叙事詩 人間賛歌

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人間賛歌 自分の心を変える 八

2007年07月17日 | 自分の心を変える

 前回の続き、

パリの女性はセーヌ河に身を投げて死んだが、
三木リエはどうなったのだろう。
大川の堤防で、リエは自分の心を変えようと決意したのだ。

夫を憎み、二女を手ごめにしたヤクザを憎み、
三女を発狂させたシウトを憎み、
期待を裏切って死んだ長男を恨む、
そんな心とオサラバしょうと思ったのだ。

「そうだわ、もうくよくよして、いつも悲しむのはよそう。
これからは、どんな小さなことだっていいから、
好いこと、嬉しいことを見つけるよう、自分の心を変えていこう。」
と決心したのだ。


リエはその日を境に生き方を変え、目を見張るほど変化した。
いままで気づかなかったのが不思議なぐらい、
好いこと、楽しいことが自分の周りに満ちているのが分かったのだ。

母親の変わった姿を見て、精神に異常をきたしていた、
二人の娘が正気を取り戻した。

やがてリエの家には、悩みを抱え、
どうしてよいか分からない人たちが、
教えを乞いに、訪ねてくるようになった。それらの人たちにリエは、

「病気を治すのではなく、心の病を治せ」と訴え、
のちに有名な社会啓蒙家になったのだ。



世界的ベストセラー『死の瞬間』のなかに、著者キュプラー.ロスが、
医学生のころ、アウシュビッツのユダヤ人収容所跡を見学したときの話しがある。

ロスが見学をおえて収容所の外に出た時、ちょっとした事件が起きた。
一人の見知らぬ少女が、突然近づいてきてロスにこう言った。

「やさしそうな顔をしているけれども、あなただってヒトラーになれるわ」

少女の出現が唐突だったのと、コトバの内容が衝撃的だったので、ロスは
思わず足をとめた。

続く