべき         じゃない


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ロッキード事件捜査の元検事総長ら法務省に正義感あふれる意見書提出 「1月31日『黒川弘務氏の定年延長』閣議決定は違法

2020-05-15 19:37:19 | Weblog

2020-04-23
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2020-05-20
2020-05-22
2020-05-25
2020-06-05



本日2020年5月15日、ロッキード事件の捜査に携わった経験を持つ松尾邦弘元検事総長をはじめ、最高検検事、高検検事長ら14名の検察OBが、検事総長や検事長らの定年延長を可能にする検察庁法改正案に反対する意見書を法務省に提出しました。元検察トップも反対を表明するのはきわめて異例のことです。

意見書の冒頭【1】では、本年1月31日の閣議決定、「黒川弘務東京高検検事長の半年間定年延長」に法的根拠がなく、今も不当に現職にとどまっていると述べて、その法的理由を述べています。すなわち、「1月31日『黒川弘務氏の定年延長』閣議決定は違法なんです。

自らをロッキード事件世代と言う検察OBたちの正義感あふれる検察を守ろうとする法務省提出意見書をお読みください。

意見書全文は朝日新聞から転記。文字着色などは当ブログで任意に行いました。


   ------------------------------------------------------------------------------


   東京高検検事長の定年延長についての
   元検察官有志による意見書 (※2020.5.15.法務省に提出)


【1】 東京高検検事長黒川弘務氏は、本年2月8日に定年の63歳に達し退官の予定であったが、直前の1月31日、その定年を8月7日まで半年間延長する閣議決定が行われ、同氏は定年を過ぎて今なお現職に止(とど)まっている。

 検察庁法によれば、定年は63歳とされており(同法22条)、定年延長を可能とする規定はない。従って検察官の定年を延長するためには検察庁法を改正するしかない。

  (注) 検察庁法第22条 検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は
           年齢が63年に達した時に退官する。    

 しかるに内閣は同法改正の手続きを経ずに閣議決定のみで黒川氏の定年延長を決定した。

 これは内閣が現検事総長稲田伸夫氏の後任として黒川氏を予定しており、そのために稲田氏を遅くとも総長の通例の在職期間である2年が終了する8月初旬までに勇退させてその後任に黒川氏を充てるための措置だというのがもっぱらの観測である。

 一説によると、本年4月20日に京都で開催される予定であった国連犯罪防止刑事司法会議で開催国を代表して稲田氏が開会の演説を行うことを花道として稲田氏が勇退し黒川氏が引き継ぐという筋書きであったが、新型コロナウイルスの流行を理由に会議が中止されたためにこの筋書きは消えたとも言われている。

 いずれにせよ、この閣議決定による黒川氏の定年延長は検察庁法に基づかないものであり、黒川氏の留任には法的根拠はない。  

この点については、日弁連会長以下全国35を超える弁護士会の会長が反対声明を出したが、内閣はこの閣議決定を撤回せず、黒川氏の定年を超えての留任という異常な状態が現在も続いている。

  (注)  「留任には法的根拠はない」、そして「黒川氏の定年を超えての異常な状態」と
   いうことは、黒川氏が不法に東京高等検察庁検事長の職位と職権を行使している
   重大な事態である、ということになる。
     これは、「黒川高検検事長の定年延長」閣議決定は違法行為である、と言って
   いるのです。すなわち、総理と内閣全大臣による違法行為!
    黒川検事長の定年延長に関して、安倍首相が「検察庁法に規定はないが国家公務
   員法の規定がある」と国会答弁しているのは、特別法優先の法常識に反していま
   す。情けない。


【2】 一般の国家公務員については、一定の要件の下に定年延長が認められており(国家公務員法81条の3)、内閣はこれを根拠に黒川氏の定年延長を閣議決定したものであるが、検察庁法は国家公務員に対する通則である国家公務員法に対して特別法の関係にある。

  (注) 国家公務員法
   第81条の3 (定年による退職の特例 ) 任命権者は、定年に達した職員が前条
    第一項の規定により退職すべきこととなる場合において、その職員の職務の特
    殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運
    営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、同項の規定にか
    かわらず、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して一年を超えない範囲内
    で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させること
    ができる。 
   〇2 任命権者は、前項の期限又はこの項の規定により延長された期限が到来する
    場合において、前項の事由が引き続き存すると認められる十分な理由があるとき
    は、人事院の承認を得て、一年を超えない範囲内で期限を延長することができ
    る。ただし、その期限は、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して三年を
    超えることができない。 

 従って「特別法は一般法に優先する」との法理に従い、検察庁法に規定がないものについては通則としての国家公務員法が適用されるが、検察庁法に規定があるものについては同法が優先適用される。

定年に関しては検察庁法に規定があるので、国家公務員法の定年関係規定は検察官には適用されない。

 これは従来の政府の見解でもあった。

 例えば昭和56年(1981年)4月28日、衆議院内閣委員会において所管の人事院事務総局斧任用局長は、「検察官には国家公務員法の定年延長規定は適用されない」旨明言しており、これに反する運用はこれまで1回も行われて来なかった。すなわちこの解釈と運用が定着している。

 検察官は起訴不起訴の決定権すなわち公訴権を独占し、併せて捜査権も有する。捜査権の範囲は広く、政財界の不正事犯も当然捜査の対象となる。捜査権をもつ公訴官としてその責任は広く重い。

 時の政権の圧力によって起訴に値する事件が不起訴とされたり、起訴に値しないような事件が起訴されるような事態が発生するようなことがあれば日本の刑事司法は適正公平という基本理念を失って崩壊することになりかねない。

