ちわきの俳句の部屋

メカ音痴おばさんの一念発起のブログです。
人生の後半を俳句にどっぷりと浸かって、…今がある。

葛の花

2017年08月17日 | 俳句

 先日お墓参りに行ったとき、裏山に葛の花が咲いていました。葛や葛の葉だけでも秋の季語になりますが、葛の花は初秋の季語です。『万葉集』で山上憶良が秋の七草に「葛花」を挙げていますが、和歌や連俳では花よりも葉に注目されていました。近世俳諧から花も詠まれるようになって、近代短歌では釈迢空の〈葛の花踏みしだかれて色あたらしこの山道を行きし人あり〉が有名。私も俳句を始める前にこの歌を知り、葛の花を見たい見たいと思っていました。

   葛の葉の吹きしづまりて葛の花   正岡子規

 この句のように、葛の花は茂った葉の中でちらちらと見え隠れしているので、ゆっくり近づいて見ないと、見過ごしてしまうことが多いですね。広い三小葉からなる葛の葉の裏には白い毛があって、翻ると裏の白が見えることから、「葛の葉の」は「裏見」が転じて「恨み」にかかる序詞になっています。

   葛咲くや濁流わたる熊野犬

 『秋櫻子俳句365日』の8月17日の句です。この句についての秋櫻子先生の解説を引用してみましょう。

 大和の五条から十津川行のバスに乗る。

 標高1千メートル、はるか下の谷は、左右とも刳れているが、道路はよく整備されて、不安はない。バスの前を赤蜻蛉がすいすい飛ぶ。二時間半かかって十津川村に着いた。

 先日の台風のため、水嵩を増した十津川は、常に濁っていて、澄むことは一年に数日しかないという。

 谷が深いためか、吊橋が多い。最長のものは三百メートル以上ありそうだ。面白い景色と思った。

 村には熊野犬を飼う家が多い。茶褐色で体は大きくないが、いかにも精悍そうで、いかにも川を渡りそうに思えて、この句を詠んだ。 

  ひぐらしや熊野へしづむ山幾重

 幾重にも重なった山々は、どれも鬱蒼と繁って、木材を満載したトラックが頻繁に走っている。わずかな余光の中、蜩が鳴き続けていた。(昭和35年・句集『旅愁』所収)


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