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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

言葉の大海原を渡るための「舟を編む」

2013年04月16日 | 映画・ビデオ・映像

監督:石井裕也
出演:松田龍平、宮崎あおい

出版社の辞書編集部を舞台に、新しい辞書づくりに取り組む人々の姿を描き、2012年本屋大賞で第1位を獲得した三浦しをんの同名小説を映画化。玄武書房の営業部に勤める馬締光也は、独特の視点で言葉を捉える能力を買われ、新しい辞書「大渡海(だいとかい)」を編纂する辞書編集部に迎えられる。個性的な編集部の面々に囲まれ、辞書づくりに没頭する馬締は、ある日、林香具矢という女性に出会い、心ひかれる。言葉を扱う仕事をしながらも、香具矢に気持ちを伝える言葉が見つからない馬締だったが……。馬締役で松田龍平、香具矢役で宮崎あおいが出演。監督は「川の底からこんにちは」「ハラがコレなんで」の俊英・石井裕也。



辞書を作る。

そりゃ、誰かが作っているだろうが、どんなふうにしているのか、普通は知らないわけで。

でも、どう考えても地道な作業だろうし、それが小説になっただけでも驚きだったのに、今度は映画だ。

大丈夫か、と思ったりしたけど、なかなかの佳作でありました。

松田龍平は、原作での学究肌イメージはやや希薄だったけど、主人公のいい意味での変人ぶりを好演。

宮崎あおいは、イメージとのズレ、ちょっとあり、かも。

全体に、台詞が少ない映画だ。

沈黙が多いシーンが結構ある。

監督はその沈黙を恐れず、堂々と、ゆったりと物語を進めていく。

たいしたものだ。

それから、主人公が暮らす古いアパート、いや下宿と呼ぶべきか、
とにかく「早雲荘」がいい。

すごくいい。

他の住人がいないので、建物全体を図書館のように使わせてもらっているのだ。

主人公を体現している住居。

本好きにはたまらない、実にうらやましい環境です。

それにしても、15年かかって、1冊の辞書を作っているのだ。

見終わって、辞書を買いたくなりました。

皆さんも、辞書を買いましょう(笑)。

そして、使いましょう。


*辞書について、このブログで書いたもの

12年ぶりの“新作”
http://blog.goo.ne.jp/kapalua227/e/31a46559c234a5406595d748737a7bef



500年を駆けるデジタル寓話、「クラウド・アトラス」

2013年04月16日 | 映画・ビデオ・映像

「クラウド・アトラス」

監督:ラナ・ウォシャウスキー、アンディ・ウォシャ、トム・ティクヴァ
出演:トム・ハンクス、ハル・ベリー、ジム・ブロードベント、
   ヒューゴ・ウィーヴィング

『フォレスト・ガンプ』トム・ハンクス主演、ウォシャウスキー姉弟×トム・ティクヴァ監督作悪人で始まった“男”の人生は、6つの時代を越えて、いま、世界の運命を握る!19世紀から24世紀の500年間を舞台に、波乱に満ちた航海物語、幻の名曲の誕生秘話、原子力発電所の陰謀、人殺しの人気作家、伝説となるクローン少女の革命家、そして崩壊した地球での戦いが交差していく。人々は姿が変わっても惹かれ合い、出会っては別れ、争いと過ちを繰り返す。いつかはその愛を成就するために。今、人生の謎が解けようとしている―。ドラマ、ラブストーリー、近未来SF、アクション、ミステリーというジャンルを超えた、かつてない映画体験が待っている。



なんとまあ、壮大な物語ではあります。

映像もすごい。

提示しようとしているメッセージも、一応わかります。

でも、やっぱり詰め込み過ぎじゃないのかなあ。

各エピソードがそれぞれ1本の映画になるような内容で、それをどどどーっと並べられると、見終わって、残る印象が散漫だったりする。

ただ、役者たちの“演じ分け”は見事だし、ちょっと疲れますが(笑)、見て損はない1本です。


人生の背面飛行に挑む、「フライト」

2013年04月16日 | 映画・ビデオ・映像

「フライト」

監督:ロバート・ゼメキス
出演:デンゼル・ワシントン

旅客機が原因不明の急降下、ウィトカー機長は草原への緊急着陸に成功する。102人中生存者は96人、それはどんな一流パイロットにも不可能な、奇跡の操縦だった。マスコミが偉業を称え、彼は一躍ヒーローとなる。ところが、ある疑惑が浮上する。彼の血液中からアルコールが検出されたのだ。噂を嗅ぎつけるマスコミ、TVで思わせぶりな発言をする副操縦士、次々と暴かれていく驚愕の事実。あの日、機内で何があったのか?果たしてウィトカーは、真の英雄か、卑劣な犯罪者か?追いつめられたウィトカーが、公聴会で告白した最後の真実とは?



ゼメキス監督とデンゼル・ワシントンの組み合わせとあらば、やはり足を運びます。

しかも、大好きな「航空もの」というか「ヒコーキもの」。

で、デンゼル君はヒーローなのか、それとも単なるアル中パイロットなのか、という話です。

予告でもやっていたし、アカデミー賞授賞式のパロディ映像でも出ていた「背面飛行」は、旅客機でやろうとしたら大変な離れ業だ。

もっと飛行シーンが見たかったけど、物語としては「法廷もの」に移行していく。

ゼメキス監督らしいヒューマンな展開となるが、「うーんと面白いか」と聞かれると、やや困る。

「面白くないのか」と言われると、そんなことはないけど、と歯切れが悪い(笑)。

結局、元に戻って、「この2人の組み合わせなら見たい」という観客が見るのが一番いいのかもしれません。

私は、それなりに楽しめました。