 検察官の責務は極めて重大であり、検察官は自ら捜査によって収集した証拠等の資料に基づいて起訴すべき事件か否かを判定する役割を担っている。その意味で検察官は準司法官とも言われ、司法の前衛たる役割を担っていると言える。

 こうした検察官の責任の特殊性、重大性から一般の国家公務員を対象とした国家公務員法とは別に検察庁法という特別法を制定し、例えば検察官は検察官適格審査会によらなければその意に反して罷免(ひめん)されない(検察庁法23条)などの身分保障規定を設けている。

検察官も一般の国家公務員であるから国家公務員法が適用されるというような皮相的な解釈は成り立たないのである。


【3】 本年2月13日衆議院本会議で、安倍総理大臣は「検察官にも国家公務員法の適用があると従来の解釈を変更することにした」旨述べた。これは、本来国会の権限である法律改正の手続きを経ずに内閣による解釈だけで法律の解釈運用を変更したという宣言であって、フランスの絶対王制を確立し君臨したルイ14世の言葉として伝えられる「朕(ちん)は国家である」との中世の亡霊のような言葉を彷彿(ほうふつ)とさせるような姿勢であり、近代国家の基本理念である三権分立主義の否定にもつながりかねない危険性を含んでいる。

 時代背景は異なるが17世紀の高名な政治思想家ジョン・ロックはその著「統治二論」(加藤節訳、岩波文庫)の中で「法が終わるところ、暴政が始まる」と警告している。心すべき言葉である。

 ところで仮に安倍総理の解釈のように国家公務員法による定年延長規定が検察官にも適用されると解釈しても、同法81条の3に規定する「その職員の職務の特殊性またはその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分の理由があるとき」という定年延長の要件に該当しないことは明らかである

 加えて人事院規則11―8第7条には「勤務延長は、職員が定年退職をすべきこととなる場合において、次の各号の1に該当するときに行うことができる」として、 職務が高度の専門的な知識、熟練した技能または豊富な経験を必要とするものであるため後任を容易に得ることができないとき、 勤務環境その他の勤務条件に特殊性があるため、その職員の退職により生ずる欠員を容易に補充することができず、業務の遂行に重大な障害が生ずるとき、 業務の性質上、その職員の退職による担当者の交替が当該業務の継続的遂行に重大な障害を生ずるとき、という場合を定年延長の要件に挙げている。

 これは要するに、余人をもって代えがたいということであって、現在であれば新型コロナウイルスの流行を収束させるために必死に調査研究を続けている専門家チームのリーダーで後継者がすぐには見付からないというような場合が想定される。

 現在、検察には黒川氏でなければ対応できないというほどの事案が係属しているのかどうか。引き合いに出されるゴーン被告逃亡事件についても黒川氏でなければ、言い換えれば後任の検事長では解決できないという特別な理由があるのであろうか。法律によって厳然と決められている役職定年を延長してまで検事長に留任させるべき法律上の要件に合致する理由は認め難い


【4】 4月16日、国家公務員の定年を60歳から65歳に段階的に引き上げる国家公務員法改正案と抱き合わせる形で検察官の定年も63歳から65歳に引き上げる検察庁法改正案が衆議院本会議で審議入りした。

 野党側が前記閣議決定の撤回を求めたのに対し菅義偉官房長官は必要なしと突っぱねて既に閣議決定した黒川氏の定年延長を維持する方針を示した。こうして同氏の定年延長問題の決着が着かないまま検察庁法改正案の審議が開始されたのである。

 この改正案中重要な問題点は、検事長を含む上級検察官の役職定年延長に関する改正についてである。すなわち同改正案には「内閣は(中略)年齢が63年に達した次長検事または検事長について、当該次長検事または検事長の職務の遂行上の特別の事情を勘案して、当該次長検事または検事長を検事に任命することにより公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由として内閣が定める事由があると認めるときは、当該次長検事または検事長が年齢63年に達した日の翌日から起算して1年を超えない範囲内で期限を定め、引き続き当該次長検事または検事長が年齢63年に達した日において占めていた官及び職を占めたまま勤務をさせることができる(後略)」と記載されている。

 難解な条文であるが、要するに次長検事および検事長は63歳の職務定年に達しても内閣が必要と認める一定の理由があれば1年以内の範囲で定年延長ができるということである

 注意すべきは、この規定は内閣の裁量で次長検事および検事長の定年延長が可能とする内容であり、前記の閣僚会議によって黒川検事長の定年延長を決定した違法な決議を後追いで容認しようとするものである。

 これまで政界と検察との両者間には検察官の人事に政治は介入しないという確立した慣例があり、その慣例がきちんと守られてきた。

 これは「検察を政治の影響から切りはなすための知恵」とされている(元検事総長伊藤栄樹著「だまされる検事」)。

 検察庁法は、組織の長に事故があるときまたは欠けたときに備えて臨時職務代行の制度(同法13条)を設けており、定年延長によって対応することは毫(ごう)も想定していなかったし、これからも同様であろうと思われる。

 今回の法改正は、検察の人事に政治権力が介入することを正当化し、政権の意に沿わない検察の動きを封じ込め、検察の力を殺(そ)ぐことを意図していると考えられる。


【5】 かつてロッキード世代と呼ばれる世代があったように思われる。ロッキード事件の捜査、公判に関与した検察官や検察事務官ばかりでなく、捜査、公判の推移に一喜一憂しつつ見守っていた多くの関係者、広くは国民大多数であった。

