今年は、源氏物語が記録の上で確認されてから千年を迎え、京都・滋賀各地で記念イベントが数多く開催された。滋賀県でも、比叡山延暦寺・石山寺・浮御堂・逢坂の関・慈眼堂・融神社・日吉大社・三井寺など源氏物語ゆかりの地が紹介されているが、大津商工会議所では、「源氏物語千年紀in湖都大津」と題して9ヶ月間のイベントを組み、石山寺では“源氏夢回廊”が企画された。
石山寺内部にある看板
源氏物語と石山寺の関係については、紫式部が新作物語の作成を命じられて着想を得るために石山寺に7日間参篭したとき、琵琶湖に映る月を眺めて源氏物語の構想が浮かんだとされ、石山寺の本堂には「源氏の間」が存在するが、この説は現在の学会で認められたものではないようである。しかし、当時の女官たちの多くが石山寺に参篭して、読経しながら一夜を明かすことが流行っており、源氏物語にも石山寺が登場するので、事実と考えてもおかしくない。(表現の一部にチラシの文章を引用)
私は、瀬田川沿いの「水のめぐみ館・アクア琵琶」を訪問することは多いが、向い側にある石山寺を見学したのは数十年前になる。曇り空の11月10日、久し振りの訪問であったが、バスツアーの人で賑わいを見せていた。
境内にある奇岩は硅灰石で、説明板には「石灰岩が地中から突出した花崗岩と接触し、その熱作用のため変質したものである。この作用によって通常は大理石となるが、この石山寺のように雄大な硅灰石となっているのは珍しい・・・・・・ので、大正11年3月国の天然記念物に指定された」と記載されている。これが石山寺の「石山」の由来であり、寺域のあちこちに奇怪な形の硅灰岩が顔を出していた。
硅灰岩の上部に見える多宝塔 紅葉が始まった蓮如堂横の広場
石山寺は聖武天皇の勅願で、奈良時代後期に良弁僧正が開山した寺で観音の霊地とされ、平安時代には多くの有名人が訪れ、当時の文学にも登場している。国宝の本堂・多宝塔を始め漢書・仏像・絵巻など国宝・重文クラスの寺宝が多くあり、石山寺の最も高い位置にある豊浄殿では春と秋に寺宝を紫式部などのテーマ別に一般公開されている。
今回の“源氏夢回廊”では、日頃は非公開の塔頭「世尊院」・「明王院」・「密蔵院」を主会場として源氏物語の企画展示があったが、時間の都合で見学できなかった。石山寺の歴史的背景を少し勉強してもう一度訪問したいと思っている。