ちわきの俳句の部屋

メカ音痴おばさんの一念発起のブログです。
人生の後半を俳句にどっぷりと浸かって、…今がある。

〝秋日和〟と〝菊日和〟

2021年10月15日 | 俳句

 昨日も今日も朝から雲一つない晴マーク、最高気温も26、7度と秋らしい日和でした。こういうのを季語では「秋日和」(あきびより)というんですよ。また、この時期は菊の花が盛りなので、こんなときには「菊日和」という季語を使います。

  畳屋の肘(ひじ)が働く秋日和  草間時彦

  四五日の旅行く妻に菊日和    石塚友二

 どちらの句も明るくていいですね。前句は、今は畳屋さんも少なくなってしまいましたが、〈肘が働く〉がピカイチ!なかなか云えないことばです。俳句は先ずしっかり〝観る〟ことが大事。知識だけでは上っ面だけの実感のない薄っぺらな句になりやすいですものね。

 「実相観入」という言葉があります。これは斎藤茂吉が正岡子規の写生論を踏まえて唱えた歌論ですが、この時彦の句はまさにその実相に観入して、畳屋という職業を的確に言い当てているのではないでしょうか。私も以前、あの太い針で畳を縫っては肘でキュッキュッと締めていく作業…その手際のよさに見とれていたことがありました。懐かしい景ですね。

 また後句は、何という優しい句でしょう。ここまで思ってもらえる奥様は幸せなこと、羨ましい!(笑) 季語を「秋日和」とせず「菊日和」にしたところ…さすがですね。もしかしたらこの旅は何かいいことがあって行くものかも。ただ単なる旅行なら秋日和でもよかったはずでしょう。〝菊〟という花の持っているイメージは、気品があって色も黄色や紅やピンク、白などと様々、また香しさも感じられる。だから「秋」なんかよりぐっと実態が見えてくるはず。更に〈妻や〉でなく〈妻に〉としたところも。妻を心から送り出してあげてるようでしょう。世の旦那様方、皆さんはいかがですか?それも日帰りとか一泊ではないんですよ。エエッ、できるですって…そりゃあいない方がせいせいするからというんじゃダメですよ。それでは妻への愛情は全く感じられませんものね。(笑)

 ところが驚きなんですよ。この句は1987年出版の句集『玉縄抄以後』に収められたものですが、友二が亡くなったのは1986年2月8日、79歳。しかし、1985年に句集『玉縄抄』を出しているんです。ということは死ぬ1年前ぐらいに詠んだ句ではということになるのです。

 ウィキペディアによれば、〝代表句に「百方に借りあるごとし秋の暮」などがあり、日々の生活を題材とし、私小説的な世界がそのまま俳句となるような句境を開いた〟とありますから、この句も彼の想い出の中からの私小説的な創作だったのかも。死のすぐ近くにあってもこんな句が詠めるなんて、友二さんとは一体どんな人だったんでしょうか。

 友二はそもそもは小説家で編集者でした。俳句は当初秋桜子の「馬酔木」に投句していて、1937年、石田波郷を主宰として「鶴」を創刊、発行編集者となり、後に波郷が応召された際には代選も務め、また、1969年に波郷が没してからは同主宰を継承しました。

 友二は波郷より7歳も年上でしたが、出逢ったときから句歴や実力などの違いから波郷に師事していて、俳誌「鶴」では波郷の盟友ともいえる存在であったようです。お二人とも「馬酔木」に繋がる私の大先輩ということになりますが、かつて林翔先生に〝寡黙だが、傍に居るだけで安らぎを覚えて、誰からも好かれる人物だったよ〟とお聞きした波郷さんならば、友二さんもきっとそんな人だったのでは。だって最後まで波郷を大事に思って「鶴」を守ってきた誠実な感じの人ですもの。

 実は今日も俳句教室でした。明日も午前と午後のダブル句会なんですよ。だから、また次がいつになることやら…。ではオヤスミナサイ!