 振り返ると、昭和51年(1976年)2月5日、某紙夕刊1面トップに「ロッキード社がワイロ商法 エアバスにからみ48億円 児玉誉士夫氏に21億円 日本政府にも流れる」との記事が掲載され、翌日から新聞もテレビもロッキード関連の報道一色に塗りつぶされて日本列島は興奮の渦に巻き込まれた。

 当時特捜部にいた若手検事の間では、この降って湧いたような事件に対して、特捜部として必ず捜査に着手するという積極派や、着手すると言っても贈賄の被疑者は国外在住のロッキード社の幹部が中心だし、証拠もほとんど海外にある、いくら特捜部でも手が届かないのではないかという懐疑派苦労して捜査しても造船疑獄事件のように指揮権発動でおしまいだという悲観派が入り乱れていた

 事件の第一報が掲載されてから13日後の2月18日検察首脳会議が開かれ、席上、東京高検検事長の神谷尚男氏が「いまこの事件の疑惑解明に着手しなければ検察は今後20年間国民の信頼を失う」と発言したことが報道されるやロッキード世代は歓喜した。

 後日談だが事件終了後しばらくして若手検事何名かで神谷氏のご自宅にお邪魔したときにこの発言をされた時の神谷氏の心境を聞いた。「(八方塞がりの中で)進むも地獄、退くも地獄なら、進むしかないではないか」という答えであった。

 この神谷検事長の国民信頼発言でロッキード事件の方針が決定し、あとは田中角栄氏ら政財界の大物逮捕に至るご存じの展開となった。

 時の検事総長は布施健氏、法務大臣は稲葉修氏、法務事務次官は塩野宜慶(やすよし)(後に最高裁判事)、内閣総理大臣は三木武夫氏であった。

特捜部が造船疑獄事件の時のように指揮権発動に怯(おび)えることなくのびのびと事件の解明に全力を傾注できたのは検察上層部の不退転の姿勢、それに国民の熱い支持と、捜査への政治的介入に抑制的な政治家たちの存在であった

 国会で捜査の進展状況や疑惑を持たれている政治家の名前を明らかにせよと迫る国会議員に対して捜査の秘密を楯(たて)に断固拒否し続けた安原美穂刑事局長の姿が思い出される

 しかし検察の歴史には、捜査幹部が押収資料を改ざんするという天を仰ぎたくなるような恥ずべき事件もあった。後輩たちがこの事件がトラウマとなって弱体化し、きちんと育っていないのではないかという思いもある。それが今回のように政治権力につけ込まれる隙を与えてしまったのではないかとの懸念もある。検察は強い権力を持つ組織としてあくまで謙虚でなくてはならない。

 しかしながら、検察が萎縮して人事権まで政権側に握られ、起訴・不起訴の決定など公訴権の行使にまで掣肘(せいちゅう)を受けるようになったら検察は国民の信託に応えられない。

 正しいことが正しく行われる国家社会でなくてはならない。

 黒川検事長の定年延長閣議決定、今回の検察庁法改正案提出と続く一連の動きは、検察の組織を弱体化して時の政権の意のままに動く組織に改変させようとする動きであり、ロッキード世代として看過し得ないものである。

 関係者がこの検察庁法改正の問題を賢察され、内閣が潔くこの改正法案中、検察幹部の定年延長を認める規定は撤回することを期待し、あくまで維持するというのであれば、与党野党の境界を超えて多くの国会議員と法曹人、そして心ある国民すべてがこの検察庁法改正案に断固反対の声を上げてこれを阻止する行動に出ることを期待してやまない。  


 【追記】この意見書は、本来は広く心ある元検察官多数に呼びかけて協議を重ねてまとめ上げるべきところ、既に問題の検察庁法一部改正法案が国会に提出され審議が開始されるという差し迫った状況下にあり、意見のとりまとめに当たる私(清水勇男)は既に85歳の高齢に加えて疾病により身体の自由を大きく失っている事情にあることから思うに任せず、やむなくごく少数の親しい先輩知友のみに呼びかけて起案したものであり、更に広く呼びかければ賛同者も多く参集し連名者も多岐に上るものと確実に予想されるので、残念の極みであるが、上記のような事情を了とせられ、意のあるところをなにとぞお酌み取り頂きたい。

 令和2年5月15日

 元仙台高検検事長・平田胤明(たねあき)
 元法務省官房長・堀田力
 元東京高検検事長・村山弘義
 元大阪高検検事長・杉原弘泰
 元最高検検事・土屋守
 同・清水勇男
 同・久保裕
 同・五十嵐紀男
 元検事総長・松尾邦弘
 元最高検公判部長・本江威憙(ほんごうたけよし)
 元最高検検事・町田幸雄
 同・池田茂穂
 同・加藤康栄
 同・吉田博視
 (本意見書とりまとめ担当・文責)清水勇男

 法務大臣 森まさこ殿

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<政治とカネ>安倍内閣シリーズ記事 (2016年6月)
<政治とカネ> 安倍内閣 甘利明前大臣の大臣室現金授受事件を忘れない(1)
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検察潰しのための検察庁法改悪、稲田検事総長ガンバレ、広島地検ガンバレ

2020-05-13 09:35:28 | Weblog


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法務省はほかの本省と違って、法務省幹部は検察官が占めています。法務省は内閣に所属する行政庁でありながら、検察権という司法の重大な側面を有しています。
 
