今日、11月29日は、2006年に亡くなった実相寺昭雄監督の命日だ。
生前も、その後も、私にとっての監督は、大切な師の一人であることに変わりはない。
3年が過ぎて、師の大きさがますます分かるようになってきたが、不肖の弟子のほうは、相変わらず不肖のままである。
すみません、監督。
実相寺監督の著作はいくつもあるが、命日に読むのがふさわしい(?)のは、昭和52(1977)年に出版された最初の本『闇への憧れ~所詮、死ぬまでの<ヒマツブシ>』だろう。
テレビや映画をめぐる、たくさんのエッセイ・評論を収めたものだ。
長い間に何度も読み返して、本としての形も崩れてきたが、まだまだ大丈夫。
どのページを開いても、鋭くも、どこか少し照れたような、ちょっと韜晦気味の(笑)、監督らしい言葉が並んでいる。
そして、この本の「あとがき」の、これまた一番最後は、こんな文章で終わっているのだ・・・
最近、私は二つの言葉を金科玉条としている。ひとつは、たまたまテレビで見たイギリス映画、ピーター・ホール監督『女豹の罠』にあった科白で「男は自分の好きな仕事をしなければなりません。嫌いな仕事なら、金がたくさん入らなければなりません」というもの。
もうひとつは、たまたまひっくり返していた愛読誌『ヤングコミック』の欄外語録にあった黒柳徹子さんの言葉だ。「一度でもコマーシャルをやった人間はえらそうなことを言っちゃいけない」というもの。
民放上がりのテレビジョン・ディレクターとしての私の万感は、この二つの言葉に尽きている。もうこれ以上何も言うまい。
・・・実相寺昭雄監督、2006年11月29日没。享年69。合掌。