 写真は、折り紙の〝紫のばら〟です。私が折ったんではないのですが、これを見てすぐに〝あの紫のばらの人…〟と言ったら、彼女も〝そう、そう、あれまだ続いてるのかしら?〟な~んて…。この会話分かりますか?分かる人は同類ですね!(^▽^)

 


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6 コメント

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こんにちは (ミルク)
2021-10-16 12:10:50
相変わらずお忙しいですね。その方がはいあいがあるかな。
<妻にと妻や> 助詞ひとつで、印象が変わるものですね。
秋日和と菊日和・勉強になりました。

こちらも、14日は気持ちの良い、晴天でした
今日は、朝から寒くて電気ストーブを。最高14度ですって
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Unknown (maritosi1152)
2021-10-16 12:53:02
しっかり見る、知識だけではうわっ滑り←うんうん、自戒をこめて。、
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Unknown (信州人)
2021-10-16 23:53:58
ちわきさま、こんばんは。

単身の夜、二日目、意外と快適です。
石田波郷と石塚友二の友情、興味深く読みました。
まずは波郷の句にあたって調べてみたいです。
自身もこの初夏に突然友人の一人を亡くしましたが、漢詩の題はよく男の友情が出てまいります
おいおい、花衣はどうしたって?
上巻の「谺して山ほととぎすほしいまま」の作句過程を読み返しております。
ここは風景描写といい、志といい、読ませ処ですね。

秋日和、菊日和と季語の印象は晴天であります。
秋の晴天の季語を辿って、諏訪大社で去年の印象で一句。
<参道を急く赤袴鵙の晴>
はて七五三で急がしかったかバイト巫女、袴の色はあくまで印象です。
〝紫のばら〟さすがに漫画関係では??
しかし折り紙は見事でございます。
創作はまったく駄目な信州人です。
<連山を一筆書に秋の暮>
うーん、一筆書を思いついてよしとおもいましたが、類想句がありそうですが、お許しを。
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Unknown (ちわき)
2021-10-17 11:11:20
ミルクさん、コメントありがとうございます。
最高気温14度とはまた…それが急にだとなおさら寒く感じますね。
もう電気ストーブを出したと…分かりますよ。年を取ると余計寒さが堪えますものね。
こちらでも21度と…先日の29度や28度から比べると、ブルブルで炬燵が欲しい!なんてね。
今年の気候もゼットコースターなみかも…上がったり下がったりと。
私高所恐怖症なのでああいうのはダメなんです。身体がもたないよ!
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Unknown (ちわき)
2021-10-17 11:24:26
maritosi1152さん、コメントありがとうございます。
〝言うは易し観るは難し〟でしょうか。実際見てるようで観てないんですよね。
特に政治家さんなんて〝不言実行〟がいい。〝有言非行〟が罷り通る世の中ではね。
そういえばお茶屋さんの宣伝文句に〝世の中は無茶では生きられません〟だって。その通り!('-'*)
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Unknown (ちわき)
2021-10-17 12:00:40
信州人さん、こんにちは!
興味がどんどん広がってあれも知りたいこれも詠みたいと…いいことです。
情熱を持って何にでもアタックして下さい。
〝鉄は熱いうちに打て〟ですものね。
久女の『花衣ぬぐや…』はまだまだ終りそうにないですね。
「谺して山ほととぎすほしいまま」の句は九州福岡県の英彦山での句です。この句を得るために確か久女は何度か英彦山に行っていたと思いますが…
やはり俳句はその場に立っての実感がものを言うようです。
<参道を急く赤袴鵙の晴>
普通巫女は〈赤袴〉とは余り言いませんので、〈…緋袴や…〉としましょう。
<連山を一筆書に秋の暮>
この原句は、<ほしづくよ一筆書の里の山>でしたが、これの方が随分いいし、景がよく見えます。できれば〈…一筆書の暮の秋〉の方がいいでしょう。なぜか、どう違うかを考えてみましょう。勉強になりますよ。
さて、もう一つの宿題は?
<這松に憩ひ遥けき雲の峰>の〈遙けき〉は不要ですから、〈這松の隙に憩へり雲の峰〉とでもすれば、山頂などの這松が生い茂っているところで一服して雲の峰を眺めているという情景になりませんか?
〝紫のばら〟は連載漫画『ガラスの仮面』…正解です。私は途中で飽きて最後まで読んでいませんが、一時は熱中して読んでいました。若かったんですね。(*^▽^*)
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