1952年(昭和27年)の法務省発足以来、法務事務次官経験者の次の就任先が高等検察庁検事長であり、高等検察庁検事長経験者から最高検察庁検事総長が選任されるという首脳人事が守られてきました。これは、行政組織の一員でありながら司法の独立性という国民の期待にも応えなければいけないという、検察庁の独自性を守るための人事慣行です
 
この検察庁首脳人事を総理大臣安倍晋三の思うがままの人事にすることで、検察庁をより強力に支配しようとする。そのためには、黒川弘務東京高等検察庁検事長を次の最高検察庁検事総長にしたい。これが2016年(平成28年)から安倍晋三が検事総長に要求してきたことです。今の検察庁法改悪法案は、その仕上げなのです。
  
黒川弘務東京高検検事長の経歴は、2011年8月 法務省大臣官房長、2016年9月 法務事務次官、2019年1月~現在 東京高等検察庁検事長、です。
  
大臣官房長というのは、政治向きとの調整が重要な仕事だそうです。政官界案件はもちろんのこと、民間案件であっても、財界や電力、輸出大企業など政治色の濃い企業や特定政治家とつながりの濃い企業などに手をつけるには、時の政権や与党実力者など根回しが重要だということは容易に想像できます。


安倍晋三政権の成立は2012年12月です。
   
黒川弘務氏は安倍首相や菅官房長官によほど見込まれたものと見えます。えこひいきの強い安倍政権に見込まれたということは、彼らにそこまで黒川を推させるだけの貢献があったということでしょう。  

 佐川宣寿元財務省理財局長は安倍晋三・昭恵氏を森友台風の風津波から体を張って守りきりました。そのために大規模な公文書偽造事件を引き起こしたにもかかわらず、佐川宣寿氏が国税局長に昇進した実例を見れば、安倍首相に対する黒川弘務現東京高検検事長の貢献度が高かったことは容易に想像できます。      今はコロナ危機で日本中のすべての人が苦悩しています。生活の先行きの見通しが立たない人々も山ほどいます。その渦中に法を曲げてまで、黒川「検事総長」への道筋をつけたい安倍首相は黒川氏に何を期待しているのでしょうか。

検察庁首脳は黒川弘務氏の法務省事務官僚時代から、彼の優秀な政官調整能力を買っていました。検察庁首脳はそれと同時に、黒川弘務氏の優秀な政治性が検察中立の原則を堅持していかねばならない検事総長職に向かない、適性でない、と見ていました。検察首脳は数年前から、黒川弘務氏と同期同年齢の林真琴氏が検事総長に適任と想定していました。

しかし、安倍首相は黒川弘務氏を強く推しつづけ、稲田伸夫検事総長は押されつづけてきました。法務・検察首脳人事を検察側から推薦できても、それを受け入れて人事承認の閣議決定をするのは総理大臣なのです。

稲田伸夫氏の法務事務次官の跡を継いで事務次官に就任したのは、林真琴氏ではなくて、黒川弘務氏でした。稲田伸夫氏は法務事務次官から東京高等検察庁検事長に就任しました。そして稲田伸夫氏が検事総長に就任するとき、その跡を継いだのは現在の黒川弘務東京高等検察庁検事長です。


<検察潰しのための検察庁法バトル>

昨年2019年12月、安倍首相は稲田伸夫検事総長に黒川弘務氏を次の検事総長にするよう要請しました。

稲田伸夫検事総長は、1956年8月14日生まれ。
検事総長の定年は検察庁法第22条に基づき、65歳です。
 したがって稲田検事総長の定年は、2021年8月14日です。

 
安倍首相は暗に、1年半早く退職するよう検事総長に要請したのです。前例のないことでした。

検察首脳の間では、次期検事総長は林真琴氏という路線で進んでいます。検事総長は退職勧奨を拒否。

黒川弘務東京高検検事長は、1957年2月8日生まれ。

[1] 稲田検事総長は安倍首相の人事介入を断って、検察庁法22条に基づいて、黒川東京高検検事長の63歳定年退職日である本年2月8日を待ちます。

[2] これに対して、安倍首相は、国家公務員法第81条の3に基づいて黒川東京高検検事長の定年を半年延期しました。これで黒川検事長の定年退職日は本年8月8日になりました。

[3] 検察側が稲田伸夫検事総長の後任に予定している林真琴名古屋高等検察庁検事長は、1957年7月30日生まれ。定年退職日は本年7月29日です。

 黒川弘務氏が半年定年延期になったので、もう林真琴氏の次期検事総長はありません。黒川弘務氏が定年未達であれば、安倍首相側が林真琴次期検事総長案を拒否するからです。

[4] 稲田伸夫検事総長は「検察中立」のために、黒川弘務氏の半年延長後の定年2020年8月8日を越えて、自身の定年である2021年8月14日まで任務を勤め上げ、黒川弘務検事総長案を阻む策に出ました。

[5] 安倍首相側は、この検察の抵抗を今度こそ確実に葬り去る作戦に出ました。それが、検察庁法の「定年延長」法案なのです。これが成立すれば黒川弘務氏の定年は65歳、2022年2月8日になり、稲田伸夫検事総長の定年2021年8月14日を超えることになります。


 <検察庁法>  
第二十二条 検事総長は、年齢が六十五年に達した時に、その他の検察官は
  年齢が六十三年に達した時に退官する。   

黒川弘務東京高検検事長は本年2020年2月8日に定年退職している、はずでした。
 

  
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検察には栄光の歴史があります。

1974年(昭和49年)12月に金脈問題で田中角栄首相が総辞職しました。そして1976年(昭和51年)7月、田中角栄前首相をロッキード事件5億円受託収賄容疑で逮捕したのです。

