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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

師・実相寺昭雄監督の命日

2009年11月29日 | テレビ・ラジオ・メディア

今日、11月29日は、2006年に亡くなった実相寺昭雄監督の命日だ。

生前も、その後も、私にとっての監督は、大切な師の一人であることに変わりはない。

3年が過ぎて、師の大きさがますます分かるようになってきたが、不肖の弟子のほうは、相変わらず不肖のままである。

すみません、監督。


実相寺監督の著作はいくつもあるが、命日に読むのがふさわしい(?)のは、昭和52(1977)年に出版された最初の本『闇への憧れ~所詮、死ぬまでの<ヒマツブシ>』だろう。

テレビや映画をめぐる、たくさんのエッセイ・評論を収めたものだ。

長い間に何度も読み返して、本としての形も崩れてきたが、まだまだ大丈夫。

どのページを開いても、鋭くも、どこか少し照れたような、ちょっと韜晦気味の(笑)、監督らしい言葉が並んでいる。

そして、この本の「あとがき」の、これまた一番最後は、こんな文章で終わっているのだ・・・


最近、私は二つの言葉を金科玉条としている。ひとつは、たまたまテレビで見たイギリス映画、ピーター・ホール監督『女豹の罠』にあった科白で「男は自分の好きな仕事をしなければなりません。嫌いな仕事なら、金がたくさん入らなければなりません」というもの。

もうひとつは、たまたまひっくり返していた愛読誌『ヤングコミック』の欄外語録にあった黒柳徹子さんの言葉だ。「一度でもコマーシャルをやった人間はえらそうなことを言っちゃいけない」というもの。

民放上がりのテレビジョン・ディレクターとしての私の万感は、この二つの言葉に尽きている。もうこれ以上何も言うまい。


・・・実相寺昭雄監督、2006年11月29日没。享年69。合掌。

『ゼロの焦点』(オリジナル版)を観た

2009年11月29日 | 映画・ビデオ・映像

「昭和33年の12月。結婚したばかりの妻を残し、男が失踪。残された妻はその後を追い、北陸へ旅立つが、そこで見たものは夫の隠された一面と、そして時代に翻弄された女たちの、悲しい運命だった」

映画『ゼロの焦点』を観た。

ただし、現在公開中のアレではない。

昭和36(1961)年のオリジナル版、野村芳太郎監督作品『ゼロの焦点』(松竹)である。

松本清張生誕100年記念出版の一つ、『DVD BOOK 松本清張傑作映画ベスト10』(小学館)の第2巻だ。

いやあ、よかったです。

清張映画といえば、やはり野村芳太郎監督。

スピーディで、メリハリの効いた脚本は橋本忍・山田洋次。

名匠・川又昂カメラマンのモノクロ映像も冴えわたっている。

また、久我美子・高千穂ひづる・有馬稲子というキャスティングは、予告編で「3大女優競演」を謳っているが、看板に偽りなしだ。

それぞれが役柄を自分のものとして、細かな感情まで自在に表現している。

登場する昭和30年代の風物・風俗も好ましい。

東京の風景。金沢の町並み。蒸気機関車。そして、まだ戦後を引きずっていた人々。


さてさて、オリジナル版を堪能した上で、新作リメイク版(東宝)についてですが・・・。

申し訳ないけど、広末涼子の演技力では、あの原作のヒロインは無理でしょう。

というか、なぜ広末涼子なんだろう(笑)。

映画でもテレビでも、彼女の出演作で、その演技に感心できるものがあっただろうか。

『おくりびと』を観たときは、広末が出てくる部分だけが落ち着いて見られなかった。明らかにミスキャストなんだけど、アカデミー賞のおかげで、それもうやむやに。

今では、なんだか“名女優”風、“大物女優” 扱いになってしまった広末だが、演技が進歩したり深まったりしているわけじゃないのだ。

私は、木村多江さんを無名時代から支持しているので、本当は劇場で彼女を見たいのだが、どーしても広末主演映画にお金を払いたいとは思えない。

多分、DVD化されてから、ってことになりそうだ。残念。


この小学館のシリーズは全10巻。これから出る分で楽しみにしているのは、やはり野村監督の『張込み』。それと、山田洋次監督『霧の旗』だ。

どちらも『ゼロの焦点』と同様、学生時代に名画座のスクリーンで観たが、こうしてDVDで好きな時に見直せるというのは、有難いことです。


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