微細藻類で日本が産油国になれるビッグな話題(1)

2011-06-13 06:38:53 | その他

 筑波大学・生命環境科学研究科の渡辺信教授が、石油生産能力の飛躍的大きい藻類「オ-ランチオキトリウム」を沖縄で発見したというニュ-スを昨年発表してから評判となり、日本新党の田中康夫代表が衆議院予算委員会の代表質問で取り上げ、人気テレビ番組「そこまで云って委員会?」でコメンテ-タ-の勝谷誠彦氏も繰り返し紹介し、渡辺教授の姿もテレビで拝見したので、少し予備調査を実施してみた。専門外の私が充分な解析をせずにまとめたもので、間違った解釈をしていたらお許しいただきたい。

1) 石油の起源については、有機起源説や無機起源説などいくつかの説があるが、ここでは藻類や植物系の有機物が酸素の少ない海底に堆積し、長い年月かけて石油に変化したものと説明され、地球が何億年もかけて作った石油を、科学の力で短時間に効率よく生産する技術開発の成果が「藻類バイオ燃料」と説明している。
2) この研究は、1970年代から米国エネルギ-省が巨額(総額1兆円規模)の資金をかけて関連民間企業中心に進めており、商業化を目指した大型テストプラントで試作した藻類バイオ燃料でジェット機を飛ばす段階となっている。世界の主要研究所でも取り上げられているが、製造コスト面での競争性に難題を抱えていた。
3) 日本でも多くの研究機関で取り上げられ、1990~2000年には旧通産省の参加した「地球環境産業技術研究機構」を作って約122億円を投じて藻類研究を進めたが撤退した経緯がある。そのご政府レベルの動きがないまま現在に至っていた。
4) 筑波大の渡辺信教授は、過去40年間あまり世界の藻類の研究を進めてきたスペシアリストであるが、昨年沖縄近辺で、当時のオイル生産最高能力を持つ「ボトリオコッカス」の10倍の生産能力を持つ「オ-ランチオキトリウム」を発見したと発表した。
5) 世界には約15万種の藻類が存在しているが、今度発見された新種は条件を選ぶと4時間で倍増することができ、光合成でなく有機物を餌として炭化水素系オイルを生産する。渡辺教授は、工業化面の工夫が必要であるが、近い将来輸入石油に代替できる可能性があると示唆した。
6) この技術開発が成功すれば、近い将来枯渇が予想される石油の世界市場(250~300兆円規模)を根底から揺るがす課題となる。日本は石油のほぼ全量を輸入に頼っているので、波及効果を含めると大きい夢のプロジェクトである。
昨年6月に産官学が共同で開発を進める「藻類産業創生コンソ-シアム」がスタ-トし、日本企業や大学の研究機関の多くが参加して実用化研究体制ができ、国が主導している海外の先行研究体制を追撃する組織が完成した。
6)最近渡辺教授が提唱する「有機物含有排水処理とオイル生産」システムでは、家庭や工場から排出される有機系排水の一次処理工程で有機物を補食するオ-ランチオキトリウムによるオイル生産、二次処理工程でポトリオコッカスの光合成によるオイル処理、両工程から排出される藻残渣をメタン発酵に利用して家畜の餌にすることを提案している。
7)日本の石油必要量を年間2億トンとすると、面積は2万hr、深さ1mの培養面積が必要と試算されるが、現在存在する休耕田のわずか5%あればよいし、炭化水素系石油であるから、既存の石油精製施設が活用できるし、燃料用だけでなく繊維やプラスチックなど化学製品用にも活用できる。今度の大地震で塩害を受けた東北地区の田圃は塩分除去が必要となっているが、塩分に強いオ-ランチオキトリウムの培養には心配いらない。
8)海底油田探索や他の代替エネルギーの研究開発にも大きく影響するテ-マであり、渡辺教授の推定では10年くらい先には実用を目指したいとしている。
 技術開発面から見ると難しい課題はなさそうであるが、原料有機系排水の調達・製造オイルの需要先への搬送・大量残渣の処理問題など物流面の問題、オ-ランチオキトリウムに勝る藻類の出現による独占可否問題、他社の特許面からの制約の有無、既存石油資本による妨害の有無、他の研究との競合性など心配の種は残っている。

 渡辺教授は、現在地球上に存在する生物のすべてが藻類によって形成されおり、原点に帰って取り組むべき最重要研究テ-マであるという主張には説得力がある。
 たまたま本日の「そこまで云って委員会」番組で、注目される原発代替のエネルギーとして注目される4種(メタンハイドレ-ト、液体トリウム原発、芋エネルギ-の活用、オ-ランチオキトリウム)の技術が取り上げられ、研究者が熱弁をふるった。オ-ランチオキトリウムを「オ-ランチキチキ」と名付けて、今年の流行語大賞を狙うという話しも飛び出した。おそらく1~2年後には成功可否の見通しがつくと思うので継続して注目していきたい。