1983年10月、ロッキード事件の一審は有罪、懲役4年の実刑判決を下しました。田中角栄は即日控訴し上告審審理途中の1993年(平成5年)12月、75歳で死去。一審有罪判決被告の身分で死去したため、総理経験者にもかかわらず贈られる位階勲章はなかった。

  
もう一つ、1993年(平成5年)3月、当時の自民党の大実力者・金丸 信を相続税の脱税容疑で逮捕、起訴しました。

自宅家宅捜査の結果、数十億円の不正蓄財が明らかになったという。裁判審理中の1996年3月、被告のまま病死。


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検察官の典型的な頂上コースは、法務省官房長 → 法務事務次官 → 東京高等検察庁検事長 → 最高検察庁検事総長、です。
   
最高検検事総長は2~3年で辞職するのが慣例です。ここから逆算して、次代の検事総長候補を数年間かけて官職を上げて上りコースを踏ませていきます。このやり方はどの本省でも同じようなことだろうと思います。
 
法務省発足1952年(昭和27年)以来、 法務事務次官経験者は清原邦一(初代事務次官在職1952.8.1.~1955.1.26.)から黒川弘務(事務次官在職2016.9.5.~2018.1.18.)まで28人。

法務事務次官経験者28人のうち、現職1人(辻裕教2018.1.18.~)と前事務次官1人(黒川裕務、東京高検検事長在職中)を除けば、26人。

26人の退官時最終職歴は、法務事務次官2人、高検検事長6人、最高検次長検事1人、検事総長17人です。
 
 法務事務次官経験者は清原邦一(初代事務次官在職1952.8.1.~1955.1.26.)から黒川弘務(事務次官在職2016.9.5.~2018.1.18.)まで28人。

 法務事務次官経験者28人のうち、現職1人(辻裕教2018.1.18.~)と前事務次官1人(黒川裕務、東京高検検事長在職中)を除く退官済みは26人。

 退官済み26人の退官時役職は検事総長が17人。 残り9人の退官時役職は、法務事務次官2人、高検検事長6人、最高検次長検事1人、です。

  

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<歴史と病気・伝染病 8終> 病気を呼ぶ食生活の変化と化学製品・原子力発電の副産物 ――『緑の世界史・下』から

2020-05-11 16:04:09 | Weblog

本は、読み始めると一気に読み上げるのが本筋だとは思いますが、私の場合はもう一つの読み方もしています。それは、気になる本を買って、この本にはどんなことが書いてあるのかがわかるていどに、読み流したり、飛ばし読みしたりするだけで、次に読みたいという必要やタイミングが来るまで本棚でお休み、というものです。

今のコロナ禍に出会って、取り出した『緑の世界史』はこうして本棚で長く休んでいた本です。
    朝日選書 『緑の世界史』 上下2冊
    クライブ・ポンティング著、石 弘之 京都大学環境史研究会訳。
    1994.6.25.第1刷、2005.4.30.第5刷、

たぶん2005年か2006年ごろに買ったものと思います。「緑」とあるように、人類の活動と環境への影響といった観点に立つ歴史書で、この中に病気・伝染病に関する短い章があります。これを何回かに分けて転載紹介いたします。


 (注) 「伝染病」と「感染症」
  1999年(平成11年)まで上掲書出版当時も、明治以来の「伝染病」ということばが使われていました。1999年(平成11年)、感染症法が新しく施行されると同時に、1897年(明治30)以来の伝染病予防法が廃止されて、それ以後替わって「感染症」ということばが使われるようになりました。
    
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【食生活の変化】

 この200年間の食生活の変化にはもちろんよい面もあった。しかし、農業の発達によって、食べる物の範囲が限定され、ある場合には、必要な栄養素を完全には含んでいない食べ物に依存したりするようになるという問題が生じたことも事実である。そのために栄養欠乏症になることもあった。そして、こうした問題は主に広範囲の食物を手に入れることのできない貧しい人々にとってとくに深刻だった。

 ビタミンB2の欠乏で起こるニコチン酸欠乏症候群は、トウモロコシだけを食べていると起きる病気である。かつて、トウモロコシの粉しか食べられなかったアメリカ合衆国南部の貧しい農民や南アフリカの黒人鉱山労働者によく見られたが、彼らが豊かになり多様な食物が手に入るようになってからは少なくなった。

 ビタミンDの欠乏症であるクル病は、有史以前の狩猟採集民の骨にはその痕跡がないが、19世紀半ばのロンドンでは人口の約7%がこの病気にかかっていた。この病気も食物が多様になるにつれて減少した。

 食糧に不自由しなくなるにつれて、人々の体は大きくなってきた。一般化することは難しいが、中世ヨーロッパの人々の平均身長は180センチはなく、150センチに近かった。このために、中世の建物には天井が低いものが多い。現在では、イギリスの子どもの身長は18世紀半ばのロンドンの子どもに比べて2割ほど高いし、ヨーロッパの成人男性は平均して100年ほど前に比べて8センチほど背が高くなっている。

 しかし、食生活の変化が有害であったことを示す証拠も、次第に増えてきている。近代の西洋の食事の特徴は、繊維質が少なくなり、砂糖消費が増え、さらに多量の脂肪が含まれ、加工食品の割合が高いことである。

 白パンは繊維と栄養分が減った加工食品の一例である。白パンを焼くために小麦粉からふすまと胚芽を取り除くことは、おそらく14世紀に初めて行われた。当時は、しばしば穀物が不足し、小麦粉の全量を使ってパンを最大量作ることが重視されたため、白パンはぜいたく品だった。深刻な穀物不足のときには、白パンを焼くことを禁じられることも多かった。
 
 

 
 1750年以前は、白パンを食べていたフランス人は20人に一人ぐらいだった。19世紀になると穀物供給量が増し、19世紀後半には工業国の大半の人が白パンを常食とし、20世紀には白パンが市場を独占するようになった。

 食物中の繊維質の減少は、便秘腸疾患など西洋で普通に見られる多くの病気を増やすことになった。また、砂糖消費の増加も健康に有害だった。16世紀まで甘味料は蜂蜜(北アメリカではサトウカエデからつくるメイプルシロップ)が使われており、砂糖の消費量はわずかなものだった。

 だが、世界中でのサトウキビのプランテーションが発達すると、生産量と消費量は増大していった。それまで取るに足らない量だったヨーロッパと北アメリカの砂糖摂取量は、1750年には年間1人当たり約1.8キログラムにまで増加した。現在では、55キログラムにもなっている。このもっとも直接的な影響は、虫歯の急激な増加である。発掘された有史以前の人骨の調査によると、虫歯に冒された歯は3%以下であり、現在でも、砂糖消費の少ない社会では虫歯はほとんど知られていない。

 砂糖消費の増加は肥満や糖尿病の増加をも招いた。砂糖消費と肥満や糖尿病との関連について最初に明らかになったのは、砂糖の摂取量が大変に多かった18世紀のイギリス貴族社会だった。

 脂肪の摂取量は歴史を通じて増加し続けてきた。最初の根本的な変化は、羊、山羊、牛を家畜化したことに始まる。家畜の飼育によって人類は初めて乳製品を食物にすることができた。初期の農耕社会では、家畜のための草は乏しく飼料が足りなかったために、飼養できる家畜は少なかった。

 また、たいていの場合、保存のきかない乳製品はほとんど流通させることができず、脂肪の摂取量も限られていた。しかし、牛乳の低湿殺菌法や、缶詰、冷蔵、それに鉄道を利用した速やかな輸送体系など、19世紀後半の技術革新で多くの都市住民に乳製品が届けられるようになり、消費は大きく増加した。だが、乳製品や肉などに多量に含まれる脂肪は、心臓病の危険性を高めた。

 19世紀末の技術革新は、また新たな現象を生み出した。生鮮食品ではなく、加工食品を生産し、販売することに重点をおいた食品工業の勃興である。こうした加工食品は明らかに健康に悪影響を与えた。

 アメリカ合衆国の加工食品の一人当たりの消費量は今世紀になって3倍に増えており、今日ではアメリカで消費される食べ物の4分の3はなんらかの形で加工されている。これに伴って、新鮮な果物や野菜の消費は1910年以来3分の1に落ち込んでいる。

 加工食品は多くの栄養分や重要な微量元素が除去されているだけでなく、酸化防止剤、乳化剤、増量剤、色素、甘味量、漂白剤などの添加物を加えられている。平均的なイギリス人は、今ではこうした人工食品添加物を年間1.4キログラムもとっている。


【文明病の勃興】

 こうした食物の変化は明らかに胃腸などの心臓病、それに胆石などの病気の増加につながった。食べ物の質だけでなく、量の変化も肥満者の率を増加させてきた。

 イギリスの中年男性は今では平均して一〇キロ近くも太りすぎており、アメリカではこの値はさらに高くなる。医学的な研究によれば、体重が平均を25%上回っている人の死亡率は平均体重の人の2倍になるという。

 食べ物の変化にともなって増加した代表的な病気は、心臓病である。

 100年前には、高脂肪で砂糖が多い食物をとり、繊維質の多い食物や新鮮な果実や野菜をあまりとらなかった金持ち以外には知られていなかったが、今では工業国の男性の40%、女性の20%が心臓病のために死亡している。

 西洋化されていない人々には、生活様式を変えたり西洋式の食事をとらない限り、心臓病は稀である。

 1940年までは、ケニアとウガンダのアフリカ人は年をとっても血圧が上がることはなく、ウガンダでは1956年まで、ケニアとタンザニアでは1968年まで、心臓の冠動脈疾患はまったく存在しなかった。

 ヨーロッパの癌発生率は西アフリカの10倍にも達する。食物の他にも、多くの要因がこの病気の危険性を高めている。

 とくに、環境要因に加えて喫煙の習慣が問題である。一七世紀以降(とくに今世紀になってからは顕著になったが)、嘆ぎタバコ、紙巻きタバコ、葉巻といったさまざまな形のタバコ消費量の著しい増加が、癌の発生率の増加に直結している。喫煙は癌にかかる危険性を3割ほど増し、心臓病や気管支炎などの他の病気にも関係している。


 1960年以降の20年間で、工業国での肺癌の発生率は80%も増加したが、主に喫煙率の増加が原因である。タバコの大量消費は今では第三世界にも同様の影響を与えている。

 もう一つの重要な要因は、きわめて有害な多くの化学製品の生産が増加していることである。これらの化学製品の増加は、人々を直接、または汚染を通して間接的に、有害な発癌物質にさらすことになった。有害廃棄物処理場や原子力施設の近くでは、平均よりも高い確率で癌が発生することが明らかになっている。これらの施設では、喫煙や食べ物の影響が少ない子どもにも癌発生率が高いことから、環境要因の果たす役割が大きいことがわかる。

 先進国の癌発生率は着実に増加しており、アメリカ人の3人に1人が癌にかかり(1900年には27人に1人)、4人に1人が癌で死んでいる。欧米では、癌による死者の数は1960年~1980年の間に、男性で55%、女性では40%増加した。

 人間と病気の関係は、他のさまざまな人間と環境との相互関係と同じ道をたどってきた。まず、人類史の最初の大きな節目、つまり農業と定住社会の成立が人間に対する病気の影響を大きく変えた。

 人々はさまざまな新しい伝染病にさらされ、家畜から多くの病気をうつされるようになり、そして伝染病はその後数千年にわたる人類の歴史の中で重要な役割を果たすようになる。

 次に、ヨーロッパの拡大などによって世界がいっそう一体化するにつれて、世界の多くの地域で非常に多様な作物が栽培されるようになったが、同時に新しい病気が広がって、それまでは隔離されていた社会にしばしば強烈な打撃を与えた。

 工業化社会の勃興もまた、病気の発生に大きな影響を与えた。伝染病はその重要度が減り、それに代わって工業化社会の新しい生活様式に直接関係した非伝染性の病気によって死ぬことが多くなったのである。
        

                     <歴史と病気・伝染病 終了>
        

        

        
2020-05-04
                
2020-05-05
                
2020-05-06
                
2020-05-07
                
             から
        
2020-05-08
                
             下』から
        
2020-05-09
        
<歴史と病気・伝染病 6> 伸びる平均寿命と残された問題(貧富の差そして公衆衛生)
        
                         ――『緑の世界史・下』から
        
2020-05-10
         
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<歴史と病気・伝染病 7> 「伝染病」と「感染症」について

2020-05-10 23:20:11 | Weblog

 (注) 「伝染病」と「感染症」
  1999年(平成11年)まで上掲書出版当時も、明治以来の「伝染病」ということばが使われていました。1999年(平成11年)、感染症法が新しく施行されると同時に、1897年(明治30)以来の伝染病予防法が廃止されて、それ以後替わって「感染症」ということばが使われるようになりました。
 


『緑の世界史』は上巻360ページ、下巻279ページ、計659ページです。人類の生存、増殖は地球生態系の克服の歴史であり、地球環境破壊の歴史であり、人工物である廃棄物問題や環境汚染、気候変動など、今や地球環境の側から深刻な制約に直面しているという観点から、壮大な人類史概説を書いています。

いまだ「開発オンリー」の人類がこのままで、いつまで地球生態系の王者であり続けることができるのでしょうか。

今回紹介している人類史と病気の俯瞰に触れているのは、『緑の世界史』全659ページのうち、24ページ分です。これを読んで、人が生きていく生活の中で自ら招いた伝染病があることを知りました。

伝染病について思い出が一つあります。私の弟が幼いころ赤痢にかかりました。兄弟ともに小学校に上がる前のことで、人がたくさんやってきて、私も住まいも消毒された記憶がうっすらと残っています。そういえば最近は、伝染病と言うことばを聞いたことがありません。

新型コロナウイルスCovid-19が流行する今、わたしたちは「感染症」ということばを見聞きし使っています。

私は日常感覚で、感染症というのはインフルエンザと理解していました。コロナもインフルエンザの類であって、インフルエンザはインフルエンザ、伝染病は伝染病、といった感覚でいました。

伝染病と感染症。この違いについて気になりましたので、今回は『緑の世界史』の記述と離れて、調べた結果を書きとどめます。


 『緑の世界史・下』 3ページ~20ページの記述にある伝染病名

 トリパノゾーマ症(睡眠病)、オンコセルカ症(河川盲目症)
 天然痘、 ハシカ、 結核、 ジフテリア、 インフルエンザ、
 普通の風邪、 ハンセン病、 コレラ、 赤痢、 マラリア、
 おたふく風邪、 住血吸虫症、 デング熱、 ペスト(黒死病)、
 肺ペスト、 腺ペスト、 チフス、 黄熱病、 梅毒、 発疹チフス、
 腸チフス、 エイズ


『緑の世界史』はイギリスで出版され、日本語訳の本書出版は1994年6月25日です。日本語訳出版当時の日本では、伝染病予防法(1999年廃止)がありました。旧伝染病予防法で指定されていた病名は次の通りです。


「伝染病予防法」で指定された伝染病

法定伝染病 11種類 
 コレラ、 赤痢、 腸チフス、 パラチフス、  痘瘡(天然痘)、
 発疹チフス、  猩紅熱、 ジフテリア、 流行性脳脊髄膜炎
 ペスト、 日本脳炎
 *診断した医師はすぐに保健所に届け出て、感染者は隔離病棟に収容された。

 ●指定伝染病 3種類
 急性白髄炎、 ラッサ熱、 腸管出血性大腸菌感染症
 *診断した医師はすぐに保健所に届け出て、感染者は隔離病棟に収容された。

 ●届出伝染病 13種類
 インフルエンザ、 狂犬病、 炭疽、 伝染性下痢症、 百日咳、
 破傷風、 マラリア、 ツツガムシ病、 バンクロフト糸状虫症、
 麻疹、 回帰熱、 黄熱、 急性灰白髄炎(ポリオ)
 *診断した医師は24時間以内に保健所に届け出る。感染者は自宅療養または普通病棟
  に収容。


●ほかの法律で届出が義務付けられている伝染病
 結核、梅毒、淋病、軟性下疳(げかん)、鼠径(そけい)リンパ肉芽腫、
 日本住血吸虫病,トラコーマ,食中毒,エイズ 



「伝染病」 → 「感染症」へ
1999年4月1日から新法「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(←クリック) が施行されました。この法律がどんなものか、クリックして一見してください。これにより、従来の伝染病予防法、性病予防法、後天性免疫不全症候群の予防に関する法律(エイズ予防法)が廃止になりました。

この感染症新法の施行されて、「伝染病」という呼称が公には使われなくなりました。しかし、『緑の世界史』の日本語訳の初刊は1994年6月25日で、「感染症新法」施行の5年前になりますし、イギリスでの初刊は当然それよりもっと前ということになります。

それゆえ『緑の世界史』執筆当時も、日本語訳初刊当時も、医療関係筋、医療行政筋、世間の人々はなおさら、昔から使ってきた「伝染病」ということばを使っていました。

こうして、私も伝染病と感染症の使い分けがやっとわかってきましたが、調べているうちにおもしろい発見をしました。

余談になりますが、書き留めておこうと思います。

伝染病予防法の条文を確認したくて、政府の「e-Gov法令検索」で「伝染病予防法」を検索しましたが、出てきません。廃止された法律はe-Gov法令検索から削除されているのでしょう。

それで検索語を「伝染病」にして網を広げて検索してみました。すると、「家畜伝染病予防法」と「伝染病患者鉄道乗車規程 」がひっかかりました。いま公に伝染病と言うことばを使っているのは動物関係者で、人間の関係では公には感染症ということばを使っています。


伝染病患者鉄道乗車規程
「伝染病患者鉄道乗車規程」(←クリック)には「明治三十三年逓信省令第三十八号」という省令番号がついています。 それほど古くからある省令なんですね。総務省が、逓信省の現在の後身です。

本規程第9条には、本規程ハ鉄道営業法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス、とあります。そして、鉄道営業法を参照すると、明治三十三年法律第六十五号、とあります。

この二つの法規は、明治33年に同時に制定されたものと見えます。

伝染病患者鉄道乗車規程の附則(平成一一年三月三〇日運輸省令第一五号)に、この省令は、平成十一年四月一日から施行する、とあります。運輸省の後身は国土交通省で、平成11年は西暦1999年です。

新法「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」が1999年に施行され、それと同時に伝染病予防法は発展的に解消されて、廃止法になりました。

その時点で、「伝染病」患者鉄道乗車規程の名称は「感染症」患者鉄道乗車規程に変更されるのが普通です。なにしろ、それまでの法律上の伝染病患者が法律上の感染症患者に衣替えしたのです。法律上、伝染病患者は存在していません。

年次で言えば平成11年に文言が「感染症患者」に変更されていなければいけないのに、修正漏れのまま今に至ったのか、と一旦は思いました。運輸省(当時)のおもしろいミスを発見したと思いました。

一方、よく考えてみると、「伝染病患者鉄道乗車規程の附則」が、これとまったく同じ、同年月同日付で、この省令を施行するとしています。伝染病予防法廃止・感染症新法施行とぴたり歩調を合わせた日付で省令を施行する付則を加えていながら、伝染病患者 → 感染症患者への文言修正を忘れることなど考えられません。

今、法律上の伝染病患者は存在しません。「伝染病患者鉄道乗車規程」が対象にしている人間は法律上存在しません。合理的に言えば、この規定は廃止されなければなりません。もっとも、放置しておいてもこの規定が誰かに何か害を及ぼすようなこともなさそうです。

 明治三十三年逓信省令第三十八号
 伝染病患者鉄道乗車規程


 伝染病患者鉄道乗車規程左ノ通定ム

 第一条 伝染病患者ヲ乗車セシメムトスルトキハ予メ之カ申込ヲ為シ鉄道
    ノ承諾ヲ受クルコトヲ要ス

 第二条 前条ノ申込ヲ受ケタルトキハ鉄道ハ列車ヲ指定シ其ノ他運送上旅
    客及公衆ノ安全ヲ保スルニ必要ナル事項ヲ指定スルコトヲ得

 第三条 伝染病患者ニハ少クトモ一人ノ附添人ヲ附スルコトヲ要ス

 〇 2 鉄道ノ請求アルトキハ前項附添人ノ外医師ヲ附スルコトヲ要ス

 第四条 伝染病患者ハ貸切車ヲ以テ運送シ普通旅客ト其ノ車輛ヲ区別シ当
    該掛員ノ外一切之カ交通ヲ遮断スヘシ

 第五条 伝染病患者ヲ搭載セル車輛ハ其ノ入口ニ「伝染病者」ノ四字ヲ
    掲示スヘシ

 第六条 伝染病患者車中ニ於テ死亡シタルトキハ警察官又ハ其ノ他ノ当該
    吏員ニ 之ヲ申報スヘシ

 第七条 乗車中伝染病ニ罹リタルモノアルトキハ速ニ警察官又ハ其ノ他ノ
    当該吏員ニ之ヲ申報スヘシ

 第八条 車輛、器具ノ消毒其ノ他伝染病予防ニ関スル取締ハ一般法令ノ規
    定ニ依ル

   附 則
 第九条 本規程ハ鉄道営業法施行ノ日ヨリ之ヲ施行ス

   附 則 (平成一一年三月三〇日運輸省令第一五号)
  この省令は、平成十一年四月一日から施行する。



2020-05-04
2020-05-05
2020-05-06
2020-05-07
             から
2020-05-08
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